『カンマを伴う分詞句について』(野島明 著)
第六章 開かれた世界へ

第4節 「カンマを伴う分詞句」の「暗黙の主辞」の在り方について

その四 文形式Aの場合


〔注6−34〕

   「二種類の陳述」の手掛かりは、はCGEL(15.62)では次のような記述に得られる。

次の例は、同一の文の代替的表出であり、相違点は文例[1]では情報面で二つの焦点があるが、文例[2]では一つしかない、ということだけである。
   The manager APPROACHED us, SMILing. [1]
   The manager approached us SMILing. [2](CGEL, 1562)
([1]には"SMILing"の前にカンマがあり、[2]にはカンマがない。下線は引用者)
   更に、別の記述。
自由付加詞を含む文を単文と複文[compound sentence]の中間的なものと考えることは極めて妥当であるように思われる。更にまた銘記すべきは、自由付加詞は文の他の部分から殆ど完全に独立しているという可能性があり、自由付加詞は複文の一部というよりむしろ文集合[sentence-group]の一要素であることを示唆している可能性がある、ということである。
(KRUISINGA & ERADES, An English Grammar, 146-5)
(下線は引用者。「自由付加詞」については[1−1], [1−4], [1−8], [6−39], [7−29]参照)

文字表現[writing]においては、一つあるいはそれ以上の形容詞を含む句を文に付加することができる。これは一文の中で二つの陳述を述べるもう一つの方法である。
例えば、`We were tired and hungry. We reached the farm'と書く代わりに、`Tired and hungry, we reached the farm'と書くことも可能である。
(Collins COBUILD on CD-ROM, 8.135) (下線は引用者)([6−3]参照)

   少し視野を広げて考えれば次のような記述にもその手掛かりを求められる。
制限的節[restrictive clause]を伴う文には単一の陳述が含まれており、連続節[continuative clause]を伴う文には二つの陳述が含まれている、ということもまた指摘されよう。
(Zandvoort, A HANDBOOK OF ENGLISH GRAMMAR, §462, P.163) (下線は引用者)
   更に、[1−52]参照。

(〔注6−34〕 了)

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