美術館見てある記・その1〜アメリカ編

2001年5月5日 初版作成
2007年 7月20日 美術館ホームページへのリンク、一部画像を追加

 美術にそれ程興味があるわけでも、造詣が深いわけでもありませんが、美術館を見て歩くことが好きです。
 何時からか分かりませんが、知らないところに旅行すると、そこに有名な美術館があればちょっと覗いてみるようになりました。もともとがミーハー的なので、あくまで「有名な」美術館であることが条件です。要するに、評価の固まった有名な絵を、みやげ話の一つとして見てくる、ということに過ぎないのですが。

 そうこうしているうちに、これまでに見てきた美術館の数も増えてきたし、各美術館で仕入れたお土産も増えてきたので、自分の足跡を整理する意味で、まとめてみることにしました。これからその美術館に行くかもしれない方々のために、何かのお役に立てば何よりです。
 ただし、かなり古い情報が多いので、現在もそれが当てはまるかどうかは保証の限りではありません。

 まずは、美術館巡りの発端となった、アメリカ出張のときのぶらり見てある記から。

<その他の美術館見てある記>
  その2・ドイツ編
  その3・フランス編
  その4・日本編
  その5・美術館2007


1.ニューヨーク近代美術館(The Museum of Modern Art : MOMA)
 1983年1月に、初めての海外出張でアメリカに行きました。
 仕事はワシントンD.C.でしたが、往路はニューヨーク直行便で土曜夜に到着し、そのままニューヨークに1泊しました。翌日曜日に、お客さんと一緒に市内観光し、夕方ワシントンD.C.に移動しました。この時の市内観光の一つが、ニューヨーク近代美術館でした。ここに立ち寄ったのは、同行したお客さんの希望によるもので、私はそれまで美術館なんてほとんど行ったことがなかったことから、全くの単なるおつきあい状態だったわけです。

 ところが、入ってみてびっくり。入口すぐの通路の上の壁に、見覚えのある絵が・・・。アンリ・ルソーの、砂漠にジプシー女が横たわり、後ろにライオンがいる絵(「アンリ・ルソー/眠れるジプシー女」というらしい)。「あっ、これ知ってる」という驚き。そして、ダリのテーブルの上からだらりと垂れ下がる時計の文字盤の絵(ダリ/記憶の固執:26.3×36.5cm)。これも知ってる、でもこんなに小さい絵だとは思わなかった・・・。

 それ以外にも、シャガール(有名な「私と村」「誕生日」)、マティス、ゴーギャン、ミロ、ピカソ(「アビニョンの娘たち」!)・・・。そして、最も驚いたのは、地下のオーディトリウムに映し出されたピカソの「ゲルニカ」。そう、その時には既にスペインに返還されていたものの、数年前まで(1981年まで)そこに「ゲルニカ」が展示されていたのでした。そんなすごい美術館だとは知らなかった・・・。
 美術の教科書に出て来るような絵が、囲いもガラスもなく、裸のまま目の前にあるという現実。それは、美術初心者にとって、あまりにもエキサイティングな、ギラギラに晴れがましいまぶしさでした。

 この時以来、私は「美術ミーハー族」となってしまいました。

 この美術館は、外部からは美術館とは思えず、そう言われなければ入口も素通りしてしまうほど素気ない外観でした。内部も地上1階、地下1階の大変こじんまりした大きさなので、じっくりのんびり見て回ることができます。それでいて中身はずっしりと濃い。
 ただし、私が訪れた1983年1月には、改装工事中だったとのことですので、改装工事完成後はもっと広くなっているのかもしれません・・・。

ニューヨーク近代美術館のガイドリーフレット
ニューヨーク近代美術館のガイドリーフレット ニューヨーク近代美術館の見取図

2.ワシントン国立美術館(National Gallery of Art, Washington)
 ワシントンの国会議事堂前に延びている「モール」に沿って、スミソニアン博物館や国立美術館が並んでいます。
 初めての出張で、仕事の合間に見に行ったのは、実は国立美術館ではなく、スミソニアン航空宇宙博物館でした。一緒に行ったお客さんは、さっさと国立美術館に行ってしまったが、私はその時点ではまだ美術よりも「月の石」の方にお土産価値を見いだしていたので、そそくさと航空宇宙博物館へと出かけました。
 国立美術館に行ったのは、それから9年後の1993年に再びワシントンD.C.を訪れたときのことです。

 この美術館は、とにかく広くて大きいところです。ある程度的を絞って見に行かないと、歩き疲れるだけで、散漫な印象しか残らないということになりかねません。
 私のお薦めは、やはり印象派のコーナー。マネ、モネ、セザンヌ、ルノワール・・・。アメリカに来てフランス印象派?という気もしますが、このコーナーだけでも十分に充実感に浸れます。特にアメリカ美術などに興味があれば、そういったコーナーも良いのかもしれませんが・・・。
 古い絵としては、ダ・ヴィンチが1枚ありました。ダ・ヴィンチはパリのルーブル美術館にあるモナ・リザばかりが有名ですが、世界中に現存する絵はそう多くはないそうです。その意味では、ここでダ・ヴィンチを見られるのは貴重かもしれません。その他、ラファエロの絵も何点かありました。

ワシントン国立美術館のパンフレットワシントン国立美術館のパンフレット
   このパンフレットの表紙の絵は、フェルメールだったのですね!

3.スミソニアン航空宇宙博物館(Air and Space Museum)
 美術館ではないけれど、ワシントンD.C.に来たら、やはり見ておきたいスポットです。
 月の石、ジェミニなどのロケット、ライト兄弟の飛行機、第2次大戦の戦闘機(零戦もあり。タイトルは「Mitsubishi」。そう、ロッキードにしてもグラマンにしても、製造メーカー名なのでした)。科学少年だった私には、美術よりも、まずはこちらに興味を惹かれたのでした。
 モール沿いには、航空宇宙博物館以外にも、スミソニアン協会の博物館(アメリカ歴史博物館、恐竜の骨格がある自然史博物館)、スミソニアンの本部とその周辺の美術館群(国立美術館もその中の1つ)などがあり、とても全部は見切れません。見たいものに的を絞って行きましょう。ワシントンには、他にもホワイトハウスやら国会議事堂(中を見学できます)などの観光スポットもありますので・・・。(この界隈には、アメリカ国内からの「お上りさん」観光客もたくさんいます。私などは、スーツ姿で歩いていたら、アメリカ人観光客にホワイトハウスへの道を尋ねられました・・・。)

スミソニアン博物館全体のガイドブックスミソニアン博物館全体のガイドブック

スミソニアン航空宇宙博物館のガイドブックスミソニアン航空宇宙博物館のガイドブック


スミソニアン航空宇宙博物館の零戦スミソニアン航空宇宙博物館の零戦展示

4.ハーシュホーン美術館と彫刻ガーデン(Hirshhorn Museum and Sculpture Garden)
 これも、スミソニアン博物館群の一つで、航空宇宙博物館のすぐ隣にあります。近代・現代美術ばかりを集めた施設です。美術館の方はどうということもありませんが(ミーハーには)、彫刻ガーデンの方にはロダンの彫刻「カレーの市民」がありました。ムーアの彫刻も多数。

ハーシュホーン美術館のパンフレットハーシュホーン美術館のパンフレット

5.フィリップス・コレクション(The Phillips Collection)
 ワシントンD.C.の美術スポットで、知る人ぞ知る個人コレクションの展示。ここも、2回目の訪米時のほんの仕事の合間にちょっと寄ってみたものです。
 地下鉄を降りて、しばらく歩くと、住宅街の中の一見富豪の邸宅風の建物に垂れ幕が下がっていて、所在が分かります。美術館らしくなく、メインの観光スポットでもないので、平日ということもあって、いたって静かでした。
 入ってみると、個人の家を展示室にした作りながら、展示されている絵は素晴らしいものばかりで感激してしまいました。最大の目玉は、ルノアールの「舟遊びの昼食」。ああ、あの絵か、という感じ。ルノアールの名画を前に、誰にじゃまされることもなく椅子に腰を下ろしてじっくり時を過ごす、そんな贅沢のできる空間なのでした。その他、エル・グレコ、ゴヤ、アングル、ゴッホ、セザンヌ、マティスなどがあり、ゆったりとアットホームな雰囲気で、いい絵を独り占めの気分で心ゆくまで味わえます。
 超お薦めのスポットです。
 なお、展示室の一つがちょっとした広間になっていて、グランドピアノが置いてあり、ときどき小さなコンサートが催されるそうです。いい絵に囲まれての音楽、うーん、ぜいたくですね。

フィリップス・コレクションのパンフレットフィリップス・コレクションのパンフレット


その2・ドイツ編へ進む
その3・フランス編へ進む
その4・日本編へ進む
美術館2007へ進む


HOMEにもどる