On The Razor's Edge
フリン入魂の銀河シリーズ第4巻。(シリーズの公式名がない!)
<これまでのレビュー>
第1巻 The January Dancer (舞台設定付き)
第2巻 Up Jim River
前巻 In The Lion's Mouth では、拉致されたドノバンが、敵対勢力の諜報機関「シャドウ」の内紛に巻き込まれます。ドノバンは、戦いの中で垣間見た本当の自分を知るため、シャドウ反乱派と共に地球に向かうことを決意します。
最終巻らしく本書では、ドノバン自身の正体も含めさまざまな謎が解明され、家族の再会の物語も一応の終結を迎えます。盛り上げ方に若干不満は残るものの、スペースオペラとしては楽しませてもらいました。
しかし、個人的に面白かったのは中盤に描かれる「星間文明が崩壊した後に続く世界」のリアリティです。数千年後、放置された軌道エレベーターはどうなるのか、磁気情報が失われた後に残るのは何か、使い方が忘れられたたデバイスはどうなるのか・・。ブラッドベリを彷彿とさせる滅びのイメージは、中高年SFファンにはたまりません。フリンはスペースオペラの枠組みで、銀河規模のマッドマックス世界を描こうとしたようです。
異世界の空気感を味わうという点で「異星人の郷」を気に入った方は、本シリーズに挑戦してみる価値はあると思います。一筋縄ではいきませんが。
なお、フリンのインタビューによると、この舞台設定(スパイラル・アーム)を生かした別のエピソードも構想しているとのことで、期待しましょう。
シャドウ反乱派に拉致されたドノバンを救出しようと、娘ミーラナはシャドウのレイヴンの誘いに乗り地球に向かう。それを知った母・ブリジットもミーラナを連れ戻すため、ハウンドの仲間を結集し跡を追う。
一方、シャドウ反乱派の首魁ギジュラとともに地球に着いたドノバンは、監禁を逃れ自分の記憶を取り戻す旅を彷徨う。地球は数千年前に瓦解した最初の星間文明の痕跡が、顧みられることなく放置された荒れ果てた地となっていた。ドノバンら「テラン」と呼ばれる賤民こそ、崩壊後、人口を維持できなくなった地球から脱出した難民の末裔であることを知る。
やがてドノバンはギジュラと合流し、最終目的地、支配体制「Those of Name」の本拠地タウ・セチ星のシークレット・シティに向かう。ドノバンは、シークレット・シティこそ、彼が複数の人格を持つようになった場所であることを思い出す。
一方、ギジュラの腹心の部下であったレイヴンは、腐敗した支配体制を改革するという彼の目的に疑念を抱き始める。運命の糸に操られたかのように、シークレットシティには、ドノバン、ミーラナ、ブリジット、そしてかつての敵・味方が集まりつつあった。最終決戦の後に残る真実とは何か。フィナーレの幕が上がった。