ダイビング業界が目指す将来への危惧

以下は個人的な感想にすぎません


スクーバダイビングの業界団体として「スクーバダイビング事業協同組合」があります。そこでは、成熟していない業界向けに、経営に関するガイドラインを作成してそれを提供し、また、ダイビングビジネスの“趣味的経営”から“近代的経営”への移行を推進する啓蒙活動を行っています。しかしながら、そのガイドラインを全体として読んでみると、ダイビングビジネスの一消費者としての立場(一般的なファンダイバー)として個人的に受けた印象は、結果的に業者が人身事故が発生したときに、いかに法的責任から逃れるか、というノウハウに比重が置かれて啓蒙活動を行っているというものです。人命軽視と無責任な経営を行っている業界構成者を排除して、早急に業界の正常化を行おうという意思は感じられず、本音として、とにかく現在どんな低レベルの経営をしているオーナーでも、業者にとっての経営上のリスクをダイバー(消費者)に転嫁する、という点を再優先にガイドラインが構成されているように感じられてしまいました。そしてダイビングビジネスの時の消費者(ファンダイバー・講習生など)の安全を図るという重要テーマは、前述のリスク回避(業者の自己責任の回避)の次に位置するという考えているように感じられました。
ファンダイビングの時も、ダイビングの講習の時も、まちがいなく死亡事故に至る人身事故が毎年続いているのが現状です。そんな時に、まず、「事故の時の業者の法的責任の回避」を最優先に、そしてその後に「事故を起こさないように注意」という意識では、ダイビング業界では、“業界として”そのビジネスの健全化を目指そうという意思がきわめて軽いものである、と、消費者の立場では言わねばなりません。今日1日の怠惰が、今日の人命の喪失に繋がるかもしれない、という現状は、笑って見過ごせるものではありません。実際に多くの人々が死んでいるのです。

それでは、これから「スクーバダイビング事業協同組合」の経営ガイダンス「レジャーダイビングビジネスガイドライン」の中身の中味を紹介していきます。


「レジャーダイビング ビジネス・ガイドライン」スクーバダイビング事業組合編

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全体の構成

第1部 総論

第2部 契約及び広告についてのガイドライン

第3部 安全対策に関するガイドライン

第4部 事業者の責任と補償について(補償制度加入に関するガイドライン)

*文字の強調は作者


「基盤整備についての考え方」から抜粋

前略
それでは新規需要を創出するにはどうすればよいのか。
これは日本におけるレジャーダイビング業界が根本的に有している「閉鎖性」の打破が必要である。これにはいろんな意味があるが、たとえばレジャーダイビングについての基本的な情報が外部に対してオープンになっていないという問題がある。

コメント:このことは私の本で以前から指摘している点である。このホームページでも指摘している。彼ら自身もこの点には気づいていることをこのガイドラインで言及している。この自覚を、たとえ業界内での文書であっても公表した事実は評価すべきである。

中略
そのような中で一般の消費者の関心に止まる情報といえば、たとえばライセンス(Cカード)は誰が発行しても構わなくて30種類以上あるという話であったり、

コメントライセンス(Cカード)という表現は、主として私企業が発行する講習修了認定証を、いかにも公的なものであるという印象を与えようとする意図が見られる。この業界のライセンス(資格)商法の問題についてはここをクリックして下さい。またこの後の記述で「ライセンス」という表現は不適切であると注意しているのにかかわらずここではいまだ認定証がライセンスだという意識が感じられます。

昨年平成6年2月のパラオの事故であったりするわけである。さらに、それに加えてむりやり高額な器材を買わされたとか、広告の値段と実際に必要な料金が違っていたということが、いわゆる口コミ等のパーソナル・コミュニケーションの水準で伝達するのである。これでは、ダイビングは最高に素晴らしいものかも知れないが業界は最低だというイメージを持たれても仕方がない。
中略
最低限の提供サービスの品質が保証され、安心してレジャーダイビングを楽しめる環境が整えば、自ずから需要は顕在化し業界は発展する。

コメント加えてむりやり高額な器材を買わされた」「広告の値段と実際に必要な料金が違っていた」ということは事実としてよくあることです。
「業界は最低だ」個人的に素晴らしいプロダイバーは数多くいるので、「業界全体が最低」ではありません。
最低限の提供サービスの品質が保証され、安心してレジャーダイビングを楽しめる環境が整えば」これは現在は最低限のサービスさえも提供されていないことを認めた、勇気ある文言だと思います。

レジャーダイビング・ビジネス・ガイドライン 第2部
「契約及び広告についてのガイドライン」から抜粋→長文ですのでリンク先ページへ移動して下さい。

この内容には非常に重要なものが含まれています。したがって情報の公開を目指す、という観点から大幅な抜粋を行いましたが、もしスクーバダイビング事業協同組合の関係者の方が、この抜粋が各種権利に抵触し、公開を拒否するというご意志がある場合には電子メールにてお知らせ下さい。基本的にご意志に沿うようにいたします。


「スクーバダイビング業界「標準ダイビングサービス業モデル約款」の解説 - モデル約款のよりよき理解と運用のために」から抜粋

「標準ダイビングサービス業モデル約款」について

前略
スクーバダイビング事業協同組合では、このたび「標準ダイビングサービス業モデル約款」を公式配布し、これに従ったサービス提供を業界全体に推進することになりました。
後略

コメント「標準ダイビングサービス業モデル約款」を公式配布」「業界全体に推進する」このことは恐ろしいことです。なぜなら、彼らが推進する「標準ダイビングサービス業モデル約款」とはファンダイバーに一方的に基本的人権の放棄を求める内容だからです。この「約款」に込められた意思こそ、業界が根本的に改善することのできない原因です。またこのホームページの最大のテーマでもあり、日本スポーツ法学会でも大きく問題視されている点です。
この極めて大きい問題に付いては以下の項目のページをご覧下さい。この約款の問題点の抜粋もあります。なお、このページへのリンクは目次のページからもできます。

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