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みかきもりの気ままに小倉百人一首

2026/04/01 今を春べと

全日本かるた協会機関誌「かるた展望」第82号の広告や書籍紹介記事で知り、
「今を春べと」(著者 奥田亜希子、発行 双葉社)を読みました。
主人公の皆川希海は、幼稚園の子どもと参加したかるた教室で、札をきれいに
払った時のその一瞬の感覚が忘れられずかるたにはまります。
著者の奥田亜希子さんは2025年3月に競技かるたD級初段に昇級されており、
自身の経験も踏まえて、競技かるたに魅了されたその感覚を描いていると
感じました。

No. 作者 コメント
王仁 難波津に咲くやこの花冬ごもり
今を春べと咲くやこの花
[みかきもり]
<単行本「今を春べと」の帯より>
妻だから。母親だから。自分の<好き> 手放しますか?

子どもと一緒に参加したかるた教室で、希海は初めてかるたの札を払う。
空を切り裂くように飛んだ札。指先に満ちた新鮮なエネルギー。
---もうすぐ四十歳になる。暗記力に自信がない。子どもがいるから。
気づけば言い訳ばかりして、競技かるたを始めることにためらっている自分がいる。
夫は、仕事と趣味の優先順位をつけようとする。けれど……。
いまをはるべと さくやこのはな
今が、今こそが自分が咲く瞬間。私が<いま>を<はる>にするのだ。

主人公の皆川希海の名前は百人一首「筑波嶺の」の歌の「男女川(みなのがわ)」からきている
ように感じました。希海は偶然出会ったかるたに想いが積もりますが、夫婦の間の小さな不満が
積もるというのもあると思います。
#靴下は裏返して洗濯機に入れるのではと思いましたが。。。

希海は耳が良く、小学校の6年間ピアノを習っていたり、小中学生時代は図工・美術・技術家庭科
を除いて最上の評価で勉強は嫌いでなかったり、ちょっと負けず嫌いなところもあったり、
競技かるたが強くなりそうなスペックですね(笑)

「難波津に」の歌は競技かるたでは百人一首の前に読まれる序歌で、さあ始まるぞと集中する
瞬間になります。競技をしていて「百花の魁」の梅のつぼみがぱ~っと花開くイメージを感じる
ことはないですが、「今こそが自分が咲く瞬間」と集中力が高まっている空気は感じます。

13陽成院 筑波嶺の峰より落つるみなの川
恋ぞつもりて淵となりぬる

全日本かるた協会機関誌「かるた展望」第82号の小倉百人一首講演会「あまつかぜは何色?」
-読みや取り札に感じる色とその獲得の可能性- (講師 木原白桃さん)の記事が興味深いです。
これはJSEC2024「競技かるた選手を対象にした共感覚の後天的獲得可能性の検討」で文部科学大臣賞を
受賞された発表に基づく講演内容となっています。
大阪暁会の入会者や入会希望の方と話すと、ピアノなどの楽器経験のある人がけっこう多いと感じます。
記事を読み、もしかしたらそうしたことも関係あるのかもなど思いました。
競技かるたは総合力だとよく話しますが、集中&リラックスした状態で感覚器官・脳・身体を使うこと
での作用なのかなと推察します。

■参考文献
・百人一首 全訳注       有吉 保   (講談社学術文庫)

■参考URL
・Wikipedia 奥田亜希子双葉社/今を春べと(奥田亜希子)JSEC2024 表彰研究作品STUDIO 407/なぜ音に『色』や『形』が浮かぶのか? 進化から授かった力、『感覚の共有文法』を考える
 ~共感覚、クロスモーダル対応、そして感覚メタファー~

みかきもりの本箱/かるたとテクノロジー ・7. 男時・女時(おどき・めどき)15. 難波津に咲くやこの花冬ごもり みかきもりの気ままに小倉百人一首 ・65. 揺れる想い

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