未公開株の発行・流通

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はじめに


1997年1月5日、日本経済新聞朝刊に「未公開株の発行・流通、証券会社に解禁」と題し、大蔵省は、97年にも証券会社に未公開株の発行・流通を解禁する、と報じている。

従来、証券会社が株式の公募や売出し等の発行業務を取り扱えるのは上場会社か店頭登録会社の株式だけである。 証券会社が、未公開会社の株式を販売することは禁じられている。
大蔵省の行政指導によるものであるが、大蔵省は97年度中にこの行政指導を取りやめ、規制撤廃の方向を証券界に伝えるとのこと。 投資家保護のため、証券会社が取り扱える未公開株は、財務指標などを情報公開する企業に限る考えとのことである。
未公開企業は、公募増資を活用した資金調達ができ、証券会社は投資家に販売できるようになり、ベンチャー企業の発掘・育成を促すとともに、証券会社の業用拡大につなげることも狙う、としている。

日本では、株式会社130万社のうち上場・店頭合わせて3千社程度。 米国では、ニューヨーク証券取引所が3、000社を超え、ナスダック(NASDAQ)で5、120社で合計8、100社を超える。 また、米国では、未公開株ながら流通している銘柄数は約1万社とされている。(最近の上場会社数は「世界の上場会社の数」をご参照ください。)

1998年11月2日、日本証券業協会は「株式店頭市場の改革に向けて(報告書)」を公表した。その中に、株式店頭市場の流動性向上の方策の一環として、マーケットメーカー制度導入のための具体策がはじめて謳われた。驚きである、下記のナスダックの公開基準にあるように2社以上のマーケットメーカーを必要とする規定を、わが国はなぜ今まで無視してきたのであろうか。

ナスダック、OTCブリティンボード、ピンクシートを調べていくうち、マーケットメーカー(証券会社)の役割がキーとなっていることが分かる。立上りの企業などは、ピンクシートないしはOTCブリティンボードで株式を証券会社の店頭(現在は電子取引)で未公開株として流通させ、株式公開基準を満たすようになるとナスダックへ登録し株式公開する。ナスダックの株式公開維持基準を満たさなくなると(株主数の減少や時価維持基準を満たさなくなる)OTCブリティンボードやピンクシートへ落ち、ナスダックへの株式公開へ再チャレンジするという構図がある。マーケットメーカー制度は、企業の直接金融市場そのものである。ピンクシートないしOTCブリティンボード銘柄は、ナスダックへの株式公開前の企業が多く、ペニーストックといわれ一株5ドル以下の株式が多い。ナスダックの株式公開維持基準に最低株価があるが、株価を維持できない企業の受け皿であるOTCブリティンボードやピンクシートという市場と、マーケットメーカーが存在し株式の流通は確保されているのである。
株式が流通し時価が存在すると、ストックオプションを従業員などに付与できることになる。企業は、資金調達の手段を株式市場から得ることができ、ストックオプションにより従業員に夢を与えることができるのである。

日本でも、ようやくそうした構図を学びつつあり、1997年7月、グリーンシート市場の創設を行っている。マーケットメーカー制度は、1997年6月証券取引審議会答申で導入を提言し、1998年7月、マーケットメーカー制度をスタートさせ、2000年3月よりマーケットメイク銘柄売買執行システム稼働としている。99年6月現在35銘柄としているが、マーケットメーカー制度は店頭登録銘柄のみに止まっている。緒についたばかりである。日本の証券会社は、上場会社の株式売買手数料が収益源とし単なる取引業者に止まってきたために、構造変化にどの程度転換できるか試行錯誤が当分続きそうである。こうした構造は、護送船団方式の行政指導により証券業界自らの創意工夫を封じ込めてきたためである。

マーケットメーカー制度について知りたい方は、「マーケットメーカー制度導入の経緯」「マーケットメーカー制度の概要」をご覧ください。

なお、このサイトはSECの規則を記載している部分は、日本の資本市場の規制緩和を促進し市場経済の活性化のために参考に供しています。最新の規則を網羅しているものではないことをお断りします。したがって,実際に米国で株式や社債を発行する場合は専門家のアドバイスを受けてください。


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日本の未公開株式

グリーンシート市場
1997年7月から、日本証券業協会は、全米証券業協会(NASD)のピンクシート(下記参照)をまねて、グリーンシート(気配公表銘柄制度)市場を開設しました。気配公表銘柄とは、日本証券業協会が売買価格等の公表のため店頭売買有価証券登録原簿(証券取引法第75条第1項の規定の原簿)に登録したものをいう。日本法人が日本国内で発行する株券で、証券取引所に上場されていない株券、新株引受権証券、新株引受け権付き社債券及び転換社債などである。簡単に言えば、証券会社の店頭売買銘柄で、店頭登録及び証券取引所に上場している以外の株式である。グリーンシート銘柄の情報開示は、ディー・ブレイン証券のサイトが見易い。

証券取引法関係(財務情報開示関係)

50人以上の投資家を対象として5億円以上の株式の公募増資・売出しを行う場合、未公開企業(未上場、店頭登録企業以外の企業)は、証券取引法に基づいて、上場および店頭登録企業と同様に会計監査人の監査を受けて企業内容開示(有価証券報告書)しなければなりません。株式の公募・売出し後も、年度と半期ごとに貸借対照表、損益計算書を含む有価証券報告書を提出しなければなりません。

公募増資・株式の売出しが5億円未満の場合、発行時に会社の概要や発行額などを簡単に記載した「有価証券通知書」を大蔵省に提出するだけで済んでいました。

1998年2月18日、日本経済新聞に「公募増資時の財務内容開示義務−1億円以上に対象拡大」と題して、大蔵省は、従来5億円以上の公募増資の場合財務内容の開示義務を課していた基準を、1億円以上の株式の公募増資・売出しを行う企業に対して財務内容を義務付ける方針を固めた、としている。

1997年にインターネットを通じてベンチャー企業が独自に投資家から資金を集めるケースが増加し(5億円未満の公募増資・売出しは96年度で200件以上に達し、このうち1億円以上が100件にのぼる)、基準の引き下げと同時に、成長途上にある企業の事務負担増加を少なくする措置も講じる。会計制度は、2000年3月期から連結財務諸表中心となるが、1億円以上5億円未満の公募増資・売出しをする中小企業については、連結財務諸表の開示を免除する。負担軽減の具体的な内容については、今後詰め、開示内容の詳細を定める省令などに盛り込むとしています。

未公開株で資産運用、大手が続々本格参入(2004年12月1日証券取引法改正のより)

 興銀第一ライフ・アセットマネジメントや米ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントなど大手運用会社が、未公開株を対象とする資産運用業務に本格参入する。12月1日に証券取引法が改正され、顧客から預かった資金を未公開株ファンドで運用できるようになったため。年金基金などの資金が、ベンチャー企業や経営再建中の未公開企業へ流入するきっかけとなりそうだ。

 運用会社が年金資金などを一任運用する投資顧問業務は、株式や債券など有価証券に運用対象が限られている。今回の証取法の改正で未公開株ファンドへの出資分が新たに有価証券として認められ、運用対象にすることが可能になった。複数の未公開株ファンドを組み込んだ投資信託の設定も容易になった。興銀第一ライフは、今年度中に日本アジア投資など国内のベンチャーキャピタル(VC)と組み、複数の未公開株ファンドに投資する私募投資信託を設定する。みずほ証券と共同出資で未公開株ファンドの運営会社を設立済みで、年金基金などから資金を募り月内にファンドを組成する予定だ。 日本経済新聞2004年12月3日(16:01)

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ナスダック株式について


ナスダック市場で取引される企業の株式は、証券法(1933年法で証券発行時の開示を規定ないし米国証券取引法(1934年法で継続的開示を規定)の規定により公開された株式で、米国証券取引委員会(SEC)へ有価証券報告書(年次報告書や四半期報告書など)を定期的に登録する義務が課せられている。

ナスダックは公開株式であり、未公開株でないため、「ナスダックの株式公開基準」へ移しました。


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OTCブリテンボード株について

概要
OTCブリティンボード(OTC Bulletin Board、OTCBB)は、店頭株式(over-the-counter (OTC) equity securities)についてリアルタイムの取引相場、最終売買価格及び取引量をコンピュター上のディスプレイに表示する取引相場提供のサービスを行う。OTCBB株式とは、原則、ナスダックまたは証券取引所に上場していない株式である。OTCBB証券には、全米、地方、外国の株式、ワラント、ユニット、米国預託証券(ADR)及び直接参加プログラム(Direct Participation Programs, DPPs)を含んでいる。

OTCBB銘柄は、マーケットメーカー(証券会社)がFORM211という様式を全米証券業協会規則設定会社のOTC準拠部門(NASD Regulation,Inc.のOTC Compliance Unit)に報告することで、その銘柄がOTCBB上でリストされるというもので、証券取引所への上場基準やナスダックのような株式公開基準はないところから、未公開株式とされている。なお、NASDは株式発行企業とは何らの接触はなく、OTCBBは単に取引情報を提供しているに過ぎないことから、NASDはいかなる責任も負わないことを明言している。

現在約3,600社(2000年6月以前の「適格ルール(Eligibility Rule)」の適用以前は約6,500社であった。)のOTCBB銘柄と、約330社のマーケットメーカーが関与している。大半は株価が5ドル以下のペニーストック(penny stock)である。SECの規定では、ペニーストックの定義は詳細な規定となっているが、大雑把に言えば、株価が5ドル以下で、過去3年間の売上平均が6百万ドル以下、3年以上事業を行っている場合は純資産2百万ドル以下、事業開始後3年以内の会社は純資産5百万ドル以下の会社を言うとされている。 中には、成功しナスダックへ株式公開する企業もあり、また、逆にナスダックの公開維持基準に満たなくなった企業がOTCBBにランク落ちしナスダック公開へ再チャレンジしている企業もある。

OTCブリティンボードとナスダックの違い
OTC
ブリティンボード
ナスダック
最低の株式公開基準 株式公開基準なし(注1) 株式公開基準あり
登録手数料及び取引維持手数料 なし あり
登録維持及び相場維持に関する要求 あり(注2) あり
国内に関するリアルタイムの取引相場 あり あり
登録期間 3日 6週間から8週間(注3)
(注1):マーケットメーカー(証券会社)が、Form211を 作成し全米証券業協会規則設定会社のOTC準拠部門 (NASD Regulation,Inc.のOTC Compliance Unit)へ報告することでシンボル(symbol)を入手し登録され電子取引できる。マーケトメーカーが登録するかどうかは、マーケットメーカーの自己責任の基に決める。
(注2):1999年1月以後登録する会社は、SECエドガーデータベースへ監査済財務諸表の登録義務が課せられた。
(注3):ナスダックはForm211は不用であるが、ナスダックへの登録に6週間から8週間かかる。


歴史
1990年6月、OTCBBは、OTC株式の透明性を高めるために試験的に稼働を開始した。1990年の小額株式改革法(Penny Stock Reform Act)により、米国証券取引委員会(SEC)は証券法の規定に基づき電子システムの確立を求められた。ペニーストックとは一株5ドル以下の小額の株式を言う。米国では、日本のように最低資本金または最低額面額がないためペニーストックがある。

1997年4月、SECは、若干の補正を求めてOTCBBを正式に承認し、5月にDPPsをOTCBBで取引することが認められた。 1998年4月、SECに登録しているすべての外国株式及びADRがOTCBB上でリアルタイムの取引相場、最終売買価格及び取引量を表示することができるようになった。

1999年1月4日、SECは「OTCBB適格ルール(OTCBB Eligibility Rule、(以下"適格ルール"という)」を承認した。1月4日以後OTCBBに参加する企業は、SECの財務情報開示システムであるエドガーデータベース(EDGAR Database=http://www.sec.gov/)に最近の財務情報を登録する義務が生じ、従来からOTCBB上で取引している企業は、1999年7月から2000年6月までを移行期間として、すべて、財務情報をエドガーデータベースへの登録を義務つけた。登録をしない企業の株式はOTCBBでの取引は禁止された。

「適格ルール(Eligibility Rule)」は、全米証券取引業協会(NASD)がOTCBB銘柄の取引数及び取引金額が少ないところから、取引を活性化するために情報開示をして投資家からの信頼性の欠如を改善するために作成されたルールである。 現在移行期間中であるが多くのOTCBB銘柄がSECエドガーデータベースより何時でも何処からでも財務情報は入手できる。

Historical Annual Statistics
Year Average Daily Share Volume Average Daily Dollar Volume Average Daily Transactions Average Daily Securities Average Daily Market Makers Average Daily Positions
1990 26,578,584 $12,506,574 N/A 4,388 235 10,165
1991 15,661,616 $13,202,023 N/A 4,124 233 10,350
1992 10,703,155 $20,968,900 N/A 4,089 315 12,141
1993 11,996,809 $32,595,685 N/A 4,178 368 13,181
1994 28,585,313 $125,674,619 N/A 5,251 376 17,436
1995 41,043,431 $127,679,538 6,765 5,302 408 19,165
1996 61,943,439 $151,812,865 11,224 5,554 405 22,541
1997 71,196,390 $175,895,245 14,260 6,408 423 29,272
1998 123,286,814 $132,559,827 21,586 6,342 414 36,184
1999 323,122,189 $250,407,107 52,828 6,423 387 43,965
2000 467,233,453 $402,219,794 88,445 4,034 345 37,498
2001 381,168,194 $62,935,724 31,175 3,771 306 42,518
2002 656,029,345 $59,773,535 25,421 3,769 279 39,763
2003 1,060,949,618 $159,551,840 37,305 3,556 249 34,149

詳細は「OTC Bulletein Board」というサイトに記述されている。

ピンクシート株(Pink Sheet Stocks)

ピンクシートとは、証券会社の店頭売買(over-the counter marketplace)している株式で、ナスダック、証券取引所、及びOTCブリティンボード以外の株式をいい、これら株式の取引相場がピンクの用紙に印刷しているところから「ピンクシート」と呼ばれている。

全米相場事務所(National Quotaion Bureau,LLC , NQB)は、全米相場サービス(National Quotation Service, NQS)を、1911年設立し、1913年より国内のマーケットメーカーのために毎日の店頭株の取引相場を提供し始めた。現在、700以上のブローカー・デーラー(証券会社)が利用し、ピンクシートといわれる3200以上の株式銘柄、イエローシートといわれる2500社の社債、高利回り債、転換社債、及び外国債、パートナーシップ・シートといわれる直接参加型プログラム(Direct Participation Program, "DDP")の相場を取扱っている。

ピンクシートへの登録は、マーケットメーカーがForm211を作成し、NQBの"ピンクシート”へ届け出ることで行われる。「売り(bit)」と「買い(ask)」の相場及び取引量の情報は、有料で登録したユーザーのみが見られるオンライン相場(http://www.pinksheets.com/index.jsp)で見ることができるようになっている。

ピンクシート株は、ナスダック、証券取引所登録企業のように上場ないし株式公開基準はなく、OTCブリティンボード銘柄のようにSECエドガーデータベースへの監査済財務諸表の登録が義務付けられていない。したがって、財務情報などの情報が入手困難なことからリスクの大きい株式とみなされており、一般投資家の対象とするには大きなリスクを伴っている。

ただし、中には成功してナスダックへ衣替えする企業があったり、家族企業で大きな企業も含まれており玉石混交である。また、紙切れ同然となり損失を被ることも多いが、マイナス面とプラス面を比べるとネットでプラスと評価されている。

投資家保護の面では、各州では全米証券業協会(NASD)やSECと共同で投資家を欺いていないかピンクシート企業の調査を行っている州がある。

また、マーケットメーカーが中小企業にピンクシートへ登録するサービスを行っているが、登録に際しては、(1)Form211に回答する、(2)登記簿、(3)定款、(4)振替代理人(Transfer Agent)からの認定株主リスト(Certified Shareholders list・・株主の存在を立証するもの)、(5)可能であれば、前年度の監査済財務諸表、(6)未監査の最も最近までの財務諸表、(7)取引可能な発行済み株式であることを証する証券弁護士(Securities Attoney)の意見書、(8)もしあれば、最近の証券売出届出目論見書(Offering Circular)、(9)もしあれば、直近のオファリング・メモランダム、(10)審査書類(Due Diligence Package)の完成等が必要としている。

上記OTCブリティンボードがSECエドガーデータベースへの登録義務を課したため、ピンクシートに落ちる企業も出てくる可能性がある。

一方で、SECに登録することを避けるため、ピンクシートを通じて米国証券市場を利用するネッスルのような巨大企業もある。ちなみにネッスルは、200株単位のADRであるが75ドルしている。ピンクシートでの情報開示はない。
To avoid having to file with the SEC, some large foreign companies such as Nestle S.A. have penetrated the American securities markets through the Pink Sheets.”ピンクシートまたはOTCBBで株式を取引している意味”参照 (ネッスルはスイス企業ですが、自社のHPで投資家向けに財務諸表を開示しているが会計基準は不明。)

ドイツの巨大企業である、BASF(ドイツ取引所の上場会社)やadidas AG(ドイツ取引所の上場会社)、フランスおよびオランダの航空会社の共同経営するAir France-KLMユーロネクストにも両国で上場している)もピンクシートに登録している。

2000年6月から、Pink Sheet LLC(ニューヨークの個人企業)が、ウェッブサイト(http://www.pinksheets,com/)を立ち上げ相場情報等を提供し始めた。

未公開株式に関するSECの規定


SECの解説によれば、「SECに登録しないで証券を合法的に発行・売出しできる。」としている。
登録が免除される場合とは次の場合がある。
・ 州内公募免除(Interstate Offering Exemption)
・ 私募免除(Private Offering Exemption)
・ 規則Aによる免除(Regulation A)
・ 規則Dによる免除(Regulation D):
・ルール504による免除(Rule504)
・ルール505による免除(Rule505)
・ルール506による免除(Rule506)

州内公募免除とは、証券取引法セクション3(a)(11)により、株式の発行および売出しが州内の企業で、州内の居住者に行われる場合で、調達資金も州内で運用される場合で、SECへの登録は免除される。 従って、州外の株式購入者に発行または売出した場合は免除がなくなる。また、州内の居住者に新株を発行し、その後、9ヶ月以内に州外の居住者に譲渡することを禁止している。

私募免除とは、証券法セクション4(2)により,株式を売り出す相手先が財務に十分な知識と経験を有し、投資のメリットとリスクを評価できる洗練された投資家(sophisticated investor)であること、通常目論見書に盛られる情報にアクセスできること、再販売しないことにより、SECへの登録は免除される。

規則Aの免除とは、証券法セクション3(b)により、金額的に僅少な場合で、12ヶ月間に5百万ドル未満の発行の場合、条件付きで免除している。
公募時の目論見書などは、SECの地区事務所に登録するが、財務諸表は簡略化され監査を要求されず、総資産が1千万ドル以下で株主数が500人以下である場合は、定期的な有価証券報告書の登録は求められない。 規則Aは技術的には、証券法の登録要求を免除されるが、証券購入者に目論見書(Offering Circular、三つの簡便な様式を認めており、潜在購入者にとって有用で、発行者にとって時間と作成コストの節減ができるとしている)を提供し、発行された証券は自由に売買できるため、しばしば短文様式(short form)の登録とされる。 規則Aの基本的な有利性は、小規模事業者が使用する簡略化したForm S-1,SB-1または SB-2の有価証券報告書を要求されないことである。 規則Aは、証券発行に際して、事前に投資家が発行する証券に興味があるかどうかをテスト(test the water)することが許されている。そこで、発行者は、法律、会計、その他のコストが発生する前に、事業の内容または計画している事業の内容を公開することができる。 しかしながら、委員会(SEC)が発行時の資料を承認しなければ、資金の払い込みを要求することはできないことになっている。

規則D(Regulation D)による免除とは、証券法セクション4(2)および3(b)に基づき、各種の制限的免除を調和させたり、私募や証券売出しに際して要求される事項を合理化するため、1980年3月に採用されたものである。 規則Dは、ルール504、505と506からなり、三つの免除を規定している。

・ ルール504(Rule504)による免除は、SECに対する報告を免除しており、12ヶ月間に百万ドルまでの証券の売出しが許され、証券購入者の数に制限はなく、証券の発行は一般的な公告で行い、規則の基にFormD 通知をSEC本部に初めの売出しから15日以内に登録することが明文化されている。 ルール504は、購入者に特定のデイスクロジャーを命じてはいない。 にもかかわらず、購入者は証券法の詐欺禁止条項(antifraud provisions)に規定している‘全ての情報開示(full disclosure)‘を満たしていることに注意しなければならない。

・ ルール505による免除(Rule505)は、規模の小さい事業者に資金調達を機動的に行えるようにSECが採用したもので、12ヶ月間に5百万ドルまでの証券の売出しについて限定的な免除を発行者に与えている。 公認投資家(accredited investor)に対して売出す場合で、公認の投資家とは、銀行、保険会社、登録された投資会社、事業開発会社、小企業に対する投資会社、特定の従業員厚生プラン、5百万ドルを超える総資産を保有する厚生プラン、5百万ドルを超える資産を持つ企業やパートナーシップおよび慈善事業体、発行会社の取締役およびパートナー、最低百万ドル以上の純資産を所有する自然人、など更に細かい規定となっている。財務諸表の開示は、公認会計士の監査をした直近の事業年度の財務諸表だけでよく、もし発行体が財務諸表全体の監査報告書が合理的理由で入手できなければ貸借対照表だけの監査報告書でもよい。

更に、ルール505は次の制限がある。
・ 証券のそれぞれの発行総額は、5百万ドルを超えてはならない。
・ 一般的な広告宣伝はしてはならない。
・ 発行は公認投資家の数に制限はなく、および非公認投資家は35人までに売出せる。
・ 発行者は購入者が投資目的のみで購入することを確かめること。再販目的であってはならない、最低2年間は再販売してはならない。
・ 発行者は目論見書をSECに登録することを要求されないが、最初に発行したときから15日以内にFormDで売出しの通知を登録しなければならない。また、証券発行に関連して非公認投資家に提供した情報をSECに提出しなければならない。

ルール506による免除(Rule506)
・ 調達する資金の上限はない。
・ 一般的な広告宣伝はしてはならない。
・ 発行者の証券の売出し先は、無制限の公認投資家と、35人までの非公認投資家とし、ルール505とは異なり、全ての非公認投資家は、投資によるメリットとリスクについてを評価できる能力を持ち、財務や事業についての十分な知識と経験を持っていなければならない。
・ 公認投資家の定義はルール505に示した通りである。
・ 公認投資家に対して提供すべき特定の情報はないが、公認投資家が要求して提供した情報は、非公認投資家にも提供しなければならない。
・ 発行者は目論見書をSECに登録することを要求されないが、最初に発行したときから15日以内にFormDで売出しの通知をSEC本部に登録しなければならない。

1980年の小規模事業投資奨励法(The Small Business Investment Incentive Act)は、一以上の公認投資家に証券の売出しおよび発行に関し、新たに証券法(セクション4(6))で法的に登録を免除した。
公認投資家免除(Accredited Investor Exemption)セクション4(6)の内容は次の通り。
・ 証券発行ごとに、小規模発行の限度額を超えてはならない。現行は5百万ドルである。
・ 証券の発行は、一般公告してはならない。
・ 公認投資家の定義はルール505と506と同義である。
・ 証券発行者はFormDを、証券発行したときから15日以内にSECに登録しなければならない。
・ 免除規定(証券法セクション4(6))は、特定のデイスクロジャーを求めていないが、証券法の詐欺禁止条項(antifraud provisions)を免除していない。

連邦の証券法が免除したからといって、州の法律は従う必要がある。 州によって規定のある場合は、それに準拠することになる。

OTCブリテインボード株とは、証券法および証券取引法の側から見ると、上記規則Aによる小規模の資金調達に関する株式の発行が主体となるようだ。
企業情報は、ナスダック企業および証券取引所に上場している企業は、SECのデータベースに企業が直接、有価証券報告書を登録し、誰でもがデータベースにアクセスして見ることができる。一方、OTCブリテインボード株の企業は有価証券報告書の登録は免除されていたが、下記の通り全米証券業協会(NASD)のルール変更をSECが承認したことにより、OTCブリティンボード銘柄の企業は、1999年7月から2000年6月の間に新制度移行期間として、以後、SECのEDGAR Databaseに監査済財務諸表を登録することが義務付けられることになった。SECへの登録を怠った企業の株式等を、証券業者が取引をすることを禁じられた。

としてるため投資家は企業情報を入手し難かったが、最近変更され、1999年1月4日以後、新ルール「EligibilityRule」では、マーケットメーカーがOTC発行企業の財務報告を受けて、SECないし他の規制機関に報告する必要がある。

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企業内容開示について

米国では、証券法ないし証券取引法のもとにSECに有価証券報告書などを登録を要求されている企業(証券取引所に上場している企業およびナスダック企業)は、直接SECのエドガー・データベースに登録し、投資家に限定されず誰でも、何時でも、何処からでもインターネットを利用して無料で見ることができる。

一方、OTCブリテインボード企業については証券取引法の適用はなく、SECのエドガー・データベースから企業財務の情報が入手できなかったが、最近、下記の改革が行われた。

1999年1月、全米証券業協会(NASD)は、OTCブリティンボード銘柄の企業にもSEC エドガー・データベースへ監査済財務諸表の登録を義務付けた新ルール「Eligibility Rule」を作成し、SECが承認した。 OTCブリティンボード銘柄でSECへの登録をしない会社の株式は、OTCブリティンボードでの取引は禁止となった。移行のための経過期間は、1999年7月から2000年6月の間とし、2000年7月から投資家はエドガーデータベース銘柄の企業の財務情報が入手できるようになった。

この改革は、全米証券業協会(NASD)がOTCブリティンボード銘柄の取引が低迷している理由が、(1)OTCブリティンボードの株式売買数が少ないこと、(2)売買株式総額が少ないことなどから、投資家にとっては、(a)OTCBB市場の信頼性の欠如、及び(b)企業の財務情報の入手困難ということであった。 そこで、NASDは、ルールを改訂し新たに「OTCブリティンボード 適格ルール OTCBB Eligibility Rule」を作成しSECの承認を待っていた。


なお、現在、OTCBB銘柄は約6500社に上り、関与しているマーケットメーカーは400社を超える。
ナスダックとOTCビルティンボードとの違いは、ナスダックには株式公開基準があるが、OTCBBでは株式公開基準はなく、関与しているマーケットメーカー(根付け業者)がForm211をOTCブリティンボード、NQB”ピンクシート(注1)”または他の規制当局に登録することで取引が開始される。

注1)ピンクシートとは、証券取引所、ナスダック及びOTCブリティンボード以外の、証券会社が取引している銘柄で、地場のローカルな会社で、これらの会社の相場が書かれた用紙がピンクであることから命名されている。ナスダックなどへ株式公開する前の初期段階の企業で、取引量が少ない。

詳細は「OTC Bulletein Board」というサイトに記述されている。

適用する会計基準について

OTCブリテンボード企業は、NASDの新たなルールにより、SECへの監査済財務諸表の登録は免除されなくなった。証券取引法などの法律では要求されないが、NASDの新ルールで監査済財務諸表のSEC エドガーデータベースへの登録が要求されることになった。

会計監査人の財務諸表監査は、証券取引法であろうとなかろうと、「一般に認められたGenerally Accepted Accounting Principle, GAAP、会計基準」に準拠して作成されているかどうかについて監査意見を述べる。 会計基準は、米国公認会計士にとっては、財務会計基準委員会(FASB)などが設定した会計基準を言うと明文規定があり、SECは会計基準の設定はFASBにあることを明らかにしている。 したがって、適用する会計基準は、任意監査であろうと、証券取引法の監査であろうと同一で、開示情報は、SECが追加的に求めている若干の情報を除き、相違はない。外国会社の場合は、国際会計基準であれば、米国会計基準と実質的な相違はなくなっている。ただし、OTCブリティンボード銘柄となるためには、マーケットメーカーがForm211を作成し全米証券業協会規則設定会社のOTC準拠部門に届け出る必要がある。


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