『カンマを伴う分詞句について』(野島明 著)
第七章 開かれた世界から

第5節 「文章体」なのか、「文語体」なのか


〔注7−49〕

主として文語体に用いられるもので、口語ではふつう用いられない。(高梨健吉『総解英文法』、p.476)(下線は引用者)

主として文語体(小説・物語・論文などに現れる)である。(山口俊治『全解 英語構文』、p.146)(下線は引用者)

分詞構文というのは文語体で、会話ではあまり使いません。(山口俊治『英文法講義の実況中継(下)』、p.1)(下線は引用者)

本来、分詞構文は、分詞を含む文句の部分と、「主語+定動詞」を含む部分とが、つかず離れずに結びついた、文語的な構文であって、この2つの部分の間の関係は、接続詞を用いた場合のようにはっきりしたものではない。(杉山忠一『英文法詳解』、p.418)(下線は引用者)

分詞構文は、一般に書きことばとして使われる。(堀口・吉田『英語表現文法』、p.208)(下線は引用者)

分詞の副詞的用法
分詞構文(Participial construction)と呼ばれ、主として文章体に用いられる。(安井稔『改訂版 英文法総覧』、18.3)(下線は引用者)

過去分詞に導かれる分詞構文には、次のようなものがあり、文語調である。(ibid、18.3.2)(下線は引用者)

分詞構文は、一般に文語的表現である。(清水周裕『現代英文法』、p.352)(下線は引用者)

分詞構文は文語的な表現に多く、…。(宮川幸久・綿貫陽・須貝猛敏・高松尚弘『ロイヤル英文法』、p.464)(下線は引用者)

この構文は書き言葉に多く用いられ、文体上の効果をねらって使われるもので、会話などではあまり用いられない。日常的なことを述べる会話文では、分詞構文はきわめて少ない。(綿貫陽・淀縄光洋・MARK F. PETERSEN 『教師のためのロイヤル英文法』p.145)

分詞構文は文語的表現だけに限られ、日常用語としては用いられない。(木村明『英文法精解』、p.517)(下線は引用者)

分詞構文は主として文語体に用い…。(吉住元広『高校英文法 完成編』、p.339)(下線は引用者)

分詞構文というのは、分詞を用いた副詞句が文全体を修飾する働きを持っており、簡潔な表現に適するが、話し言葉(spoken English)にはあまり用いられない。(長谷部作蔵「わかるワカる 高校英語〈基礎編〉」、p.111) (下線は引用者)

この種の構文が比較的文語的といわれるのは当然である。書かれた文では二つの節の関係は視覚によって注意深く吟味することが可能だから、その関係を明示する要素は必ずしも必要でない。(大江三郎『講座第五巻』、p.224)(下線は引用者)

分詞を主要な構成要素とする語群で、主文(主節)(の動詞)に対し副詞的修飾をするもの。原則として、従位按続詞に率いられる副詞節によって言い換えられる。口語ではあまり用いられず、文語的表現である。(清水護 編『英文法辞典』、Participial Construction(分詞構文)の項)(下線は引用者)

分詞を主要素とする語群のうち、主文の「主語+述語」全体を修飾する働きをするものをいう。口語より文語に多く、分詞構文と主文との間には、明らかな休止(書かれた文ではコンマ)が存する。(大塚高信編『新英文法辞典』、Participial construction(分詞構文)の項)(下線は引用者)

一般に文章体に限られ、慣用的な表現を除くと日常の話し言葉ではほとんど用いられない。(安井稔編『コンサイス英文法辞典』、participial construction(分詞構文)の項)(下線は引用者)

AとBに見られる分詞構造[participle constructions]は主として文章英語[written English]で用いられる。(PEG, 276)(下線は引用者)

   「AとB」のAとは「二つの動詞の表わす活動作用が同時である場合」である。次のような例が挙げられている(第六章第5節参照)。
(6―20)
He rode away. He whistled as he went.
= He rode away whistling. 〈彼は口笛を吹きながら馬で走り去った。〉
(6―21)
He holds the rope with one hand and stretches out the other to the boy in the water.
= Holding the rope with one hand, he stretches etc. 〈彼は片手で綱をつかみ、もう一方の手を水中の少年に差し伸べる。〉
(PEG, 276)(下線は引用者)
   Bとは「二つの動詞の表わす活動作用に時系列を見て取れる場合」である。次のような例が挙げられている(第六章第5節参照)。
(6―22)
She raised the trapdoor and pointed to a flight of steps.
= Raising the trapdoor she pointed to a flight of steps.〈彼女は上げ蓋を引き上げ、下へと続く階段を指差した。〉
(PEG, 276)(太字体と下線は引用者。分詞句の直後にカンマがないのは原文通り)
   「主として文章英語で用いられる分詞構造」からは除外されている「分詞構造」として、更にCがある。「第二の活動作用が第一の活動作用の一部を構成する、あるいは第一の活動作用の結果である場合、第二の活動作用を現在分詞であらわすことができる場合」である。文例は次の通り(第六章第5節参照)。以下の文例(6―25)については更に[6−9]参照。
(6―24)She went out, slamming the door. 〈彼女は出てゆき、ドアをばたんと閉めた。〉
(6―25)He fired, wounding one of the bandits. 〈彼は発砲し、(その結果)強盗団の一人が負傷した。〉
(6―26)I fell, striking my head against the door and cutting it. 〈私は倒れ、ドアに頭をぶつけて切ってしまった。〉
(PEG, 276)(下線は引用者)
   更に別の記述。
この項で吟味される非定動詞節[non-finite clauses]は関係詞節と同じように機能する。そして、関係詞節と同様、限定的[defining]ないし非限定的機能[non-defining function]を果たす。
非限定的節は8.120 〜 8.131の中で取り上げられる。こうした節は文字表現[writing]の中でしばしば用いられるが、口頭英語[spoken English]においては普通は用いられない
限定的節は8.132 〜 8.133の中で取り上げられる。こうした節は文章英語[written English]においても口頭英語[spoken English]においても時折り用いられる。 (Collins COBUILD on CD-ROM, 8.118 kinds of non-finite clause) (太字体部は原文でも太字体。下線は引用者。文例は[2−16]末尾参照)。

非定動詞節[nonfinite clauses]は時制標識[tense markers]と法助動詞[modal auxiliaries]を欠き、主辞と従位接続詞を欠いていることもしばしばであるため、統語的圧縮の手段として貴重である。一部の種類の非定動詞節は文字表記の散文[written prose]では特に好まれているが、そこでは書き手には簡潔さを求めて推敲する余裕があるのである。我々は文脈[sentential context]から時制、相[aspect]、また法[mood]と結びついている意味を復元する。(CGEL, 14-8 nonfinite clause[非定動詞節]) (下線は引用者)

こうした構造の一部は、p177に示されているが、口語体[colloquial style]の場合より文語体[literary style]の場合によく見られる。というのも、その簡略的形態は簡潔な言語の中ではしばしば好ましいものとなるからである。(Curme, Syntax, 20-3) (下線は引用者)

「こうした構造」とは「古式の並置形式表現[old appositional type of expression]」(Curme, Syntax, 20-3) であり、「p177に示されている」例は次のようなものである。
'Going down town ( = when I was going down town), I met an old friend.'
'Having finished my work ( = after I had finished my work), I went to bed.'
'Being sick ( = as I was sick), I stayed at home.'(ibid)
   更に別の記述。
(目的辞や付加詞を伴っている場合はそれらを含めた)現在分詞は、主として時・理由あるいは付随的状況の副詞節に等価であることがある。81(b)のように、口頭英語[spoken English]は普通、従位節の方を好む
Arriving ( = when he arrived) at the station, he found his train gone.
Not knowing ( =As she did not know) what to do, she applied to me for advice.
She wrote him a friendly letter, thanking him for his help and sending him her best wishes.」(Zandvoort, A HANDBOOK, 82)
   81(b)には次のような例が挙げられている。
Members wishing to resign ( = who wish to resign) are requested to notify the hon. secretary before January 1st.
It was impossible not to see the distance separating (that separated) masters and men. (ibid, 81)(下線は引用者)
   以下もZandvoortの記述。
自由付加詞[free adjunct]として働いている現在分詞を中心とする語群[present participle group]は等位節に実質的に[practically]等価なことがある。このような場合、分詞は定動詞によって示されている活動作用に先行あるいは後続する活動作用[action]を表わすことがある。分詞は必ずしも明白に継続相[durative]であるとは限らず、その反対であることがよくある。口頭英語[Spoken English]はたいてい等位節を用いる
   Seating myself I began to read ( = I sat down and began to read).
   Entering a covert, she walked along a ride.
   Young men by the dozen came up, asking her to dance.
(Zandvoort, A HANDBOOK, 83)(最初の文例にカンマがないのは原文通り。下線は引用者)
(自由付加詞[free adjunct]については、[1−1], [1−4], [1−8]参照)
   音声表現においては従位節の方が好まれるという事情には相応の根拠があるらしいことを、次のような記述からも窺い取れる。
たとえば、ベバー(1970)に出てくる次の文を見てみよう。
   E13. The girl pushed through the door laughed.
E13が表わしている記号列を、聞き手はしばしばE14のように理解する。
   E14. The girl pushed through the door and laughed. (その少女は戸を突き抜けて、笑った。)
この記号列をもう1度くり返して聞かされ、接続詞"and"はついていないとの注意を受けると、話し手はたいてい、この文は英語になっていないと言う。より正確にいうと、E13の構造は次のE15と同じではないかと言われるまで,彼らはその考えを変えないのである。
   E15. The girl thrown through the door laughed. (戸口から追い出された少女は笑った。)
(J. T. グリンダー/S. H. エルジン著、鏑木英津子訳『入門変形文法』、p.30)
   分詞句の代わりに従位節(関係詞節)を用いて、「(i) The girl who was pushed through the door laughed. (E13に対応) 」(ibid, 注4)(下線は引用者)と発話されれば、ここに述べられているような了解上の齟齬が受け手側に生じることはないはずである。

   なお、「E13は(i)と同じことを意味し」(ibid, 注4)と説明されている。

(〔注7−49〕 了)

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