ここでは、芹沢氏以外の作家によって書かれた心に残る名作を紹介しています。機会があれば、芹沢氏の作品同様一度お読みになっていただければと思います。本の横のひとことメモは管理人の感想です。

『狭き門』 (La Porte Etroite)

芹沢氏が小説の師というジイドの1909年の作。「背徳者」につづくいわゆる「物語」の第2作。冒頭にはルカ伝第13章第24節「力を尽くして狭き門より入れ」の一説が掲げられています。
 アリサはジェロームの愛を歓びながらも、神の国を求めるがゆえに彼の求愛を拒みつづけて苦悩のうちに死んでいく……。

狭き門  芹沢氏が最初に読んだのは「背徳者」でした。他に「コンゴ紀行」を絶賛しています。

著者 : アンドレ・ジイド(Andre Gide)
訳者 : 川口 篤
1937年12月15日 発行
定価 400円
岩波書店

 

『幸福論』 (PROPOS SUR LE BONHEUR)

芹沢氏に馴染みの深いフランスの哲学者アランの代表作。「微笑」「死について」「行動する」など93の章からなる幸福への案内書です。一度に読むというより、その時々に開いて親しむというスタイルがお勧め。
 この集英社版には巻頭に数点の写真が、巻末に年表が付いて便利です。中でも晩年のアランの肖像は、微笑をよしとした彼の生涯を物語っているような表情に会えます。

幸福論  芹沢氏が若き日に書斎で学生達に講義したというアランの幸福論を聞いてみたかった――

著者 : アラン(Alain)
訳者 : 白井健三郎
1993年2月25日 発行
定価 550円
集英社

 

『新約聖書物語』

伝説の人物イエスを実際に地上に生きて呼吸をした一人の人間としてとらえた文学作品。芹沢氏もキリスト教を勉強する際に読んでいますが、「教祖様」と本書の2作を読めば「信仰とは何か」という一つの答えを得るのではないでしょうか。キリスト教という枠を越えて素晴らしい生命の書となっています。

新約聖書物語  30を過ぎてやっと聖書に親しみましたが、これだけ身近にありながら読まなかったことを後悔した本はありません。かつての自分のように真にイエスを知らないひとが今も多くいるのは残念です。
著者 : 犬飼道子
1976年2月10日 発行
定価 3000円
新潮社

 

『雪国』

一高の1年後輩、川端康成の名作中の名作。冒頭の「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」の名文はあまりにも有名。主人公島村と温泉場の芸者駒子との切ない愛を描いています。

雪国  芹沢氏とは人間的タイプの違う川端氏ですが、川端氏は芹沢氏をどう思っていたのだろうかと思います。ペンクラブ会長を引き継ぎたいという申し出に、芹沢氏への信頼は伺えますが。(「川端さんの死について」
著者 : 川端康成
1952年12月5日 発行
定価 360円
岩波書店

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『クリスマス・カロル』 (A CHRISTMAS CAROL)

ディケンズの名作。金だけに魅入られた男が、同僚の幽霊に見舞われたことから始まって、奇異な一晩を体験する。その体験の先にあるものは……

クリスマス・カロル  クリスマスにこの本を贈られたら一生の思い出になるような感動的な書。

著者 : ディケンズ(Carles Dickens)
訳者 : 村岡花子
1952年11月5日 発行
定価 320円
新潮社

 

『ブッダのことば』 (スッタニパータ)

聖徳太子に始まり、最澄、空海、日蓮、親鸞など数多くの宗派を生み出した日本仏教も全てここから始まっています。悟り――こころの平安を保つために説かれた真理の教え。仏典になる以前の最も古いブッダが語ったままの言葉を収録した重要な書。

ブッダのことば  西洋の聖者イエスは愛を説き、東洋の智慧ブッダは法を説きました。この偉大な二人の先駆者のことばを学べる現代はなんという幸せな時代でしょう。

訳  : 中村 元(なかむらはじめ)
1984年5月16日 発行
定価 720円
岩波文庫

「慈しみ」より
 一切の生きとし生けるものは、幸福であれ安穏であれ、安楽であれ。
 いかなる生き物生類であっても、怯えているものでも強剛なものでも、悉く、長いものでも、大きなものでも、中くらいのものでも、短いものでも、微細なものでも、粗大なものでも、目に見えるものでも、見えないものでも、遠くに住むものでも近くに住むものでも、すでに生まれたものでも、これから生まれようと欲するものでも、一切の生きとし生けるものは、幸せであれ。

「こよなき幸せ」より
 尊敬と謙遜と満足と感謝と(適当な)時に教えを聞くこと――これがこよなき幸せである。
 耐え忍ぶこと、ことばのやさしいこと、もろもろの(道の人)に会うこと、適当な時に理法についての教えを聞くこと――これがこよなき幸せである。

『モモ』
(時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語)

世界中で愛されているミヒャエル・エンデの童謡。日本でも映画やミュージカルになってお馴染みですが、まだの方は是非一度、本で読まれてみてください。

モモ  神に書かされた本というものがあると、この本を読んで思いました。歳を忘れ、ワクワクできる大人の童謡。
著者 : ミヒャエル・エンデ(Michael Ende)
訳者 : 大島かおり
1976年9月24日 発行
定価 1600円
岩波書店

 

『芹沢光治良の世界』

不遇な環境に育った少女時代から文学を精神的の支えとして生きてきた著者が、芹沢光治良の作品に出会い、面識もなく手紙と作品を送りましたが、芹沢氏は大人に対するように真摯返事を書きました。そこから始まる二人の長い交流を著者の思いと共に綴った書簡集、沼津への不思議探しの旅と題されたルポルタージュ、作品論の3部構成。

『芹沢光治良の世界』へ  管理人のように芹沢氏に直接ふれ合っていない読者には、なんともありがたい、他人から見た芹沢光治良を知ることができる芹沢ファン必読の書。(左の画像は内容へリンクしています)

著者 : 梶川敦子
2000年6月30日 発行
定価 2400円
青弓社

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『読者はわが子』

芹沢氏の「魂の息子」である岡山の山本正夫氏と芹沢氏の、1976年から1993年まで続いた往復書簡集。この魂の親子の交流は、生身の芹沢氏が感じられる非常に貴重なものです。山本氏は奥様と共に「人間の幸福」にも紹介されています。

『読者はわが子』へ  真摯でやさしさに溢れる山本氏の人柄が、芹沢氏の大きな愛と呼応して胸を打ちます。光り輝くお二人の姿にただただ圧倒されました。(左の画像は内容へリンクしています)

著者 : 山本正夫
1999年2月10日 発行
定価 -円
自費出版

 

『芹沢光治良』人と文学

近代文学研究家、野乃宮紀子女史が書かれた勉誠出版「日本の作家100人」の1冊。著者が芹沢氏を知ったのは1996年と言うから、この9年間で驚くほど研究されたのでしょう。しかしそれは芹沢文学に魅せられた著者にとって、とても楽しい作業だったに違いないと思わせてくれる1冊です。

『芹沢光治良』  野乃宮女史のサロン・マグノリアでの講演を拝聴しました。「芹沢氏の少女小説が面白い」ということで意見が一致して嬉しい限りです。

著者 : 野乃宮紀子
2005年4月10日 発行
定価 2100円
勉誠出版 ←こちらで購入できます

 

国文学『解釈と鑑賞』 特集「芹沢光治良の世界」

中村眞一郎氏の「芹沢光治良の魅力」にはじまり、中央大学の渡部先生のありがたい文学散歩まで幅広い評者による芹沢文学解説の参考書。帰天後4年しか経っていないためか、生身の芹沢氏を感じるようで、芹沢文学が今なお生きて働きかける様を鑑賞できます。

特集「芹沢光治良の世界」  「人間の運命」の創作に一役買った経済学者の柴田徳衛氏の寄稿は楽しい。五十嵐康夫氏の「薔薇は生きている」についての評価は、まさに同感。

著者 : 中村眞一郎ほか
1997年9月1日 発行
定価 1,150円
至文堂

 

国文学『解釈と鑑賞』 特集「芹沢光治良」愛と誠実、その文学の普遍性

阿川弘之、大岡信、両氏の思い出からはじまり、山本正夫氏、阿部光子女史、愛好会の鈴木春雄氏と執筆者の幅が広がっています。渡部先生の写真と文学散歩は今回も非常に有難いです。やはり必読の書。

『芹沢光治良』「秘蹟-母の肖像-」について書かれた刑部憲暁氏は、当館とも投稿で交流頂いた上、この雑誌の存在も教えて頂き、大変感謝しています。山本、阿部、両氏の文章が読めるのも嬉しいところです。
著者 : 阿川弘之ほか
2003年3月1日 発行
定価 1,300円
至文堂

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