『カンマを伴う分詞句について』(野島明 著)
第七章 開かれた世界から

第1節 《分詞構文》と主辞補辞……分詞句の場合


〔注7−2〕

   確かに、文末に位置する分詞句については、"The manager approached us smiling."や" He sat in a corner watching everything but saying nothing.([1−22]及び第七章第1節参照)"などの場合のように、「抑揚によってその母型節と切り離される」ことが不可欠ではないと判断し得るような例は多い。とはいえ、「抑揚によってその母型節と切り離される」方が望ましいと判断し得る例も数多いし、文字表現の場合、カンマが不可欠であると判断し得る例も決して少なくはない。

   以下に挙げる文例@中の分詞句には、文字表現の場合、カンマは不可欠ではないかもしれない(カンマは必要であるという判断の方が適切であるということだ)が、音声表現の場合、何らかの抑揚を伴った休止は不可欠であろう。音声表現における抑揚には常に文字表現のカンマが対応するわけではない([6−7]参照)が、「カンマを伴う分詞句」のカンマは、音声表現では何らかの抑揚を伴った休止に対応する(カンマについては第一章第5節[1−49], [2−22], [3−6], [6−7]参照)。

@
As they approached the barricaded bridge, those three old men plowed their tractor straight into the police blockade, shoving the buses aside and opening the way for thousands to break through as the security men melted away.
〈市民たちが封鎖された橋に近づくと、あの三人の老人がトラクターをまっすぐ警察の封鎖線に向けて突っ込み、バスを押しのけ、人々が通り抜ける道を開くと、秘密警察隊員らは退去していった。〉
(注) they : 炭鉱労働者の呼びかけに応じて集まった"20,000 pugnacious citizens"
(注) those three old men : この記事の冒頭で触れられている"three elderly men on a tractor"
(The End Of Milosevic BY JOHANNA MCGEARY, Time.com, OCTOBER 16, 2000 VOL. 156 NO. 16)

   以下の文例Aの場合、カンマは不可欠である。

A
A body lay on a rickety metal trolley, covered by a sheet.
〈遺体の一つはぐらぐらする金属製車輪付き担架の上に横たわり、シーツで覆われていた。 〉
(Church in Pakistan Is Attacked, Killing Five and Wounding 40 By RAYMOND BONNER, The New York Times ON THE WEB, March 17, 2002)

(〔注7−2〕 了)

目次頁に戻る
 
© Nojima Akira.
All Rights Reserved.