20世紀の音楽について ~個人的覚書~ 第4夜:20世紀前半の残り

1998年 9月20日 作成
2007年 8月15日 章立てを分割。関連CDリンク追加(作業中)


-目次-

  • 第1夜:プロローグ~20世紀音楽のオーバービュー
  • 第2夜:新ウィーン楽派
  • 第3夜:20世紀初頭のパリ、2つの大戦間のヨーロッパ
  • 第4夜:20世紀前半の残り
  • 第5夜:20世紀後半

    必要に応じて20世紀音楽年表もご参照下さい。(新しいウィンドウに開きます)

  • (注)推薦盤として取り上げているものは、私が聴いてよかったと思うもの、一般に評判の良いもの、聴いてみたいと思っているもの、直接音で聴いてみる手段を見つけたものなどです。私自身も聴いていないものもあり、聴いた上での評価については責任を負いかねますので、自己責任でお願いします。また、CD/DVDの発売・廃盤は日常茶飯事なので、情報が古くなった場合はご容赦下さい(必要なら、下段のリンクからご自分で検索下さい)。


    第4夜:20世紀前半の残り

     20世紀の音楽も、聴いたことがあるものの範囲でつまみ食いしていくと、ほとんどが20世紀前半のものであることに気が付きます。今回も、20世紀前半の中で残っているものを。

    4.1 ドイツ/オーストリア
     前に、ウィーンのシェーンベルク一派、ドイツのヒンデミットをとり上げてしまったので、その他の中から。

    (1)R.シュトラウス(1864~1948)
     いまさら、のメジャーな作曲家ですが、実は第2次大戦後まで生きていました。交響詩を作曲したのはほとんど19世紀で、「後期ロマン派」に分類されるので、あまり20世紀というイメージは強くないのですが、オペラの多くは20世紀に入ってから書かれ、また、1933~1935年にはナチス・ドイツの「帝国音楽院総裁」を務めた現役だったのです。ちなみに、息子の妻がユダヤ人であったことから、この総裁の地位を追われ、暗に陽に迫害を受けたようです。このため、ナチスに取り入ろうと、同盟関係にあった日本政府の求めに応じて、「皇紀2600年祝典曲」Op.84(1940)を作曲しました。この曲、残念ながら聴いたことはありませんし、めったに演奏もされませんね。一度聴いてみたいと思っているのですが。
     晩年の傑作として、「4つの最後の歌」(1948)があります。オーケストラ伴奏付き歌曲で、美しく、味わい深い曲です。後期ロマン派の末裔として、20世紀半ばまでこのような音楽が生み出されていたことに、正直感動します(4曲中3曲がヘルマン・ヘッセの詩です。この時ヘッセもまだ現役)。いい曲ですから、是非聴いてみて下さい。かつて、カール・ベームがこの曲を好きだったらしく、FM放送のライブ録音で何度も聴いたことがあります。
    (注:最近、イギリスの有名なホルン奏者デニス・ブレインの伝記が出たので読んでいたら、この「4つの最後の歌」はフルトヴェングラー/フィルハーモニアによって1950年に初演され、ホルンを吹いていたのはデニス・ブレインとのこと。第3曲の最後に、短いながらおいしいホルンソロがある。これがデニス・ブレインによって初演されたとは・・・)
     また、第2次大戦によって破壊されたもの、滅びゆくものへの悲しみをつづった23の独奏弦楽器のための「メタモルフォーゼン(変容)」(1945)あたりもどうぞ。

    (2)カール・オルフ(1895~1982)
     何故か、「カルミナ・ブラーナ」(1936)1曲だけで知られている作曲家。私もこの曲以外は聴いたことがありません。中世の修道院に残されたラテン語の世俗的・下品な言葉に曲を付けたもので、まあ、素朴で明快、猪突猛進のバイタリティにあふれた音楽であること!TVで車の宣伝などに使われていますね。

    <推薦盤>

    参考盤
    プフィッツナー/交響曲第1番(アルベルト/バンベルク響)
    プフィッツナー/交響曲第2番(アルベルト/バンベルク響)
     こんな録音も出ています。プフィッツナーは、こてこての保守主義者だったようです。代表作は歌劇「パレストリーナ」だそうです。

    マックス・レーガー/モーツァルトの主題による変奏曲、ヒラーの主題による変奏曲(デッカー/ニュージーランド響)(Naxos \819)
     マックス・レーガーの入門盤。「モーツァルトの主題」とは、「トルコ行進曲」のピアノソナタ(K.311)の第1楽章です(モーツァルトの原曲も、主題と変奏曲ですが・・・)。レーガーは多作ですが、創作の中心はオーケストラ曲よりも、オルガン曲、室内楽曲にあるようです。

    コルンゴルト/交響曲(ウェルザー・メスト/フィラデルフィア)(\819)
     ナチスに追われて米国亡命後、ハリウッドの映画音楽で大成功したエーリヒ・コルンゴルト(アメリカでは「エリック・コーンゴールド」)は、第2次大戦後、ヴァイオリン協奏曲などのクラシック作品を携えてヨーロッパを訪れたが、「時代遅れ」として省みられることはなかった。交響曲は1952年の作で、ルーズヴェルト大統領の思い出に捧げられている。主題には、自作の映画音楽が使われている。

    コルンゴルト/ヴァイオリン協奏曲(シュミット(Vn)、小澤征爾/ウィーン・フィル、2004年ザルツブルク音楽祭ライブ)(\661)
     ハイフェッツが愛奏し、最近人気の高まっているヴァイオリン協奏曲。なかなかの熱演で、第1楽章終了時に拍手が入ります。

    コルンゴルト/ヴァイオリン協奏曲(ムター(Vn)、プレヴィン/ロンドン響)
     プレヴィンは、ハリウッドの先輩への敬意か、この協奏曲をギル・シャハムとも録音しています。これは、2003年の愛妻ムターちゃんとの競演。

    4.2 フランス
    (1)モーリス・デュリュフレ(Maurice Durufle:1902~1986)
     「レクイエム」(1947)1曲で知られている、というより、この曲自体もあまりポピュラーではないかもしれません。何故か、宇野功芳氏の本に出てきたのでたまたま聴いてみただけですが、20世紀にも味わい深い曲は多い、という実例で挙げておきます。歴史的にさほど重要な曲でもなく、どちらかといえばフォーレの「レクイエム」の二番煎じにすぎませんが、フォーレが気に入っている方は聴いてみては?(フォーレのレクイエムの方は万人必聴ですね)

    デュリュフレ/レクイエム、他(デュリュフレ/ラムルー管)
     まずは自作自演盤。

    デュリュフレ、フォーレ/レクイエム(A.ディヴィス/フィルハーモニア)
     とりあえずレクイエムを聴いてみたい方。フォーレとのカップリング。

    (2)その他
     ピエルネ(1863~1937)、ルーセル(1869~1937、バレエ「バッカスとアリアーヌ」(1931)など)、イベール(1890~1962、組曲「寄港地」(1922)、フルート協奏曲(1934)など)、フランセ(1912~1997)などがいますので、興味のある方はどうぞ。(詳しくは、前出の磯田健一郎著「近代・現代フランス音楽入門」(音楽の友社・ONブックス)をどうぞ)

    ルーセル/交響曲No.1/2/4、組曲「バッカスとアリアーヌ」、「蜘蛛の饗宴」(クリュイタンス/パリ音楽院管、プレートル/フランス国立管、他) (2枚組 \1,291)
     ルーセルの入門盤。有名どころがそろいます。

    ルーセル/交響曲全集(デュトワ/フランス国立管) (2枚組 \976)
     ルーセルの交響曲を全曲聴きたい場合はこちら。

    イベール/作品集(寄港地、ディベルスマン、祝典序曲、他)(佐渡裕/ラムルー管) (Naxos \787)
     代表作の組曲「寄港地」が入っています。祝典序曲は、大日本帝国の皇紀2600年を祝うために書かれた作品。

    4.3 イギリス
     最近、音楽の友社から「ビートルズに負けない近代・現代英国音楽入門--お薦めCDガイド付き」(山尾敦史著、ONブックス)という本が出ました。イギリスにも、いろいろな作曲家がいるのだな、という印象ですが、私の聴いた範囲から少々。

    (1)ベンジャミン・ブリテン(1913~1976)
     どこかで、「ヘンリー・パーセル(1659~1695)以来の国際的に通用する英国作曲家」というのを聞いたことがありますが、上記の本では、それは根も葉もない誤解と憤慨しています。
     でも、ブリテンだって、そうそう演奏されてはいないと思います。最もポピュラーな「青少年のための管弦楽入門」をもって代表作というのは、あまりにかわいそうです。
     では、どんな曲があるか。まずは、「シンプル・シンフォニー」(1925/1934)。弦楽合奏の曲ですが、作曲年を見てわかるように、20歳の頃に、少年時代に作ったものをまとめた曲。弦楽器奏者の方には知らない人はいないと思いますが、いい曲ですから管・打楽器奏者も聴いてみましょう。機知に富んだ天才のひらめきと、職人芸的オーケストレーションといった音楽です。
     ホルン吹きの私からは、テノールと弦楽・ホルンのための「セレナード」(1943)がお薦め。テノールのピーター・ピアーズ(ブリテンのホモの相手)、ホルンのデニス・ブレインのために作られた曲で、作曲者自身の指揮、ピアーズ(Ten)、タックウェル(Hr)のCDが出ています。ホルンの自然倍音を使って、調子っぱずれの音程も出てきます。
     代表作とされるのが、「戦争レクイエム」(1961)。ラテン語のレクイエムに、オーウェンの英語の詩が織り混ぜられ、全ての戦争を告発する内容となっています。初演では、テノールをピアーズ、バリトンをフィッシャー・ディスカウが歌うという、まさに敵味方を超えた演奏だったそうです。ソプラノは、本当はソ連のヴィシネフスカヤ(ロストロポーヴィチの奥さん)が歌うはずだったのが、当局から出国許可が下りず出られなかったとか。その後の初演メンバーとのレコーディングには参加しています。(すいません、20世紀後半にずれ込んでしまいました・・・)

    ブリテン/セレナード、ノクチュルヌ(ピアーズ(ten)、デニス・ブレイン(Hr)、グーセンス指揮/ニュー・シンフォニー・オーケストラ)
     デニス・ブレインの録音ですが、指揮は作曲者自身ではありません。タックウェル盤は検索で出てきませんでした。

    ブリテン/セレナード、イリュミナシオン、ノクチュルヌ(ボストリッジ(ten)、バボラク(Hr)、ラトル指揮/ベルリン・フィル)
     2005年録音。

    (2)マイケル・ティペット(1905~1998)
     1998年始めに他界した、イギリスの現代作曲家。代表作はいろいろあるようですが、何といってもオラトリオ「我らの時代の子」(A Child of Our Time)(1941)。1938年にパリで起こったユダヤ人青年によるドイツ外交官殺害事件を題材に、ドイツのユダヤ人迫害に抗議して作曲された問題作。バッハの「マタイ受難曲」を模した構成で、コラールの部分に黒人霊歌を使用するなど、なかなか感動的な曲です。歌詞は英語。

    ティペット/オラトリオ「我らが時代の子」(ティペット/バーミンガム市響)
     作曲者による自作自演盤。

    (3)その他
     エルガー(1857~1934)、ディーリアス(1862~1934)、ヴォーン・ウィリアムズ(1872~1958)、ホルスト(1874~1934)などもいますが、20世紀の音楽としては保守的傾向があります。(1934年没が多いですね)

    エルガー/作品集(交響曲No.1/2、チェロ協奏曲、他)(デュプレ(Vc)、バルビローリ、他)(5枚組 \2,513)
     エルガーをまとめて聴きたい方に。主要作品が入っています。

    ディーリアス/作品集(ブリッグの定期市、夏の庭で、「村のロメオとジュリエット」から「楽園への道」、北の国のスケッチ、フロリダ組曲、2つの水彩画、春初めてのかっこうを聞いて、河の上の夏の夜、他)(マッケラス/ウェールズ国立歌劇場管)(2枚組 \1,804)
     ディーリアスの主要作品が入っています。ディーリアスの地味で落ち着いた響きは、心穏やかになります。

    ヴォーン・ウィリアムズ/交響曲全集(プレヴィン/ロンドン響)(6枚組 \2,749)
     ヴォーン・ウィリアムズの交響曲全集には、定番のボールト/ロンドン・フィルハイティンク/ロンドン・フィルアンドリュー・ディヴィス/BBC響)もあり、それぞれに良いようです。交響曲以外に、「グリーンスリーブス幻想曲」や「タリスの主題による幻想曲」「あげひばり」といったカップリング曲で選ぶのも手でしょう。

    ホルスト/組曲「惑星」(「冥王星」付き)(ラトル/ベルリン・フィル)(2枚組 \1,804)
     今さら「惑星」でもないのですが、2006年に惑星から外されてしまった「冥王星」の入ったラトル盤。冥王星は、ホルストがこの組曲を作曲した当時には発見されておらず、コリン・マシューズがケント・ナガノの委嘱で2000年に作曲・初演したものです。このCDは、超メジャーのラトルが「冥王星」を取り上げたこと(ラトルはイギリス人で、イギリスの音楽に愛着を持っている)、発売されたのがまさに冥王星が惑星から外された数日前であったことなどから話題になりました。本当は、前の「海王星」の女声合唱からアタッカでつながっているはずなのですが、この録音(ライブ)では曲の間にポーズを置いています。「冥王星」の出来は・・・ホルストの組曲に「マッチしている」とは言い難いですが、まあ、英国紳士のユーモアということで、一つの独立曲として聴けばよいと思います。
     ちなみに、作曲者コリン・マシューズは、デリック・クックをサポートしてマーラーの交響曲第10番の演奏可能版(いわゆる「クック版」)の作成に携わった人です。(→マーラー 交響曲第10番物語参照)

    ホルスト/組曲「惑星」(「冥王星」付き)(ロイド・ジョーンズ/スコティッシュ・ナショナル管)(Naxos \898)
     「冥王星」付を、オリジナルのアタッカで聴きたい方はこちらを。録音も演奏も一流です。

    4.4 イタリア
     レスピーギ(1879~1936)がいますが、ローマ3部作は皆さん聴いているでしょうからパス。

    4.5 アメリカ
    (1)チャールズ・アイヴズ(1874~1954)
     アメリカで、独自の音楽を作っていたアイブズ。一応大学で作曲の勉強をしたようですが、「不協和音のために飢えるのはまっぴらだ」と言って保険屋さんになり(アイブズ&マイリック保険会社を設立)、かなり有能な経営者で一財産を築いたそうです。作曲は全くの趣味で、演奏されるあてもなく、「変な」曲を作っていました。一例として、「宵闇のセントラルパーク」(1906)。宵闇迫るけだるさの中に、突然ダンス音楽やらいろいろな音が聴こえて通り過ぎ、また静けさの中に消えていきます。違った曲を違った調で同時に鳴らす、といった音楽が特徴。20世紀の初頭のこの頃に、こんな奇抜な音楽が、というのが驚きです。他に、「ニューイングランドの3つの場所」(1908~1912)など。
     交響曲も4曲作っていますが、3番までは、比較的まともな曲です。第2番(1902)から「引用」が始まり、フォスターの「草競馬」や有名な旋律(海軍のテーマのような音楽)が出てきます。気持ちよく聴いていると、最後が不協和音1発、という人を食った曲。第3番(1904)は、賛美歌のメロディの引用が多いまともな曲。第4番(1916)は、一挙に変な曲になり、フォスターや行進曲など、いろいろな引用が用いられ、同時並行でごちゃ混ぜ状態になります。最初に聴いてみるなら、第2番あたりがよいでしょう。
     ずっと無視され続け、認められたのは第2次大戦後。交響曲第3番が1946年にやっと初演され、1947年にピュリッツァ賞を受賞したそうですが、何を今更、と授賞式には出席しなかったとか。長生きしなかったら、埋もれたままだった?交響曲第2番は、1951年にバーンスタインの指揮で初演され、招待を受けたが出席せず、自宅でラジオ放送で聴いたそうです。ちなみに、交響曲第4番も、初演は作曲者の死後11年後(1965)とのことです。

    アイブズ/交響曲全集(ティルソン・トーマス/シカゴ響、コンセルトヘボウ)(3枚組 \1,962)
     とりあえずこれで交響曲と主要なオーケストラ曲(「宵闇のセントラルパーク」「答えのない質問」)が聴けます。ただし、「ニューイングランドの3つの場所」は入っていません。

    (2)エドガー・ヴァレーズ(1883~1965)
     フランス生まれで、ニューヨークに移住して活躍しました。専門は数学者だとか。  代表作は13の打楽器のための「イオニザシオン」(1931。「電離」、英語だと「アイオニゼーション」)。打楽器とサイレンだけで演奏される、実験的な曲。「騒音系」の元祖といわれる曲です。その他、「アンテグラル」(1925、「積分」)など。どれか1曲聴けば十分でしょう。

    ヴァレーズ/作品集(ケント・ナガノ/フランス国立管)(2枚組 \976)
     こんな騒音系を2枚もいらないのですが、これが最も安く、これだけあればヴァレーズは十分です。「デンシティ21.5」「イオニザシオン」「インテグラル」「デセール(砂漠)」など。

    (3)ガーシュイン(1898~1937)、コープランド(1900~1990)
     アメリカを代表する作曲家ですが、有名なのでパス。

    4.6 ソビエト、ロシア
     もはや、ソビエトという言葉自体、死語になってしまったのでしょうか。そこには、ナチス時代のドイツと並び、様々な人生模様があったようです。抹殺された芸術家も多かった?

    (1)スクリャービン(1872~1915)
     ラフマニノフ(1873~1943)と同世代のロシアの作曲家・ピアニストで、2人は何かと張り合っていたようです。「神秘和音」なる不思議な和音を発明して「神秘主義」に走ったり、ちょっとアブナイ方だったようです。交響曲も5曲作っていますが、第4番「法悦の詩」(1908)が有名。「法悦」とは、ナニのときの「エクスタシー」のことだそうですが、どこが?という感じで、聴いていてイッテしまったりすることはなさそうです。

    スクリャービン/交響曲全集(ムーティ/フィラデルフィア)(3枚組 \1,550)

    (2)プロコフィエフ(1891~1953)
     有名なのでパスします。ロシア革命時に日本を経由してアメリカに亡命しますが、この時に聴いた日本の旋律らしきものが、「ピアノ協奏曲第3番」(1921)に出てきますので、聴いてみて下さい(この曲、代表作の一つでもありますし)。日本では、横浜にも滞在し、リサイタルも開いたとか。(→「プロコフィエフと横浜の浅からぬ関係」参照)

    (3)ショスタコーヴィチ(1906~1975)
     今さら解説の必要もない、20世紀を代表する作曲家です。ショパンコンクールにも入賞したピアニストでもあり、学生時代の交響曲第1番(1925)を聴くと、やはり天才だったのだなあ、と思います。(この曲をワルターなどがとり上げ、西側でも一躍有名になった)
     ヴォルコフの「ショスタコーヴィチの証言」以来、生存中の評価(体制順応派)の評価が180度変わり、今では20世紀最大の作曲という評価が定まりつつあります。

     ショスタコーヴィチもいまさらなのですが、このところいろいろと全集が出ているので紹介まで。

    ショスタコーヴィチ/交響曲全集(ハイティンク/コンセルトヘボウ、ロンドン・フィル)(11枚組)
     「証言」と同時期に、ショスタコーヴィチ再評価の口火を切った交響曲全集。

    ショスタコーヴィチ/交響曲全集(ヤンソンス/バイエルン放送響、ウィーン・フィル、他) (10枚組 \5,426)
     「新世代のショスタコーヴィチ」との評価の高い全集。

    ショスタコーヴィチ/交響曲全集(バルシャイ/ケルン放送響)(11枚組)
     一時期\3,000を切っていたBrilliantレーベルの全集。バルシャイは、モスクワ室内管を率いて、ショスタコーヴィチの交響曲No.14「死者の歌」を初演したり、弦楽四重奏を編曲して作曲者公認の「室内交響曲」とした指揮者。

    ショスタコーヴィチ/交響曲全集(コンドラシン/モスクワ・フィル)(12枚組 \4,482)
     何といっても、何曲かを初演した指揮者が、作曲者存命中にソヴィエトで録音した記念碑的全集。かつては唯一の全集でした。

    ショスタコーヴィチ/弦楽四重奏曲全集(ボロディンSQ)(6枚組)
     交響曲は応接間(表向きの顔)であるのに対し、ショスタコーヴィチの本音は居間の弦楽四重奏で聴く、ということで、弦楽四重奏全集も目白押しです。作曲者と関係の深いボロディンSQの全集。作曲者没後の1980年代の録音。

    ショスタコーヴィチ/弦楽四重奏曲全集(エマーソンSQ)(5枚組)
     エマーソンSQのライブによる全集。

    (4)ハチャトゥリアン(1903~1978)
     ショスタコーヴィチ、プロコフィエフに比べると、「二流」との感が免れない作曲家ですが、最もソ連らしい曲を作ったと言えます。代表作は、バレエ「ガイーヌ」(当初1942年のスターリン賛美のものを、1957年にストーリーを変えて改訂)、Vn協奏曲(1940)など。

    4.7 東欧、北欧、など
    (1)バルトーク(1881~1945)
     ハンガリーのバルトークは「民謡の採取」など、いわゆる民族音楽に着目した作曲家ですが、作品は「国際的」な内容になっていると思います。ナチスを逃れてアメリカで客死しました。
     代表作は、歌劇「青ひげ公の城」(1918)、バレエ「不思議なマンダリン」(1919)(「中国の不思議な役人」という訳はちょっとピンと来ない)、弦楽器・打楽器・チェレスタのための音楽(1936)、Vn協奏曲No.2(1938)、管弦楽のための協奏曲(1943)など。
     同郷人にコダーイ(1882~1967)がいます。「国際的」なバルトークに比べ、よりローカルな世界で活躍したようです。有名なのは組曲「ハーリ・ヤーノシュ」(1927)ぐらい?でも、合唱の世界では重要人物とか。

    バルトーク/管弦楽のための協奏曲、弦・打楽器・チェレスタのための音楽(フリッツ・ライナー/シカゴ響)
     いまだにこの曲のベストの演奏だと思います。

    バルトーク/管弦楽曲集(アダム・フィッシャー/ハンガリー国立響) (5枚組 \2,513)
     バルトークの代表作がそろいます。ただし「不思議なマンダリン」は組曲なので、全曲が聴きたい場合は別に探してください。

    バルトーク/弦楽四重奏曲全曲(アルバン・ベルクSQ) (2枚組 \1,291)
     バルトークは弦楽四重奏曲も名曲です。アルバン・ベルクSQの名演で。

    コダーイ/管弦楽曲集(アダム&イヴァン・フィッシャー/ハンガリー国立響) (2枚組 \976)
     フィッシャー兄弟の演奏でコダーイの代表作がそろいます。

    (2)ヤナーチェク(1854~1928)
     チェコの作曲家ですが、傑作は晩年になってから、人妻(カミラ・シュテスロヴァ)に対する老いらくの恋が原動力となって生み出されたようです。代表作は、「シンフォニエッタ」(1926)、「タラス・ブーリバ」(1918)、歌劇「利口な牝狐の物語」(1924)、歌劇「死者の家から」(1930初演)など。

    ヤナーチェク/管弦楽曲集(マッケラス/ウィーン・フィル) (2枚組 \1,804)
     ヤナーチェクの紹介に功績の大きいチャールズ・マッケラスの録音。「シンフォニエッタ」「タラス・ブーリバ」木管六重奏のための「青春」など)

    ヤナーチェク/シンフォニエッタ、タラス・ブーリバ(ノイマン/チェコ・フィル) (\1,050)
     「シンフォニエッタ」「タラス・ブーリバ」に限れば、お家もののこの1枚。

    (3)ニールセン(1865~1931)
     デンマークの作曲家。そういえば、かのゲーゼ(1817~1890)もデンマークでしたね。ヨーロッパの音楽界で、デンマークそのものがマイナーな存在なのかもしれません。
     交響曲を6曲作っており、第4番「不滅」(消し難いもの)(1916)が最も有名。第1次大戦に対する怒り・幻滅感がタイトルの由来とか。木管奏者には有名な「木管五重奏曲」(1922)もあります。これに続き、木管五重奏の各楽器用に協奏曲を作るつもりでしたが、Fl.(1926)、Cla.(1927)を作ったところで交通事故で他界してしまいました。Hr.まで作って欲しかったな、と思います。Fl.協奏曲は、なかなか良い曲だと思います。

    ニールセン/交響曲全集(クチャル/ヤナーチェク・フィル) (3枚組 \1,568)
     ニールセン/交響曲全集といえば、ブロムシュテット/サンフランシスコ響(3枚組 \3,180)が定番ですが、この全集も良いようです。

    ニールセン/フルート協奏曲、クラリネット協奏曲、木管五重奏曲(パユ(Fl)、マイヤー(Cla)、ラトル/ベルリン・フィル) (\1,804)
     豪華メンバーによる、木管五重奏曲と協奏曲をまとめて聴ける1枚。

    (4)その他
     スペインにファリャ(1876~1946、バレエ「三角帽子」(1919)、「恋は魔術師」(1915)など)、ロドリーゴ(1901~1999、「アランフェスの協奏曲」(1939))、ブラジルにヴィラ・ロボス(1887~1959、「ブラジル風バッハ」(1930~1945)全9曲、第5番(ソプラノと8つのチェロ)あたりが有名)などもあります。この辺は、探してみると、いろいろと掘り出し物が見つかることがあります。

    ヴィラ・ロボス/「ブラジル風バッハ」全曲(No.1~9) (Naxos 3枚組 \2,513)
     これは全曲をまとめて聴けるセット。
     バティス/ロイヤル・フィル他(3枚組 \1,804)という全曲盤もあるようです。


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    参考文献


    参考サイト


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