アパマンハム「HFへの挑戦」~ノイズ対策:ノイズキャンセラーの自作(設計編)
2017.08.21
ループアンテナの設置後、7MHz帯のノイズ対策をしようと、雑音源を探しましたが、残念ながら特定ができませんでした。これが都市雑音の性格ではないでしょうか。

そこで、世の中で行われているノイズ対策を調べたところ、ノイズキャンセラーが浮上してきました。メインアンテナと相関がある比較的大きなレベルのノイズをノイズアンテナから受信すれば、バックグランドノイズを低減できる仕組みです。ポピュラーな製品を調べてみると、ANC_4とMFJ-1026が良く紹介されていました。製品マニュアルも公開されていましたので、回路図もありました。よくできた製品のようですので特徴をまとめました。ただ、海外製で、比較的高価な点が問題でしたので、自作に挑戦しました。

ANC_4の特徴:
・シンプルな操作で好感が持てる
・位相調整が周波数にかなり依存してしまう
・ノイズキャンセラー通過に伴うゲインロス6dBが発生してしまう
・ランプによる保護回路のロスがある
・0.5MHz~80MHz信号が扱える
・最大許容出力は、250Wである
・キャリア検出回路を内蔵し、リレーの遅延時間切り替えができる
・中波放送局対策のノッチ回路が用意されている
・比較的高価である

MFJ-1026の特徴:
・ロッドアンテナが付属しているが、環境によっては使用できない
・位相調整が周波数にかなり依存してしまう
・ランプによる保護回路のロスがある
・プリアンプを内蔵して、ゲインを調整できる
・1.8MHz~30MHzの信号を扱える
・最大許容出力は、100Wである
・PTT入力付のキャリア検出回路を内蔵し、リレーの遅延時間切り替えができる
・中波放送局対策のHPFを内蔵している
・比較的高価である

自作では、JA1DIさんの回路が見つかりました。シンプルな回路に好感が持てました。

以上より、FT-991Mとの組み合わせを想定した、次のようなターゲット仕様を決めました。
・ゲイン・位相・極性切替のみでシンプルな操作
・周波数に依存しにくい広範囲な移相範囲(±90°)、移相回路ゲインの変動が少ない移相回路
・ノイズアンプのゲインは、最大ゲイン・最少ゲインを設定できる
・プリアンプ機能を内蔵し、ゲイン調整ができる
・ランプを使わないロスが少ない保護回路
・1.8MHz~54MHz信号が扱える
・最大許容出力は、50Wである(切替リレーに依存)
・キャリア検出回路を内蔵し、FT-991のPTTに対応する入出力を備える
・放送局対策として、1.8MHz~54MHzのBPFを内蔵する
・できるだけ市販(安価)の部品で構成する
・コンパクトなサイズにできる

こだわった採用部品
・2 WAY-90°広帯域スプリッター(Mini-Circuits JSPQ-80、できればJSPQ-65)
・50Ω信号系に対応できる高gmかつゲイン調整が可能なDUAL-GATE GaAs MESFET(3SK206)
・保護回路に0.1A型PTC(3.5Ω typ.常温)と小接合容量(0.9pF typ.)ダイオード(1SS226)
・広範囲のキャリア検出が可能なログアンプ(AD8307)
・タカチ YM-150(W150xH40xD100)に地震対策ゲルシートの足(FT-991上に安定設置可能)

下記が全体の回路図になります。ノイズアンテナの入力部には、メインアンテナとの干渉を低減するため、コモンモードフィルターFL1を入れています。表面実装の部品を集めて、3個の内部モジュール化を行い、コンパクト化を図っています。近くに、中波、FM、地デジの放送局があるため、BPFを内蔵させました。

       HF帯 ノイズキャンセラー回路図(HF Noise Canceller Schematics)
アパマンハム「HFへの挑戦」~ループアンテナの設置
2017.08.20
さて、次にループアンテナをできるだけ冷蔵庫から離してベランダに設置しました。その結果、冷蔵庫からの輻射の影響はほとんどなくなりましたが、外部(マンションの他室を含む)雑音が大半となりました。


FT-991MのSメーター読みでAMP1設定でS5~S7のノイズが観測され、FT-991Mにウォーターフォール表示機能があるにも係わらず、信号がノイズに埋もれ、交信信号が識別が難しい状態になります。また、受信してもノイズが非常に大きな状態になります。

7MHz帯スペクトルのウォーターフォール表示例です。全体にノイズフロアーが高く、黄色い部分がレベルが高いノイズです。
アパマンハム「HFへの挑戦」~都市雑音の洗礼
2017.08.19
今回は、FT-991M+FC-40の組み合わせで、設置前ループアンテナの受信評価を行いました。ベランダに簡易設置して、チューニングが取れるかを確認しました。1.8MHz帯、3.5MHz帯、7MHz帯、18MHz帯、21MHz帯、24MHz帯、29MHz帯、50MHz帯で問題なくチューニングが取れました。ここまでは、ルンルンでしたが、いざ受信すると、都市雑音の洗礼が待っていました。

特にひどいのは、7MHz帯で、まず短波ラジオ(ELPA ER-C57WR)で犯人を捜し、電源OFFしてSメーターで相関を確認しました。主犯格はVDSLモデムと冷蔵庫でした。AMP1設定でS9~S9+10dBと雑音の嵐状態でした。ループアンテナのゲインが高いようで、FT-991MのSメーター読みで入力電圧がVDSLモデムから約100uV、冷蔵庫から約300uVと散々です。

まず、VDSLモデムからのノイズ対策です。VDSLモデムは、ITU-T G.993.2(通称VDSL2)規格のモデムでした。ITUの規格書を読むと、アマチュア無線への妨害対策のため、ノッチ対策が推奨されていましたが、VDSLモデムラインに-10dB観測プローブを自作して観測したところ、ノッチ対策はされておらず、30MHzまでのアマチュア無線周波数帯が堂々と使用されていました。VDSLモデムラインは、電話線(ツイスト線)で、対称性が保たれていれば、障害はかなり抑制されますが、やはり漏れはあるようです。

社団法人「情報通信技術委員会」が業界として定めた標準規格「メタリック加入者伝送システムのスペクトル管理」によれば、ノッチ対策がされることになっているにも関わらず、ベストエフォートの伝送帯域が約10%ダウンするため、伝送帯域優先で、使用されているようです。この点をNTT西に書面で改善をお願いしました。サポートの方が現場確認に来ていただき、その書面をお渡ししました。何週間たった後、自室のみのノッチ対策をマンション内の集合装置に設定変更してくれました。他室は難しいとのことでした。

下記は、対策前の-10dB観測プローブによるモデムラインの7MHz帯のスペクトルです。


次は、対策後のモデムラインの7MHz帯のスペクトルで、約24dBの減衰がありました。合わせて、インターンネット接続機器(VDSLモデム・ルーター・WiFiアクセスポイント)のACアダプターにフェライトコア(FT114-43)に13ターンの対策を行い、電話線の出口直前にも同様にフェライトコアに13ターンして信号漏れ対策を行った結果、FT-991MのノイズレベルがS1~S3程度まで改善し、普通のノイズレベルにできました。


次は、冷蔵庫です。輻射ノイズは、微弱無線局のレベルですが、メーカーのPanasonicにクレームしても、製品として問題ないので(法令に触れているわけでないとの暗黙の回答)、対策はできないとのことでした。後日、「静岡県西部ハムの祭典」に出展していた総務省東海総合通信局の電波監視車両の担当者に相談しましたが、自分でアースなど対策するしかないとのことでした。そこで、ループアンテナの設置後、必要に応じて、対策をすることにしました。冷蔵庫ドアの押ボタン部分からの輻射が大きかったため、電気的に浮いていたドア部分を本体アースに落とすためのビス・アース平織線を用意しておきました。

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