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FIRSTBORN

  • 著者:アーサー・C・クラーク/スティーヴン・バクスター
  • 発行: 2008/Del Rey $7.99 U.S
  • 2009年2月読了時、本邦未訳
  • ボキャブラ度:★★★☆☆
     ※個人的に感じた英単語の難しさです。

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 バクスターとクラークとの共著Odysseyシリーズ3部作の完結編です。(一応…)

 第1巻の「Time's Eye (時の眼)」、第2巻の「Sun Storm (太陽の盾)」では、何者かが時代が混在する地球のコピー「ミール」を作り、太陽嵐で人類を絶滅させようとします。

 続く本作では、太陽嵐から復興した人類に新たな危機が襲い掛かり、謎の存在「ファーストボーン」の意図の一端が明かされていきます。
 今回もクラークの重厚さやまとまりを期待する向きには不満が残るでしょうが、バクスター調バリバリ全開で楽しめました。特にバクスターがクラークに敬意を表したであろう、最新の研究をぶち込んだ軌道エレベーター、反物質ロケット、火星地表などの微に入り細を穿つ描写は、オールドファンにはたまりませんぞぉ!

 一点寂しいのは、Manifoldシリーズであれほど活躍した日本の姿が本シリーズではどこにもありません。存在感がなくなっているんでしょうかねえ。

 さて、本作では、「時の眼」のビセサと「太陽の盾」のベラ、2人の女性に加えその娘たちが主要人物として活躍します。また、ネタばれになりそうですが、「完結編」のはずなのにファーストボーンやミールの謎は一部しか解き明かされず、最後には新たな謎の存在さえ登場します。どうやらこのシリーズ、女性たちの世代を重ねながら今後も続いていきそうで、ファンには楽しみが増えたようです。

 語彙は、クラーク/バクスターのファンならきっと楽勝でしょう。(ニュース英語はさっぱり読めないのに、annihilate(対消滅)なんて単語はさらっと分かってしまう自分が好き…(^ ^;)

 すぐに早川さんの邦訳が出るはずなのであらすじは、ざっと。

●ストーリー●

 太陽嵐から27年後、人類はようやく復興し、ファーストボーンへのトラウマを抱えながらも太陽系進出を始めていた。しかし、恐れは現実となる。土星の輪から現れた物体が観測機を破壊し、地球への衝突軌道をとりはじめたのだ。世界宇宙会議(WSC)は、議長のベラの指揮の下、秘密裏に物体の迎撃作戦を開始する。人類初の攻撃宇宙船の船長はベラの娘、エドナだった。

 ビセサと「眼」の去ったミールでも異変が起こっていた。神殿に保存されていたビセサの携帯電話のベルが鳴り始めたのだ。

 そして、長い冷凍睡眠に入っていたビセサは、娘のマイラに突然目覚めさせられ、WSCの追跡を振り切って火星へと向かう。火星の北極の地下で、2人は宇宙の知性体の歴史と深く関わる、ファーストボーンの恐るべき意図の一端を垣間見る。

 襲いかかる最大の危機に、太陽系とミールの存亡をかけ、人類の苦闘が再び始まった。



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