日常生活支援研修


【頸髄損傷~交感神経】
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A.交感神経 nn. sympathici, sympathetic nerves, sympathische Nerven

交感神経の主要部は、脊柱の両側に沿って下行する交感神経幹 truncus sympathicus, sympathetic Grenzstrang である。

その経過中に20余対の(交感神経)幹神経節 ganglia trunci sympathici, sympathetic chain ganglia をもち、これからでる交感神経枝の末梢は主に近くの血管壁に沿って走り、自律神経叢 plexus autonomici を(叢=そう ぞう くさむら むら・がる)作りながら副交感神経の分枝をも受けて支配器官にむかっている(図6-63.91)。

なお交感神経からの交通枝 rami communicantes はすでに記したごとく、脊髄神経と吻合(ふんごう=血管や管状構造の臓器、神経がそれぞれ互いに連絡していること。)していることも理解してほしい(この交通を介して脊髄神経中に混入した自立線維は皮膚の立毛筋や汗腺の支配を行なう)。

交感神経系はその神経幹の部位によって頭頸部、胸腹部および骨盤部に分ける。

神経6-91図神経6-92図①頭、頸部 pars cephalica et cervicalis

交感神経幹は側頸部深部を走り、上方は内頸動脈神経叢 plexus caroticus internal plexus となり動脈とともに頭蓋腔内に入る。下方は胸部の交感神経幹に続く。頸部交感神経幹は上、中、下頸神経節 ganglion cervicale superius・medium・inferius, superior・middle・inferiorcervical ganglion をもっている。

下頸神経はしばしば第一胸神経節と癒合して頸胸神経節(星状神経節)ganglion racicum(stellatum),stellate ganglion とよばれる。

これら頸神経節からでる末梢枝は総頸動脈、内外頸動脈、さらに鎖骨下動脈壁などに沿って、眼球、涙腺、唾液腺、甲状腺、咽頭、喉頭などに分布し、心臓には3対の心臓神経 nn,cardiaci を与えている。これらの心臓神経は迷走神経からの上下心臓枝をも合わせて、上行大動脈周辺で心臓神経叢 plexus cardiacus,cardiac plexus を作る。


②胸、腹部 pars thoracica, et abdominalis

胸部脊柱の両側を下行する神経幹は、その経過中に10から12対の胸神経節 ganglia thoracica ganglion をもつ。末梢枝は気管、肺、食道、心臓、大動脈に分布するほかに、長い大、小内臓神経 n,splanchnicus major et minor, greater splanchnic nerve を分岐している。

大、小内臓神経は横隔膜を貫いて腹腔内に入り、腹腔動脈周辺で強大な腹腔神経叢 plexus celiacus,or solar plexus を作っている。この神経叢は下行してくる迷走神経(副交感繊維)の分枝をも受け、ここから出る枝は血管(動脈)壁にそって上、下腸間膜動脈神経叢、腎神経叢、肝神経叢、胃神経叢、膵神経叢、脾神経叢などを形成して腎、腎上体、肝臓、胃、腸管、膵臓、脾臓など腹腔内諸器官に分布する。

腹腔神経叢は腹腔動脈、さらにすぐにその下側からでる上腸間膜動脈の基部周辺を囲む極めて強大なもので、大きな腹腔神経節 ganglia celiaca, celiac ganglia をもち、全体の形から太陽神経叢plexus solaris,solar plexusともよばれる。

腹部交感神経幹も4~5対の腰神経節 ganglia lumbalia,lumbar ganglia をもち、腹大動脈とそ血管枝の壁に多くの枝をだしている(腹大動脈神経叢 plexus aorticus abdominalis)。


③骨盤部 pars pelvina

神経幹は仙骨の前面を走り4~5対の仙骨神経節 ganglia sacralia, ganglia をもつ。下端では両側の交感神経幹は合流して、尾骨前面に不対神経節 ganglion impar を作っている。仙骨神経と交通枝による連絡をもつほかに、その末梢枝は骨盤内蔵神経 nn,splanch-pelvini (勃起神経nn,erigentes,副交感性)とともに直腸、膀胱の周辺で強大な骨盤神経叢 plexus plevic plexus を作って、骨盤内蔵および生殖器などに分布している。


関連痛 referred pain

自律神経線維には遠心性線維と共に、その支配器官や血管からの求心性線維も混在する。この求心性、すなわち知覚線維は機能的には自律神経系とは別に、脳・脊髄神経系線維に所属するものである。とくに痛覚を司る求心性線維は脊髄後角で皮膚痛覚に関与するニューロンと連絡するので、ある臓器の痛覚は脊髄の同レベルによって支配される皮膚領域に痛みを惹起することになる。

このような内臓器官の痛覚によって生ずる皮膚痛覚を関連痛と呼び、臨床診断には大いに役立つことになる。たとえば胆嚢や胃の疾患、狭心症あるいは心筋梗塞などの際に、肩甲部に疼痛(肩痛 shoulder pain)が放散する。

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