第6節 何が曖昧なのか
その一 「簡潔さ」と「曖昧さ」
〔注7−56〕
以下に引用するのは、「文字表現資料[written material]と即興的音声表現資料[impromptu spoken material]をほぼ等量調査した英語用法調査資料集成[the Survey of English Usage corpus]」(CGEL, 8.13)の資料である。
これらの数字に見られる幾つかの顕著な特徴には注意を向ける価値がある。 (i)A要素[adverbial element]の大多数が表現されているのは二つの形態においてである。一つは前置詞句であり、もう一つはwell, still, of courseといった(短いのが普通である)閉じた部類の語句である。 (ii)音声表現資料と文字表現資料は、A要素の総出現数においても、実現形の分布においても、大して相違しない。 (iii)しかし、音声表現[speech]ではA[副詞的要素]としての名詞句の割合が大きい(1:1.5)一方で、文字表現資料[written material]では前置詞句(1:1.3)と非定動詞節/無動詞節(1:2.75)の割合が大きい。最後の点は、数の上で最も目立つ亜類型[subtype]が以下に見られるような-ing節であることを考えれば、驚くほどのことではない。音声表現の中で出現する「非定動詞節・無動詞節」十二例(上記の表の数字)の内、《分詞構文》と見なされる類の分詞句・形容詞句などがどれくらい含まれているのかは不明であるが、音声表現において「非定動詞節・無動詞節」が決して稀ではないことだけは確認できる。音声表現[speech]と文字表現[writing] における「非定動詞節・無動詞節」出現の比率は、12:33即ち1:2.75という値なのである。 |