/// 五山の送り火 ///  (01/08/08)

 京都の八月はとにかく暑い、そして今年は特に暑い。。
外を歩けば汗だくです。今が盛夏の京都です。
京都での夏の風物詩と云えば、祇園祭に五山送り火、祇園祭は
先月、31日の疫神社夏越祓で全ての神事、行事が終了しましたが、
この16日は五山の送り火です。

五山と形容されるように、東山如意ケ岳の大文字、万灯籠山の大黒天山妙法、
西賀茂船山の船形、大北山の左大文字、嵯峨鳥居本曼陀羅山の鳥居形の
五つの送り火を指します。

最初に始まったのは、東山如意ケ岳の大文字のようですが、その起源は
定かではないようで、一般には二つの説があります。
一つは如意ヶ嶽の登り口に浄土院、通称「大文字寺」がありますが、
かつて浄土院が火災に遭ったおり、本尊の阿弥陀如来が光明を放ちながら
如意ヶ嶽に飛び去ったと云い、後に疫病が流行した時に弘法大師が
この故事にあやかり、山麓に人を表す大の形の祭壇を設けて護摩修行を
もって疫病の退散を祈願したと伝わり、これが大文字の送り火へと
変化していったと云う説です。

もう一つは、足利義政が近江の陣で亡くなった息子の義尚の霊を慰めるため、
相国寺の横川景三和尚の勧めで始めたと云う説です。

今では二つの「大」に「妙法」、「船形」、「鳥居形」と灯されますが、
妙法からは仏教的色彩もみてとれます。船形は精霊を乗せる送り舟、
妙法が灯る松ヶ崎では題目踊りもおこなわれます。
京都では精霊のことを「お精霊さん」(おしょらいさん)と呼びますが、
そのお精霊さんを舟に乗せ、南無妙法蓮華経の題目を唱え、人形
(ひとかた)の送り火と共にお精霊さんを十万億土の彼方へ送り還す、
これが五山の送り火です。

今はあまり見かけなくなっていますが、昔は「迎え火」と云って、
鴨川の河原や家の門口に火を灯したと云います。八月の行事でも
紹介していますが、六道珍皇寺でおこなわれる「六道まいり」は
精霊をお迎えする行事で、こちらは迎え鐘を撞きます。
この「六道まいり」は数多くの露店が出て子供には楽しい夏休みの
ひとコマです。

送り火も周囲では観光行事化している側面も大きいですが、祇園祭と
共に京都の庶民が守り続けている夏の行事です。機会があるならば、
その準備風景、各送り火近くの寺院なども覗いてみて下さい。
観光行事ではない面を垣間見ることが出来ると思います。

 大文字の送り火が灯される大文字山では、銀閣寺の門前の浄土院、
通称”大文字寺”で護摩木の受付と、その護摩木の山上への担ぎ
上げが行なわれます。日が暮れると大文字山上の弘法大師堂において
お灯明が灯され、般若心経があげられます。そして午後8時に
なれば、お灯明を親火に移し、護摩木もろとも精霊の送り火として、
無病息災を祈り、一斉に火床に点火されます。

家庭ではその送り火を酒杯に写し、飲むと無病息災でいられると
伝わります。しかし都市化で市中の家から、直接に送り火を
見ることは難しくなってきています。
また送り火の日には「あらめ」をお供えし、ゆで汁を門口にまいて
お精霊さんを、お送りする「追い出しあらめ」の習わしもあります。

送り火の翌日は早朝から各山は登山者で賑わいます。
送り火の燃え炭を奉書紙でくるみ、水引でしばり厄よけとして
玄関先に吊るす風習があります。
京都の家庭では、この「けし炭」、または祇園祭りの厄よけ「ちまき」を
玄関先に吊るしているのを、見かけることが多いと思います。

(五山送り火)
・点火予定時刻
大文字 :午後8時   、東山如意ケ岳
妙法  :午後8時10分、万灯籠山、大黒天山
舟形  :午後8時15分、西賀茂船山
左大文字:午後8時15分、大北山
鳥居形 :午後8時20分、嵯峨仙翁寺山(万灯籠山・蔓荼羅山) 

・各送り火が良く見える場所
大文字 :鴨川(賀茂川)堤防の荒神橋〜御薗橋、出町柳付近。
     銀閣寺近くの今出川通、吉田山竹中稲荷神社境内、
     吉田山山頂公園。
     京都御苑の清和院御門(御門を借景に風情ある送りです。)

妙法  :妙は北山通りノートルダム女学院付近、宝ヶ池運動公園
     法は高野川堤防、高野橋付近
     そして宝ヶ池運動公園から北山通を東に所々で妙・法と
     見ることが出来ます。(近すぎて同時には見られません。) 
船形  :北山通りの北山橋から西側
左大文字:西大路通りの西院〜金閣寺付近

鳥居形 :松尾橋、広沢池、岩田山遊園地

・複数の送り火が見える場所
東山区将軍塚市公園展望台(妙法見えず)
北区船岡山公園頂上(鳥居見えず)
京都駅ビル空中経路(五山すべてが見えるらしい、入場には抽選による
          整理券が必要です。)

吉田山より確実に見えるのは四山、鳥居形は見えるような見えないような…
視力がよい人は見えるかも?
但し、四つを見ようとすると、山の中を少し移動しなければなりません。

 各送り火の相互間は相当の距離があるので、複数の送り火を見ようと
  すると、総じて幾つかの送り火は非常に小さく見えることになります。
  やはり、お薦めは的を絞って、大きく風情を味わうのが良いかと
  思います。

・おまけ
その他、送り火が見える施設
 ホリディ・イン京都
  五山全てが見えますが、ちょっと料金がお高い。
  (ビアーガーデン、鑑賞会プラン、15,000円、2003年)

 京都タワーホテル、075-361-3222
  ちょっと距離があって小さいですが、五山全てが
  見えます。
  (送り火鑑賞会、18,000円、2004年)

 京都国際ホテル、075-222-1111
  五山全てが見えます。
  (大文字晩餐会、15,000円、2004年)

 京都全日空ホテル、075-231-1155
  五山全てが見えます。
  (大文字鑑賞プラン、12,000〜20,000、2004年)

・大文字の大きさ
筆順で第一画:一文字 、火床数19箇所、80m
   第二画:北の流れ、火床数29箇所、160m
   第三画:南の流れ、火床数27箇所、120m

// 番外記録 //

 21世紀を迎えるにあたり、2000年の大晦日には、五山の送り火が灯されました。
大みそかの五山送り火 (04/20)

Produce By 京の住人 戻る