The Long Utopia
ロング・アース・シリーズの4巻目。共著者のテリー・プラチェットはアルツハイマー病で闘病中でしたが、2015年3月に逝去しました。合掌。
このため、3巻目以降は実質スティーヴン・バクスターの執筆のようです。
第1巻・2巻で、全人類は、無限のパラレルワールドの地球「ロングアース」へ移動できるステップ能力を獲得しますが、その直後、超巨大噴火による氷河期が到来し、無人のフロンティアであるロングアースに一気に拡散していきます。第3巻では、進化人類"ネクスト"の誕生と、火星の並行世界の謎が描かれました。
本書・第4巻では、ロングアースとステップ能力の謎の一端が明らかになる一方、ロングアース全体を危機に陥れる侵略が始まります。また、本筋とは直接繋がりませんが、"キング・オブ・ステッパー"・ジョシュアの家系と誕生の秘密が、19世紀までさかのぼって語られ、シリーズの中ではかなり盛りだくさんの印象です。
ここまで話が広がってくるとさすがにつじつまが合わない部分も出てきていますが、登場人物自身も作中で「スタートレックみたい」と評しているように、大御所のワイドスクリーン・バロック風味は他では味わえません。ロングアースはいよいよ次巻・第5巻で完結だそうですので、静かに待つことにしましょう。
・シリーズのレビュー:
第1巻・The Long Earth /第2巻・The Long War/第3巻・The Long Mars
●ストーリー●
人類がステップ能力を手に入れてから37年後の2052年。進化人類"ネクスト"の反乱が鎮圧された後、政府の追跡を逃れたネクストの穏健派は、遥か彼方の並行地球にコミュニティを築いていた。その一人ステラ・ウェルチは、旧人類の社会に潜み進化人類の子供の発見とリクルートを担っていたが、宇宙エレベーターの建設地で、異能の少年・スタンを見出す。
一方、人類を救ったヒーローたちは、それからの人生を探しあぐね、"ステッパーの王と女王"・ジョシュアとサリーはそれぞれに、一人ロングアースをあてどなく放浪していた。一方、機械知性・ロブソングは、ネクスト事件で人類の守護者としての役割に自信を失い、妻アグネスと共にひそかに辺鄙な並行地球に植民し、人間として生き直そうとしていた。しかし、アグネスは新たな故郷に不穏なものを感知し、世界から目をそらそうとしていたロブソングを異常の調査に引っ張り出す。その結果、驚くべき事実が判明する。何者かが、その地球の自転速度を加速させていたのだ。
全く異質な現実からの侵略者は、惑星を改変する超技術を持ち、アグネスらの地球や太陽系はもとより、ロングアース全体を破滅させかねない危険をはらんでいた。ロブソングは、再び現実に立ち向かうことを決意し、ジョシュアとサリーを召喚する。
●覚えたい単語●
Kindleのハイライト記録から、気になった単語の記録です。
globular cluster ―球状星団、anthropomorphize ―(神などを)擬人化する、at a prodigious rate ―莫大な割合で