成虫の飼育 国内外のクワガタについての一般的な飼育方法を解説しているクワガタ飼育マニュアルです。
INDEX
用意するもの ケース、マット、餌などクワガタ飼育に必要な物について。
飼育ケースのセット例 各サイズの飼育ケースでのセット例。水苔マットも。
メンテナンス 四季に応じた飼育のポイント。冬眠のさせ方。
ペアリング 種親の選び方・遺伝・相性問題・実際のペアリングの方法など。
産卵ケースのセット 実際の産卵ケースのセット方法。産卵木について。
幼虫の割りだし 産卵の確認、産卵木を割って幼虫を採り出す方法について。
クワガタのよくある事故 ♀♂殺し、大アゴ挟み事故などのクワガタの事故について。

用意するもの
飼育ケース

飼育ケースはクワガタ飼育に必須ですね!脱走されないようにしっかりしたケースを選びましょう。写真左のケースはスーパーやディスカウントでも手に入る一般的なケースです。左から、大ケース、中ケース、小ケース、ミニケース。
メスやコクワガタの単独飼育はミニで十分。オオクワのオスには小ケースが良いでしょう。複数飼育やブリードする時は中ケース以上が適しています。ミニケースは200円位、中ケースは600円位です。しかし、このタイプのケースはロックが甘い製品が多く、しばしばクワガタが脱走します。
最近、クワガタ、カブトムシ飼育専用の「コバエシャッター」というケースが販売されています。名前の通り、コバエのケースへの進入を防ぐという製品です。さらに、マットの乾燥防止、クワガタの脱走防止にも効果絶大です。専門店でしか手に入らないのがネックですが、値段もリーズナブルで使い勝手も抜群です。DeepBlueは、このタイプのケースをお勧めします。

コバエシャッター蓋+ケース/大★いやなコバエをピッタリシャット!保湿効果もあり...

デジケースHR−1も最適なケースです。(右写真中央・左右はコバエシャッター)このケースはシンプルに、蓋に直接小穴を開けた構造で、メンテナンス性も良好です。ご覧のように、ミニケースよりもやや大きいサイズで、中仕切りもできますので、「痒いところに手が届く」感じでしょうか?私もメインで使用しています。
私はクワカブランドで購入しました。お値段は300円でした。




コバエシャッターを開発した「シーラケース」さんが新しい発想のケースを開発しました。「クリアースライダー」(写真)です。サイズはコバエシャッターのミニと小の中間サイズで、デジケースHR−1とほぼ同じです。ただ、高さが低く重ねて管理するには最適です。
低くできた理由はスライド・ロック方式の蓋で、脱走を完璧に防止できることが大きいと思います。でも、慣れないとついつい、蓋を持ち上げてしまうんですよね!慣れの問題ですが・・・。さらに蓋が透明なので、上からの観察も容易です。空気穴は蓋の周囲に98箇所の小穴が開いています。

気が利いているのは中仕切りが1:2のところにあることです。これなら大型オスのペアも入れることができそうです。今までの1:1ではメスには広すぎ、オスには狭かったですから。
ただ、ここまでしたなら、1:1にも仕切れると嬉しかったです。我が家では基本的にオスとメスは別々に管理していますから。でもショップには喜ばれると思いますし、一般的にはいいと思います。お値段は300円以下みたいです。
マット
昆虫飼育用マットはホームセンターで手に入れることが出来ます。しかし、冬季は扱う店が減りますので、特売日などに買いだめしておくとよいかもしれません。もちろん専門店なら通年在庫がありますし、より上質なマットを販売していることが多いと思います。
値段はピンキリです。写真右は7リットルで千円位。写真左は4.5リットルで三百円程度です。成虫の飼育用には安いもので十分ですが、マットに産卵する種類の「産卵用」には、高価な「発酵済み」のマットが良いでしょう。成虫飼育用マットと幼虫の餌になるマットは別物と考えてください。最近では、成虫飼育専用に針葉樹マットも販売されています。ダニの繁殖を抑える効果があるみたいです。


餌は一般に売られている昆虫ゼリーを使います。最近は沢山の種類が販売されていて迷ってしまいますね!先ずは小袋を買ってみて、飼育しているクワガタが食べるかどうかチェックしましょう。クワガタにも好き嫌いがあるよみたいです。「食い」が悪いと思ったら、銘柄をかえてみましょう。バランスを考えて数種類の餌を交互に与える人もいます。
最近は水分控えめの「液ダレ」しない製品の人気があります。飼育ケース内が「水浸し」になるのを防止する効果があります。

現在、私のお気に入りはKBファームさんの「プロゼリー」です。今のところ飼育している全てのクワガタが食べてくれています。
バナナも良い餌ですが劣化が早く使いにくいですね。スイカは絶対に与えないで下さい。

クワガタの新成虫は餌を食べるまでに時間がかかることがあります。特に大型のオスは羽化後3ヶ月近く後食しないこともありました。これは幼虫の時に体内に蓄えた栄養を使っているからだそうです。ところで、クワガタが水を飲む事は意外と知られていません。大概はゼリーやマットの水分程度で十分なのですが、ケースの中が乾燥していると水を飲む行動が観察できました。

昆虫ゼリーの大きさ

以前は16グラムと65グラムの2種類でしたが、最近では18グラムという規格のゼリーが販売されています。容量はあまり変わりませんが口が広く浅く、アゴの長いオスでも食べやすい形状です(写真の右側)。実際に使用してみましたが、確かに納得の形状で、オスの挟み事故が激減しました。私はメスには16グラム(スプリッターで半分に切り)、オスには18グラムと使い分けています。
餌皿
クワガタが餌をこぼしてマットが汚れるのを防止します。他にも、「しっかりとした足場」「交尾の場所」にもなり大活躍です。また、餌皿の下はクワガタの隠れ家にもなります。
大きいゼリー用、小さいゼリー用、ダブルなど多種多様ですが、朽木だとクワガタに削られてすぐにバラバラになってしまいます。生木が適しています。200円前後で販売されています。
産卵木
クワガタ飼育の楽しみのひとつにブリーディングがあります。クワガタの多くは朽ちた広葉樹に産卵します。人工飼育下でクワガタのメスに産卵させるために使う朽木が産卵木です。一般的にはシイタケ栽培用のホダ木が使われる事が多いようです。
最近は、高級なカワラ材やレイシ材も出回ってます。レイシ材やカワラ材を使って、採卵が難しい種類のブリーディングに成功した方の声をよく耳にします。確かに材質は良いようですね!私も最近愛用しています。
あると便利ですよ!
ヘッドライト
幼虫の割り出し作業に威力を発揮するヘッドライトです。おかげで幼虫の見落としが減りました。ジェントス デルタピーク DPX-233H(楽天で3280円でした)単三電池3本で160ルーメンの明るさが得られます。エネループ対応で経済的です。センサースイッチが付いていて、手をセンサーに近づけるだけでスイッチのON/OFができます。
詳しくは「我が家のキャンプ道具」で紹介しています。

霧吹き
マットを加湿するときに使用します。園芸用のものが100円ショップでも手に入ります。クワガタは種類によって、「乾燥に強いもの」、「多湿を好むもの」がおりますが、いずれも、極端な乾燥には弱いようです。定期的に霧吹きしましょう!左の写真は加圧式の霧吹きです。2000円と高価でしたが、ワンタッチでスプレーできるので管理がとても楽です。
ノギス
クワガタはサイズで評価されることが多いですね羽化した成虫を掘り出したらノギス(1000円位)で測って記録しましょう。最近は大きさだけでなく胸幅や頭幅、大アゴの付け根の太さまで測定の対象となっています。使い方は中学生の時、「技術家庭」で習いましたよね!
蓋の
インナー
シールド

市販の飼育ケースの蓋に取り付けて使用するインナーシールド。小穴の開いたプラスティック製の中ブタで、穴が小さいので、コバエが出入りできません。また、マットの乾燥防止にも効果があります。汚れたら、蓋から取り外して、ブラシで洗いましょう!
ゼリー
スプリッター

昆虫ゼリーを真っ二つに切る優れもの。パプキンなどの小型種や、後食を開始していない個体に与えるにはゼリー1カップは多いですよね!この器具を使うと、簡単に半分にカットできます。
最近改良されて、ゼリースプリッターU(写真)となり、さらに使いやすくなりました。歯は市販のカッターナイフのものなので、切れなくなったら簡単に交換できます。お値段は500円程度です。
コロンボー

簡単に言うと、クワガタの転倒死防止用グッズです。もちろん「材」でも代用は可能ですが、こちらはプラスチック製なので、洗えば何度でも使用可能です。大きさも手頃で、ミニケースにも使えるのが嬉しいです。
丸い穴には餌が入りますが、あまり有効ではないようです。それよりもアーチ状の形が素晴らしく、クワガタが安心して下に隠れています。表面はクワガタのフセツが引っ掛かるようにデザインされています。久々のオススメ品です。
お値段は2枚で150円から200円程度です。

ピンセット

海水魚飼育時代に購入した全長27センチの長めのピンセットです。元々水槽のメンテナンス用に使っていました。細い割りに剛性が強く、先端の内側にギザがついていて滑りにくくなっています。手の届かないテラリウムなどの飼育管理に重宝します。また、菌糸ビン飼育で、蛹室に生えたキノコを取り除いたり、露天掘りの蛹室に落ちたゴミを取り除く事も得意です。お値段は1500円程度でした。


飼育ケースのセット例(単独飼育用)

ミニケースを使った小型のオスやメス用のセット。大きな餌皿は入らないので、コンパクトな餌皿を使っています。ミニケースの場合、狭いので無理に餌皿を置かなくてもてもいいでしょう。このとき、転倒死防止の木片は必ず入れてください。マットは厚く敷くと脱走されやすいので、1センチ位で十分です。


大型のオス単独飼育用の小ケースセット。大型の餌皿が入ります。狭いので、これ以上の飾りつけは無理です。小さな登り木程度なら入りますが、いかにも窮屈になりますし、脱走の原因にもなります。写真の86mmのミンダナオヒラタクワガタはこのケースから、軽々と脱走しました。
        



中ケースのセット。このくらいの大きさになると餌皿、登り木両方とも入ります。写真の74mmのオオクワガタもゆったりくつろいでいます。もちろん、メスを加えても十分な広さがあるので、大丈夫です。1ペア用といった感じでしょうか。この上のサイズに大ケースがありますが、産卵セットを作ったときに、産卵木が3−4本入るので便利です。


   クワガタは転倒します!

クワガタは、我々の飼育下では、よく転倒します。4−5日気が付かないと死んでしまうこともあります。クワガタは逆さまが苦手なのではなく、転倒すると外敵に襲われやすい為、早く起きあがろうと脚を回して、もがきます。これが体力低下につながるのです。特に羽化したては転倒しやすいので気を付けてください。


  水苔(みずこけ)マットでの飼育


この飼育方法は、私がお世話になっている「ケンタのホームページ」さんに教えていただきました。木材を粉砕したマットを使用しない事で、コバエやダニの発生を抑える効果があるそうです。
実際使用してみた感想は、「確かに、効果がありそうです。」比較実験こそしていませんが、飼育中のマットの飛散も抑えられ、飼育部屋が清潔になったような錯覚?すら感じます。また、マットが汚れた場合の交換も容易です。
水苔は、園芸用のもので、普通のホームセンターで、販売されています。乾燥・圧縮されていて、150グラム500円程度です。
使用方法も簡単です。乾燥した状態で販売されている水苔を水で戻します。十数秒で水を吸い、量が増えます。余計な水分は手で搾ってあげます。これを飼育ケースに1−3センチの厚さで敷くだけです。保湿力が強く、霧吹きの手間が抑えられて便利ですね!木材粉砕マット飼育の場合、転倒死防止に、足場になる木片が必要でしたが、水苔なら、これ自体が足場になります。もちろん餌皿や木片を入れてもOKです。
弱点は今のところ無いようです。適量を掴み取る時に、乾燥したコケが飛散する事くらいでしょうか?
尚、長期間使用すると、クワガタが水苔を細かく切り刻んでしまうことがあります。こうなると、足場としての役目を果たさなくなってしまいます。定期的な洗浄、交換は必要ですね!

2004年現在、全て成虫飼育マットに水苔を使用しています(産卵セットを除く)。マット交換がとても楽で、気に入っています。しかし、冬季、冬眠する種類には普通の木材粉砕マットを使用する予定です。


メンテナンス
重要な要素
クワガタムシの飼育は決して難しくはありません。最も重要な要素は3つです。

@ クワガタは水分が必要です。乾燥した場所で飼育すると水を飲むことが観察できました。マットが湿っているとマットから水分を補給するみたいです。時々、霧吹きで、マットや登り木を湿らせてあげましょう。

A温度 クワガタは我々の想像以上に高温飼育に弱い昆虫です。飼育最適温度は種類によって異なります。

B 昆虫ゼリー、バナナなど。

以上の3つの要素が適切なら、クワガタ飼育は簡単です。マットですか?野生のクワガタの多くはマットでは生活していません。木の皮や洞の中で生活しています。マットは人間が飼育しやすいように考えた道具なので、今回は重要な要素には加えませんでした。あえてもう1つ挙げるなら、「落ち着ける住居」でしょうか。

活動期(夏)
夏はクワガタの活動期です。餌をよく食べます。大型個体や、産卵後のメスなどは1晩で小カップの餌を平らげてしまう事があります。出来れば毎日、餌がなくなっていないかをチェックしましょう。数日間食べなくても死んでしまう事はありませんが、自然界では好きな時に餌を食べています。毎日のチェックは、転倒死、アゴ刺し事故の早期発見にも有効です。
マットが乾き気味なら「霧吹き」をしましょう。クワガタは水を飲みます。スペースがあるなら水入れを設置こともできますが、狭いケースでは不可能です。代わりにマットの保湿は重要です。
マットが汚れてきたら交換しましょう。餌をこぼしたり、排泄物でマットは汚れてきます。汚れたマットには小バエやダニが涌きます。少々のダニは気にしなくてもいいのですが、大量に発生すると、気持ち悪いですね!この時、餌皿も水道でジャブジャブ洗うと、より清潔です。

飼育ケース設置場所は、涼しく、風通しが良い日陰が適しています。クワガタは高温に弱い昆虫ですので、飼育ケースは家の中で一番涼しい場所に置きましょう。直射日光は厳禁です。我が家では、飼育部屋ができる以前は、玄関に置いていました。飼育温度は国産オオクワガタで、30℃を超えないように注意してください。また高温で蒸れるのもよくありません。保湿用のビニールシートなどをフタに挟むのは止めて新聞紙などの通気性の良いものを使用して下さい。マットの水分が蒸発する事で、マットの中は多少冷却されるのです。コバエシャッターなら問題はありません。

多くのクワガタは夜行性です。特にオオクワガタは夜しか表面に出てきません。観察しにくいですね。私は観察用に簡単なテラリウムを作ってみました。
写真は餌のフタのシールの切れ目から餌を食べるオオクワガタ。フタを剥がさず与える事で餌をこぼしにくくする効果があります。(フタにカッターで、十字の切れ目をいれる)

晩秋〜冬
   国産オオクワガタ・ヒラタクワガタ・コクワガタなどの管理

冬眠するクワガタたちのために準備をしてあげましょう。「国産オオクワガタ」、「ヒラタクワガタ」、「コクワガタ」は冬眠します。
ケースにマットを厚めに敷いてあげましょう(5センチ以上)。ケースの大きさに余裕がある時は、マットに木片を埋めてあげると木片の下で越冬します。
マットの乾燥に注意しましょう。日本の冬は乾燥していますので、意外とマットが乾きやすいのです。マットの表面が乾燥したら、霧吹きしてください。市販の小穴の開いた中ブタやコバエシャッターはマットが乾燥しにくく、とても便利です。
設置場所は気温が一定の玄関などが適切です。暖房の入る居間は1日の気温の上下が激しくクワガタが休眠中に眼を覚ましてしまうことがあるのでなるべく避けてください。飼育温度は5−15度くらいの間で一定にしてあげましょう。
餌は確実に冬眠したことがわかるまで、与えてください。栄養不足で冬眠すると、そのまま永遠に眠ってしまう事もあります。我が家では国産クワガタ以外にも「タイワンオオクワガタ」、「中国ホーペ」が冬眠しました。
一部には冬眠させない(マットを厚く敷かないで、加温する)飼育者もいますが、私は自然と同じように?冬眠させています。理由は翌年の産卵数アップと寿命に影響があると考えるからです。
ミヤマクワガタ、ノコギリクワガタは活動を開始してからは越冬しないと言われています。しかし、越冬の準備をすることで、1日でも長く生きる事ができるかもしれません。特に夏以降に羽化したミヤマクワガタは蛹室の中で越冬します。出来れば、そのまま越冬させてください。もし、割り出してしまったときは、マットを厚く敷き、10度以下の低温で管理しましょう。


   外国産クワガタの管理

外国産の「アンタエウスオオクワガタ」や「オオヒラタクワガタ」は冬眠しないようです。
「アンタエウス」の場合、20度以上の温度で管理できれば、一年中ブリードする事が可能です。私は真冬に何度もブリードしています。
しかし、温室等の設備が無い場合は越冬させなくてはなりません。この場合、マットを厚く敷いた状態で、恒常的に13度以上の飼育温度を保つ必要があります。一時的に10度近くまで気温が下がっても大丈夫だと思われますが、個体差、産地による差もありますので、お勧めできません。気温が低くなると「休眠」することもあります。マットに潜って出てこないこともあります。いずれにせよ、マットの乾燥には注意してください。

「オオヒラタクワガタ」系は出来るなら20度前後での管理が適しているように思います。しかし、寒さにも意外と強く、15度以上の気温なら越冬可能です。「スマトラヒラタ」、「アルキデスヒラタ」は比較的寒さに強く、特に「アルキデス」は12度程度の気温でも元気に活動しています。もちろん、マットは厚めに敷き、加湿も忘れないでください。

我が家の「グランディスオオクワガタ」は温室に入れずに冬を越せました。最低気温は8−9度で平均11度位でした。

パプアキンイロクワガタも1年中ブリード可能です。通年、20度以上で管理しましょう。

外国産オオクワガタの耐寒能力を想像する上で参考になるのが採集地の気温です。旅行関係のHPに通年の気温が掲載されていますので、参考にしましょう。ただし、クワガタが採集される「山岳部の気温」と「街の気温」には差があります。



気温の上昇と共に、冬眠していたクワガタも活動を開始します。昼はマットに潜ったままでも、夜間、我々が寝ている間に活動しているクワガタがいるかもしれません。多くのクワガタは夜行性です。
マットの表面に新たな出入り用の穴があるようなら、活動を再開した証拠です。越冬のために、厚く敷いたマットを減らしましょう!クワガタがフタに登り、「挟み事故」や「脱走」を防止する為です。もちろんマットが汚れているようなら交換します。小ケースでの単独飼育の場合、マットの厚みは1−2センチもあれば十分です。
また、この時期、クワガタは越冬(休眠)明けで体力が低下しています。活動を始める前に餌を新しい物に交換してあげましょう。餌を入れ忘れ、クワガタを餓死させないように気をつけてください。春は来る初夏のブリードに向けて体力と栄養を蓄える季節です。特に産卵を期待している個体には、良質かつ十分な餌を与えてください!!

*餌には(食べなくても)カビが生えます。食べるかどうか解らないのに、もったいないですよね。そこで、節約方法があります。写真のように、カップをカッターで半分に切って、ケースに入れておきます。これなら、半分の経費で済みます。この方法は、羽化後の新成虫に餌を与える時にも使えます。最近では、簡単にゼリーを半分に切れる、「ゼリースプリッター」が販売されていますね!私も常用しています。


ペアリングについて
種親の
選び方

種親は十分成熟している健康なペアを選んでください。餌を沢山食べていて、羽化後3−4ヶ月経過している個体を選びましょう。
フセツが少々欠けている程度でしたら問題ありません。それよりも元気で、「重い」個体を選んでください。特にメスの体重は産卵数に影響するようです。

遺伝

ところで、皆さんはクワガタの遺伝を信じますか?クワガタからクワガタが産まれるのも遺伝なのですが、親の特徴(体の大きさからアゴの長さや形状まで)も子供に遺伝するらしいのです。
国産オオクワガタの場合、「大型個体を狙うなら、70mm以上のオスを使いましょう」と云われますね!大型個体とは何ミリ以上をさしているのか解かりませんが、決して間違いではないと思います。
私は、その年に羽化した個体の中で、より大きく、形のよい個体を選別して種親にしています。この遺伝子の絞りこみにより、次世代に、より高確率で、「大きく、形のよい」個体が得られると考えるからです。しかし、クワガタムシは完全変態する昆虫です。幼虫期の環境によっては、小型の親から大型の個体が得られることもあるでしょうし、またその逆もあるのです。
大きさは、環境にも影響されますが、形はどうでしょうか?実はこれも餌、温度など環境に左右されるようです。しかし、私の知る限り、「ばらつき」はあるものの、美形の種親からは、美形の子供が産まれてくるようです。

メスの選別


オスの選別は比較的簡単ですが、メスはどうでしょうか?遺伝子の半分はメスに影響されるわけですから、本当はとても重要なのです。しかし、サイズ以外に「これ!」といった選別方法が確立されていません。
私も「これだ!」という確信はありません。しかし、羽化した姉妹の中から、「全体的に丸々としている」、「頭幅の広い」、「アゴの太い」個体を選別している「つもり」です。
最初は「不可能では?」と思いましたが、実際に並べて比較してみると、全く同じ個体ということはありえないんですね!前胸の膨らみ方にも個性があります。オスと同様、より多くの個体を観察することで、メスを見る目が変わってくるかもしれません。

混血問題

最近、国産オオクワガタのブランド化に伴い、外国産との混血疑惑が持ち上がっています。外国産(多分タイワンオオクワガタやホーペ)と掛け合わせることで、より太く、大型な個体を得ようとしたのでしょう。しかし、私たちは絶対にそれを受け入れてはいけません。「太い」「大きい」を理想とするのは結構ですが、だからといって、「何をしても良い」とは思いません。
それでは、私たちは混血を見分けられるのでしょうか?「F1」なら可能かもしれませんが、世代が進むと判別は難しそうです。「メスを見れば判る」ともいいますが、100パーセントではありません。DNA鑑定を行えば安心ですが、簡単ではなさそうです。しかし反面、第2世代では破綻を来たす個体も出現するそうです。
国産オオクワガタは「国産らしい形」が素晴らしいのです。大アゴが太い個体が欲しければホーペを飼育すればよいのです。無理な理想を追い求めず、クワガタ飼育の「王道」を進む、ブリーダーの常識が問われているのかもしれません。

相性問題
サイズなど

「大きい♂には大きい♀を」と言いますね。これは間違いではありません。しかし、サイズが合わないと♂が食べられたり、♀が殺されたり・・といった表現は嘘です!これはきっと販売用のデマでしょう!大きい♂と小さい♀でもペアリングは可能です。また大きい♀と小さい♂でもペアリングは可能です。もちろん、常識的な範囲でです。限度はあると思います。ちなみに、我が家のタイアンテ夫婦は♂62mm・♀46mmで上手く産卵しました。
相性問題は確かに「無い!」とはいえません。しかし、その前に、「十分成熟したペアかどうか?」「休眠状態または、目覚めたばかりで機嫌が悪いのではないか?」「餌は十分食べているか」などをチェックしてください。ペアリング失敗の原因の多くは、個体のコンディション不良だと思われます。それでもダメなら諦めて新たなパートナーを探しましょう。

よくある♂の♀殺しは、交尾を拒否されて怒った♂が♀を挟み殺す事故です。必要以上に同居させないことで未然に防ぐことができます。また交尾過多は無駄に体力を消費させ、短命の原因にもなります。
逆に、♀が♂を殺す時は、産卵で失ったタンパク質を補う為に♀が♂の腹を食い破る事故です。これも、♀に日ごろから高タンパクの餌を与える事で防げます。これは産卵前後に分離飼育していれば起きない事故です。

写真は私のミスで無残な姿になったセレベスオオヒラタのメス。産卵後も同居させたのが原因でした。

近親交配
大丈夫?

クワガタ飼育では、皆様平気で近親交配をさせます。兄妹同士は当たり前、時には父娘も珍しくはありません。でも、本当に大丈夫なんでしょうか?人間の世界では厳禁です。ある王家の一族は、新たしい血を入れるため、近年は一般大衆から花嫁を迎えています。血が濃くなると、肉体的、精神的にも障害を起こし得るそうです。法律でも規制されています。
クワガタの場合はどうでしょうか?生物学的なことはよくわかりませんが、犬の世界でも一部では行われているみたいです。クワガタ仲間では5、6世代までは問題は無いといわれています。何せ下等な「虫」ですから・・。しかし、確証はありません。5世代といっても実際にブリードすると、10年近くかかります。また、クワガタの種類によっても、近親交配に強い種類と弱い種類が存在します。個人的には、オオクワガタの場合、5世代位まではOKかな・・・と思っています。

さて、では何故このようなブリード(インラインブリード)をするのでしょうか?理由は、子供の選別による、遺伝子の絞り込みです。大型で良形の子供を代々選んで、インラインブリードを繰り返すことによって高確率で「大きくて、カッコイイ」個体が得られるからです。父親の形はかなり高い確率で子供に遺伝します。また、大きいメスからは大きな子供が産まれやすいとも云われます。良い素質(人間にとって)の遺伝子を絞り込むことが目的なのです。逆に、眼に見えない悪い遺伝子(羽化不全・虚弱体質?)も濃く受け継がれる可能性も否定できません。
では、新しい血を混ぜるアウトラインブリードはどうでしょうか?クワガタのオスの場合、ある程度、形や大きさで素質がわかりますが、メスは難しいですよね・・・。同産地を2系統、3系統と累代している方なら簡単かもしれません。ある程度子供の形状が想像できるインラインブリードと違い、アウトラインブリードでは、思いもよらない(素晴しい)個体が出現する楽しみもあります。

実際のペアリング方法(自己流の表記です)
ハンド
ペアリング

バケツの中やケースの中で人間の監視下で交尾させる方法です。円形のケースを使用すれば出会う確立が倍増します。マットは使っても使わなくても結構ですが、餌皿等を入れてあげましょう!時には♂を♀の上に乗せてやり、強制的に交尾させる事もあります。オオクワガタ系には比較的有効です。特にアンテには効果的だと思います。彼らは意外なほど人前で交尾します。ペアリングを監視することで、ペアの相性や、適齢期かどうか判断することもできます。私はハンドペアリングで相性を確認してから「愛の小部屋」などへ移しています。

愛の小部屋
ペアリング

小ケースにマットを薄く敷き、餌皿をセットし、ペアを入れます。乾燥防止用の中ブタを使うと効果的です。♀がマットに深く潜ることが出来ないので、ハンドペアリングに似た効果があります。
春先や秋口などにペアリングしようとしても、マットに潜りこんでしまい、休眠状態になってしまう個体がいます。多くのクワガタは「スイッチ」をもっていて、「休眠」と「活動」で切り替わります。交尾させるには「活動」へと切り替えなければなりません。
しかし彼らは自己防衛の為、2-3日気温が上がった位では目覚めません。ある温度を境にスイッチが切り替わるのではなく、ある温度が一定時間維持されなければなりません。また、ON/OFFの温度も同じではありません。種類・産地によっても異なります。このような時にも「愛の小部屋」は有効です。国産オオクワガタの場合21度、タイアンテは20度、外国産オオヒラタは24度で交尾・産卵しました。湿度をやや高めにするのがコツです。
ペアリング開始から数日後、♀のみを産卵セットに移します。

産卵セット
  ペアリング

中ケースから大ケースに産卵セットを作り、ペアを入れ自然に交尾させる方法です。♀が産卵木を削り出したら、♂は隔離する方が望ましいでしょう。初めてのブリードの方はこの方法から試してみるとよいでしょう。オオクワ系・ヒラタ系共に有効です。ただし休眠傾向にある個体はマット深く潜って寝てしまう事があります。夏のシーズン中なら問題ありません!アンテ系は逆にあまり暑いと交尾しないようです。初夏や秋口が狙い目です。


産卵ケースのセット
 @産卵木について
産卵木の
選び方

産卵木には、キノコの菌で分解された広葉樹が使われます。芯の少ない、よく朽ちたものが上質とされています。私は販売店で木の切り口に爪をたてて、「爪が食い込むモノ」を購入しています。
しかし、あまり柔らか過ぎる材には産卵しない事もあります。材の切り口は柔らかく、表面がしっかりしたものが適しているといわれますが、ベテランでも選択ミスが無いとはいえません。私個人は、切り口に「爪が入る」柔らかめの産卵木が好きです。
逆に産卵用と称して生木が売られている事もあります。ズッシリと重い木は生木の可能性があります。クワガタは生木には産卵しません。
国産オオクワガタはやや堅めの材を好むようです。実際、我が家では、ブカブカな所を避けて硬めな部分に産卵した事もありました。しかし、柔らかい材に産卵しないという事はありません。要は材の質の問題です。質が良ければ、手で崩せる程柔らかくても国産オオクワガタは沢山産卵してくれるのです。私が常用している産卵木は「クワカブランド」で販売されている夏菌皮むき材です。柔らかめでOKです!
ヒラタクワガタやアンタエウスオオクワガタ、グランディスオオクワガタも柔らかい材が好みです。最初は専門店で、店員さんに飼育種を告げ、選んでもらうのが賢明かもしれません。

クヌギと
コナラ

クヌギとコナラの木は樹皮のデザインで区別できます。凸凹が激しく樹皮が厚いのがクヌギ(写真左)、やや滑らかなのがコナラ(写真右)です。材の質はコナラのほうが柔らかく、好んでコナラを使う方もいます。
しかし、クワガタの産卵には優劣はなく、材そのものの質のほうが重要です。値段はコナラ1本200-400円、クヌギ300-500円位です。
レイシ材
マンネンタケの栽培に使われたホダ木です。シイタケのホダ木よりも、かなり太いものが多いようです。ブリードが難しいといわれるオウゴンオニクワガタ、グランディスオオクワガタなどに向くといわれています。肉質はやわらかく、パプアキンイロクワガタも喜んで?産卵するとか!「土埋めタイプ」と「砂埋めタイプ」があり、砂埋めレイシ材が、より高級であるといわれています。値段は800円くらいです。
カワラ材
人工カワラ材

野生のオオクワガタが好んで産卵するカワラタケによって朽ちた材。樹種はクヌギ、コナラ、サクラなど様々。とにかく、「よく産む」そうです。左の写真はクヌギ材。あまり流通していなく、値段も高いようです。


人工的にカワラタケの菌を廻した人工カワラ材 (写真右)も販売されています。こちらもブリードの難しい種類や産卵数の少ない種類に有効です。既に、加湿してありますし、雑虫の混入もありませんので使いやすいですよ!値段は少々高価で、太細2本一組で1800円でした。

*最近では人工シハイダケ材も出回っているようです。

夏菌
皮むき材

朝霞市にある「クワカブランド」で販売しているクヌギ材。キノコの菌が活きているという話です。最初から皮が剥いてあるので、加湿するだけですぐに使えます。木の質が非常に高く、品質も安定しています。また、雑虫の混入も少ないように思えます。我が家のグランディスオオクワガタはこの材で一度に15頭産卵しました。私の一番お気に入りの産卵木です。値段は中〜太めの材で1本300円です。細めは200円で売っていることもあります。

 Aセットの前に




クワガタは乾燥した木には産卵しません。産卵木は乾燥した状態で販売されることが多いようです。水に沈めるなどの方法で加湿しなければなりません。(人工カワラ材のように加湿の必要ないものもあります)
産卵木には、害虫の卵(時には幼虫や成虫)が混入している事があります。害虫がいると、クワガタが産卵を嫌ったり、産まれた幼虫が害虫に食べられてしまう事もあります。以前は1−2晩、産卵木を水没させる事で、中にいる害虫が殺せると思われていました。しかし、実験の結果、効果が無い事がわかりました。

そこで、最近私が行っているのは、熱湯を産卵木にかけ、殺菌する方法です。電子レンジで加熱する方法もあるのですが、レンジが臭くなるので私は行っていません。
熱湯を産卵木の切り口、表面に満遍なくかけて、しばらく蒸らすことで、雑虫は死滅するはずです。加湿も兼ねた一石二鳥です。私は冷却も兼ね、さらに1時間程度水没させてから使用しています。
写真右下はヤカンで熱湯をかけているところです。

産卵木の皮を剥きます。私は、メスが産卵が楽なように皮を剥いてセットしています。最近は、皮むき夏菌材のように、既に皮を剥いた状態で販売されているものもあります。私は良く朽ちた柔らかめの材がお気に入りです。

また、材の水分量ですが、私は水分多目(吸わせるだけ吸わせる)で管理しています。しかし、この調節はその後数ヶ月の産卵セットの設置場所に大きく影響されます。我が家の場合、エアコン管理=乾燥気味という条件もあるかもしれません。







巷では、クワガタの産卵誘発に「味の素」を産卵木に振りかける事が有名ですね!味の素に含まれるグルタミン酸が有効だとか・・。
私も、最近は加水時に振りかけています。何となく効果があるような気がします。
産卵誘発には、幼虫の糞も効果大のようです。クワガタの幼虫の糞は同種のクワガタ♀の産卵を促進するようです。皆様もクワガタの糞(食べ残し)を保管して、産卵セットに「おまじない」として加えてみてはいかがでしょうか?




一般に販売されている乾燥したマットを使用するときは、マットも加湿してください。多くのクワガタは多湿を好みます。マットが乾燥した状態では産卵どころか、種親の命も危険です。
水分量は軽く握って、形が残る程度が目安です。強く握った時、水が滲み出すようでは水分過多です。
尚、マットに産卵する、アンタエウスオオクワガタ、オオヒラタクワガタには、「アンテマット」などの幼虫飼育可能な「上質な微粒子・2次発酵マット」を使用してください。2次発酵マットは色が茶色から黒色です。マットの質が産卵数を左右します。朝霞の「クワカブランド」で販売されている「生オガ発酵マット」は安心して使用出来る上質なマットです。
国産オオクワガタなど、産卵木にのみ産卵する種類には安価な埋め込みマットで十分です。ただし、針葉樹は厳禁ですよ!





クワガタムシは種類によって産卵方法が異なります。産卵方法が変われば、セットの方法も変わるわけです。大きく分けて3つの産卵方法があります。
@産卵木に産卵する。
Aマットに産卵する。
B産卵木、マット両方に産卵する。
マットに産卵する種類には上質なマットが必要ですし、産卵木に産卵する種には上質な産卵木が必要です。ともに、環境が気に入らないと、メスは産卵しません。

産卵木に産卵 マットに産卵 両方に産卵

国産オオクワガタ
グランディスオオクワガタ
台湾オオクワガタ
クルビデンスオオクワガタ

中国ホーペ
コクワガタ
タランドゥスオオツヤクワガタ

アンタエウスオオクワガタ
ミヤマクワガタ

*マット産みの種類も
産卵木に産むことがあります。
柔らかめの産卵木を
セットしてください。
オオヒラタクワガタ
(スマトラ・パラワン・ダイオウ・セレベスなど)

パプアキンイロクワガタ

ニジイロクワガタ
スジブトヒラタクワガタ

 
 B実際のセット

先ず、ケースに適切な湿度のマットを薄く敷きスリコギなどで固めます。あまり強く固めるとケースの底が割れることがありますが、マット産卵する種類の場合、固めのほうが結果が良いようです。3−4センチほどの厚さにマットを固めましょう。産卵木に産卵する種類にも、この作業を行うことで、産卵木につぶされてメスが死亡する事故が防止できます。

固めたマットの上に加水した産卵木を置きます。産卵木の本数はマット産みの種類は1本で、十分ですが、材に産卵する種類には2、3本以上入れましょう。置き方は自由です。縦に置く方もいれば、横に置く方もいます。ケースのスペースと産卵木の太さ、本数との相談ですね!
写真の産卵木は皮がついたままに見えますが、マットに埋める下半分は剥がしてあります。

産卵木をマットで埋めます。産卵木に産卵する種類は半分も埋めれば十分です。マット産みの種類は3/4以上埋めます。産卵木の本数が多いとなかなか下側まで、マットが埋まりませんが、工夫してしっかりと埋めてください。材産卵の種類はマットと材の間にスペースが出来ても大丈夫です。このときメスが潜りやすいように、底に敷いたマットより、弱めの力で詰めてください。


餌を置きます。餌は定期的に交換して下さい。餌が合わないと食べない事もあります。出来れば、数種類置くと良いでしょう。
餌を入れたら、あとはクワガタ(種親)を入れるだけです。
しかし、ここで、2つの方法があります。

@交尾を終えたメスだけ入れる。
Aオスとメスを一緒に入れる。

私は、別のケースで、オス・メスをペアリングさせた後、メスだけを産卵セットに放す方法をお勧めします。クワガタのオスは興奮すると、メスを殺すことがあるからです。オスはメスと何度も交尾したがりますが、産卵期のメスはこれを拒否する場合があります。産卵中のメスにとって、オスは邪魔者なのです。しかし、交尾を拒否されたオスは逆上してメスを殺してしまうことがあるのです。この事故はヒラタ系で多く発生しますが、オオクワガタでも時々起こります。
どうしても、一緒に入れるときは、最低限、しばらくの間、オスがメスを攻撃しないか見ていてください。詳しくは上記の「ペアリングについて」をご参照ください。尚、1メス1ケースが基本です。

数週間後、産卵木が削られるか、ケースの底に幼虫(または卵)が確認できたら、ブリードは成功です。もし、1ヶ月以上経過しても産卵の兆候がない場合は、産卵木やマットを取り替えるなどの対策が必要でしょう。


    産卵木にカビが生えてきた!

産卵セットを組んでしばらくすると、何故か産卵木にカビが生えてきます。黄色いカビや白いカビなど多種多様です。「このままでは、メスが・・・」と心配してしまいます。でも大丈夫!!多くのカビは自然に消えてなくなります。自然界にあるバクテリアが産卵木で繁殖してカビを抑制するようです。メスが産卵木を削りだすタイミングと近いことから、「メスがバクテリアを接種している」という方もいます。
もし、大量に発生してしまったときはスプーンなどで、取り除いてください。マットに発生したときはマットの表面を削り取りましょう!



幼虫の割り出し
産卵の確認
産卵の確認をしましょう!交尾が成功し、メスが産卵セットを気に入ると産卵を開始します。産卵は産卵木を削り出す事によって確認できます。オスが同居している場合、メスが木を削り出したら、オスをケースから出してください。またその後、メスがマットの上によく出て来る事が多くなったら、産卵が終了した証拠です。メスを取り出して、栄養豊富な餌を与えてください。もし、いつまでたっても産卵の兆候が見えない時は産卵木を交換するなど、工夫が必要です。
産卵形態は種類、個体差、産卵木により異なります。写真のように明確な産卵のサインがあるとわかりやすいのですが、材が固い場合、坑道を掘らずに材の表面にのみ産卵する事もあります。 マットに産卵する種類はケースの底面に卵や幼虫が確認できます。

交尾、産卵後のクワガタは♂♀共、とても体力を消耗します。産卵セット後は高タンパクの餌を十分与え、単独飼育して下さい。メスが、せっかく自分で産んだ卵や幼虫を食べてしまう事もあります。

産卵方法
大きく分けて材に産卵する種類とマットに産卵する種類があります。国産オオクワガタ、ヒラタ系、コクワガタは材に産卵します。アンタエウス系はマット産卵が多いようです。私が飼育したダイオウヒラタはマットと材の両方に産卵しました。マットに産む種には、より上質のマットを使用してあげましょう。最近は産卵誘発物質入りのマットも売られています。反対に材に産卵する種類は安いマットでも産みますが、なるべく発酵済みのマットを選んでください。

写真はマットに産み付けられた卵
材割り
親が産卵木を削り出して1ヶ月半後、アンタエウスなら、ケースの底に幼虫が見えたら材割りの時期です。私は1令で幼虫を採集する為、1ヶ月程度で材割りをしますが、卵が出て来る確立も上がってしまいます。
私は自分の手で材を割ります。道具は殆ど使いません。よくドライバーやナタを使う方がいますが、幼虫を潰してしまいそうで怖いですよ!多くの産卵木は(朽ちているので柔らかい)手でいけます。私は産卵坑に親指を差し込み真っ二つにして、あとはゆっくり、木を、ほぐしていきます。もし、固くてダメなら、器具は補助的に使いましょう。


小さい幼虫はスプーンの柄などを使い、慎重に扱いましょう。右の写真はパプキンの産卵坑道にいる1令幼虫です。パプキンは自分が掘った坑道の木屑の中に産卵します。
幼虫の保管
材割りで出てきた幼虫を1頭ずつケースに移します。多くは1令、2令幼虫ですが、たまに卵も出てきます。何頭出てくるかわからないので、私はプリンカップに一時保管しています。プリンカップに上質の発酵マットを加水してゆるく詰め、その上に産卵木の削りカス(食痕など)を乗せ、その上に幼虫を乗せます。最初から、菌糸ビンに投入する方法もありますが、この場合、1令の中期以降で幼虫の体に艶がある事を確認してから入れましょう!体に艶が無い幼虫は環境の変化に対応出来ない、未熟な幼虫です。出来るだけ元の環境に近い状況で飼育してあげて下さい。卵が出てきた時は卵室(細かい木屑につつまれている)ごと、プリンカップに移します。廻りを加湿したマットで覆ってください。孵化した幼虫は卵の殻を食べるので、殻を食べられる環境にしてあげましょう。

分解後の木片はしばらくはケースごと保管しておきましょう。見逃している幼虫が必ずいるはずです。10日ほどたってから再び捜すと数頭の幼虫を発見できることがあります。

尚、使用後の埋め込みマットや分解後の木片は成虫飼育に使えます。乾燥させておけば長期保存も可能です。ただし、他の産卵セットへの使いまわしは絶対にしないでください。
擬似産卵?
「擬似産卵」という言葉が適切かどうかわかりませんが、交尾済みのメスが産卵木を削り、しっかりと産卵痕が残っているのに、幼虫も卵も見つからないことがあります。最初は親が食べたのでは?と思いましたが、どうやら「産卵しているつもり」のようです。
検証は、擬似産卵の疑いが濃い国産オオクワで行いました。以前は多くの卵を産んだ個体です。ミニケースにマットを薄く敷き、カワラ材の産卵木を置きました。翌日にメスは材を齧り始めましたので、1週間後に取り出しました。さらに3週間後、材を割ってみると、写真のような産卵痕は沢山あるのですが、肝心の卵も幼虫も全くありませんでした。
産み疲れで卵を食べる時間は無かったはずです。産んですぐ食べたのなら別ですが、再び卵室を木屑で塞ぐとは思えません。
考えられるのは「産んだつもり」です。しっかり卵室を掘り、卵管を差込み、産んだつもりになって、しっかりと木屑で卵室を塞いでいたのでしょう。原因は不明です。対策は再ペアリング、再セットしかないでしょう。


クワガタのよくある事故

事故例1
産卵後のメスはタンパク質の不足を補う為、オスを食べてしまう(カマキリみたいに)ことがあります。別けて飼育するのがベターです。仕方なく一緒に飼育する時は高タンパクの餌を十分に与えてください。マニアはカブトムシの蛹を与えるそうです。
写真は?の蛹を食べるミンダナオヒラタのメス。
事故例2 今度は逆にオスがメスを挟み殺してしまう事故。交尾済み、または相性の悪いメスに交尾を拒否されたオスが逆上してしまう。ヒラタクワガタ系に多い。事実ウチのセレベスオオヒラタはメスを真っ二つにしました。
事故例3

オスの挟み事故。プラケースのフタのメッシュ部分に大アゴを差込み、挟みこんでしまい、そのまま抜けなくなってしまう事故です。放っておくと体力を使い果たし死んでしまう事もあります。無理に離そうとしてもかえって大アゴに力を入れてしまい離しません。足場を確保して、しばらくそっとしておいてあげれば、落ち着いて自分で離します。早期発見が大切。最近はメッシュではないクワガタ専用のフタも販売されています。

写真は足場が確保できない為、もがくセレベスオオヒラタのオス。
事故例4

オスが餌を食べるとき、長い大アゴがカップに刺さってしまい、そのまま抜けなくなってしまう事故。もがくうちに転倒して死んでしまうこともあります。早期発見が重要ですが、2−3日で死んでしまうことは少ないようです。写真のようになってしまったら自分で抜くことはできないと思います。ハサミで餌皿を切りとってあげて下さい。
最近は事故防止のための、ちょっと大きめの餌(18グラム)が売っています。以前からある、大皿も有効です。
事故例5 メスの溺死。大きな餌皿の中でメスが溺れて死ぬらしいです。私は未だ経験なし。
事故例6
脱走!!クワガタはケースのメッシュ部分を食い破ったり、フタを持ち上げて脱走する事があります。我が家のオオクワ・メスも脱走しましたが、逃げ場所は下駄箱の下だ!という名探偵Blueの活躍であっさり御用。暗く、狭い所に逃げ込むようです。対策としてケースを紐で縛る方法もありますが、メンテナンスが面倒になりますね。ケースのフチに前脚が届かないようにマットを少なめにセットすれば防げるはずです。最近販売されているクワガタ専用のケースはロックがしっかりしていますので、脱走防止に有効です。

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