児童扶養手当の支給額抑制は、方法を慎重に検討を!
離婚は子供の「自己責任」ではない

(メールマガジン2001年12月から)

報道によると政府は、離婚などによる母子家庭に支給している「児童扶養手当の支給額抑制」を検討しているとのこと。現在の制度には、ここまでに来る経過、理由があるので、「増えたから減らす」と単純に進めず、女性に多いパート労働の実状も見て、制度変更がもたらす影響を見極めて、慎重に検討、審議することが必要だ。

1 支給事務が2002年8月に都道府県から市などに移る時期に合わせて、2002年2月に改革大綱(手当期間短縮、就労支援)をまとめ、2002年3月に法案を通常国会に提出するという。

2 目的は、母子家庭に支給している児童扶養手当の総額を抑制すること。
(1)現行2段階の支給額区分を細分化してなだらかにすることで、総額を抑える。(これは、2002年12月支給分からを予定)
(2)支給期間を短くする。(これは、2003年度からを予定)
(3)上記の附随措置として、就労支援。(これも、2003年度からを予定)

3 今の支給期間である理由
(1)現在の支給期間は、広島市にある(昭和54年[1979]頃あった?報道もされた)「児童扶養手当を18歳に引き上げる会」などの陳情、運動などにより実現したもの。
また、満18歳では高校在学中に打ち切りになるため、高校卒業までの支給を引き続き要望した。

(2)つまり支給期間の短縮は、当時と同じく、高校退学などに直結しかねない。

(3)そもそも「社会福祉」(最近はセーフティ−ネット?)は、様々な事故、原因による生活破綻を招かないよう支えるもの。病気(健康保険)、老齢(年金)、失業(失業保険)など。
児童扶養手当は、親の死亡や離婚という子供にとっての事故に対して生活を支えるもの。

(4)母子家庭、父子家庭が、子供を育てながら就労することは、困難な場合が多い。
保育園の送り迎え、子供の病気。一部の福利厚生制度がある大会社を除けば、不安定なパートなどの就労が多く、結果として賃金も低い。
上記の「就労支援」は良いことだが、それをやったから、安定、高収入の職に就けるわけではないことは、政府も分かっているだろう。

(5)両親の離婚などでも、収入や就労時間(長時間労働)などで育てることが難しければ児童養護施設に入ることがある。しかし児童養護施設は、子供が育つ環境としては望ましくないという問題も起きている。
児童扶養手当などの「収入補填」があれば、親と暮らせる場合もある。(児童養護施設の増設費用がかからないとも言える)

4 現行2段階の支給額区分は、「年収300万円未満」「204万8千円未満」だが。これは、よくあるパートの@1000×8H×22日×12月=211万2千円に近い。これでは、親子2人は生活できない。アパート代、食費、衣料、雑貨、交通費、医療、教育など。
かといって、最低賃金を引上げるか?それもしない。逆に、労働者派遣期間の延長や職種制限の撤廃など、不安定労働を増やすことになる。
それにもかかわらず、児童扶養手当の支給期間を短くするのか?
本人(子供)に防げる手立てがない事故に対する「社会福祉」(最近はセーフティ−ネット?)も剥ぎ取り、子供に「自己責任」を取らせるのか?「親を怨め」か?

5 以下、当時(昭和54年[1979]頃)の広島市にあった「児童扶養手当を18歳に引き上げる会」が作った小冊子の内容をWEBサイトで要約した。貨幣価値が変わっているが、それを入れ替えれば、事情はさほど変わっていない。
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(以下、再掲)
(参考)WEBサイト「離婚した女の目」
http://www.hi-ho.ne.jp/t1997/mu-rikon.htm
『離婚した女の目』 (児童扶養手当を18歳に引き上げる会、1979年)

この本は、市民運動の団体である同会が、母子家庭の生活実態を明らかにするために、行ったアンケ−トといくつかの「個人史」をまとめたものである。

この本の「はじめに」に、「離婚した女に、所謂『自立の芽』があるのではないか、と期待してアンケ−トの集計を始めたが、返ってきたアンケ−トのほとんどは、ギャンブル、酒乱、暴力、浮気、生活力なし等の、生活崩壊を理由とする離婚であり、浮かび上がってきたのは、劣悪な労働条件、保育条件の中で、仕事、家事、育児に、磨滅していく女の姿であった」とある。
他方「食えない賃金で食い、離婚して良かったと言い切る」「その凄まじいエネルギ−」を伝えるため、書き込みから、「個人史」を取り上げている。

<中略>《再発見する「経済的課題」》

高度成長期以後の中流意識。世の中の関心は、報道の関心は、政治の関心は、中流以上に集まる。しかし、今(1998)でも、若い人が綺麗なマンションに住んだりするのは、一部の富裕層と、トレンディドラマの中だけ。仮想現実が、一人歩きする。

実際は、密集地域の木賃アパ−トが、いっぱいあるのに。日雇い、パ−ト、町工場、下請けなど、不安定な労働があるのに。
表通りは、つるつる、ピカピカ光り、裏通り、いや、生活の実相が、見えにくくなった。
今、中流意識に浸っていても、それは保障の無い不安定なもの。無くなったと錯覚する貧困は、相対的貧困として続いている。
(以上、再掲)
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