【コウタ・メール15】『移植は13日です』
平成15年3月3日


前回のコウタメールから一ヶ月近く経ってしまいました。
コウタにはバレンタインのチョコを「男の子はチョコの数が大切だからね」と、渡してきました。
コウタは絶好調に元気です。頭はつるつるですが、「この子の体の奥に本当に恐い病気が潜んでいるのだろうか。悪い夢ではないか。」と、今でもどうしても考えてしまいます。
1月に新しく移った病院がコウタは好きだったようです。
でも、手術のリミットから考えて、もう無菌室に入らなければならないのに空きがなく、コウタは再び転院を余儀なくされました。コウタが2つ目の病院に移ったのはたった一ヶ月前のことです。予測できなかったのでしょうか。コウタママは「困った。」としか言わず、耐えていました。でも、幼い子供にとって転院がどれほど心細いものかと考えると、私は「ひどい!信じられない!無責任だ!」と叫びたいです。
コウタの3つ目の病院はとても遠いところです。転院してすぐに無菌室に入らなければならないコウタのことを考えると、本当に胸が苦しくなります。

そんな思いで東名高速を飛ばし、コウタに会いに行って来ました。
移植の日は3月13日に早まりました。
素人目にもコウタはとても元気で、「寛解」状態なのが分かります。「状態の良いうちに早く移植しよう」というのが新しい病院でも方針のようです。
その前に「無菌室」に入ります。コウタは「ブキミ室」と呼んでいます。
私がいる間も、何度もママと無菌室で頑張る気持ちの準備をしていました。
「無菌室にはママもパパも入れないから電話で『もしもし』するのよ」
「でも、食べたいものを看護婦さんにお願いできるのよ」
「準無菌室に出てこられたら、ママとパパはマスクやエプロン、帽子をかぶってコウタに会えるの」

無菌室に入ると、3日間、放射線を浴びて完全に自分の白血球を殺します。体力の減退はもちろん、吐き気や嘔吐などの苦しみとひとりで耐えなければなりません。ビデオによると、成人男子でもグッタリしていました。
でも、明るく振舞っているコウタは、何も知らないのではなく、分からないわけでもありません。もう、随分辛い治療を乗り越えてきたので、病気の深刻さも、治療の辛さも、孤独も、全部理解しています。

コウタは「退院したら」と話すようになりました。
退院したら、くじらを間近で見てみたい。
退院したら、コンビ二でバーコードのレジを打ってみたい。(なんでだろう?)
退院したら、、、エリちゃん、ボク、学校いかれるよね!(もちろん!)
退院したら、この前までいた病院のM先生に会いに行きたい。会いたいな〜M先生。でも、M先生はボクに他の病院へ行きなさいって言ったから、いまはちょっとだけ嫌い。(コウタはM先生のこと大好きだったのね)

病院が遠いので、コウタママは歩いて5分くらいのアパートを病院から借りました。
コウタは何もない押入れが気に入って「ドラえもんだ〜」とはしゃいでいました。
夕方に一時退院してここに一泊し、翌朝一番で歯を治療してもらってから家に帰りました。
「歯を抜くの、恐いよ〜」ってコウタは寝る前にぐずりました。
「みんな大人になる前に歯を抜くのよ。エリチャンだって、ママもパパも、みんな抜いたのだから大丈夫。」もっと辛い治療をしている子供に、私はなんて情けない励まししか出来ないのだろうと心で思いました。
母親の話によると、大きい総合病院では白血病の検査や治療で全身麻酔をする時に、歯科医が歯も抜いてくれるそうです。(コウタの2番目の病院は歯科がありませんでした)

いよいよ、13日です。皆さんの愛のパワーを、応援波動を、祈りを、どうかコウタに注いで下さい。
きっと成功すると、信じています。