Puppy Linux 日本語版の紹介

  私は2009年以来、Puppy Linux を使っています。 特に Windows XP のサポート期限が迫った 2013年からは本格的に研究を進めてきました。
  Puppy Linux はオーストラリアの Barry Kauler 氏によって開発されましたが、その後のすべてのバージョンに Kauler 氏が関わっているわけではありません。 現在は、Puppy Linux コミュニティーが開発を引き継いでいます。Puppy Linux 日本語コミュニティーによる日本語版は precise 5.7.1JP (571JP) が最後です。 より新しい 6系以降には正式な日本語版が存在しませんが、 ランゲージパックを用いて英語版を日本語化する方法があります。また、非公式な日本語化版 iso も存在します。

Puppy Linux 関連のリンク

Puppy Linux 日本語版 ... いわゆる公式サイトですが、長らく更新されていません。
Puppy Linux 日本語版 アーカイブ ... 571JP や以前のバージョンの iso があります。
パピーリナックス日本語フォーラム ... 最新の情報はこちらにあります。


  「Puppy Linux 日本語版」サイトは 2014年以来更新されていないのが残念です。古いバージョンの Puppy では最近のハードウエアに対応できませんし、iso に収録されているブラウザも現在のインターネット環境に対応できません。
  比較的新しいパソコンでは「セキュアブート」といって Windows 以外の OSの起動を阻む仕組みが備わっているものがあるので注意が必要です。 Puppy のインストーラの中にはセキュアブートに対応したものもありますが、できれば PC の設定で無効にしておくほうが無難です。また、セキュアブートが登場する少し前から、従来の BIOS に代わって UEFI (これも BIOS の一種) が搭載されるようになっています。grub4dos というブートローダでは UEFI に対応できません。grub2 なら対応できます。
  Puppy は CD から起動して (または Windows 上でインストールして) 動作するので、試用は簡単です。

frugal インストールと個人保存ファイル

  ISO イメージを CD に焼いて CD から起動することもできますし、ハードディスクや USB メモリにインストールすることもできます。 そのためのインストーラーも付属しています。 一般にインストールと言えば、ハードディスクにシステムファイルをコピーすること (full インストール) を意味しますが、 Puppy は frugal (質素な) インストールといって、sfs 形式の圧縮ファイルをハードディスクに置くのが基本です。 OS 本体は読み取り専用の sfs に格納されており、設定の追加・変更等は、差分として個人保存ファイル (save ファイル) に保存されます。
  full インストールも可能ですが、frugal インストールが推奨されています。 この方式のメリットは、Windows と同じ区画に共存できることと、個人保存ファイルのバックアップから簡単にリカバリーできることです。 何らかの原因で正常に動かなくなった場合に助かります。(バックアップの時点に戻すことができます。)

  個人保存ファイルのサイズは初期サイズ 512MB が推奨されていますが、足りなければ後から拡張することができます。あまりサイズを大きくするとバックアップをとるのに時間がかかる、というデメリットもあります。
  個人保存ファイルをバックアップする時は、このファイルを使用していてはコピーできないので、RAM モード(save ファイル無視) で起動しなければいけません。 CD から起動する場合は、起動途中に boot: puppy pfix=ram というオプションを打ち込みます。 起動途中は英語キーボード配列と認識されているので、= キーは右隣の「へ」と刻印されたキーになります。
  最近の Puppy では、起動メニューから RAM モードを選ぶことができるようになっています。また、save ファイルを読み込んで Puppy を実行している最中でもバックアップを取ることができる Pupsave Backup というユーティリティーもあります。

  frugal インストールした Puppy のフォルダの様子
  (bionicpup64save.3fs は個人保存ファイルです。Puppy のバージョンによっては、この他に adrv_*.sfs fdrv_*.sfs などが存在します。)

bionicpup64 のフォルダ

アプリケーションの追加

  Puppy は web ブラウザ、簡単なワープロ・表計算ソフト、メディアプレーヤなどを含んでいますが、アプリケーションを追加するには、 以下の方法があります。

 (1) ソースからのコンパイル
 (2) パッケージからのインストール
 (3) sfs ファイルの追加

sfs ファイルは OS 本体と同じ場所に置いて、「ブートアップの設定」メニューで起動時に読み込むように指定します。

  ソースからコンパイルするには、開発用の sfs (devx_*.sfs) と、場合によっては kernel source の sfs が必要になります。 これらは OS 本体とカーネルバージョンが一致するものを使わなければなりません。
  パッケージからのインストールは基本的にパッケージマネージャを使って行いますが、パッケージを自分でダウンロードしてインストールすることもできます。 しかし、(1) と (2) のインストール方法ではサイズの限られた個人保存ファイルに入るので、空き容量に注意を払わなければなりません。
  Office ソフトやブラウザのような比較的サイズの大きなアプリケーションは、sfs の追加で利用すれば、個人保存ファイルを圧迫しないで済みます。 full インストールでは sfs の使用はサポートされません。 つまり、full インストールをすると Puppy の特徴の一つを殺してしまうことになります。 (現行の Puppy では full インストールは無効化されています。)



  Puppy には主に Ubuntu ベース、Debian ベース、Slackware ベースのものがあります。

  以上、私なりにまとめてみました。最初に記した Puppy Linux 関連サイトのうち、最新情報があるのは「Puppy Linux 日本語フォーラム」です。 フォーラムに書き込むにはユーザー登録が必要ですが、その際に yahoo メールや gmail のようなフリーメールでは受け付けてもらえないようです。

最終更新 2025年10月

  ※ Puppy Linux の実際の運用については「雑感」をご覧ください。

Puppy 6系以降

  2024年6月現在、オフィシャル Puppy は、S15Pup-22.12, F96-CE (Fossapup64 9.6), BookwormPup です。F96-CE は 64bit 版のみ、他の2種には 32bit 版と 64bit 版があります。
  Slacko Puppy 7.0, XenialPup 7.5, Bionicpup 8.0, Fossapup64 9.5 がオフィシャル Puppy のラインアップから外れました。

 パピーの最新版はどれですか? (日本語フォーラムの記事)

  32bit Puppy は本家から英語版をダウンロードして、日本語化 sfs (lang_pack_ja-2.1.sfs) を適用すれば、日本語版として使えます。ただし、このパッケージは最終更新が 2017年なので、それ以後に発表された Puppy との乖離が大きくなりつつあります。 特に最近の Debian / Ubuntu 系 Puppy とはディレクトリ構造が異なります。また、64bit Puppy では動作しません。64bit Puppy 用には langpack_ja-2.3-amd64.pet があります。
  いずれにしても、これらは特定のバージョンの Puppy 向けではなく汎用パッケージなので、特定のバージョン専用のパッケージがある場合は、それを利用することをお勧めします。

  Puppy Linux 日本語フォーラムには、正式版ではありませんが、日本語化された Puppy の ISO や個別のバージョンに対応した日本語化パッケージがアップされています。

関連する記事(当サイト内)
 ThinkPad X121e と Tahr Puppy
 Tahr Puppy 64bit 日本語化の試み
 Slacko Puppy 6.3.2
 XenialPup 7.5
 Bionicpup64
 Puppy Linux 8.0 (Bionicpup)
 Fossapup64 9.5
 Slacko Puppy 7.0
 S15Pup-22.12
 F96-CE と BookwormPup

補足

  Firefox 46 以降は gtk-3 のライブラリを必要とします。また、Firefox 52 からは音声出力に PulseAudio を利用します。Puppy はシステムをできるだけ小さくすることを目標にしているので、571JP や Tahrpup 6.0.5 の初期状態ではライブラリの不足により、新しい Firefox は動きません。
gtk-3 (libgtk-3) はパッケージマネージャを通じて簡単にインストールできますが、PulseAudio の関連ファイルはサイズが大きいので、PulseAudio をエミュレートする apulse を利用したほうがいいと思います。

  XenialPup 以降は最初から gtk-3, apulse を搭載しています。最新の Puppy は Pulseaudio や Pipewire を搭載しています。重装備になった分、iso のサイズが大きくなりました。

[ホームへ]