「環境経済学への招待」

2002.2.11

 さて、「地球の有限性」に着目して導き出されるのは、「究極的には生態系(エコロ ジー)の法則が社会経済を規定する」という認識です。これは何らかの理念から導き 出した理想論ではなく、人類が生存を続けていくために必要な現実的な政策判断です。
この認識に基づいて提唱されるのが、「生態系に適合した技術(エコ・テクノロジー)」 であり、その技術を社会に適用するための税制などの仕組み、「環境というストック を適切にマネジメントするシステム」を構築しなければなりません。そのシステムは 「公的部門、企業的部門、私的部門」にわたるものになります。

「環境経済学への招待」(植田和弘、丸善ライブラリー、1998.4、@740)

1 この本では、「環境税」の前提になる環境経済学が概観できる。

2 1997地球温暖化防止京都会議の議定書を実施して、温室効果ガスの削減を行うこ とになった。

3 今後のキーワードは、「自然と人間の共生(単に便利であれば、汚染物質が出て も仕方が無いというのはだめ)」「持続可能な社会(長い目で見ても人間社会の生存 条件が維持できる)」になる。

4 この基本ルールは、あらゆる分野(技術開発、社会経済システム、ライフスタイ ル)で具体化する。

5 このときに避けて通れないのは、「市場経済の欠陥の修正」と「経済成長至上主 義の是正」がある。
また、世界中全ての人が享受できるものではないという意味で持続可能でない「現代 工業文明の見直し」もある。
具体的には、「環境、資源、生産、消費、廃棄、リサイクル」に係わる社会経済シス テムの再構築になる。

6 このときに、政策の根拠になる考えが「外部不経済の内部化」だ。つまり「外部 不経済(生産コストに算定されていない環境汚染など)を発生させる経済活動が、社 会に負わせている費用(汚染除去費用など)をその発生者に負担させる」ことでコス トを市場経済に組み込み、その欠陥を修正することになる。

7 このときに、「環境汚染のような明らかな社会的費用」に加えて、「豊かな自然 や、歴史的文化的に好ましい町並み、空間」といった価格が付かず市場で扱えない価 値も評価して、コストとして市場経済に組み込んでいくという考えが出てくる。
「環境、アメニティの保全」、「歴史的文化的地域的同一性の保全」といったことで ある。

8 開発の是非を検討するときに、開発がもたらす利益被害を資料として明示するこ とになる。「費用便益分析」だが、そのときに開発企画者によって「便益の過大評価」 と「費用の過小評価」が行われる。何を費用便益に組み込むかにより、試算の結果は 正反対になる。

9 「地球の有限性」や「成長の限界」「環境破壊の不可逆性」といったことに着目 すると、導き出されるのは、「究極的には生態系(エコロジー)の法則が社会経済を 規定する」という認識である。

10 この認識に基づいて提唱されるのが、「生態系に適合した技術(エコ・テクノ ロジー)」であり、その技術を社会に適用するための税制などの仕組み、「環境とい うストックを適切にマネジメントするシステム」を構築しなければならない。そのシ ステムは「公的部門、企業的部門、私的部門」にわたるものになる。

11 廃棄物については、製造者の責任を拡大する方向にある。これは製造者が製品 の技術、情報を持っているので、製造者に責任を負わせることで、製品開発段階から 廃棄物を少なくする動機づけが働くからである。製造者の負担は製品価格に転嫁され る。
制度設計において、「市民・企業・行政」の役割分担を決めるときに、そこに「製造 者が廃棄物を少なくする動機づけ」を組み込まないと、「大量廃棄、大量リサイクル」 の非効率・高コスト・高環境付加のシステムになってしまう。

12 地球温暖化防止では、CO2排出量を1990年水準に安定させることまで決まって いるが、これでは排出自体は続くのでCO2濃度は上がり続ける。CO2濃度を上げないた めには、排出量を50?70%削減する必要があると言われる。

13 CO2排出量の抑制、削減は経済活動の制約条件になるために、経済問題として 利害対立になる。特に、排出原因は先進国により比重が高いため、削減量の割り当て では、途上国との間で割り当て量、費用負担が政治対立になる。

14 CO2の削減可能性の試算結果は、省エネルギー技術導入の見込み方により大き く異なる。また、CO2の削減を進めながら途上国の発展の権利も尊重するには、豊か さのモデルとして、「持続可能な発展モデル」を構築する必要もある。
CO2排出に課税する炭素税は、技術開発や削減への動機づけになる。

15 他、いくつか各論にも言及しています(略)。

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