『カンマを伴う分詞句について』及び『現代英語力標準用例集』をめぐって(野島明)

 『カンマを伴う分詞句について』が取り組んだ課題については 問題の所在の頁参照。

これらの著作の特性と意義

一.PCとWebの結合によって実現

二.専門性と実用性を兼ね備えている

三.インターネット関連業界に幾ばくかの元気を

四.英語教育界の活性化

五.英語教育界の構造改革

六.学参(出版)業界の活性化

七.学生ばかりが試されていていいものか。教師も学校も予備校も試される

八.爛熟した日本文明に実った果実である


一.PCとWebの結合によって実現

 Webがなければ、用例収集には莫大な費用(数百万〜千数百万円)が、また用例を全訳した上での分類・整理には途方もない時間(10年以上)がかかったはずだ(つまり、この著作は実現しなかったはずだ。私にそんな金も根気も動機もない)。
 PCがなければ、(考える時間の他に)原稿を手で書き、推敲する手間だけでも、2〜3年は必要だったろう(つまり、この著作は実現しなかったはずだ。私は手で文字を書くという面倒が嫌いだ)。出来上がった原稿を清書するだけでも一ヶ月はかかっただろう(清書は容易に終わるものではないことは、やったことのある人は誰でも承知している。清書の途次、必ず修正や削除の必要が生じるからだ)。

 文献及び文例はウエッブで収集した。 (引用文献の頁参照)
 

  • 以下の文献は全て欧米のネット書店から購入した(CGELのみ国内のネット書店から)。必要な書物を探し求める手間の馬鹿にならないことは、捜し求めたことのある人は体験していることだ。必要な書物は往々にして見つからないということも。幸か不幸か、ネット書店でも見つからないものは何冊もあった。
  • Randolph Quirk, Sidney Greenbaum, Geoffrey Leech, Jan Svatrvik, A COMPREHENSIVE GRAMMAR OF ENGLISH LANGUAGE, LONGMAN, 1985(CGELと略記)

    E. KRUISINGA & P.A. ERADES, An English Grammar. Vol. I. Accidence and Syntax, First Part. Eighth Edition, P. Noordhoff N.V., Groningen, 1953.

    Otto Jespersen, Essentials of English Grammar, The University of Alabama Press, 1964

    Otto Jespersen, The Philosophy of Grammar, The University of Chicago Press, 1992

    R.W.Zandvoort, A HANDBOOK OF ENGLISH GRAMMAR, LONGMANS, 1965

    GEORGE O. CURME, Parts of Speech, VERBATIM, 1977

    GEORGE O. CURME, Syntax, VERBATIM, 1977

    H. W. Fowler, A Dictionary of Modern English Usage, OXFORD UNIVERSITY PRESS 1950

    H. W. Fowler and F. G. Fowler, The King's English, third edition, OXFORD UNIVERSITY PRESS, 1931

    Arnauld et Lancelot, Grammaire générale et raisonné, ÉDITIONS ALLIA, 1997

    Antoine Arnauld/ Pierre Nicole, La logique ou l'art de penser, Note et postface de Charles Jourdain, Gallimard, 1992

     
  • 一千数百例に及ぶ「カンマを伴う分詞句」の用例はオンライン新聞・雑誌などから収集した(具体的サイトについては引用文献の頁参照)。

  •  
  • 用例はカードを用いる代わりにHTML形式で分類・整理した。【現代英語力標準用例集】(野島明編集著作)という形で公開する。

  •  
  • 文献からの抜書きもカードを用いる代わりにHTML形式で分類・整理した。これについては公開はできない。

  •  
  • HTML形式による分類・整理は、本書の執筆に必要な用例・記述の検索と本書への引用に甚大な威力を発揮した(私の記憶力は実にお粗末な水準のものだ。端的に、記憶力が悪い)。

  • 二.専門性と実用性を兼ね備えている
     

  • 【課題】"Tom, horrified at what he had done, could at first say nothing."中の-ed分詞句は非制限的名詞修飾要素(「名詞句を叙述的に修飾する」要素)であると判定されるとしたら、「カンマを伴う分詞句」はどのような場合に《分詞構文》(副詞要素)であり、どのような場合に非制限的名詞修飾要素であるのか。また、《分詞構文》とは何か。)に一応の決着をつけた

  •  
  • 高校生・予備校生の学習の負担は大幅に軽減されることになるはずだ。「カンマを伴う分詞句」は統一的視点から整理されることになった。「同格[apposition]」(本書では「並置」という用語を充てている)についても同じである(Curmeの"Predicate Appositive"[述辞並置要素]には《分詞構文》と見なされる分詞句が含まれることを想起せよ)。

  •  
  • 文章体の英語に《分詞構文》は不可欠である。その不可欠な《分詞構文》を書く指導が出来るようになるはずである。「生徒は分詞構文を用いて書きたがるが、あまり分詞構文をむやみに使わないように指導したい。」(『教師のためのロイヤル英文法』p.145)といった記述もある。しかし、実状は、《分詞構文》という了解に基く限り、「カンマを伴う分詞句」を用いて英文を書く指導はしたくてもできないはずである。

  •  
  • 本書の成果を活用すれば、自動翻訳ソフトの翻訳精度は飛躍的に向上するはずだ。自動翻訳ソフト開発関係者の皆さんの頁参照。

  • 三.インターネット関連業界に幾ばくかの元気を
     

  • 元気があれば何でもできるのかもしれないが、その元気のないネット関連業界(私はインターネット評論家でもある)の人たちには是非気づいて欲しい。【現代英語力標準用例集】は紛れもなくWebの可能性を実証するものである。ネットでは猥褻画像を見ることもできるが(最近は質量ともに貧しくなっているし、それ以上に、接続すること自体に危険が伴うようになっている)、猥褻画像以外のものを体験することもできるのである。

  • 四.英語教育界の活性化
     

  • 英語教育の世界に多少の刺激は与えることができたかもしれない。「生徒は分詞構文を用いて書きたがるが、あまり分詞構文をむやみに使わないように指導したい。」(『教師のためのロイヤル英文法』p.145)といった記述は、怠惰の証であるとしか思えない学校英文法の世界の文例の貧困によるところが大きい。私のこうした言い条に疑義を抱く人は、是非、本書及び【現代英語力標準用例集】に目を通して欲しい。

  • 五.英語教育界の構造改革
     

  • 国家財政の破綻へと突き進んでいる日本国が財政破綻を逃れられるかどうかは、日本の新たな在り方に関わる考え方が広く受け入れられるかどうかにかかっているのと同じように、英文法の世界の構造改革は、カンマを伴う分詞句に関する新たな考え方が受け入れられるかどうか(理解されるかどうか)にかかっている。日本国の財政はやがて破綻するかもしれないように、私の考え方は受け入れられないという可能性はある。しかしながら、私の考え方を全面的に拒絶することは不可能である。

  • 六.学参(出版)業界の活性化
     

  • 私の考え方を全面的に拒絶することは不可能である。百歩譲っても、分詞句による非制限的名詞修飾は文法書に書き加えられる必要がある(「カンマを伴う分詞句に関わる問題の所在」の頁の「1.「分詞句による非制限的名詞修飾」に関する記述及び文例」参照)。そして、その瞬間に重大な問題が派生する。では、《分詞構文》とは何か。

  •  
  • 結果的に、文法関係書の多少の買い替え需要は生じることになる。

  • 七.学生ばかりが試されていていいものか。教師も学校も予備校も試される
     

  • 教師の場合については英語教師の皆さんの頁参照。

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  • 予備校や学校の場合についても、個々の教師の場合と同じことが言える。全てから逃げるという選択肢はない。本書の考え方を全く無視する、知らない振りをする、これとて選択だからである。本書の考え方がどのように受け入れられるか、それとも拒絶されるか、あるいは無視されるか、こうした点に最も関心を抱いているのは他ならぬ私だ。

  • 八.爛熟した日本文明に実った果実である
     

  • このような書物が生まれるには日本文明の爛熟(と私の経済的貧困)が不可欠であった。


  •    以上、冗談とも本気ともつかぬ感慨である。

    記 二千二年九月

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