リブリーザーダイビングの事故予防のために


リブリーザーダイビングで注意すべきこととは?

■リブリーザーダイビング
 先日、リブリーザーダイビングについて、素人ながら複数の一流の専門家に教えをいただき、少し勉強してみました。
 なお、リブリーザーダイビングの有用性は多くのメディアで紹介されていると思います。したがってここでの意見ではあくまでリブリーザーダイビングの事故の可能性を減らすことに貢献できるようにと思いからのものです。リブリーザーダイビングを否定するものではないことをあらかじめお断りしておきます。

 一般のレジャーダイバーが行っているスクーバ潜水はオープンサーキット(タンクにレギュレーターを付けて、吸った空気はそのまま水中に出す、普通のやり方)ですが、全閉式の酸素を空気あるいはナイトロックス及びヘリウムなどど組み合わせて酸素分圧を1.2ATA〜1.4ATAに調整して酸素タンクから酸素を補充し、排気中の二酸化炭素はソーダライムなどに吸収させる器材を使用して潜水するのがリブリーザーダイビングと伺っていおります。つまり自分のはいた息に使った分の酸素を補てんし、過重な二酸化炭素を取り除いて呼吸可能な空気として循環させて吸うことを繰り返して、潜水中に水中に排気をしない、空気の循環システムを使ったダイビングのことです。

■リブリーザーダイバーの事故(以下はある事例について教えていただいた内容から構成したものです)
 実は過去、リブリーザーを使ったダイバーが某所で事故に遭い、幸運にも助かりましたが入院となった事例がありました。
 事故のあったダイビング時(他の人たちは一般のダイビングを行っていた)、その人は潜水開始後あまり時間がたたずにバディによって水面まで引き上げられたそうです。
 このとき、巡回する空気に酸素を供給する酸素タンクの残圧はゼロだったそうです。
 したがって、事故の原因は酸欠にあったと見る専門家がおります。
 普通のリブリーザーダイバーは、潜水のごとに酸素とヘリウムなどを充填してガスの残圧を上げるのが当たり前ですが、このダイバーはそれをしていなかった、しかも事故の前日に水深60mまでの潜水を行っていたそうです。
 酸素の残圧チェックをしていなかったようだというのが事故を知る人の意見です。(それ以前に酸素の充填が必要なのですが)
 さらにリブリーザーが故障したり何らかのトラブルが起きた時に空気で浮上するための小型の緊急用タンクを携帯していなかったそうです。
 リブリーザーで起こり得る事故は、酸素(O2)センサーの表面に水滴がつくときに起きる誤作動だそうです。これがあるので酸素のタンクはバックアップとしてもう1本用意しておくそうです。それでもメインのものに水滴がつくということはバックアップも誤作動する場合はあり、電気的な故障もあり得るそうです。
こういったときのために緊急用の80−100気圧の空気の入った小型タンク(ベイルアウト用のタンク。予想深度によっては酸素分圧を高めたナイトロックスガスなどを充填)の所持が不可欠ということです。さらに深く長く潜水する時を想定するとヘリウム減圧も必要となるそうです。
 この事故に遭った人は、こういった危険を想定したバックアップを面倒に思ってそれらをなくした軽装備潜水を選択したのではと思われています。
 リブリーザーダイビングは、いわゆるテクニカルダイビングの部類に入ると思いますので、相当に慎重な危機管理(リスクマネジメント)ができなければ、例えば本人のみならず事故が連鎖してしまった場合のことを考えても、安易な気持ちで行うべきものではないと考えられます。

■リブリーザーのメリットとは
 まず、水中での排気音が少なく、魚に近づきやすい。
 疲労感が少ない。
 (一般ダイバーは)見栄を張ることができる。

などです。
 しかしリブリーザーダイビングは必然性があって行うからこそその特性が生きてきます。これを使いこなさなければかえって潜水のリスクを高めてしまうということです。
 必然性とは、長時間潜水が必要だったり、大深度での水中作業が必要な場合などです。
 空気潜水だと、大深度ダイビングでは水中で窒素酔いの影響がにさらされやすく、その場合、思考能力が鈍るそうです。そのようなところでミスが許されない込み入った作業をする場合には、リブリーザーやミックスガス潜水は十分な必然性があります。
 また水中写真家で、魚の写真を撮るときに、排気音で驚かさずにできるだけ近づく必要がある方も必然性があるでしょう。
 こういったところで使うからこそこの高度なシステムが生きてくるのだと思います。
 当然、ダイビングコンピューターの演算モードも、一般の空気潜水のモードではなく、ミックスガス用に改めたりする必要もあります。ここの詳しいところはミックスガス潜水の専門家にお聞きください。

 以上から、リブリーザーダイビングを行うかどうかは、その必然性があるかどうかを良く考えてから決めることが良いでしょう。
 決して、十分な訓練を積まず、また陸上では重く重装備ともなるリスクマネジメントをきちんと行えない方、あるいはそのようなことが面倒な方は、これを行わないようにしてほしい、というのが、私が話をお聞きした専門家たちの一致した意見でした。

■リブリーザーダイビングでの見栄
 ある一流プロダイバーの方は、見栄の問題について、ダイビングは競技性がないので、もしかしたら、水中で自分が他の者たちより優れていることを実証できないことを面白くなく思うダイバーの中には、陸上で高額な器材で最新の装備でもあるリブリーザーダイビングの器材の威力で「すごいだろう」をアピールするために使う人もいるのではないかという意見を語られました。
 しかし陸上では他人の目を器材の力で差を見せつけても、自然の前ではうそはつけいないので、そのダイバーの能力自体(一般のダイバーが外部から見てもなかなか差を見せつけられない能力)が問われることになると考えられるそうです。器材の管理が不徹底や手抜きであれば、それ以前の問題となります。

 もし皆さんがファンダイビングに行って、そこでリブリーザーダイバーがいたら、その目的を聞いてみてもいいかもしれません。そこに共感できる理由(将来プロの水中写真家になるために、この器材を使いこなせるように経験を積む一環として一般のファンダイビングにもこの装備で参加している、などか。)がなく、またその人がメインの酸素タンク以外に、バックアップの酸素タンク、緊急浮上用の空気のタンクの3本を装備していない場合、それにダイビングコンピューターの演算モードが空気潜水だった場合には、そのダイビング中に、まず自分がその方のリスクに巻き込まれないように少し用心してみることも無意味なことではないかもしれません。

 以上は、リブリーザーダイビングの素人である私が聞いた範囲での意見や報告です。
 リブリーザーダイビングを行うことを考えている方は、多くの勉強と訓練が必要なことを忘れないでください。多くのダイバーが、リブリーザーダイビングの利点を有効に活用することができるよう祈っています。


平成21年8月24日
      8月28日一部修正

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