米国の経済安全保障「自国が優位を保つこと」
それ自体がルール(イラク開戦の前)

(メールマガジン2003年7月から)

6年以上前の記事です。米国で経済安全保障を強く訴えたのは、1991年の大統領候補クリントン。2003年ブッシュ・ジュニアは、石油資源の枯渇が現実の問題になる中で、自国の意のままになる石油生産地を確保するために開戦した。さて2009年に就任したオバマ大統領は、実父がケニア、義父がインドネシア出身ということもあり、他国の利害も考慮する相対的な視点を持っているが、米国の大統領という制約の下で、独自の判断を維持できるだろうか。
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米国は、米国の経済安全保障と軍事産業維持のために、イラクを攻撃する。

1「アメリカが国際的な指導力を維持するには、強い経済力を回復しなければならない。」「軍事力は国家の安全保障になくてはならないものだが、それ以上に経済力は重要な意味を持つ。」これは1991年の大統領候補クリントンの演説とのこと。

2 これは東西冷戦が、東側の崩壊で終わった頃のこと。1990年に「ドイツ民主主義共和国(東ドイツ)」、1991年に「ソビエト連邦」が崩壊した。結局、体制選択はソ連・東欧の崩壊で終わったが、一方、「資本主義の生産活動は無秩序に行われるから無駄が多く、必然的に好況と不況を繰り返し果ては恐慌に至る」とも考えられていた。
これも今でも資本主義を放任すれば「好況と不況を繰り返す」から、公共事業で需要を作り出したり金利政策、為替政策でいつも修正しながら社会が破綻するのを回避している。経済学上は資本主義の捉え方は変わらず、修正資本主義としてしか存続し得ないことも明らかだ。
 方法論としての純粋資本主義は(国家管理的社会主義が1991年に破綻したのと同じく)いち早く1929年(世界大恐慌)に破綻している。「神」は資本主義の修正(=修正資本主義)を人に命じたのだ。それは「他人を蹴落とす」ために命じたのではなく、「より多くの人が幸せになる(=諸国民の富)」ために命じたのだろう。

3 経済安全保障は、具体的に自国権益の侵害を受けたことを理由にするのでなく、「自国の優位を保つ」ことそれ自体を安全保障の目的にしている。相手がルールを守らないとかではなく、「自国が優位を保つこと」それ自体がルールになる。経済安全保障の対象は、台頭する勢力になる。「ジャパン、アズ、ナンバーワン」と持ち上げられたかつての日本や、大きな勢力になるEU(ヨーロッパ連盟)、経済力を付けたニーズ(東アジア新興工業国)など。交渉や為替を用いて、ときには非合法手段も使って、米国の優位を実現する。

4 今は、石油資源の枯渇が現実の問題になり、石油消費に依存する米国社会では、相手の意志も加わる貿易交渉ではなく、経済安全保障の観点から、自国の意のままになる生産地を必要としている。かつての日本が、石油輸入を止められて、第二次大戦に突入したのと同じ理由になる。

5 また軍事産業維持は、在庫兵器の一掃、新開発兵器の実用実験が米国にとって必要なこと。従って、今回の攻撃は、どんなに早くても在庫兵器の一掃、新開発兵器の実用実験が終わるまで終わらない。兵器の実用実験は、日本の広島、長崎で核兵器を使い、データを集めた。あの時点で核兵器を使わなくても、戦争は数か月で終わっていた。米国は、自国軍隊でも兵士を使い、実用実験をしている。兵器を世界に供給することは、米国の影響力を行使する手段になっている。従って、大量の犠牲者、難民を生む戦争をしなくても、武装勢力を伴った強制的査察の方法があったとしても、敢えて、米国は戦争をする。

6 それは、今回の目的が、「大量破壊兵器の廃棄」にあるのではなく、経済安全保障のために、中東地域での「自国の優位を確立する」ことだからということになる。

7 つまり、イスラエル問題も、この観点から、米国にとっては、何の矛盾もない。

8 かつてゴルバチョフ・ソ連大統領は、「人間の顔をした社会主義」をキーワードに、国家管理的社会主義の終焉を招いた。「人間の顔」への修正を標語にしながら、世界の行き着く先が「猛獣型」資本主義であるならば、それも又、道を誤ることと言わざるを得ない。
資本主義を研究した「国富論」。そこには「他人を蹴落として自分だけ幸せになる」方法が書いてあるのか?「神の見えざる手」は、その様な社会へ人を導くのか?もちろん、そうではない。

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