副交感神経は独立した形態をもたずに、その線維は主に動眼神経、顔面神経、舌咽神経および迷走神経内に混在して走り、脊髄神経では、第2~4仙骨神経中に混在している。
これらの線維の起始部は、中脳、延髄、および仙髄の灰白質細胞であり、ここから出発する線維は節前線維 fibrae pregang-preganglionic fibers として走り、支配器官に到達する経過中に所属神経節を経由して節後線維 fibrae postganglionares, postganglionic fibers となり支配器官に分布する。(図)
節前線維は動眼神経とともに眼窩内に入ってから、分かれて毛様体神経節 ganglion ciliare を経由して、節後線維は毛様体筋と瞳孔括約筋に分布する。
副交感線維は2方向に分かれる。
a)節前線維は顔面神経とは早くから分かれて(顔面神経管の初部)大錐(すい)体神経となり、翼口蓋神経節 ganglion pterygopalatinum を経て、節後線維は涙腺にむかう。
b)節前線維は顔面神経管の終部近くで顔面神経と分かれ、鼓索神経となって鼓室内を貫通した?に舌神経に加わり、さらに分かれて顎下神経節 ganglion submandibulare を経て、節後線維は顎下腺と舌下線に分布する。
節前線維は舌咽神経とは頭蓋底(下神経節)で分かれ、小錐体神経として耳神経節 ganglion oticum に入った後に、節後線維は耳下腺にむかう。
迷走神経のほとんどは副交感性線維である。咽頭以下の頸・胸・腹の内蔵に分布する(骨盤内蔵には下記の仙骨神経に混走する線維が分布する)。迷走神経の分枝は、すべて各内臓に分布する直前で、その分布器官内あるいは器官近くで所属神経節を経由して節後線維となっている。
仙髄の側柱(角)細胞からの線維が前根を通って第2~4仙骨神経内に入り、前仙骨孔を出てから、仙骨神経と分かれて骨盤内蔵神経 nn.splanchnici pelvini となり骨盤内蔵(下行およびS状結腸、直腸、膀胱、生殖器など)に分布する。
以前には上記(1)~(5)のみが副交感神経のすべてと解されていたが、呉(1883~1940)の研究によって全脊髄中の後柱基底部の近くの細胞からも副交感神経線維は出発しており、後根から脊髄神経内に混入して全身皮膚(立毛筋、汗)や血管壁に分布するとの説が提唱されている(図6-63)。
以上、自律神経(交感、副交感神経)の機能の拮抗作用その他については、生理学、薬理学書について補足されたい。
副交感神経分布域(図6-63参照)1)動眼神経・・・・毛様体筋 瞳孔括約筋
2)顔面神経・・・・涙腺、鼻腺、口蓋腺、顎下腺、舌下腺
3)舌咽神経・・・・耳下腺
4)迷走神経・・・・頸、胸、腹部内蔵
5)仙骨神経(骨盤内蔵神経)・・・・下行結腸~直腸、膀胱、生殖器
6)脊髄副交感神経(呉)・・・・皮膚(立毛筋、汗腺)