10 構築費用はどれぐらい?
例規DB構築をベンダーに委託すると、次の費用を予算措置しなくてはなりません。
@ 書式設定・文字打ち込み
A サーバーのセットアップ
B ソフトウェア費用(使用料の場合が多い。)
C 機器リース費用
このうち、@が最も手間と費用のかかる部分です。
費用はオプション(法令リンク・原議管理など)によっても違いますが、5,000ページ程度の紙の例規集を一から入力する場合、構築年度で500万円〜900万円程度のようです。
※注)構築費用の相場は、平成の大合併前後に、100万円台〜350万円程度に下がったようです。 5,000円入札の例もあります(桐生市)。ネットで全国の入札状況や議会の議事録を検索してみてください。
11 後年度費用が最も重要!!
例規DBの導入で最も重要なポイントは、翌年度以降にかかる「運用経費」です。
@ データ更新費用
A ソフトウェア費用(使用料の場合が多い。)
B 機器リース費用 C 紙の例規集の加除経費(紙の例規集を残す場合)
これらの合計が、例規DB導入以前の加除経費以下とならなければ、例規DBを導入する財政的意味はありません。 これもオプションによって違いますが、年間1,500ページ程度を更新するとして、Cを除いて300万円〜700万円程度が多いようです。
※注)運用経費も、平成の大合併前後に、200万円〜400万円程度に下がったようです。
12 検討委員会で随意契約を
自治体の場合会計単年度主義のため、初年度に例規DBの構築を競争入札または見積り合わせによる随意契約で決定すると、最も重要である後年度費用が反映されません。また、1社の随意契約とすると価格競争が起こりませんし、一から構築するわけですから地方自治法の定めによる随意契約とする理由も薄弱です。 そこでお勧めするのが、検討委員会方式です。 @ 法規、財政、電算、契約の各担当で検討委員会を作る。 A 自分の自治体に必要な例規DBの仕様書を作る。 B 後年度費用も含めた参考見積りを数社に依頼する。 C 委員会で比較して決定のうえ、随意契約とする。 参考見積りの徴取は、仕様を調整しながら2〜3回行うとよいでしょう。 また、法規担当以外の意見も聞けるので、参考になります。 なお、検討の対象とする事業者の選定にあたってはプロポーザル方式による公募などの方法を取ると公平性が保て、地元の意欲ある事業者の参入も可能です。→北海道の事例
13 導入の前に検討すべきポイント
例規DBを導入する場合、内部で、事前に検討しなくてはならない次の2つのポイントがあります。あらかじめ、議会、職員組合などに説明を行っておいたほうがいいでしょう。この2つのポイントは、納品してもらうファイル形式の決定にも大きな影響があります。
@ 紙の例規集を廃止するか否か。
A インターネットで公開するか否か。
14 紙の例規集の取扱い
まず、紙の例規集は、わずかでも残した場合、版下経費が必要となり、逆に経費増となることも考えられるので、ある程度トップダウンで廃止を決定すべだと思います。
しかし、イントラネット端末が一人一台でない、議員、年配の職員の了解が得られないなどの理由で、若干部を残さざるを得ない場合が考えられます。(註1)
そこで高速コピー機(註2)による、「年度版」の少量印刷を検討しましょう。(この場合、様式は省いてもいいでしょう。)そして、端末の増設に伴って、年度版の部数も削減していくわけです。
なお、この場合、印刷用のファイルが準備できていることがポイントです。PDF形式の例規DBはファイルがそのまま印刷ファイルとなるので、この場合有利です。HTML形式の例規DBの場合は、別途WordやRTF、PDFなどの印刷用のファイル形式で納品が必要となるので、委託契約の際は注意が必要です。
高速コピー機がなく外注する場合、外注でドキュテック印刷を依頼すると、A4版1,500ページ×100部で、100万円程度かかります。(これ以下の部数でも値段はあまり変わらない。) 10部程度なら、パソコンがつなげるデジタル複写機(分速30枚程度)か両面印刷のページプリンターを土曜・日曜に1日動かせば、なんとかなるでしょう。(経費としては、紙代とトナー代、電気代+残業手当で済む) ただし、ページ番号を自動的に付番しようとすると、コピー機・プリンタ側にその機能が必要になります。
年度版は製本しないで、穴を開けて大型のバインダーに綴じる方法が簡単で、追録やコピーにも便利なので、お勧めです。
なお、インターネット用の例規データをHTML形式で納品してもらっている場合は、そのデータをCD-Rに焼きこんで庁内を回覧し、ネットにつながっていないスタンドアローンのパソコンのハードディスクにコピーして利用できます。(5,000ページでもHTMLデータなら50Mバイト以下です。)(註3)
15 インターネットでの公開
次に、インターネットで公開するか否かは、意外に難しい問題を孕んでいます。自治体によっては、例規の内容に自信が持てず、恥を世界にさらしてしまうのではないかと法務担当者自身が躊躇する場合もあるでしょう。給与条例などを公開することについては、職員組合でも抵抗があるかもしれません。
しかし、時代は間違いなく情報公開と市民参加の方向に向かっています。例規の公開は、市民と職員の協働の実現を図るにあたっての基盤といえます。自らの意識を、内向きから市民に向ける一歩として取り組んでほしいと思います。
このほかに、インターネットで公開を考えている場合はあらかじめ、次の点を検討しましょう。
@ 全文検索機能を付けるかどうか 例規DBの全文検索機能を搭載すると、インターネットのサーバーにかなり負担がかかります。アクセスが多い大規模自治体の場合は、管理者と十分協議してください。 また検索ソフトの使用料が別途かかる場合があります。
※ 実は、ほとんど費用がかからず検索機能を付ける方法があります。詳しくは次ページ、(5)インターネット版に検索機能と自治体トップページへのリンクを付けようをご覧ください。
A 様式のダウンロードを用意するかどうか 申請書等の様式をダウンロードして印刷できると、市民にとっては非常に便利です。この場合も、PDF形式ならそのまま使えますが、HTML形式の例規DBの場合は、別途ダウンロード用ファイルを準備しなければなりません。 なお、ダウンロードを可能にすると、市民からFAXやメールでの申請や届出の希望が予想されますので、その取扱いについて、文書担当と各申請窓口担当と十分協議しておく必要があります。(註4)
16 著作権に注意
例規DBの構築の委託契約を結ぶ場合、著作権に注意が必要です。一般的に条例等の本文にはベンダーは著作権を持ちえませんが、リンクのためのデータや、社内で作業用として使うSGMLデータやDTDには、著作権を主張される場合があります。
ベンダーの乗り換えはそうあることではないかもしれませんが、後々のことと、自治体内部での再利用を考えると、できるだけ自治体が著作権を広く持つ契約となるよう交渉すべきでしょう。最低でもリンク情報を含めたHTMLファイル、PDFファイル、様式用のRTFファイルなどの著作権は、自治体で持つべきです。
17 「要綱データベース」自作の勧め
例規DBの構築を委託すると、間違いなく500万円以上100〜300万円程度の費用がかかります。財政状況がますます厳しくなるこの時期、どうしても予算措置ができない場合、自分たちで作ることはできないでしょうか?
実は、実際に職員により例規DBを作ってしまった自治体(宮城県気仙沼市)や、個人の方もいます。ただし、数百本の例規集を打ち込むのは大変です。
そこでお勧めするのが、とりあえず手近な「要綱」で「要綱データベース」を作ることで、ノウハウを蓄積するとともに予算化へ向けて、上司の理解を得てはどうでしょうか。
興味があれば、私が要綱データベースを作った際の、手順ををまとめましたので、参考にしてください。
GO! 要綱データベースを作ろう!(2010/9 サポート終了)
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(註1)
本市の場合、紙の例規集を減らすことについては、意外に抵抗は少なく、議員も各会派に1冊づつ紙の例規を残すことでOKが出ました。(法規担当者が考えるほどには、例規集が読まれていないことの証明かも。)
(註2)主な高速コピー機
●ドキュテック(ゼロックス)
・分速A4ヨコ135枚
・くるみ製本システム、中綴じシステムをオプションで接続可
・本体2,980万円から
●イマジオ(リコー)
・分速A4ヨコ105枚
・中綴じシステムをオプションで接続可
・本体750万円から
(註3) HTMLデータなら、セットアップの方法は、以下の方法でOKです。
@パソコンのハードディスクの中に、例規集のHTMLデータの入っているディレクトリ(フォルダ)ごとコピーします。
Aフォルダ中のトップページのHTMLファイルを探して、そのファイルのショートカットを作り、ディスクトップにコピーします。閲覧は、これをクリックします。
BトップページHTMLファイルの名称はそう変わらないはずなので、次回以降は、フォルダーをコピーするだけでOKです。
(註4)
2003年に迫った電子政府構想では、民間から国への申請や届出は原則として電子メールでも受付けることとなります。 間もなく自治体にも国から同様の措置をするよう要請が来るでしょうが、それまでの間、個人認証機能と手数料等の徴収方法がない現段階では、窓口・郵便等に制限することもやむを得ないのではないかと思います。
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