Review/レビュー
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Up Jim River

  • 著者:マイケル・フリン
        ( Micheal Flynn )
  • 発行:2011 / $7.99 (TOR)
  • 2013年2月読了時、本邦未訳
  • ボキャブラ度:★★★★★
     ※個人的に感じた英単語の難しさです。

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 The January Dancer に続く銀河シリーズ第2巻。(シリーズの公式名がない!)

  設定は、前作のレビュー をご参照ください。また、紹介にあたって必要なため、やむをえず以下で前作のネタバレをしていますのでご了承を。


 前作の語り手だった「顔に傷のある男」の正体は、辺縁連盟エージェントのフューデァのなれの果てであり、ドノバンとは同一人物でした。そして、ハープ奏者は、女性エージェントのブリジット・バンが事件後に生んだ娘でした。つまり、前作の語りを通じて、20年の歳月がつながったという趣向です。

 今回は、失踪したブリジット・バンの行方を追って、2人が銀河のペルセウス腕の星々をめぐる旅が描かれます。

 今回、銀河旅行譚としての性格がより濃くなっていますが、はたと気が付いたのは「ガリバー旅行記」との類似性です。スウィフトは18世紀のイギリスを風刺してガリバー旅行記を書いたといわれますが、結果としては娯楽作品として受け入れられました。作者の妄想の細部を味わい、曖昧な部分を自分の想像で埋めていく。ガリバー同様、本シリーズも忘れていた「ゆっくり読むこと」の楽しさを思い出せてくれます。

 とはいえ、シリーズをつらぬく数々の謎も健在です。最後までつきあわないといけないようです。


PS: 第3巻 In The Lion's Mouth のレビューはこちら

●ストーリー●

 ハープ奏者・ミーラナは、ドノバン/フュードァの話を聞き終えたとき、彼に、母ブリジットが行方不明になっていることを告げる。彼女の真の目的は、母の捜索への協力を頼むことだったのだ。不承不承同行することにしたドノバンだが、踊る石事件の後遺症からか、フュードァを含め7つの人格が脳内でせめぎあう症状に苦しめられている。

 彼らはまず、同盟の首都・惑星ハイ・タラにあるハウンド本部に赴くが、本部はブリジットの操作を打ち切っていた。しかし、2人はブリジットの上司であった大物ハウンド・ゾーバの協力を取り付ける。

 手がかりは、母がミーラナに残したペンダントと読んでいた本のリストだけだ。2人は、ブリジットが失踪前に訪問した星をたどっていくことにする。逃げ出したい皇帝が支配する地震の惑星、女だけの惑星、機械文明を失った惑星・・・。やがて、ブリジットが何か重要な発見をし、それを一人で追っていたらしいことが分かってくる。そして、彼女は娘とドノバンにしか分からないよう、かすかな足跡を残してあったのだ。

 旅の途中で、ドノバンは、かつて共に戦ったグレイストロークとヒューに再会する。同時に、ドノバンらを追ってくる何者かの陰も見えてくる。


 ブリジットは何を発見し、どこに消えたのか。そして、7つの人格と格闘しながらドノバンはブリジットを見つけることができるのか。謎は銀河の最果て、未開の宙域に潜んでいる・・・

 



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