第3節 ある教科書が自ら身を置いた窮境
〔注6-19〕 同じように主辞の直後に置かれた「カンマ+分詞句」でも、副詞的勾配の方を感知しやすい(「分詞句と母節[1-10]」の関係の方が優位であると感じられる)場合と、形容詞的勾配の方を感知しやすい(「分詞句とその暗黙の主辞」の関係の方が優位であると感じられる)場合がある(「勾配」については[6-6]の末尾参照)。 さて、以下の二つの文例中のいずれの分詞句がいずれの場合に当てはまるだろうか。
The Arab countries, driven by a wave of sympathy for the Palestinians, are expected to give him a massive endorsement, as well as promises of support. あるいは[1-13]で既に挙げた例。
The strategy, called Plan Colombia, seeks $3.5 billion in international aid in the next three years. 主辞の直後に置かれた「カンマ+分詞句」の中には副詞要素であると確言されるようなものもある、とする記述もある。 一般的に補足(節)[supplementive]であると明白に分類されるようなものが二種類ある。こうした記述の支えとなりそうな記述を紹介しておく。PEUは、"*Do you know anyone having lost a cat" (PEU, 454)(記号「*」については[1-24]参照)を「典型的誤り」の例として挙げている。「二つの動詞の活動作用[actions]に時の相違[time difference]がある場合、分詞は用いることができないのが普通である。」(ibid)と説明され、適切な文として、"Do you know anybody who has lost a cat?"(ibid)が示されている。また、「"Being"は、受動的動詞構造[passive verb constructions]の場合を除いては、形容詞的節[adjectival clauses]においては使用し得ない。」(ibid)として、次のような文例が挙げられている。 Anybody who is outside after ten o 'clock will be arrested.助動詞もしくはbe動詞の-ing形に導かれる-ing節は名詞句の後置修飾要素とはなりえないといったCGELの指摘を考慮に入れ、"The children, having eaten their fill, were allowed to leave the table."。(CGEL, 15.61)にみられるような分詞句を、本稿では今後、「非制限的名詞修飾要素」と表記する代わりに「並置分詞句」と表記することもある。"apposition"に「同格」の代わりに「並置」という語を充てることは既に[1-1]で述べた。"apposition"の語義を考えた場合、これに「同格」という語を充てることは不適切であると考えたからである。 別の名詞を説明したり特徴づけたりする名詞は、その傍らに置かれ、その位置ゆえに、並置要素[an appositive](即ち、傍らに置かれた[placed alongside of])と呼ばれる。Curmeの「並置要素[an appositive]」は名詞という形態に限定されるわけではない([1-1]参照)。
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