学習指導要領の改訂 どうなの 本文へジャンプ

改訂キーワードその1

         活用する力(思考力・判断力・表現力等)とは


 学習指導要領の改訂の、文科省の中間報告案「教育課程部会におけるこれまでの審議の概要(検討素案)」の内容上の特徴を示すキーワードで最重要のひとつだと思われるのが、知識・技能を活用する力(思考力・判断力・表現力等)です。
 それを、検討素案から抜き出すとつぎのようになります。これを通して読むと、改訂の骨格がかなり見えてきます。


○改定学校教育法で、「思考力・判断力・表現力」を位置づけた(30条、49条、62条など)

○その規定は、学力の重要な要素は、@知識・技能A思考力・判断力・表現力等B学習意欲、であると明確に示す

○各種調査からすると、「思考力・判断力・表現力等を問う読解力や記述式の問題に課題がある」

○その要因のひとつは、国際比較で「読解力や記述式の問題の無答率が高いこと」

○子どもの現状分析から5つの課題があがる。その筆頭に「思考力・判断力・表現力等」

○「知識・技能の習得とこれらを活用する思考力・判断力・表現力等をいわば車の両輪として相互に関連させながら伸ばしていくことが求められる」

○「知識・技能を活用する学習活動については指導や成績評価が難しい」ため「十分に行われているとは言いがたい」。そのため教科での知識・技能の習得と総合の時間での「課題解決的な学習や探求活動との間に段階的なつながりが乏しくなり」「思考力・判断力・表現力等が十分に育成されていない」

○「思考力・判断力・表現力等はこれまで測定が困難な『見えない学力』と言われてきた。しかし、近時、OECDのPISA調査や」文科省の全国学テの「『活用』問題など、これらの力の測定方法が開発され普及し始めている」

○「思考力・判断力・表現力等をはぐくむため、教科において、「実験・観察、レポートの作成や論述といった知識・技能を活用する学習活動を行うためには、現在の小・中学校の必修教科の授業時数は十分ではない」

○思考力・判断力・表現力等「を活用する学習活動を充実させる必要があり、そのため授業時間数の確保が求められる」

○今回の改訂の「重要なポイント」は6項ある。そのひとつが「B思考力・判断力・表現力等の育成」

○国語だけでなく各教科で行うのであり、「学校教育活動全体で子どもたちの思考力・判断力・表現力等をはぐくむ」

○「知識・技能の活用など思考力・判断力・表現力等をはぐくむための学習活動について、次のような分類を試みた」

 @ 体験から感じとったことを表現する
  (例)・日常生活や体験的な学習活動の中で感じとったことを言葉や歌、絵、身体などを用いて表現する

 A 事実を正確に理解し伝達する
   (例)・身近な動植物の観察や地域の公共施設等の見学の結果を記述・報告する

 B 概念・法則・意図まどを解釈し、説明したり活用したりする
   (例)・需要・供給などの概念で価格の変動をとらえて生産活動や消費活動に生かす
     ・衣食住や健康・安全に関する知識を活用して自分の生活を管理する

 C 情報を分析・評価し、論述する
   (例)・学習や生活上の課題について、事柄を比較する、分類する、関連付けるなど考えるための
       技法を活用し、課題を整理する
     ・文章や資料を読んだ上で、自分の知識や経験に照らし合わせて、自分なりの考えをまとめて、
      A4・1枚(1000字程度)といった所与の条件のなかで表現する
     ・自然事象や社会的事象に関する様々な情報や意見をグラフや図表などから読み取ったり、
      これらを用いて分かりやすく表現したりする
     ・自国や他国の歴史・文化・社会などについて調べ、分析したことを論述する

 D 課題について、構想を立て実践し、評価・改善する
   (例)・理科の調査研究において、仮説を立てて、実験・観察を行い、その結果を整理し、
       考察やまとめ、表現したり、改善したりする
     ・芸術表現やものづくり等において、構想を練り、創作活動を行い、その結果を評価し、
      工夫・改善する

 E 互いの考えを伝え合い、自らの考えや集団の考えを発展させる
   (例)・予想や仮説の検証方法を考察する場面で、予想や仮説と検証方法を討論しながら
       考えを深めあう
     ・将来の予測に関する問題などにおいて、問答やディベートの形式を用いて議論を深め、
      より高次の解決策に至る経験をさせる

○「学習指導要領上、各教科の教育内容として、これらの記録、要約、説明、論述といった学習活動に取り組む必要があることを明示するべきと考える」

○「『重点指導事項例』には」「知識・技能のようには具体的には示すことはできないと考えられるが、思考力・判断力・表現力等にかかわるものについても例示し、各学校において、これらの力の育成にしっかりと取り組むようにすることが必要である」

○「活用する学習活動を行うためには、現在の小・中学校の必修教科の授業時数は十分ではない」

○「活用する学習活動を充実することができるよう、特定の必修教科の授業時数を確保する」。「確保に当たっては」、総合と選択の授業時数を見直し、教科と総合の円滑な接続を図るとともに、「年間授業時数の増加を検討する」

○教科書は、「活用する力をはぐくむように工夫され」るようにする

□「指導と評価の一体化により」、学校と教師は「結果責任も問われていることを前提としつつ」、評価の観点、考え方、規準、方法、時期等をさらに検討する  (編注・下記に参照ページ)

○「本年4月24日に全国学力学習状況調査が実施され」、「知識・技能の定着とこれらを活用する力の両面にわたる調査が行われた」。出題内容は、@知識 A活用、となっている。「引き続き継続して調査を行う必要がある」

○大学入試では、知識・技能とともに「思考力・判断力・表現力等についてもバランスよく問」うことが重要。「記述式など思考力・判断力・表現力等を問う出題の充実を求めたい」。中教審全体で、高校の教育課程、大学入試、学士課程教育を見通し、学力水準確保、生徒・学生が目標を持って学習に取り組むような改善・工夫を検討することが必要である


                                                (知里保 ver.1 9月4日)

活用力の到達目標化をめぐる提案と議論(6月25日)は →こちら

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「授業と学びの性格を変える学習指導要領の改訂」