『カンマを伴う分詞句について』(野島明 著)
第六章 開かれた世界へ

第5節 解読という誘惑


〔注6−40〕

   分析を待つまでもなく、-ing句の受感の在り方があらかじめ指示される場合もある。

-ing節の場合、動態的に[dynamically]用いられている動詞は時間的つながり[temporal link]を、静態動詞[stative verbs]は因果的つながり[causal link]を示唆する傾向がある。
   Reaching the river, we pitched camp for the night. [‘When we reached the river, ….’]
   Being a farmer, he is suspicious of all governmental interference. [‘Since he is a farmer, …’]
   (CGEL, 15.60[NOTE] [b])(下線は引用者)
   CGELの著者は、初めの文例については、二つの事態(-ing分詞句と母節に示されている事態)の間に時系列的関係を見出し、-ing分詞句には副詞的勾配を感じ取っている。

   ちなみに、PEUには、「-ing節では、静態動詞[stative verbs]は普通、理由や原因を示唆する。」(455)とある。こうした指摘を勘案すれば、文頭という位置にこだわる必要はないのでは、とも思われるのだが、PEUの場合、「理由や原因を示唆する」分詞節の位置はすべて文頭である(母節の主辞はすべて代名詞、"we"が一例、他はすべて "I"。[6−5],参照)

   以下は、第二章第5節[6−36]などでも引用した例。

Julia, being a nun, spent much of her life in prayer and meditation. [7](15.60)
〈ジュリアは尼僧であり、人生の多くを祈りと瞑想に費やした。〉(太字体と下線は引用者)
   CGELによれば、「文例[7]の場合、結びつきは時系列を欠いた理由に関わるものである。」(ibid)(下線は引用者)

   とすれば、以下の文例中の-ing分詞句についても「理由や原因を示唆する」ことを感じ取らねばならないのか。

Being an enemy of the Duke's, he left the court immediately. (CGEL, 4.67)
   更に[1−14], [5−12]参照。

  

(〔注6−40〕 了)

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