日常生活支援研修


【ROMエクササイズ】
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1)他動運動による拘縮の予防

他動運動の目的は、臥床中に生じてくる関節拘縮を未然に防ぎ、運動感覚入力を与えることにある。そのためには発症後早期から他動運動を開始することが必要である。Werssowetz 4)によれば、関節拘縮は早い例では発症後1週間以内にみられてくるものもあると述べている。とくに、痙性の強い場合に可動域制限の発生が早期からみられてくることが多い。発症後早期からの他動運動開始について新ら 5)の報告によれば、他動運動を行なっても頭部循環血流量には著しい変化はみられなかったと述べている。


運動回数については、関節可動域を維持するには各々の関節の各運動方向に10回、これを1日に最低2回行なうことが望ましいとされている。弛緩性麻痺であれば可動域維持についてはそれほど問題とならないが、痙性の出現、早期から関節に痛みを訴える場合には、1日2回の他動運動を行なっても可動域を維持することが困難な場合もある。


他動運動を行う場合、術者(PT)は近位関節を固定し遠位関節を保持して、痛みのない範囲で可動域全域にわたって、ゆっくりと、なめらかな運動を行うことである。とくに痙性筋に対しては、急激な伸張を加えることによる反射性の収縮をおこさないように、ゆっくりと伸張する。他動運動を行うことにより拘縮を予防することのほかに、固有受容器への刺激、筋の静止時の長さを維持するなど自動運動への準備としての運動効果を期待することもできる。


臥床期から開始した他動運動は、理解力があり、全身状態の回復がみられたら、順次、健側を用いての自己他動運動を教えていってよい。Peszczynski 6)、7)によれば、上肢への徒手的他動運動は運動開始後4週間だけでよく、それ以後は健側を用いての自己他動運動にうつってよいとしている。また、下肢についても歩行が可能となれば他動運動の必要はないとされているが、共同運動と分離した運動とが混じりあった状態、あるいは自動運動が分離した運動としてみられる場合には、正しい運動感覚を習得させるためには介助自動運動を4週以後も続ける必要があると考えている。肩関節屈曲、外転、外旋、股関節屈曲(膝伸展位)、外転、内旋、足関節背屈については、徒手的に可動域を確かめ、制限が生じてこないように注意をはらう必要がある。

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