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The Long Mars

  • 著者:テリー・プラチェット/スティーヴン・バクスター
         ( Terry Pratchett / Stephen Baxter )
  • 発行:Kindle版:2014 / \1,106
  • 2014年7月読了時、本邦未訳
  • ボキャブラ度:★★☆☆☆
     ※個人的に感じた英単語の難しさです。

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 The Long Marsは、テリー・プラチェットとスティーヴン・バクスターの合作、ロング・アース・シリーズの3巻目です。

 これまでのレビュー:第1巻・The Long Earth  / 第2巻・The Long War


 第1巻・2巻では、全人類はパラレルワールドの地球へと移動できる「ステップ能力」を突然に獲得します。謎をはらみつつ無人のフロンティアとして広がる並行地球に人類は徐々に拡散をはじめますが、そのとき、旧地球のイエローストーンで超巨大噴火が起き、アメリカ、旧地球は存亡の危機に追い込まれます。


 本シリーズはプラチェットとバクスターの合作ということになっていますが、第3巻では、主筆と思われるバクスターの嗜好が如実に現われました。本書のストーリーは3つに分かれて進むのですが、その中で最も力が入っているのが、書名にもなっている並行火星(Long Mars)の探査の部分です。地球が存在しない宇宙にステップしたら慣性は維持されるのか、火星の質量で生命が進化できるにはどのような条件が必要なのか。架空の宇宙開発史を書かせたら右に出るものはいないバクスターの本領発揮で楽しめました。

 プラチェットのファンには気の毒ですが、バクスターにはこの勢いを維持したまま本シリーズを書き継いでいってほしいところです。


 ・次巻:第4巻・The Long Utopia レビュー


●ストーリー●

 イエローストーンの巨大噴火の火山灰により、旧地球は壊滅的な冬に襲われ、人類の並行地球への移住・拡散は加速した。そんな中、並行地球では異常な知能を持つスーパーチルドレンが生まれ始めていた。キング・オブ・ステッパーとして知られるジョシュアは、旧知の機械知性ラブソングから、スーパーチルドレンたちを見守るよう依頼を受ける。

 一方、アメリカ海軍の女性艦長マギーは、ステップ機能を持つ軍用気球で並行地球の超遠距離探査を命じられる。しかし、僚船の艦長カトラーは以前亜人類の虐殺を試みようとした過去があり、今回の遠征でも何かを隠しているようだった。


 そして、ジョシュアの戦友のステッパーであるサリーは、行方不明だった父・ウィリスの呼び出しを受け驚く。ウィリスこそステップ装置の設計図をネットにばら撒き、並行宇宙を人類に解き放った張本人だった。ウィリスは、火星にも「並行火星」が存在する可能性を予知し、サリーとともに火星へ飛び立とうとしていたのだ。

  サリーたちは、NASAの退役宇宙飛行士フランクをリクルートし、地球が粉砕された並行宇宙(Gap Earth)へ宇宙船ごとステップする。この方法により打ち上げの必要がなくなり燃料と時間が大幅に短縮できるのだ。父ウィリスはサリーに、並行火星のどこかに知性の存在を予言する。火星に到着した3人はグライダーでステップしながら並行火星の探査を開始するが、彼らを待っていたのは想像を絶する生命の進化だった。

 並行宇宙の謎はさらに深まっていく・・・


●覚えたい単語●

 Kindleのハイライト記録から、気になった単語の記録です。

his estranged wifeー別居中の妻、deranged expressionー狂った表情、sheafー束

 



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