Earthbound
Marsboundシリーズ3部作の最終巻です。読む前から、アメリカAmazonの書評が散々なのは知っていましたが、読んでみてその理由を納得しました。
脈絡のないお喋りと突然始まる銃撃戦の繰り返しです。ときどき、SF的なエピソードがはさまるのですが、いずれも何の伏線もないうえそれが後のエピソードにつながるわけでもありません。
どんな本でも何か光る部分を見つけて読むようにしているのですが、今回はつらかったです。最後まで地表に縛り付けられた(earthbound)状況での人間の残虐性と無力さだけしか印象に残りません。仮に、それがテーマだったとしたら、エンターテイメント性たっぷりの前2巻で広げた大風呂敷はどこに行ってしまったのでしょう。最近のホールドマンは、詰めの甘さが気になっていたのですが、今回はそれがもろに出てしまった印象です。書評にすべきかどうか迷いましたが、せっかく最終巻まで読んだ記録として残しておくことにします。(泣)
●ストーリー●
前作Starboundで、カルメンとポールたちは、全能の知性体アザーズの星ウルフ25からからくも地球に帰還した。しかし、アザーズは月を砕き、地球上の物理法則を変え、全ての動力・電子装置を使えなくしてしまった。
全ての移動手段を奪われ、カルメンたちはNASAの基地に孤立していた。そのとき、アザーズからのメッセージが、1週間だけ物理法則を回復させると告げる。彼らは、この間を利用して火星人スノーバードをロシアの火星人コロニーに届け、キャンプデービットに避難している大統領との面会に臨む。
しかし、そこで知ったのは、情報通信もエンジンも使えない状況では、近代が構築してきた社会構造を維持するのは不可能で、もはやアメリカですら国家の体をなさなくなっている事実だった。やむを得ず、カルメンたちは、カリフォルニアにあるという自給自足の農園を目指すことにする。しかし、そこも安住の地ではありえず、急速に暴力と混乱だけが地球を覆い尽くしていく・・・
アザーズは何を意図しているのか。カルメンたちの苦闘が続く。