アンタエウスオオクワガタ (Dorcus antaeus) 2008.10.26改訂

アンタエウスオオクワガタは数年前、アンテブームを巻き起こした超人気クワガタでした。インドアンテが1ペア5万円という時代もありました。しかし、数が増えたため値崩れを起こしました。反動で飼育を止めるブリーダーが多く、流通数が減りましたが現在は人気も回復し、安定した流通となっております。体の「艶」が強いのが特徴です。

大きく分けて3つの産地があります。
インド・ネパール・ブータンなどの「ヒマラヤ系」、マレー半島に生息する「マレー系」、タイ・ラオス・ベトナムなどの「インドシナ系」です。三産地にはそれぞれ明確な外見の特徴があります。

飼育 温度管理さえ出来れば決して飼育の難しいクワガタではありません。寿命も2−3年と長く、オオクワガタの中でも比較的大人しいクワガタです。しかし、高標高に生息するため、暑さに弱く、良い結果を求めるなら、エアコン管理は必須です。

産卵方法 マット産卵が多いようですが、産卵木にも産卵します。マットは二次発酵済みの微粒子マットを使用してください。産卵木は太めの柔らかい材をマットに埋め込んであげましょう。水分はやや多目が結果が良いようです。加温(20度以上)してあげれば、秋ー冬でも産卵します。夏に羽化した新成虫を冬にブリードに使えるのは嬉しいですね。
幼虫の羽化までの時間はメスで「9ヶ月」程度、大型のオスでは「14ヶ月」かかることもあります。低温飼育で幼虫期間を長くするのが大型個体作出のコツです。

【ヒマラヤ系】
左の写真はインド産の84mmです。インドアンテと略されます。最大個体は90mmを超える報告があります。現在、世界最大のオオクワガタです。特徴は長く、直線的な大アゴです。大型個体では、内歯が先端寄りに位置して、前方を向きます。
飼育は高温に要注意です。インド産と聞くと暑いところで採れたと思われがちですが、北インドのヒマラヤ産と考えれば解かり易いかもしれません。高標高(2−3千メートル)で採集されることから特に暑さに弱く理想飼育温度は25度以下といわれます。私はインドアンテ飼育のために、飼育部屋にエアコンを設置しました。冬は10度以上あれば大丈夫のようです。幼虫も低温飼育が合っているようです。1年中18ー20度程度が理想と思われます。一時のアンテブームの中心的存在で、75mm程度のペアが5万円で取り引きされた時期もありました。その後、人気が下落し、飼育数が減った事もありますが、現在は安定した根強い人気があります。再ブーム到来でしょうか?

【マレー系】
右の写真はマレーシア・キャメロンハイランド産77mmです。最大個体は80mmを少し超える程度で他産地のような超大型個体の報告はありません。しかし、60mm台でも体型にまとまりがある個体が多く、小さいほうがカッコイイという方もいます。大アゴは強く湾曲して、内歯はヒマラヤ系とインドシナ系の丁度中間でやや前方を向きます。内歯が大きい個体の人気が高いようです。
三つの産地の中では最も南方の産地です。しかし、キャメロンハイランド、ゲティンハイランドという高標高の地域で採集されるため、ヒマラヤ系と同様、高温に弱いクワガタです。飼育温度は20度から26度が最適と思われます。ヒマラヤ系同様夏はエアコン管理が好ましいでしょう。寒さには意外と強く、個体差もありますが10℃近くまで耐えるようです。
三産地の中で私の一番のお気に入りです。

【インドシナ系】
左の写真は、タイ・ドイサケット産72mmです。最大体長は85mm個体の報告があります。とにかく体が太いのが特徴です。他のアンテ同様、体の艶が強く、ピカピカに輝くマッチョマンといった感じです。個体差もありますが、大アゴが太い個体は多くはありません。内歯は根元に近いところから出ていて、真横を向く個体が多いのですが、やはりこれも個体差があり、タイ、ラオス、ベトナムなどの産地での変異もあるようです。ベトナムアンテは大アゴの湾曲が強いと言われています。
飼育は容易ですが、暑さに弱いのはアンタエウス共通です。ただし、三産地の中では比較的暑さに強いかもしれません。以前、我が家ではエアコン無しで夏を乗り切りました。しかし、やはりアンテですので、28度以下にキープしたいですね。冬は12度以上が安全です。耐寒温度は7−8度ともいわれますが、寿命を縮める原因になりますので、お勧めできません。

*注意 決してエアコン管理をしないと死んでしまうという事ではありません。しかし、最良の結果を得るためにはエアコン管理が必須だと思います。一部の地域を除き、エアコン無しでは大きなアンテは羽化しそうにありません。

2002ー2009年の飼育日記

2010ー2011年の飼育日記はこちら!

2012年 飼育日記
1月5日
(マレー産)

菌糸ビンを発注しました。昨年末飼育ビンを交換したマレーアンテ39グラム幼虫用です。
自己ベストの39グラム幼虫にもかかわらず、菌糸ビンを切らしていたため、仕方なくマットで飼育していましたが、「諦めたらそこで、試合終了」という安西先生の言葉(スラムダンク)が脳裏をよぎりました。まだ交換から1週間しか経っていません。希望を捨ててはいけません。
本日「月夜野きのこ園」さんへ菌糸ビンを発注しました。週末、飼育ビン交換の予定です。

1月8日
(マレー産)

年末、1400ccの菌糸ビンを切らしていたため、仕方なくマット飼育に移行させた39グラム幼虫を昨日、菌糸ビンへと移動させました。しかし、残念ながら体重は34グラムと激減していました。管理ミスとはいえ、悔やんでも仕方ありません。アグレッシブに行きましょう!
そして本日菌糸ビン交換した幼虫の中に38.5グラムの幼虫が出現しました。体重計が39と38.5の間でゆれたあとに出てきた数字ですので、正直ホッとしました。神は見放さなかったのですね!
ところで、早期に蛹化した個体を掘り出し(写真)人工蛹室へ移動させました。飼育ビン(2本目)の状態が悪く羽化まで持っていけないと判断したからです。

2月14日
(マレー産)

先月、人工蛹室へ移していたマレーアンテ・キャメロンハイランド産の蛹が羽化しました。体長は目測ですが70ミリ台中盤程度だと思います。
早期羽化にしては、満足できる成果です。蛹の形状がやや歪んでいるようにも見え、心配しておりましたが、羽化不全もなく健常羽化しました。カッコイイ形状だと思います!!
2月20日
(マレー産)

先週、羽化の報告をしたマレーアンタエウスオオクワガタ・キャメロンハイランド産のオスの体長を測定しました。
まだ”ふにゃふにゃ”の状態ですが、予想を超えた数字でした。ノギスを当てたところ、77mmは確実にありそうです。最初の羽化個体としてはかなり素晴らしい数字だと思います。
幼虫の割り出しは3月20日でした。8頭しか幼虫が採れず落胆した記憶があります。最初の菌糸ビン交換は8月でした。この時の体重は32.5グラムでした。飼育部屋の、エアコンの風が直接当たる場所に置いていたため、思ったより幼虫の成長が遅く、菌糸ビン交換のタイミングを遅くとりました。
その後、2本目の菌糸ビン(1400cc)で蛹化しましたが、菌糸ビンが劣化したため、1月上旬から人工蛹室で飼育していました。
大型個体を狙うための目標である「幼虫期間・1年以上」はなりませでしたが十分なサイズと美しい形に満足です。もちろん次に羽化するであろう兄弟たちにはさらに期待しますが・・・。目標はマレー産で80mmオーバーです!
4月29日
(マレー産)

本年1月8日に報告したマレーアンテ(幼虫時の最大体重38.5グラム幼虫)が蛹化しました。しかし、菌糸ビンの状態が良くなかったため、人工蛹室へ移すために掘り出しました。
掘り出して見て驚愕しました。「あれ?」蛹の形が変です。明らかに左右非対称です。大アゴが明らかにズレていますし、脚や羽も変です。何という事でしょうか・・蛹化不全といえそうです。この形状の蛹が無事羽化する事は私の経験からありえません。蛹は非常に大型で80mmを狙える程なのに本当に残念な結果です。ただし・・奇跡が起きない保障はありません。1パーセントの可能性を信じて、飼育を続けます。
・・・十数日後蛹が黒く変色、死亡しました。


クワガタ飼育へ                 トップページへ