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6ch球体音場システム

 

 

1.マトリクス6ch球体音場システムについて

 

近年、マルチチャネル(サラウンド)録音は珍しくありません。然し、リアルさが謳い文句であるにも関わらず、実際聞いてみると、

天井や床が無い、室内か野外か分らない様な不自然な再生音である事に気付き、それの解決手段として、上下のチャネルを追加

した6ch球体音場システムを思い立ち、製作してみました。

尚、その球体音場情報の伝送手段としては、従来機材も流用可能で、音源資産も多く、再現も安価・容易であり、且つ、客観的

評価も少なく、実験の価値も大きい事から、マトリクス方式としました。 (上下情報を伝送できる山水QS4ch方式を、マトリクス方式

とし、6chに拡張しました)

 

 

2.マトリクス6ch方式のエンコード/デコード

 

エンコード式 (赤字が拡張項) 及び、それの実施ブロック図

 

L=0.92 * LF+0.38 * RF+0.92 * LR * i+0.38 * RR * i

0.65 * (1+i) * UP+0.65 * (1−i) * DN

R=0.38 * LF+0.92 * RF−0.38 * LR * i−0.92 * RR * i

0.65 * (1−i) * UP+0.65*(1+i) * DN

 

デコード式 (赤字が拡張式) 及び、それの実施ブロック図

 

LF=   +0.414 * R

RF= R  +0.414 * L

LR=−L * i+0.414*R * i

RR= * i−0.414*L * i

UP= 0.5 * L * (1−i)+0.5 * R * (1+i)

DN= 0.5 * L * (1+i)+0.5 * R * (1−i)

 

 

3.マトリクス6ch方式の音源方向とエンコード結果

 

 

 

位相関係が、上半球は、正面は同相、真上は−+45度、真後は−+90度なので連続ですが、下半球は、真下は+−45度、

真後は−+90度なので不連続が存在します。

 

 

4.マトリクス6ch方式の音源方向とデコード結果

 

周囲へのクロストークが、音源が真上の時はほぼ同相ですが、真下の時は前後逆相となる為、下半球は周囲に拡散する

音場となります。

 

5.マトリクス6ch球体音場システムのまとめ

 

・真上は天井強度や照明器具、真下も生活の邪魔となり、実際の家屋ではスピーカ配置が容易ではありません。

 

・真上や真下へのスピーカ配置は、実際の家屋では、床が近く天井の高さも低い故に、近接せざるを得ず、聞く姿勢で音量バランスが

崩れ易く、安定定位しません。(球体音場システムの隘路)

 

・位相関係が音源が真下の時は+−45度ですが、真後の時は−+90度となる不連続関数故に、再生時に不連続部で違和感を

生じると共に、分離改善のロジック動作に於いても、不連続部での動作が良好ではありません。 (マトリクス6ch方式の隘路)

 

・音源が真下の時、クロストーク成分が逆相関係となり、周囲に分散定位の傾向となり、音場再現性は良好とは言えません。

(但し、ロジック有りでは分散感は若干改善されます)

 

・多チャネル録音に適した指向性を持つマイクが無く、現実音の録音が困難です。 (多チャネル録音の隘路)

 

 

関連資料

 

今回の6ch音場実験用の QS/SQ/6chロジックデコーダその後面その回路、及び、それの QSロジックのブロック図

SQロジックのブロック図6chロジックのブロック図 です。 (尚、6chロジックは簡易型です)

及び、関連機材として QS/SQ/6chエンコーダ (用途は殆ど調整用) と その後面その回路、と パワーオペアンプLM12使用の

6chメインアンプ (想定外の高音質) と その回路です。

 

 

補足

頭上定位するCDは幾つか存在しますが、それらの音像の明瞭化も確認できました。