教育再生会議の報告と学習指導要領の改訂との関係 (ver.3 知里保)
教育再生会議は2次報告で、授業時数10%増、徳育を新たな教科と位置づけ充実させる、をうちだしました。これらは学習指導要領の改訂なしには実施できないことです。
1,具体化についての再生会議・文科省の説明
再生会議に出向している文科省の担当者は、授業時数10%増は、学習指導要領のうえでどうなるのかについて、「決めていない」とし、具体化については「中教審にすべてまかせることになる」とのべています。
2次報告は、徳育について、「教材を充実させる」として、「多様な教科書と副教材をその機能に応じて使う」としていますが、 「多様」の意味は、現行の教科の教科書と同様、1冊ではない、という意味だと担当者は説明します。
「新たな教科」についてですが、これまでの教科が、①評価する、②対応する免許状がある、③検定教科書を使う、のにたいして、「新たな教科」は、54321の評価をしない(文章の評価はありうる)、それ以外は決まっていない、と説明します。
2,教育課程部会での審議
中教審・教育課程部会は、授業時数増については、5月24日の教育課程部会で1回議論しました(→こちら)。しかし、そこでは再生会議2次報告に直接踏み込んだ議論はありませんでした。
道徳教育については、6月25日の教育課程部会で議論しましたが、「徳育」に踏み込んでいません。
7月13日の教育課程部会で、第2議題「専門部会において特に検討すべき事項について」の議論のなかで、梶田部会長は、再生会議から「新しい教科」にと投げかけられている、と発言しました。事実を指摘するだけでした。
3,政府・文科省は
6月4日の経済財政諮問会議への提出資料に、伊吹文科大臣は、「土曜日の活用等による授業時数の10%増」を書きました。
翌5日の伊吹文科大臣の記者会見でのやりとりはつぎのとおりです。(文科省サイトから)
記者)
昨日の経済財政諮問会議で配られた大臣提出の資料に、土曜日の活用ということが入っているのですが、それは文部科学省として実施していこうということでよろしいのですか。
大臣)
土曜日の活用は教育再生会議が提言しています。予算編成作業の際に、教育再生会議が提言している土曜日の活用や、少人数による指導、特別支援教育等にも配慮しなければならないということを書きました。土曜日は今でも活用しているわけですから、それをどう使うかは色々工夫をしたいと思います。教育再生会議の第一次報告の四つの緊急対応も、教育三法案で、文部科学省は全て実現しています。ただ、その実現の仕方は文部科学省に任せてもらわなければならない。教育再生会議が考えておられる通りの方法ですと法律に齟齬が生じたり予算が無いという障害が色々出てくるわけですから。文部科学省は、教育再生会議の提案は全て実現していますから、今回の第二次報告についても、悪いことは書いていないので出来る限り実現したいと思いますが、実現方法はこちらに任せてもらわないといけませんね。
銭谷真美・文部科学事務次官は
「教育再生会議の第2次報告と、その内容が反映された、いわゆる『骨太の方針2007』(経済財政改革の基本方針2007)で、授業時数の増加が求められています。10%増という言い方がされています。また、徳育の教科化という方針も盛り込まれています。
非常に大きな課題が示されたと思います。それらをどのように実際の学習指導要領改訂に生かすかが大きな課題になります」
と日本教育新聞8月6・13日号のインタビューでのべています。
【ver.2 2007/8/17】
その後、8月末に安倍首相の突然の辞任、再生会議の行方不明、教育課程審議会での審議の大詰め、とあわただしく動きがあります。「関係」もかなり見えてきつつあります。 (9月17日)
授業時数10%増について、ほかページに独立して書きました。 → こちら 授業時数は、10%増か、「現状」維持か-「審議の概要(検討素案)」の表と裏 (9月24日)
徳育について、ほかのページに独立して書きました。 → こちら 10月5日教育課程部会道徳の時間の「徳育」化=「新たな枠組み」による「徳育」教科化のゆくえ 10月5日をもって教育課程部会が足踏みしている背景がなにかです。 (10月6日)
ページの先頭へ
トップページへ
「授業と学びの性格を変える学習指導要領の改訂」へ |
|