Review/レビュー
このエントリーをはてなブックマークに追加

The Long Earth

  • 著者:テリー・プラチェット/スティーヴン・バクスター
         ( Terry Pratchett / Stephen Baxter )
  • 発行:Kindle版:2012 / $9.99
  • 2012年8月読了時、本邦未訳
  • ボキャブラ度:★★★☆☆
     ※個人的に感じた英単語の難しさです。

  →Amazonで見る  →Kindle版

 テリー・プラチェット+スティーヴン・バクスターという異色の組み合わせによる合作の新シリーズ。

 人類が、パラレルワールドの地球へと移動できる「ステップ能力」を偶然に手に入れ、無数に連なる並行地球(Long Earth)に拡散し変貌していく様を、一人の少年の目から描きます。
 バクスターは、Manifold三部作でも並行地球のアイディアを試していますが、今回は文字通り無数に拡大された並行地球が舞台です。プラチェットとバクスターは、SF世界に宇宙でも未来でもバーチャル世界でもない新しい第四のフロンティアを開拓してくれました。タイトル通り"長く"楽しめるシリーズが誕生したようです。


 Long Earthの執筆にあたって、プラチェットとバクスターはSFコンベンションでワークショップを開き、ファンたちと一緒にアイディアをふくらませたとのことです。これだけでもうシリーズ化やる気満々なのが分かります。

 ただ、プラチェットは若年性アルツハイマーであることを公表しています。科学関係のビデオサイト Ri Channel で プラチェットとバクスターがThe Long Earth を語るトークショーが見れますが、プラチェットは質問に対して的確な言葉が思いつかない様子で、心配です。病状の進行ぐあいによっては頓挫する可能性もありそうですが、そのときはぜひバクスター一人でも書き続けてほしいと思います。


 → 第2巻目・The Long War のレビューはこちら

●ストーリー●

  2015年、ジャガイモとわずかな半導体で作れる奇妙な装置の設計図が、ネット上にばらまかれた。面白半分で装置を組み立てスイッチを入れた子供たちは、意図せずにパラレルワールドの地球にテレポート移動(ステップ)してしまう。その日、人類の前に突然、無数に連なる並行地球への扉が開いたのだ。


 自らも並行地球にステップした少年ジョシュアは、他の子供たちの救出にあたる。しかし、警察の尋問におびえた彼は、装置なしで無意識にステップしてしまう。彼は、生まれつきのステッパーだったのだ。


 並行地球は「西」と「東」に無数に連なり、氷河期の世界や灼熱の地球など環境は少しずつ異なっていた。しかし、どの地球にも人類はいなかった。やがて、人類は犯罪者や移民とともに異世界へと広がっていく。なぜか鉄製品が次元を越えられないため機械類が使えず、植民は西部開拓に似た形で進んでいく。


 数年後、ジョシュアは数千数万の地球を旅した後、警察の追跡を逃れひっそりと暮らしていた。ある日彼は、謎の組織から接触を受ける。チベット人の生まれ変わりを自称するコンピュータとともに、飛行船で並行地球を調査してほしいというのだ。
 無限の並行地球の果てには何があるのか。そして、ステップ装置の設計図をばらまいたのは誰なのか。謎をはらんだまま、ジョシュアの冒険が始まった。

 



このエントリーをはてなブックマークに追加