【コウタ・メール2】 『告知』
平成14年11月22日

「ボクは もう いっぱい わるいヤツと たたっかって やっつけたのに まだ なおらないの?」
「そうだね。いっぱいやっつけたけれど、悪の血液軍団をつくる悪い工場が、どんどん悪いヤツを製造しているから、その工場をやっつけないとダメなんだよ。」
「じゃあ、わるい こうじょうを やっつけないと、、、ボクは 死ぬの?」
「、、、そうなんだ。だから、大事なコウタが死なないように、パパとママと先生とみんなで悪い工場をやっつけよう。」

白血病と闘う6歳の男の子とその父親の、、、、これ以上の告知があるでしょうか。

昨日、コウタのお見舞いに行ってきました。彼の治療は第二段階に進み、まだドナーは見つかっていませんが、移植を受け入れられる体になるように、もっと強い薬を使っていくそうです。2・3日前まで、病院から叱られるほど動き回っていたコウタなのに、ぐったりとして、今日は何をしてもすぐ泣いて、ママを困らせていました。骨髄移植は、もちろんドナーに大変な負担をかけますが、患者はその何倍も長期に渡る苦しい治療をして移植に望む、という現実を目の当たりにしました。

父親とたくさん話し合いました。正直に言って、移植はドナーにもリスクが大きいので、適合者が見つかったあとのことを考えると、近親者以外の場合は骨髄バンクを通じてドナーを探す方法が最善であると、父親は判断しています。従って、今回、私の友人の友人である新聞記者さんからのお申し出を有り難くお受けし、記事になるかは分かりませんが、取材を父親へして頂くようお願いすることにしました。

また、私の父の所属しているポートヒル・ライオンズクラブの皆様のご支援により、ライオンズの会員向け機関誌に骨髄バンクドナー登録推進活動の記事として、「ライオンズクラブのメンバーの親族の小さな命を救うために!」と、コウタの写真を掲載して頂くことにしました。
コウタの社会復帰を考えると病気を公にしたくない、でも、ひとりでも多くのドナー登録が必要、、、両親の苦渋の選択を理解して参りたいと思います。

今週火曜日の読売新聞に、骨髄バンクのドナー登録が予定より8000人少なくて、1億7000万円の補助金を日赤が国に返金した記事が載りました。骨髄バンクは資金不足で火の車なのに、本当に悲しいニュースです。バンクの普及啓発不足、日赤とバンクの連携・信頼不足、国民の無関心、、、ここには様々な問題が浮き上がっています。私は、木曜日に届いた小泉総理からのメルマガ「らいおん・はーと」の『ご意見箱』に、家族の声を思わず投書しました。意見を整理して総理と厚生労働省に届けますという、返事をメールで頂きました(ちょっと事務的でした)。

私がお声をかけさせて頂いた中には、年齢的、精神的、身体的、体力的、様々な理由でドナー登録が不可能な方がいらっしゃいます。でも、皆さんからの温かいお気持ちがとても励みになっています。私自身もコウタが発病するまでは、骨髄移植はまったく知らない世界の出来事でした。

病院には、コウタのように幼いのに死と向き合って、病気と闘っている子供たちがたくさんいました。コウタのためはもちろん、あの子たちみんなのためにも、やはり広くドナー登録をお願いし続けて参りたいと決心しました。皆さん、長い長いメールを最後まで読んで下さっていつもありがとうございます。

黒川英里