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OLD TWENTIETH

  • 著者:ジョー・ホールドマン
  • 発行:2006/Ace Books $7.99 U.S.(マスマーケット版)
  • 285ページ
  • 2007年4月読了時、本邦未訳
  • ボキャブラ度:★★★★☆
     ※個人的に感じた英単語の難しさです。

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  2006年ネビュラ賞を受賞した「カモフラージュ」に続く、ホールドマンの長編です。 

 一応恒星間移民船の中を舞台にしていることもあり、個人的には前作よりも楽しめました。「一応」というのは、重要な場面が「タイムマシン」と呼ばれるバーチャルリアリティ体験マシンの中で起きているからです。

 「カモフラージュ」が宇宙人を主人公にした探偵小説だとすると、本作は宇宙船の中のバーチャル世界という、二重構造の閉鎖世界を舞台にしたミステリーといえます。大仕掛けそのものよりも、謎解きとディテールで最後まで読ませてくれます。ただ、最後はやや唐突で、できればあと50ページ練り込んでほしかったと思います。
  しかし、プロローグの第一次大戦のガリポリの戦いからはじまって、第2次世界大戦、ベトナム戦争など、主人公がバーチャルの中で体験する「戦争による死」は異様なリアルさで、この辺はホールドマンの面目躍如といったところです。
  もしかしたら、また何か賞を取るかもしれませんね。

●ストーリー●

 21世紀、人間を病気と老化から解放する薬品が開発され、大金を支払える一部の人間だけが不死となる。怒った一般人による大暴動が発生するが、何者かが致死のウィルスを世界に撒き散らした結果、地球の人口のほとんどが死に絶え、2億人の不死人だけが生き残る。ジェイコブもその不死人第一世代の一人だった。

 大殺戮の後、やがて世界の秩序を回復した人類は、みずへび座ベータ星に向けて、800人を分乗した5隻の殖民恒星船を出発させる。片道1千年を要するが、人間が不死となった現在なら可能な旅と思われた。船には、長い旅路の娯楽として、20世紀を現実として体験できる「タイムマシン」と呼ばれるバーチャルリアリティー体験マシンが積み込まれており、ジェイコブは、その担当技術者として乗り組んでいた。

 順調な旅立ちと思われた矢先、タイムマシンでバーチャルの20世紀に入っていた女性が死亡する事件が起きる。調査のためマシンに入ったジェイコブは、突然太平洋戦争のタワラ攻略戦の只中に放り込まれ、瀕死の重傷を負いバーチャルから脱出不可能となる。そこで彼は、もう一人の自分と出会う。

 女性が死んだ原因は何か。マシンは意識を持ったのか?



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