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Exultant

  • 著者:スティーヴン・バクスター (Stephen Baxter)
  • 発行:2004/Del Rey $7.50(マスマーケット版)
  • 2005年12月読了時、本邦未訳
  • ボキャブラ度:★★★☆☆
     ※個人的に感じた英単語の難しさです。

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 Childrenシリーズ三部作の2巻目ですが、前巻Coalescentとのつながりはほとんどありません。1巻目とあまりに違う展開に驚きましたが、本書はなんと、ジーリークロニクルの新作なのです。

 ジーリーのファンのみなさん、お先に読んじゃったよーん(^o^)/ というわけで、今回のレビューはネタバレも最小限にしました。


 描かれる時代は2万5千年ころで、「真空ダイアグラム」の4000年後、第三次拡張期の後にあたります。本書のテーマは、ジーリーの存在よりも「人間の本性」に向けられています。戦争に特化した社会というのは、実は若者にとっては「順応しやすい」社会であることが示されます。一方、人類が遺伝的に持っている「集団に属する」という本能が攻撃性の本質であることが繰り返し語られます。おそらく、作者自身が9.11やイラク戦争以降の世界を考察した結果なのでしょう。


 しかし、何と言ってもお楽しみは最新の科学知識をネタにアイディアてんこ盛りのバクスター節の復活です。ジーリークロニクルのファンなら、絶対に読むべきだと断言しておきます。


 疑問なのは、1巻、2巻で全く色合いの違うこのシリーズを、バクスターは3巻目Transcendentでどうまとめるつもりなんでしょうか。なにやらウルトラCの匂いがします。さっそく注文せねば・・・

●ストーリー●
 2万5千年後、人類は銀河系の中心部に巣くうジーリーと、2万年に及ぶ終わりなき戦いを続けていた。人類は、政治・経済、生殖など、種族の全てのシステムを戦争遂行に最適化していた。前線の兵士達は要塞小惑星のタンクから大量に生まれ、兵士として育ち、戦って少年のまま死んでいく。「人類のために戦え。長い生を夢見るな。名も無き英雄となれ。」という「ドクトリン」を信じながら。


 19歳のピリウスは、超光速戦闘機グリーンシップのパイロットとして戦っていたが、所属編隊がジーリーの罠に落ちてしまう。ジーリーの戦闘機ナイトフライアーに追撃されたピリウスは、超光速飛行で時間を逆行する奇策で、人類として初めてナイトフライアーの捕獲に成功する。

 しかし、基地に帰還した彼を待っていたのは、タイムトラベル前のもう一人の自分自身と、命令無視の罪だった。19歳のピリウス(ブルー)と17歳のピリウス(レッド)は、共犯として軍法会議に掛けられる。地球から来た人民委員のナイリスの弁護により、二人は死刑を免れるが、ブルーは歩兵に降格のうえ前線の小惑星に送られ、一方レッドはナイリスとともに、地球へ向かうことになる。
 ナイリスは、戸惑うレッドに驚くべき計画を示す。捕獲したナイトフライアーを使い、ジーリーが巣食う銀河系核のブラックホール「チャンドラ」を破壊し、2万年にわたる戦争に決着を付けるというのだ。

 彼らは、2万歳の不死人ルル、絶滅したはずの敵対種族シルバー・ゴースト、群生化した人類が管理する火星の地下図書館などを巡り、「ドクトリン」に反して秘蔵されてきた禁断の技術を掘り起こしていく。やがて、ブラックホール・キャノン、未来積算コンピュータ、泡宇宙シールドなど、異様な武器が出来上がっていく。

 果たして人類はジーリーを撃破できるのか。ブラックホール・チャンドラに潜む秘密とは? 読もう、2000年代に蘇ったジーリークロニクルを!



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