第1幕
- かつて十字架上のイエス・キリストの血を受けたといわれる「聖杯(グラール)」と「聖槍」は、
- 天使たちにより聖者ティトゥレルに託され、
- 「聖杯城」の「聖杯騎士団(グラールの騎士)」によって守られていた。
- ティトゥレルの跡を継いで、この聖杯騎士団のリーダーとなったアンフォルタスの苦悩は、
- そのような聖なる地位にありながら絶世の美女であるクンドリーに誘惑され、
- あろうことか彼女を操る「聖者くずれ」のクリングゾルに聖槍までも奪われたことである。
- 一方、クンドリーもまた、遠い昔、
- 十字架へ向かうイエス・キリストに激しい恋情を抱きつつもその姿を嘲笑ったため、
- 泣くこともできないまま、狂ったように世界を永遠にさすらう運命を負わされている。
- 彼女の願いは、イエスのような聖者に出会い、その癒しを得ることなのだが、
- 彼女が誘惑する「聖者」は誰ひとりとして彼女の容姿の美しさに抵抗することができない。
- クンドリーとアンフォルタスの二人が心から願っていることは
- 「彼らとともに悩む清らかな愚か者」と出会うことであり、
- その愚か者こそパルジファルである。第1幕では、高齢の聖杯騎士グルネマンツが、
- パルジファルを「清らかな愚か者」だと直感し、彼を聖杯城内に導く。
- しかし、儀式を執り行うアンフォルタスの苦悩を見ても、
- パルジファルは何も理解せず突っ立ったままなので、グルネマンツは失望して彼を追い出す。
第2幕
- 第2幕は、クリングゾルの「魔法の園」。クリングゾルもかつては聖者を志したのだが、
- その道に挫折したために聖杯騎士団を恨み、
- 砂漠に歓楽の園を作りだし、彼らを性的欲望の道に誘惑しているのである。
- クリングゾルは黒魔術でクンドリーを呼び出し、はじめはいやがっていたクンドリーも
- 「花の乙女たち」とともにパルジファルを誘惑しはじめる。
- しかし、クンドリーがパルジファルに初めての口づけを与えた瞬間、
- パルジファルはアンフォルタスの「愛の苦しみ」を理解し、飛び起きる。
- この人こそ自分の探していた「救い主」だと確信したクンドリーは、
- 歓喜に満ちてますますパルジファルを誘惑しようとするが、ついに彼に拒否される。
- クンドリーはクリングゾルを呼び出し、彼は「聖槍」をパルジファル目がけて投げつけるが、
- 槍はパルジファルの頭上で静止する。
- 槍を取り戻したパルジファルが十字を切ると「魔の園の偽りの栄華」は崩れ落ちる。
第3幕
- 第3幕では、迷いの道をさすらってきたパルジファルが聖杯の領地へと帰ってくる。
- そこには、すでにかつての荒々しさをなくしたクンドリーとグルネマンツとがいて、
- 彼を祝福する。時あたかもイエス・キリストが十字架に架けられた「聖金曜日」。
- 野は明るく輝き、救い主になるための苦しみを味わい尽くしたパルジファルの口づけに、
- クンドリーはついに救いを見出し、その頬には初めて涙が浮かぶ。
- パルジファルはグルネマンツに導かれ、ふたたび聖杯城の中に入るが、
- 聖杯騎士団の状態はすでに末期症状を呈している。
- 彼らはティトゥレルの遺骸を前に儀式の執行をアンフォルタスに強要するが、
- 彼はあくまで抵抗し「死なせてくれ」と叫ぶ。そこにパルジファルが聖槍を差し出すと、
- アンフォルタスの顔は喜びに輝く。悩み続けてきた彼もついに救いを得た。
- 聖槍の帰還を受けて聖杯(グラール)は赤々と輝き、
- 人々がパルジファルを「救い主」として称えると幕が閉じられる。
大変宗教色の濃い作品で、パルジファルを聴くにはあらすじザックリでは退屈する作品です。
イタリアやフランスのオペラは、あらすじザックリでも楽しく聴くことが出来ますが、
ワーグナーの一連のオペラは、その旋律は実に美しいものですが、
あらすじをある程度分かったうえで聴かないと、退屈するかもしれません。
ヘルベルト・フォン・カラヤン
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団
ワルター・ハーゲン・グロル(合唱指揮)
パルジファル:ペーター・ホフマン
グルネマンツ:クルト・モル
クンドリー:ドゥニヤ・ヴェイソヴィチ
アンフォルタス:ジョゼ・ヴァン・ダム
ティトゥレル:ヴィクター・フォン・ハーレム
クリングゾール:ジークムント・ニムスゲルン
第1の聖杯騎士:クラエス・アーカン・アーンシェ
第2の聖杯騎士:クルト・リドル
第1の小姓:マリヨン・ランブリクス
第2の小姓:アンネ・イェヴァング
第3の小姓:ハンナ・ホプフナー
第4の小姓:ジョージ・ディッキー
花の乙女:バーバラ・ヘンドリックス
花の乙女:ジャネット・ペリー
花の乙女:ドリス・ゾッフェル
花の乙女:インガ・ニールセン
花の乙女:オードリー・ミッチェル
花の乙女:ロハンギス・ヤシュメ
アルト独唱:ハンナ・シュヴァルツ
1979,80年
ベルリン、フィルハーモニー
バイロイト祝祭管弦楽団に長く在籍していた眞峯紀一郎さんは、
カラヤンについて「オペラの指揮は、ただ楽譜を見て棒を振るだけでなく、
もっと大きな観点から作品を俯瞰する必要があります。
カラヤンはそれを見事にこなせる人でした。私は個人的に、
カラヤンは“オペラ指揮者”だったと考えています。
カラヤンは音楽から演出に至る全てを自分でコントロールする人で
(そんなところが原因となって、バイロイトではヴィーラントと仲違いしたのですが……)、
スコアもテキストも完璧に暗譜して、歌手の所作などにも全部指示を出していました。」
と語っています。
なぜ、この文章を引用したかというと、ビルギット・ニルソンが上演中、
カラヤンに指示を出してもらおうと救いを求めたとき、
カラヤンは目をつぶって指揮していたので気がついてもらえなかったと怒っていたのを思い出したからです。
この録音は、ワーグナーにこだわり続けたカラヤンが残した録音の中でも、
最高の出来ではないでしょうか。
カラヤンは、「パルジファル」の録音は70歳になってからと語っていたそうですが、
この録音はカラヤンのワーグナー演奏の集大成のように思えます。
カラヤン初のデジタル・セッションということもあり、今が時と思って「パルジファル」を選んだのでしょうか。
歌手選びでは、こだわりが裏目に出ることもあるカラヤンですが、
この録音は文句のつけようがないです。この演奏であれば、
ペーター・ホフマンよりルネ・コロのほうがふさわしかったと思いますが、
カラヤンは「ローエングリン」で懲りたのかもしれませんね。
興味深いのは、クンドリーにドゥニヤ・ヴェイソヴィチという歌手をあてていること。
カラヤン指揮の「さまよえるオランダ人」で、ゼンタを歌っていた人です。ヤノヴィッツの声質で、
低いほうの声域を伸ばしたような人。カラヤン好みの声の歌手なのだそうですが、
他では名前を見たことがない人なんです。
『パルシファル』の決定盤!
クナッパーツブッシュのステレオ・ライヴ!
1962年ステレオ録音。バイロイトが伝説だった時代を象徴する素晴らしい演奏。
作品の性格もあってか、ここでの神秘的な雰囲気、崇高さへの希求といった宗教的性格の濃厚さと、
対置されるドラマの織り成すコントラストには凄いものがあるのですが、
全体に強烈な統一感、一体感が感じられるのは、やはりクナッパーツブッシュの力でしょう。
すでに40年近く経過していますが、この作品に関する限り、
ほかの指揮者の演奏はどれも表面的なドラマに聴こえてしまうほど、ここでの演奏の雰囲気は独特です。
パルシファル:ジェス・トーマス
グルネマンツ:ハンス・ホッター
アンフォルタス:ジョージ・ロンドン
ティトゥレル:マルッティ・タルヴェラ
クリングゾール:グスタフ・ナイトリンガー
クンドリー:アイリーン・ダリス
第1の聖杯騎士:ニールス・メラー
第2の聖杯騎士:ゲルト・ニーンシュテット
第1の小姓:ソナ・セルヴェナ
第2の小姓:ウルスラ・ベーゼ
第3の小姓:ゲルハルト・シュトルツェ
第4の小姓:ゲオルグ・パスクタ
花の乙女:グンドゥラ・ヤノヴィッツ
花の乙女:アニア・シリア
花の乙女:エルセ・マルグレーテ・ガルデッリ
花の乙女:ドロテア・ジーベルト
花の乙女:リタ・バルトス
花の乙女:ソナ・セルヴェナ
アルト独唱:ウルスラ・ベーゼ
バイロイト祝祭合唱団
ヴィルヘルム・ピッツ(合唱指揮)
バイロイト祝祭管弦楽団
ハンス・クナッパーツブッシュ(指揮)
1962年7月、8月、バイロイト祝祭劇場でのステレオ録音
クナッパーツブッシュのパルジファルは、それはもう最高ですね。
ワーグナーの一連の作品は、この人のために創られたといっても過言ではないと思います。
何れも必聴盤です。但し、先ほどの言ったように宗教色の濃い作品なので、
内容をある程度把握していないと、ただ退屈なだけのオペラになってしまいます。
以上、ワーグナーのオペラはこれまでにしたいと思います。
一つ戻る 戻る
次へ