『カンマを伴う分詞句について』(野島明 著)
第七章 開かれた世界から

第2節 《分詞構文》と主辞補辞……形容詞句・名詞句の場合


〔注7−9〕

   以下は既に[6−6], [6−28]でも紹介した文例。

The river lay in its crescent loop entirely without movement, an artifice of green-black liquescent marble.
〈その川は微動だにせず三日月の弧を描いており、溶解した暗緑色の大理石からなる造化であった。〉(CGEL, 14.9)(下線は引用者)
   文末の名詞句(下線部)については次のように述べられている。
我々はこの名詞句を副詞要素として機能している無動詞節[verbless clause]と見なすことができよう[could]。(ibid) ([6−6]参照)
   この名詞句については主辞の直後の位置への可動性に言及され、その位置へと移動した場合については次のような記述が示されている。ただし、文頭の位置への可動性については言及されることがない。同じ「無動詞節」である形容詞句の場合、文頭の位置への可動性はその「副詞的身分」を保証するものであった。
文末の名詞句が主辞に隣接して置かれていた[had been placed]とすれば、我々はそれを完全並置[full apposition]と見なしたことであろうに[would have regarded]。(ibid)
(「完全並置」と「部分並置[partial apposition]」については[7−12]参照)
   また、文の容認可能性に影響を及ぼすことなしに除去可能であるとしても、文頭の位置への可動性に問題があるような形容詞句については、その副詞的身分は確認しにくいことになる。副詞的身分を確認し得る例に「類似しているが、抑揚によっても句読点によっても分離されていない例」(CGEL, 10.16)として、次のような例が挙げられている。
He died a poor man. ['He was a poor man when he died.']
They married young.
He came in drunk.
They parted good friends. (以上四例、CGEL, 10.16)(下線は引用者)
   "They married young."は日本の学校英文法では次のように説明されることもある。
【参考】次の(1)におけるyoungのような語は、疑似補語あるいは疑似述詞(quasi-predicative)と呼ばれることがある。
(1) She married young.(安井稔『改訂版 英文法総覧』, 5.2.2)

(〔注7−9〕 了)

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