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The Long Cosmos

  • 著者:テリー・プラチェット/スティーヴン・バクスター
         ( Terry Pratchett / Stephen Baxter )
  • 発行:Kindle版:2016 / \1,200
  • 2016年7月読了時、本邦未訳
  • ボキャブラ度:★★☆☆☆
     ※個人的に感じた英単語の難しさです。

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 ロング・アース・シリーズの第5巻。テリー・プラチェットが2015年3月に物故したため、バクスターとの共著としての本シリーズはこれで最終巻です。


 前巻までに、人類は無限のパラレルワールドの地球〈ロングアース〉へ拡散し、同時に巨大噴火や進化人類、ナノマシンの侵略などに見舞われ、文明には衰退の兆しが見えつつあります。ステップ・デイから半世紀、主な登場人物の多くは高齢になりましたが、宇宙からの謎のメッセージを受けて再集結し、ロングアース最後の謎に挑みます。


 共著者のプラチェットはかねてからアルツハイマー病であることを公言しており、第3巻以降はバクスター単独の執筆だったようです。しかし、主人公をはじめ深みのある人物造形はプラチェットの力によるものでしょう。バクスターのアイディアを支え、拡散しがちな物語を引き締めてここまで物語を引っ張ってこれたのは、プラチェットの作った人物たちの魅力のお陰とといえます。その意味で、本シリーズは間違いなくプラチェットの最後の作品といっていいと思います。


 ロングアース・シリーズは、緊張感のある傑作ではありませんが、二人のベテラン作家が作り上げたユニークな世界をゆっくりと楽しめる、記憶に残る作品として完結したようです。


・シリーズ全巻のレビュー:
 第1巻・The Long Earth 第2巻・The Long War第3巻・The Long Mars第4巻・The Long Utopia

●ストーリー●

 キング・オブ・ステッパーのジョシュアは、妻ヘレンの亡き後息子のロッドとの溝が深まっていた。68歳の誕生日を前に、彼は老いと孤独をかかえたまま、長期の単独トレッキングに旅立つ。


 そのころ、超人類ネクストの一員のステラは、独自のSETI計画のテスト中に、いて座の方角から謎の信号を受信する。メッセージは英語で 「JOIN US:一緒にやろう」 と告げていたのだ。そして、このメッセージは電波だけではなく、テレパシーのような形でも、トロールなどロングアースの全ての知的生物に対して届けられていた。

 ステラは、メッセージの調査には、ネクストだけではなく人類やトロールたちの参加が必要だと考える。ステラたちは、宇宙基地を持つギャップ・スペース社のスタッフの協力を得て、信号に含まれていた設計図のようなものを元に、使途不明の人工知能を組み立てはじめる。


 しかし、キーマンとなるべき機械知性ロブサンはバーチャル世界に引きこもったままで、ジョシュアは旅先の無人の並行地球で瀕死の重傷を負って行方不明となってしまう。


 宇宙からの呼びかけにどう答えるべきなのか。ロングアースの知的生命すべての運命をかけて、並行世界と知性誕生の謎が明らかになっていく。


●覚えたい単語● (気になった単語/フレーズの記録です)

to snare an hare 野ウサギを罠にかける、pound for pound 階級を無視して比較した、Get use to it. 慣れろよ

 



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