Fly&Lure Fishing in Chichibu

秩父のヤマメとイワナ

イブニングパラダイス 1998


Akabira-gawa

シーズン中の毎週のイブニングライズ情報

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荒川本流にて

1998年5月

いつものとおり、村の施設の駐車場に車をとめて、川に向かった。

今は、春も終わりに近づき、初夏といってもよいような日だ。

駐車場前から見下ろす荒川本流は、濁りがなくなっていることを除けば、先週と特に変わったところもない。

いつもと同じように瀬は瀬らしく、淵は淵らしくながれている。
荒川の上流部としては、平凡な景色を眺めながら、川に下った。

最初に入るポイントは決まっている。
水深が3メートルほどある淵で、川底には、1メートル以上もあるような石が転がっている。

立ち位置は、水面からほど上がっているので、水中がよく見える。
今日は、浮いている魚が見えない。
今日もドライフライでは駄目そうだ。ここ1ヶ月ほど、ウェットとニンフを使うことが多い。

9フィートのロッドにダブルテーパー3番のライン、12フィート7エックスのリーダーに2フィートばかり2ポンドテストのティペットを結ぶ。

沈ませるフライは、ドライフライのティペットより太くても影響はない。

TMC100の返しを潰した12番フックのグリズリーキング・ウェットは、今年の当たりフライだ。

フロスボディにティンセルを巻いたこのフライは、フックの丈夫さとあいまって、5、6匹のイワナをフッキングさせても壊れない、多少石に掛けても問題ない。

ヤマメをフライにヒットさせるには、ファーストキャストが大切だ。
ファーストキャストですべてが決まるといっても過言でない。

水中の魚に、自分の影が見えないようポイントに近づきキャストする。
強い流れが、岩に当たり渦を巻いているところの50センチ上流側に静かにフライだけを落とす。
フライラインが水面に落ちるとヤマメは、深く潜ってしまう。

ヤマメが最もヒットしやすいところの水面下10センチのところを、グリズリーキングがナチュラルに流れていった。

だが、反応はない。

フライは、2メートルほど流れ、ドラグがかかり30センチくらい沈んだ。

ラインがのびきり、フライにテンションがかかったとき、下からヤマメが静かに浮いてきた。

グレーのウェットフライの10センチ下流に、ワイルドターキーのボトルほどの魚体が定位している。

次の瞬間、流れにあおられたリーダーは、フライを20センチほど横に流した。

ワイルドーターが腹の消えかけたパールマークを見せながら反転し、ラインに強いテンションがかかった。
上唇の先にフッキングしたフライが見える。

ワイルドターキーは、なにごともなかったようにまだ定位している。

キャッチする場所は、今立っているところから3メートルほど岩をつたわって下ったところだ。
ロッドとラインを右手に持ち、左手を岩にかけた。

ラインのテンションが緩み、魚体をくねらし暴れ出した。
ロッドは、弓のようにしなり、リーダーが鳴く。

今度は、下流に向かって走り出す。

不安定なバランスのなか、右手一本では突進を抑える。

ワイルドターキーは、体をくねらせもがく。ロッドは一切かまわず、ラインを引っ張る。

突然、手応えがなくなる。

小さなグレーのフライは宙を舞い、ワイルドターキーは 棲み慣れた深みに戻っていった。



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