家族で巡るアガサ・クリスティ・カントリー

第1日(出国〜ロンドン) 

はじめに

 「イギリスに行きたい」。ある日ふと思い立ちました。
 NHKで放映されていた『名探偵ポワロ』が好きで、ビデオに撮ったのを何度もくり返し見ているうち、ドラマの舞台を実際に見たくなってしまったこと。赤瀬川源平の『イギリス正体不明』に載っている風景をこの目で確かめたくなってしまったこと。クリスティの小説で描かれるイギリスの料理やお菓子を食べてみたくなったこと。そういった細々としたあこがれが積み重なっていくうちに、「これは行ってみるしかない」ということになりました。ひとりで行ったってつまらない。行くならもちろん家族そろってです。
 イギリスへ行こうと思い立ったのが1998年12月。実際に出かけたのは翌年の5月末のことです。たかだか7泊9日の旅行の準備のために半年は大袈裟かもしれませんが、始め想像していたのと違って単純にツアーに乗るだけというわけにはいかず、思いのほか準備には手間取ってしまいました。地図はどこ? 時刻表は? バスの路線図は? ホテルのリストは? と、まさに手探りのところから始めたため、ホテルの予約がすべて完了したのは出発の10日前のことでした。
 家族でのイギリス旅行の記録をなんとなくまとめておいたものを、龍川優さんのご好意によりこのたび一部公開させていただくこととなりました。ありがとうございます。
 実は、この旅行の「核心部分」は、インターネットを駆使しての旅行の準備にあるのですが、そこはまた機会があったら自前のホームページで公開できればと思います。今回のバージョンでは旅先の風景を中心にお伝えいたします。


成田空港〜ヒースロー空港

 さて、いよいよ「家族で巡るアガサ・クリスティ・カントリー 7泊9日の旅」に出発です。成田までは新宿発の「成田エクスプレス」を利用します。
 朝7時過ぎに新宿駅より成田エクスプレスに乗車。東京のビル街を抜けて小一時間、窓の外はたんぼが広がります。まもなく空港ターミナルに到着というときになって、「具合が悪い」と娘が言い出しました。娘は乗り物に弱いため、リュックには酔い止めとエチケット袋(家族内ではゲロゲロ袋と呼ぶ)を入れてありましたが、これはイギリスでバスや船に乗るときのために用意したもの。電車では酔ったことがなかったため、これは計算外でした。この調子だと先が思いやられます。
 デッキに移動し酔い止め(液体タイプがよろしい)を飲ませると、まもなく落ち着いてきたようです。ほどなく第2ターミナルに到着。離陸までの2時間ほどを、空港内を探検したり、最後の?和食を楽しんだりして過ごしました。
 全日空機は定刻通り離陸。ヒースロー空港へ向かう飛行機の中では朝早かったのと直前に飲ませた酔い止めがまだ効いていたのか、娘はすぐに眠ってしまいました。目がさめてからは絵を書いていました。
 旅の楽しみといえば、食べ物です。ほとんど好き嫌いなし、食物アレルギーもなしの私どもは機内食もおいしくいただきました。
 ロシア上空のうねうねとした川と茶色の大地、オランダ上空のパッチワークのような風景などを楽しんでいるうちに、機はイギリス上空へ。およそ12時間のフライトですが、時計は3時間ほどしか進んでいません。ずっと昼間の景色を眺めながらヒースロー空港に着陸しました。
 ヒースローの入国審査はひどい混雑でした。おまけに風通しが悪く蒸し暑い。そんななか、係員が子連れ客を見つけると、「先に行け」と指示をしてくれます。長蛇の列ができていて申し訳なかったのですが、気分が悪くなりそうだったため、ありがたく先に手続きをさせていただきました。


ヒースロー空港〜ロンドン

 ヒースロー空港からロンドンまでは開業まもない「ヒースロー・エクスプレス」を利用します。ロンドンのターミナルであるパディントン駅まではおよそ15分。15分間隔で運行しています。運賃は普通車両のエクスプレス・クラスで10ポンド(約2000円)です。
 ヒースロー・セントラル駅にはクレジットカード対応の自動販売機があり、おまけに日本語のガイド画面付き。簡単にパディントン駅までの切符を買うことができました。切符を購入すれば、改札口はナシ。スーツケースをころがしたまま、列車に乗り込むことができます。車内では車掌さんが改札にやってきます。急ぎのお客は車掌から切符を買ってもよいようでした。
 車窓を流れるれんが造りの建物を眺めていると、ああ、イギリスについにやってきたのだと実感がこみあげてきました。

■ヒースロー・エクスプレスの切符を買う


ホテル選びのポイントは?

 さて、ご存知の方も多いかと思いますが、ロンドンに「ロンドン駅」はありません。ヒースロー・エクスプレスが到着するパディントン駅はロンドンの西のターミナル。ここからは、今回の旅の目的地である南西イングランド方面への列車も出発します。今夜の宿は、パディントン駅から歩いてすぐのB&Bをインターネットで予約しておきました。
 ホテル探しのポイントはまずは「子供オーケー」なところ。イギリスでは大人の領域と子どもの領域の区別が厳しいらしいということを聞いており、中には子どもお断りのところもある模様。インターネットのホテル探しのサイトにも「Children welcome」というチェックポイントがあります。「Children welcome over 4 years old」とでもあれば、4歳以上ならオーケーという意味ですね。それと「イングリッシュブレックファスト」が料金に含まれていること。イギリスは朝ご飯がいちばんおいしいとのことですから、これははずせません。
 ロンドンでは直前までチェルシーフラワーショーが開かれていたせいか、格安なホテルはどこも満室。ロンドンで最初に泊まるホテルがとれたのは、出発の10日前のことでした。


ロンドンは雷

 パディントン駅はホームまでタクシーが乗り入れる駅として有名です。残念ながら改修工事中で、あの黒いロンドンタクシーがホームに並ぶ姿は見ることができませんでした。インターネットからダウンロードしてきた地図を頼りにホテルを見つけ、無事にチェックインを済ませました。
 ロンドン到着時はまずまずの天気だったものの、夕方遅くなってから雷雨になりました。ホテルの非常ベルまで鳴り始め、かなりびびる。こりゃ火事でもおきたのかと思い、とりあえず貴重品だけまとめ、きちんと靴を履いておろおろしていました。しばらくすると何事もなく雨は上がりましたが、後からの情報によると、電話が通じなくなるなどの被害が出ていた模様です。非常ベルは誤作動だったようです。
 夕食は近くの雑貨屋で購入したサンドイッチ、ヤクルト(売っていた)、りんご(小粒ですごくおいしい)などで済ませ、早々とベッドに入りました。


■パディントン駅といえば熊のパディントン! 南米ペルー
から密航したパディはこの駅でブラウンさんたちに拾われた。
パディグッズの屋台あり。トレーナー、スプーンなどを購入


■1日目のカーディフホテル。地図を眺めるとパディントン
駅の近くにはホテルがやたらと多い。同じ区画にホテルがひ
しめきあっている。いったいこのへんはどんな作りになって
いるのかと思っていたら、現地に行って事情が呑み込めた。
1つの建物を細かく区切ってそれぞれが独立した小さなホテ
ルとして営業している。古いタウンハウスを利用しているら
しく、西洋長家という感じ。もっとも長家といってもそれぞ
れの棟が5階建てくらいなので、ひとつひとつのホテルは縦
に細長い。エレベーターなしの4階の部屋。ダブルベッド1
つにシングルベッド1つ。汚い部屋だが朝食はおいしかった。
シャワーとトイレ付きで1泊84ポンド(約1万7000円)



 
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