The Long War
テリー・プラチェットとスティーヴン・バクスターの合作、ロング・アース・シリーズの2巻目です。 →第1巻目・The Long Earth のレビューはこちら
第1巻目で、全人類は突然、パラレルワールドの地球・並行地球(Long Earth)に移動できる「ステップ能力」を獲得します。無人のフロンティアである並行地球に、人類の移住・拡散が始まります。
2巻目は、さまざまな亜人類や並行地球の多様性がさらに緻密さを増し、新たな謎と危機が描かれます。主人公ジョシュアと前回の登場人物に加え、次の時代を担う世代も登場しました。どうやらプラチェットとバクスターは、相当長期のシリーズ化を目論んでいるようです。
前作同様、ストーリーはガリバー旅行記を彷彿とさせる筆致で、並行地球の奇妙な生態を紹介しながら、ゆっくりと展開します。異世界の亜人類がみんな英語を話せたり、アメリカ独立と奴隷解放が再現されるなど英米白人中心の視点が鼻に付きますが、本シリーズは難しく考えず、ベテラン2人の描く異世界をまったりと堪能するのが正しい読み方だと思います。
なお、kindle版の値段が、1,2巻とも739円から194円に値下げになってます。薄利多売の対象なんでしょうか。 ・・と思ったら、1週間後、アメリカも日本も10ドルに上がっている。なんじゃこりゃ。
●ストーリー●
人類がステップ能力を手に入れてから25年後の2040年、人類の多くは並行地球のあちこちにコロニーを作り、元の世界(基準地球)を知らない世代も生まれていた。百万世界を旅し「キング・オブ・ステッパー」として伝説のヒーローとなった少年ジョシュアも、すでに37歳。妻子を持ちコロニー「Hell Knows Where」の市長になっていた。
平穏に暮らす彼の元に、かつて共に戦ったステッパーのサリーが助けを求めてくる。亜人類トロールが一部の人間に虐待されており、トロールの群れが姿を消しつつあるというのだ。トロールはステップ能力を持つテディベアのような亜人類で、穏やかで知能が低いように見えるため人間に使役されていたが、実は高度な集合的知性を持ち並行地球の安定を保つ役割を担っていた。
折しもコロニーの拠点都市・ワルハラは、基準地球のアメリカ政府に対して独立を宣言する。ジョシュアは妻の反対を押し切り、問題解決のため基準地球へと旅立つ。しかし、アメリカ政府は、ステップ能力を欠き移民を敵視する人々により牛耳られており、トロールを奴隷とみなしていた。さらに、コロニーの独立の動きを阻止するため、飛行船艦隊の建造が進められていた。
サリーは、政府の態度に業を煮やし、実力行使のため姿を消す。ジョシュアは彼女を追って探索の旅に出るが、その中で彼らは並行地球に存在する亜人類たちの異様な秘密を知ることになる。
しかし、そのとき基準地球には、人類がなすすべもない危機が迫っていた・・・。
●覚えたい単語●
Kindleのハイライト記録から、気になった単語の記録です。
drearyー物寂しい、vigilanteー自警団、fecundー肥沃な、cartilageー軟骨、
fellasー男・やつ、derogatoryー軽蔑的な、disparateー異種の