国際公会計基準(IPSAS)

国、47都道府県及び1750市町村の国民に対する財務情報の作成・開示基準となりうる
不透明性が国民によるガバナンスを機能させず、日本の財政の過度の悪化を招いた
財政の透明性を高めて国民によるガバナンスを高めよう
米国では国(連邦)及び州・市町村の年次財務報告書が適時に国民に公表

はじめに:
 ・政府の財務情報の日米比較
 ・特別会計(交付税)に驚愕の隠れ借金33.6兆円
    ・新潟県が発行の「臨時財政対策債」て何? 隠れ国債だ!
     ・仰天の「退職手当債」の発行(総務省自治財政局) 
     ・第三セクター等改革推進債の創設だぞ! 概要 もう破れかぶれだ!

 ・日本の公会計・・現場の声
   ・出納整理期間・・財政状態を歪める
   ・複式簿記提唱・・東京都知事
   ・自治体会計・監査が進まぬ理由・・石原知事
   ・公会計は杜撰・・大阪府知事
   ・国の機関経理も杜撰・・河野太郎国会議員
 ・日本公認会計士協会が「公会計基準設定主体の調査研究」を報告(2013年5月)
 ・総務省の方針は平成27年から29年の3年間で複式簿記導入方針公表(2014年5月23日)
財務諸表の目的
適時開示の重要性
  ・6か月以内に公表を求めている
  ・財務諸表は1年を超えて公表では古新聞と同じ
   国は平成22年度(平成23年3月末決算)を24年3月末に公表
(財務省)
 ・日本では東京都のみ6か月以内の開示をしている・・基準モデルは1年後の公表である・・日本には開示期限の定めがない
 ・日本特有の出納整理期間が2カ月間決算を遅らせている
まずは財政の透明性を実行し、継続して透明性の進化を
「財務諸表の討議と分析」(公開草案ED47)2012年3月
国際公会計基準(IPSAS)の一覧
 ・国際会計基準(IAS/IFRS)を基礎にして作成
 公開草案
国際公会計基準の世界統一への道
英語以外に翻訳・・普及目指す
英国政府の発生主義会計
米国連邦政府の会計基準
公会計基準・政府部門の会計基準
地方公共団体の会計・・所管は総務省・自治財政局財務調査課
日本の国の対応・・所管は財務省・財政制度等審議会
・・埋蔵金の議論
・・石原都知事が国へ複式簿記の導入を申し入れ
・・【日本】石原慎太郎 公会計制度の虚構をあばけ
・・今後の新地方公会計の推進に関する研究会・・総務省
・・東京都が、「新公会計制度普及促進連絡会議」を創設して東京都方式を普及開始
国の会計に関する資料等
政府機関の監査を行っている会計検査院の国際組織INTOSAI
・政府検査基準の作成(国際監査基準・ISAとのコンバージェンス)
・内部統制の有効性に関する報告書ガイダンスの作成

はじめに

2000年5月、国際会計士連盟(International Federation of Accountants, IFAC・・151カ国の会計士団体で構成)は、前・政府部門委員会(前・Public Sector CommitteePSC)において、国、自治体、政府の特殊法人に関する国際会計基準(International Public Sector Accounting Standards, IPSASs1号から8号と二つのガイドラインを公表)を公表した。以後、継続してIPSASを開発し続けている。

2001年11月のIFACの総会で、国際監査・保証基準や政府部門の会計基準を設定する組織として「国際監査及び保証基準審議会(Inetrnational Auditing and Assurance Standards Board, IAASB)」を立ち上げることを決議し、そこで設定した基準等は、2003年1月1日より無料公表されています。(Bookstore 参照)

2003年(平成15年)5月23日(金)、日本の公会計基準を検討している財務省の財政制度等審議会 財政制度分科会 法制・公会計部会 公会計基本小委員会(第8回)議事要旨」 によれば、「日本は、PSCに委員として出た実績がない。近い将来参加することを希望するが、今のところ関与していない。」とし、日本の会計士を委員に送りこむ予定にしているそうだ。

2008年9月、国際会計士連盟(IFAC)が開発した国際公会計基準(IPSASs)を適用している国または準拠している国を調査した結果を公表しているが、日本は含まれていない。ちなみに、発生主義会計を行っており、広い範囲でIPSASsに一致している国は、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国および米国としている。

国際連合システム(United Nation System)が、国連のすべての機関に対して、2005年に国際公会計基準(IPSAS)を導入することを推奨し、少なくとも2010年までに導入を計画している。国連の国際食料計画(WORLD FOOD PROGRAMME、WFP)がIPSASの適用第一号として2008年の年次報告書紹介されている。加えて、導入している国または各国の導入支援状況をサイトで公開している。世界銀行(World Bank)も同様に積極的にIPSASの適用を推奨している。(詳しくは「平成21 年度海外行政実態調査報告書」by川村義則早稲田大学商学学術院教授及び会計検査院調査課 副長 青木孝浩氏 参照) なお、国際会計士連盟(IFAC)の年次報告書はIPSASを適用して作成され監査されており、財務諸表の作成の参考になる。監査報告書の日付が財務諸表の完成日(公開可能となる日)でもある。

日本の会計と外国の会計とを比較すると特に感じることは、日本は会計専門家ではない官僚が会計基準を設定してきたし、公会計については現在も設定してきていることで、日本は外国で開発(develop)された会計基準を導入するという常に受け身であることで、いつも後手後手に行われていることである。外国では会計専門家が会計基準を常設機関で開発(Develop)しており、上質の情報開示を目的に会計基準の完成度を高めるために、会計基準の進化を図っている。

米国では、政府の会計基準の常設機関を置き、会計基準の完成度を高め、財務情報の有用性を高め適時な情報開示を行い情報の質を高めている。

対象 設定機関 公会計基準 会計監査及び
財務報告に関する
内部統制の監査
備考
米国: 独立機関
連邦政府 連邦会計基準諮問審議会(FASAB)
1990年創設
連邦財務会計基準(SFFAS) 政府監査基準
(GAGAS)

GAO
会計専門家が常設機関で常時改善を行って、
精度の高い情報開示に努めている

連邦連結財務諸表は会計検査院(GAO)が監査
公会計に関する海外調査報告書・米国(2003年)

国際公会計基準と米国の公会計基準の現状
に関する調査
by川村義則氏(2009年度)


公表されている連邦政府の監査済み財務諸表
地方公共団体 公会計基準審議会(GASB)
1984年以来基準を公表
公会計基準書(GASB Statement) 会計監査あり
内部統制も監査意見あり

政府監査とは
モデル監査報告書
会計専門家が常設機関で常時改善を行って、
精度の高い情報開示に努めている
民間の財務会計財団(FAF)で運営している。

会計監査で財務報告の内部統制の監査も
上場会社と同じにある。


公表されている監査済み包括年次報告書
日本: 所管の行政機関
独立機関ではない

1999年公会計制度改革を提言
10年以上経過しても一向に進まない制度改革
財務省財政制度等審議会
法制・公会計部会
公会計基本小委員会
平成18年以後進展なし
委員からの指摘事項
公会計に関する基本的考え方」について
省庁別財務書類の作成について
2004年6月作成

公会計改革の動向と今後の課題

2011年8月

現行の会計予算決算及び会計令
国の会計 帳簿及び書類の
様式等に関する省令

財政法会計法
監査基準なし
監査報告なし

適正性は担保されない
官僚が作成
一度作成すると改正・発展はほとんどない。

完成した財務諸表が適時に出てこない。
公表が遅く情報としての価値が少ない。


国の財務書類・・非監査
地方公共団体
1999年公会計制度改革を提言
10年以上経過しても一向に進まない制度改革
総務省自治財政局財務調査課
地方財政の研究会
今後の新地方公会計の推進に関する研究会
2010年9月30日〜
初歩的な議論に終始している
新地方公会計制度実務研究会報告書
2007年10月作成

監査基準なし
監査報告なし
適正性は担保されない
官僚が作成(地方公会計の整備
一度作成すると改正・発展はほとんどない。
完成した財務諸表が適時に出てこない。
公表が遅く情報としての価値が少ない。

公表までに時間がかかりすぎ、古い情報となる
タイムリーで正確な情報は期待できない

平成21年度決算に係る財務書類
平成20年度決算に係る財務書類

平成19年度財務書類・・非監査
今後の新地方公会計の推進に関する研究会報告書(平成26年4月30日) 今後の新地方公会計の推進に関する研究会報告書
平成26年4月総 務

統一的な基準による地方公会計マニュアル(平成27年1月23日)
地方公営企業法
地方公営企業
水道や公立病院
総務省
自治財政局公営企業課
地方公営企業会計
制度等研究会

報告書(2009年12月)

地方公営企業会計制度の
見直しに関する説明会

今後のスケジュール(案)
2011年10月13日
今後のスケジュール(案)
2011年10月13日
2012年3月30日文部科学省高等教育局
私学部参事官室
は、学校法人会計基準の問題点
や課題等を整理した、
学校法人会計基準の諸課題に関する検討について
(課題の整理)
」がとりまとめられましたので公表した。

気の遠くなる話である。

公会計基準は、一つでよい。国と地方自治体、独立行政法人など縦割り行政でそれぞれ設定する必要はない。なぜならば、退職金を例にすると、民間企業の「退職給付に係る会計基準」が存在し、民間企業であっても、国家公務員でであっても、地方公務員であっても、退職給付債務の計上はこの会計基準に準拠して適用すればよい。現在のように、縦割り行政で、所轄官庁が法令ごとに会計基準と称して内容の同じようなものを作成することこそ無駄であろう。独立行政法人の会計基準のように、予算で措置されている退職金は退職給付債務を計上しないとしているが、注記したとしても簿外債務を許容しているのは論外の会計基準である。国際会計基準が適用されるようになれば、同様に公会計基準の国際会計基準を導入すべきだ。

日本は会計基準の設定が行われると見直しはほとんど行われず硬直する。これにより、日本の財務諸表の読者は欧米に比べ不十分な情報開示に甘んじてきていることである。公会計にあっては、納税者に国家財政や地方公共団体等の財政について、十分で質の高い財務情報が適時に提供されているとは言い難い状況が続いている。

日本国民は国及び地方自治体から十分な情報開示を受けているとは言い難い。少なくとも米国と比べると国民に対する透明性(良質で正確な情報を適時に提供)は低いと言え、受けているパブリーックサービスも低いと言える。国家の借金が1千兆円とGDPの約2倍を超えようとしており、地方自治体の不正経理が報道される中で、国民は官僚国家であると甘んじていられようか。やがて、つけは国民に回って増税となって請求されるのだ。

透明性を高めて国家・地方公共団体などの財政を国民はシッカリと監視し続けることができる仕組みが構築されることが必要なのだ。日本の官僚が進んで透明性の高い仕組みを構築することはない。官僚制度では国民が尻を叩かない限り腰を上げようとしないのだから・・・・

特別会計に驚愕の隠れ借金33兆円

交付税及び譲与税配付金特別会計

 国税の一定割合や一般会計からの繰入金を財源に地方自治体に配分する地方交付税交付金などを管理する「交付税及び譲与税配付金勘定」と、交通違反の反則金収入を原資に自治体が実施する信号機整備などに対する補助金を管理する「交通安全対策特別交付金勘定」に分かれる。
 2010年度予算は19兆2731億円(重複分を除く)。交付税及び譲与税配付金勘定は、民間から借り入れた33.6兆円に上る巨額の借入金を抱える。政府は11年度から26年度までの16年間で償還する方針だが、計画通りにいくかどうかは不透明だ。(時事ドッドコム2010/10/29-06:56 総務省交付税及び譲与税配付金特別会計に関する情報開示(平成20年度)」)

国の特別会計の事業仕分けで29日対象となる地方自治体へ交付金を配布する特別会計に、国が借り入れた33兆円を超える借金があり、元本の返済が行われないために利子の支払いだけが続いていることがわかりました。利子は、去年までの3年間におよそ7000億円に上り、このまま返済が進まなければ、さらに多額の税金が投入される見通しです。

交付税及び譲与税配布金特別会計」は、地方自治体に国税の一部を交付金として渡す目的で昭和29年に作られ、昨年度はおよそ16兆円がこの特別会計を通じて全国の自治体に配布されました。国税の収入がバブル経済の崩壊などで落ち込んだあとも交付金の総額は増え続けたことから、この特別会計には、差額を補うために国が金融機関から借り入れた33兆6000億円余りの借金が残っています。借金の返済方法は、平成19年に「交付金の一部を充てる」と法律で決められましたが、元本の返済は一切行われず、この特別会計を所管する総務省は「財政難に悩む地方自治体に交付金を配ることを優先しているため、返済を先延ばししている」と話しています。このため、利子の支払いだけが続き、去年までの3年間だけでも7000億円余りが金融機関に支払われ、このまま元本の返済が始まらなければ、さらに多額の税金が投入される見通しです。29日の事業仕分けでは、この特別会計の借金返済を今後どのように進めるのかについても議論される見通しです。(NHK 2010年10月29日)

TVニュースで仕分け人の「国の借金ですか地方自治体の借金ですか」の質問に総務省担当者は「地方自治体が返済する性質のもの」と訳のわからない回答していたのが印象的であった。つまり、国が金融機関から借金をして地方へ交付税として財源を融通している。国も地方も同じ財布と考えているのだ。

加えて、臨時財政対策債(りんじざいせいたいさくさい)は、地方債の一種。国の地方交付税特別会計の財源が不足し、地方交付税として交付するべき財源が不足した場合に、地方交付税の交付額を減らして、その穴埋めとして、該当する地方公共団体自らに地方債を発行させる制度がある。新潟県などが発行している減収補てん債などというものもある。減税補填債もある。

地方公共団体には、地方公務員の退職金を手当てするために退職手当債の発行平成21年度 退職手当債)が許されている。(総務省自治財政局地方債課)

参考資料:地方債をめぐる最近の状況 & 地方債をめぐる最近の状況(続編) by総務省自治財政局地方債課
日本の地方債をめぐる諸制度とその変遷」by土居 丈朗慶應義塾大学経済学部,別所俊一郎財務省財務総合政策研究所
急増する赤字地方債と地方交付税制度」byニッセイ基礎研究所経済調査部門 主任研究員 石川達哉氏2010年5月
総務省・・地方財政制度 「地方財政関係資料」(地方財政の借入金残高の状況 国・地方の債務残高(GDP比)の国際比較【2009】
財務省・・財務情報の報告 財政関係基礎データ国の長期債務残高について 長期政府債務残高等の対GDP比

日本の公会計・・現場の声

現場の声#1・・ある都道府県の声:2009/04/26 (「気になる「出納整理期間:2012年4月11日by元地方公務員の声」」)
自治体は3月決算ですが、出納整理期間が2ヶ月間も設けられていて、数値が固まるのは事実上5月末です。2ヶ月間も何をやっているのか!と思いますが、これは地方自治法で決められていることなので全国共通です。 その後監査が本格化して、9月の議会に報告することになるので、業務のピークは7月から9月あたりにかけてということになるようです。
会計はといいますと、会社の場合を除いて基本的に収支計算オンリーと言ってよさそうです。いわゆる現金主義会計で単式簿記です。したがって、減価償却や引当金といった概念はありません。現金支出が必要な時に予算化して、その範囲で支出するのみです。複式簿記や発生主義の考え方を取り入れる流れになってきていますが、まだ公式なものではありません。

出納整理期間は、手書き・そろばん時代から進化していない。現代はIT時代でその日の取引をその日に処理する時代で日々決算が当たり前の時代である。しかも発生主義会計で複式簿記を行えば適正な財務諸表はできる。官庁会計は手書き・そろばん時代のままで進化していないようだ。

大阪府は、「出納整理期間」について、「仮に出納整理期間がなければ、両年度の取引が混在する期間がなくなり、客観的な検証が可能。また、基金や公有財産の残高との整合が容易民間並みの迅速な決算報告が可能」としている。大阪府は正しい。(今後の新地方公会計の推進に関する研究会(第4回)2011年1月14日大阪府の新公会計制度(案)」19ページ参照)

公務員に言わせると、国は1947年4月成立「予算決算及び会計令」の第三節 出納整理期限の規定に従い5月31日まで、地方公共団体は1947年4月成立「地方自治法」の出納の閉鎖の法律の規定に従って5月31日までを決算の記録に反映しており、これが「官庁会計」であるとしているが、そもそも、手書き・そろばんの時代に決算に時間を要した頃の仕組みで、コンピュータを利用したIT時代を迎え日々決算が珍しくない民間の感覚とはかなりずれて久しい。官は民間との交流が希薄なためか、官庁会計は民間とは別世界となり、コンピュータなどの技術の進化があろうとも、事務の生産性を高めたり・効率性を高めるなどに無関心で進化しないようだ。

財務諸表の読者をミスリードするばかりでなく、監査の観点からは、出納整理期間の反映は財政状態を歪めてしまい、監査人に「平成X年X月X日現在の財政状態について」無限定適正意見が表明できない貸借対照表が作成されるという欠陥の公会計基準となる。
国際監査基準(ISA)を導入した監査基準委員会報告700「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」の監査人の監査報告書の監査意見区分は以下の通りとなっている。
監査意見
当監査法人は、上記の連結財務諸表が、[適用される財務報告の枠組み(注2)]に準拠して、○○株式会社及び連結子会社の平成X年X月X日現在の財政状態並びに同日をもって終了する連結会計年度の経営成績及びキャッシュ・フローの状況を、すべての重要な点において適正に表示しているものと認める。

現場の声#2・・石原東京都知事複式簿記による公会計を提唱
東京都では、平成18年4月から新たな公会計制度を導入いたしました。これは、日々の会計処理の段階から複式簿記・発生主義の処理を行い、財務諸表を作成するものです。

2010年11月11日、「東京都と大阪府が共催 国、自治体は会計制度の変革を!」(ニュース)とシンポジュウムが開催された。東京都と大阪府が「公会計改革白書」を公表。
(「複式簿記・発生主義 都の新公会計制度があらためて注目の的に)


現場の声#2・1・・石原東京都知事の声・・国も財務諸表・外部監査の導入など、会計制度の改善を進めるべき(3分経過後 2010年5月14日定例記者会見)
地方自治体の会計が進化せづ外部監査も行わない理由を語っている。「東京都を含む都道府県の中で、県のお役人の偉い所で、総務省から来ていない県は、ほんと5・6県でね。あと全部来てね、結局ああゆう役人は古巣の言うことしかしない」として、地方自治体の会計・監査が一向に改善されない理由を述べている。3期12年東京都知事の経験から、総務省の支配する地方自治体の実態を知っている知事ならではの意見である。

現場の声#3・・橋下大阪府知事の声・・公会計は杜撰
大阪府では、府民への更なる財務情報の開示を推進するとともに、職員の意識改革、PDCAサイクルの構築による「変革と挑戦」を支えるマネジメント改革を進めるため、既存の地方自治体の会計制度である単式簿記・現金主義会計の仕組みに、複式簿記・発生主義という企業会計の考え方を採り入れた新公会計制度を平成24年度から導入します。


財務諸表の目的

IPSAS1号「財務諸表の表示」に規定する「財務諸表の目的」は、パラグラフ15から18に記述され以下のとおりである。

15. 財務諸表は、ある主体の財政状態と財務業績についての表示を体系的に行うものである。一般目的財務諸表の目的は、資源配分についての意思決定を行い、かつ、意思決定を評価する広範囲の利用者にとって有用な、主体の財政状態、財務業績及びキャッシュ・フローについての情報を提供することである。とりわけ、公的部門における一般目的財務報告の目的は、以下に掲げる情報を提供することにより、意思決定に有用な情報を提供し、付託された資源について説
明責任を果たすことにある。
(a) 財務資源の源泉、配分及び使途についての情報を提供すること
(b) 主体がその活動に対してどのように資金調達し、現金必要額を満たしたかについての情報を提供すること
(c) 資金を調達し、負債や契約額の支払を満たす主体の能力評価に有用な情報を提供すること
(d) 主体の財政状態及び財政状態の変動についての情報、及び
(e) サービス提供コスト、効率性及び成果の観点から、主体の業績評価に有用な総合的な情報を提供すること

16. 一般目的財務諸表も、予測あるいは将来見積りの役割を果たすことが可能であり、事業継続に必要な資源水準、事業継続によって生み出される資源及び関連するリスクと不確実性を予測するのに役立つ情報を提供する。財務報告においても、利用者に次の情報を提供することもある。
(a) 法的に採択された予算に従って、資源が獲得され、使用されたかどうかを示す情報
(b) 適切な立法府によって設定された財務的規制を含む法律上及び契約上の規定に従って資源が獲得されたかどうか、また使用されたかどうかを示す情報

17. これらの目的を達成するために、財務諸表には主体の次の事項について情報を記載する。
(a) 資産、(b) 負債、(c) 純資産・持分、
(d) 収益、(e) 費用、
(f) その他の純資産/持分変動額、及び
(g) キャッシュ・フロー

18. 財務諸表に含まれている情報は、第 15 項に記載された諸目的を満たす目的適合性があるが、これらのすべての目的が満たされるとは限らない。とりわけ、主たる目的が、営利でない主体に関してそうである。というのは、経営者は財務目的だけではなく、サービス提供の成果についても説明責任があると考えられるからである。財務諸表以外の報告書を含む補足情報も当該報告期間の主体の活動について、より包括的な姿を提供するために、財務諸表と共に報告されることがある。

私見であるが、実務を行ってきた経験で言えば、米国連邦政府の財務会計概念書1号STATEMENT OF FEDERAL FINANCIAL ACCOUNTING CONCEPTS Number1、SFFAC1パラグラフ105号の財務報告の目的のほうがIPSASより簡潔・包括的で解りやすい。

Par105 連邦政府は、統治することの同意から生じた権力を有する。そのため、その活動とその活動に関する結果を報告する責任を負う。これらの報告書は、連邦政府の内容を正確に反映したものでなければならないし、国民(the people)、選ばれた代表者、及び連邦政府の高官に対して有用な情報を提供するものでなければならない。一般公開、ニュースメディア及び選ばれた代表者に公開する財務情報は、政府の説明責任の要素部分である(an essential part of accountability in government )。政策担当責任者、政府高官、議会のメンバーに対する財務報告は政府の政策を、経済的(economically)に、能率的(efficiently)に、効果的(effectively)に、計画したり実施したりするための要素である。

適時性の重要性

IPSAS1号「財務諸表の表示」のパラグラフ69には、財務諸表の開示についての「適時性」について次のように規定している。

69. 利用者が、財務諸表を報告日後の合理的期間内に入手できない場合には、財務諸表の利用価値は減少する。主体は、その財務諸表を報告日より6 ヵ月以内には公表する必要がある。主体の事業活動の複雑さなどの経常的要因は、適時に報告しないことの正当な理由とはならない。多くの国・地域では、法律や規則によってより具体的な期限が定められている。

適時に開示しなくては財務諸表の利用価値は減少する、として報告日から6か月以内に公表する必要があるとしている。日本では1年を超えて非監査で公表(平成20年度が22年6月、19年度が平成21年7月と最近は毎年1カ月づつ短縮している)しているが、米国では通常3カ月〜6か月以内に監査報告書が添付されて作成され、公表されている。(「政府財務報告の適時性の重要性」・・In recent years, federal government departments have been required to complete and make available their financial reports 45 days after the close of the fiscal year, and the governmentwide consolidated financial report of the United States is due in 75 days. As required by state law, the state of New York and the city of New York routinely issue audited financial statements within four months of their year-ends.)

東京都の石原都知事の発言によれば、「8月に(複式簿記・発生主義会計に基づいた)決算が出れば、次年度の予算編成に生かせます。もともと決算は、可能な限り早く出すべきなんです。1年後に決算が出てきても、もう次年度の予算編成は終わっている。前年度のお金の使い方を検証せずに予算を決めるから、無駄な使い方しかできない、という悪循環だった。新会計システムを使えば、これを断ち切ることができる」としている。適時に公表することは財務諸表の有用性を考える上で重要な要素である。

計画(Plan)⇒実行(Do)⇒評価・分析(Check)⇒改善(Action)のサイクル(PDCA)を機能させるためには、実行(Do)した結果を決算として纏め、これを分析し改善に向けなくては決算の意味を半減させる。財務諸表の利用者である国民も行政に対して効率よい予算の執行を求めているのだ。1年も経過して公表しても効果は半減してしまうことになる。

迅速かつ正確に財務諸表を作成するには、複式簿記によるほかないことは経験的に立証されていが、複式簿記による記録は、借方・貸方の記録の説明及び記録の証拠への追跡可能性(トレーサビリティ【traceability】)が保証されていることが重要となる。

財務省「国の財務書類・省庁別財務書類・特別会計財務書類・・翌年の3月に公表(12ヶ月後公表)・・ほとんど表の羅列で意味するところが不明で文章による説明が非常に少なく読み物になっていない。作表だけで1年以上必要であろうか。古新聞を見ているようだ。古新聞に価値は少ない。」「各省庁の予算・決算(省庁別財務書類含む)」参照
日本の公会計は、発生主義会計をしようとする作成基準に日本特有の「出納整理期間について、出納整理期間が設けられている旨及び出納整理期間における現金の受払等を終了した後の計数をもって会計年度末の計数としている」ことから、正確な発生主義会計が行われないという矛盾を抱えているばかりでなく決算が遅れる(適時に公表できない)という致命的な欠陥を含んでいる。(省庁別財務書類の作成基準 参照)

総務省平成19年度決算に係る財務書類の各地方公共団体」参照
決算委員会調査室 薄井繭実氏2011年8月著公会計改革の動向と今後の課題財務書類の早期提出と活用への取組〜」によると「期中において各省各庁が歳入・歳出などの現金取引に係る複式の仕訳を行い、当該仕訳データを月ごとに官庁会計システムから財務書類作成システムに取り込むこととしているそして、会計年度終了後、各省各庁は未収・未払などの発生主義による調整、引当金の計上、ストック情報との調整などに係る決算整理仕訳データと相殺データ及び連結法人データ等を同システムに登録し、システムが自動的に勘定科目の合算、相殺消去、集約を行い、財務書類が作成される仕組みとなっている。同システムの運用により、23 年度決算分からは全ての財務書類が翌会計年度1月中に公表される予定である」ということだ。それにしても米国連邦政府の3カ月以内(例えば、2011年9月決算の連邦政府の財務諸表は12月15日の公表が予定されている)に監査報告書を付けているのとは大違いですし、IPSASが求めている6か月以内の公表要件を満たしていない。

なお、総務省では、平成18年6月2日成立の「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律第62条2項に基づき、各地方公共団体に新地方公会計モデル(基準モデル及び総務省方式改訂モデル)を用いた連結財務書類の作成を要請しております、とのことですが、第62条2項には、「  政府は、地方公共団体に対し、前項各号の施策の推進を要請するとともに、企業会計の慣行を参考とした貸借対照表その他の財務書類の整備に関し必要な情報の提供、助言その他の協力を行うものとする」とだけあるだけで報告の適時性についての規定はない。

ちなみに国の場合は、「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律 第60条2項に「  政府は、企業会計の慣行を参考とした貸借対照表その他の財務書類の整備を促進するため、当該書類を作成する基準について必要な見直しを行い、その他必要な取組を行うものとする」として報告書の適時性の規定はないため、1年を超えて翌年の6月に公表している。国民は、1年以上前の古新聞を見せられているようなもの。

参考:
米国の場合は監査報告書も添付される・連邦政府の年次報告書・・約180ページで3カ月以内に監査報告  州政府等の包括年次報告書・・州ごとに決算月が違うが概ね4か月以内公表
ニュージーランド政府の場合も監査報告書も添付される・・ニュージーランド政府の財務諸表  2010年6月末財務諸表・・・約180ページで3カ月以内に監査報告
ニュージーランド政府の場合は、IPSASの適用を検討している

まずは財政の透明性を実行し、継続して透明性の進化を

国民に対する政府の財政状態を開示することが求められる。財政を支えている納税者に対し、政府の施策の恩恵を受けている学生や年金受給者などの一般国民への説明責任の遂行の一つとして透明性を高めた政府の財務諸表を公表することは重要なことである。国民が理解し易い財務諸表を作成する基礎となる会計基準は、常設の公会計基準設定主体が、常時、改善に向けて完成度の高い進化した会計基準を設定する必要がある。

国、地方自治体と管轄の違う縦割り行政を超えて、公会計基準は一つの設定主体が一つの会計基準を設定すれば足りる。日本は、公会計基準について縦割り行政の弊害を克服する必要がある。

IPSASBが「政府財政の長期持続可能性の報告」の討議資料公表

国際会計士連盟(IFAC)の国際公会計基準審議会(IPSASB)は、2009年11月に、検討資料「公共財政長期持続可能性報告」(Reporting on the Long-Term Sustainability of Public Finances)を公表し、広く意見を求めておりました。コメント期間は2010年4月30日付となっており、日本公認会計士協会はコメントを発出している。

国家政府は長期的な財政持続可能性についての情報をどのように報告することができるか?
3.1.1 本節は、長期的な財政持続可能性に関する情報が国家政府の一般目的財務報告(GPFRs) のとして、どのように報告されるであろうかを検討する。以下の3 つのモデルを検証する。
・モデル 1:予測の詳細を提供した追加的報告書
・モデル 2:説明的報告における要約された予測
・モデル3:長期的な財政持続可能性を取り扱う他の報告とのGPFRs での相互参照

3.1.2 これらの報告アプローチは相互に両立しないものではない。例えば、合衆国連邦政府の年次報告のように予測されたキャッシュ・フローを示した追加的報告書を説明的報告に結合することも可能である。
モデル1:予測の詳細を提供した追加的報告書

3.1.3 すでに例示1 で示しているように、現行の合衆国連邦政府の財政報告は、特に社会保障、及び高齢者医療保険など最も重要な社会保険プログラムの予測のインフローとアウトフローを提供する社会保険報告書(SOSI)を含めている。その報告書の様式は例示5 で示している。表示している見積りは、予測の保険数理上の現在価値であり、社会保障及び高齢者医療保険信託報告並びに追加的なより小規模の2 つのプログラムに提示している関連機関の業績と説明責任の報告に含まれている経済上及び人口統計上の仮定に基づいている。また、その財政報告は、財政状況(将来の概念)と財政状態(現在の概念)の範囲の広い説明的な要約を提供する市民の手引き「連邦政府の財政健全度」を含んでいる。この要約はSOSI に反映される受給権付きプログラムには限定されていない。また、その市民の手引きは独立した文書としても利用可能である。
〜等

参考:
EUが英など13カ国を高リスク国に指定、債務は持続不可能−FTD 」byブルーミングバーグ(2009年10月13日)
英国財政は持続困難=EUサステナビリティ報告書[経済](2009年10月16日)」
持続可能な財政制度の構築に向けて〜基礎的財政収支の改善の必要性とその方策〜」by小葉松章子参議院企画調整室(調査情報室)in 2006年


「財務諸表の討議と分析」(公開草案ED47)2012年3月

国際会計士連盟(IFAC)の国際公会計基準審議会(IPSASB)は、2012年3月に、公開草案第47号「財務諸表の討議と分析」Financial Statement Discussion and Analysis)を公表した。日本公認会計士協会が翻訳した

最低限要求される内容
15. 財務諸表における情報を財務諸表の討議と分析に再掲しない範囲にかぎり、財務諸表の討議と分析には最低限以下の情報が含まれなければならない。
(a) 主体の概要
(b) 主体の目的及び戦略についての情報
(c) 主体の財務諸表の分析(差異及び趨勢を含む。)
(d) 主体のリスク及び不確実性についての情報(リスク管理戦略を含む。)

16. 財務諸表の討議と分析は、説明責任及び意思決定の目的上、利用者に有用な情報を提供するものである。しかしながら、関連するIPSAS によって財務諸表に含めることを要求されている一定の事項が、本基準に従って財務諸表の討議と分析にも含めることを要求されることがある。そうした場合には、財務諸表の討議と分析は、財務諸表の内容を単純に繰り返すのではなく、それらに関する洞察及び視点を提供することにより財務諸表の説明を補完、補足すべきである。

17. 主体の財務諸表の討議と分析に含まれる特定の情報は、主体に固有の事実及び状況によって変わるが、以下に説明するように、一定の本質的要素がすべての財務諸表の討議と分析にとって重要となる。

この改正に伴って、IPSAS 第1 号「財務諸表の表示」以下の項が、第21 項の後に新たに盛り込まれる。
財務諸表の構成部分
21. 財務諸表の完全な一式は以下によって構成される。
(a) 財政状態計算書
(b) 財務業績計算書
(c) 純資産・持分変動計算書
(d) キャッシュ・フロー計算書
(e) 主体が承認された予算を公表している場合、別個の独立した財務諸表による、あるいは財務諸表の中に予算の欄を一列設けることによる予算と実績との比較(f) 重要な会計方針の要約及びその他の説明を行う注記で構成される注記

21A. 財務諸表の討議と分析は、財務諸表の構成要素ではない。IPSAS第XX号(ED 47)「財務諸表の討議と分析」は、財務諸表と共に、財務諸表の討議と分析を表示することを要求している。


国際公会計基準(IPSAS)の一覧

国際公会計基準審議会(IPSASB)が公表した政府部門の会計基準(IPSASs)、ガイドライン及び研究内容は、次の通りである。この会計基準の体系は、表題から見られるように、国際会計基準(IFRS/IAS)を元にしており、それぞれの会計基準は”国際会計基準”に対応する。国際会計基準は、適正開示(fair presentation)を目的として内容的にも政府部門特有のもの以外は国際公会計基準もIFRSにコンバージェンスと一致させている。(IAS Plus 参照)

2009年10月30日、日本公認会計士協会は、「国際公会計基準(IPSAS)の翻訳完了について」を公表し、一部であるが日本語でも読めるようにWeb上でダウンロードできるようにした。これで判るように、IFRSを基礎に設定されており近似している。日本の「企業会計原則」とは異質なもの。

公会計基準番号 会計基準の表題 基礎となった
国際会計基準
IPSAS1号 財務諸表の表示

パラグラフ21には、財務諸表の構成(基本財務諸表)は、下記のもので構成する、としている。
21. A complete set of financial statements comprises:
(a) A statement of financial position (財政状態の計算書、いわゆる貸借対照表);
(b) A statement of financial performance (財務業績計算書);
(c) A statement of changes in net assets/equity (純資産/持分変動の計算書);
(d) A cash flow statement (キャッシュ・フロー計算書);
(e) When the entity makes publicly available its approved budget, a comparison of budget and actual amounts either as a separate additional financial statement or as a budget column in the financial statements; and (主体が承認された予算を公表している場合、別個の独立した財務諸表によるか、または、財務諸表の中に予算の欄を設けることによる予算と実績との比較)
(f) Notes,comprising a summary of significant accounting policies and other explanatery notes (重要な会計方針の要約及びその他の説明を行う注記で構成される注記).
IAS1号
IPSAS2号 キャッシュ・フロー計算書 IAS7号
IPSAS3号 会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬 IAS8号
IPSAS4号 外国為替レート変動の影響 IAS21号
IPSAS5号 借入コスト IAS23号
IPSAS6号 連結財務諸表と支配している機関の会計 IAS27号
IPSAS7号 関係会社への投資の会計 IAS28号
IPSAS8号 ジョイントベンチャーに対する持分の財務報告 IAS31号
IPSAS9号 交換取引からの収入 IAS18号
IPSAS10号 ハイパーインフレーションの経済における財務報告 IAS29号
IPSAS11号 工事契約 IAS11号
IPSAS12号 たな卸資産 IAS2号
IPSAS13号 リース IAS17号
IPSAS14号 後発事象 IAS10号
IPSAS15号 金融商品:開示及び表示・・IPSAS28号及び30号によって廃止 廃止
IPSAS16号 投資不動産 IAS40号
IPSAS17号 有形固定資産 IAS16号
IPSAS18号 セグメント報告 IAS14号
IPSAS19号 引当金、偶発債務及び偶発資産 IAS37号
IPSAS20号 関連当事者の開示 IAS24号
IPSAS21号 キャッシュを生成しない資産の減損 IAS36号
IPSAS22号 一般会計の財務情報の開示 N/A
IPSAS23号 非交換取引による収入(税金および交付金) N/A
IPSAS24号 財務諸表に予算情報の開示 N/A
IPSAS25号 従業員給付 IAS19号
IPSAS26号 キャッシュを生成する資産の減損 IAS36号
IPSAS27号 農業 IAS41号
IPSAS28号 金融商品:表示 IAS32号
IPSAS29号 金融商品:認識と測定 IAS39号
IPSAS30号 金融商品:開示 IFRS7号
IPSAS31号 無形固定資産 IAS38号
IPSAS32号 サービス委譲契約:委譲者 IFRIC12号
ガイドラインNo ガイドラインの内容
No.2 政府事業体の財務報告の監査における国際監査基準の適用
研究No 研究内容
研究11号 政府の財務報告(米国、カナダ、フランス、ニュジーランド等の政府の財務諸表研究等)


公開草案 公開草案 草案公表日
48号 個別財務諸表
Separate Financial Statements
2013年10月
49号 連結財務諸表
Consolidated Financial Statements
2013年10月
50号 関連法人及び共同支配法人に対する投資
Investments in Associates and Joint Ventures
2013年10月
51号 共同支配の取決め
Joint Arrangements
2013年10月
52号 他の主体への関与の開示
Disclosure of Interests in Other Entities
2013年10月



英語以外の言語へ翻訳

2002年8月22日、政府部門の国際会計基準(IPSAS)を開発している国際会計士連盟(IFAC)の政府部門委員会(PSC)は、国際会計審議会(IASB)の協力を得て、政府部門の国際会計基準(IPSAS)をフランス語、スペイン語など英語以外の国々の言葉に翻訳することで合意した。2003年第一四半期には、各国語の翻訳版を入手できるようにしたいとしている。翻訳版を公開することで各国への普及を目指している。

2006年3月、国際会計士連盟(IFAC)が開発した国際公会計基準(IPSASs)を適用している国または準拠している国を調査した結果を公表しているが、日本は含まれていない。ちなみに、発生主義会計を行っており、広い範囲でIPSASsに一致している国は、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国および米国としている。

国際公会計基準の世界統一への道

かつて、各国が独自の会計基準を設定してきた。資本市場の国際化により、会計基準の国際的統一の必要性を支持する動きが出てくる。

国際会計基準委員会(IASC)の国際会計基準(IASB)の普及と証券市場の監督官庁の国際的組織である証券監督者国際機構(IOSCO)とが協調し、コア・スタンダード(核となる基準)を完成した時は、IOSCOの加盟国の証券取引所での上場会社の財務情報の開示を国際会計基準(IASB)を受け入れることで合意し、1998年12月、国際会計基準委員会(IASC)は国際会計基準(IASB)のコア・スタンダードを完成した。IOSCOは2000年5月、IASBのコア・スタンダードを承認した。

2000年6月13日、欧州委員会(European Commission)は、欧州における財務報告に関する将来的戦略を公表した。それは、国際的な資金調達の障壁を解消するために、透明性を高めるために、投資家保護のために、国際会計基準の適用を2000年中に欧州連合国に要請する「「コミュニュケ」を公表した。上場会社は無論のこと非上場会社に対しても求めて行くとのこと。経過期間最低3年間を経て2005年までに実施したい方針。2002年3月12日、欧州議会は上記欧州委員会の提案を承認した。

欧州が2005年から国際会計基準を導入したことにより、現在では、国際会計基準(IFRS、旧IASB)は、上場企業の財務情報に100を超える国又は地域が導入し又は導入を予定しているようになり、グローバル・スタンダードとなったといってよい。

一方、国、地方自治体等の会計基準である国際公会計基準(IPSAS)については、国際会計基準(IFRS、旧IASB)を基礎に設定してきた。国際公会計基準は、国連及び世界銀行の支援を得て、各国の導入を促進し公会計のグローバル・スタンダードになろうとしている。

国際公会計基準と米国の公会計基準の現状に関する調査」 by川村義則早稲田大学商学学術院教授及び会計検査院青木孝浩氏、2010年3月が詳細な調査結果を報告している。

参考:世銀は60万ドルを拠出し、具体的な会計基準の策定作業を世界会計士連盟の公的部門委員会に委託した。(日本経済新聞・1997年7月20日)

アーンスト・アンド・ヤング会計事務所が、2012年11月、「国際公会計制度の現状に関する調査の翻訳版の公表」を行った。

欧州会計士連盟(FEE)が欧州各国政府の80%の国が発生主義会計を採用と調査結果を公表

2007年1月31日、欧州会計士連盟(FEE)公会計部門は、「政府部門の発生主義会計(ACCRUAL ACCOUNTING IN THE PUBLIC SECTOR)」と題した調査結果を公表した。それによると、
■回答を寄せた国の約80%の国が発生主義会計(accrual accounting )を採用している。
■急速に発生主義会計を導入している一方で、発生主義会計の過渡期にあり、小規模のグループで、なお、現金主義のままとなっている。
■普通は、地方レベルでは急速に発生主義会計に移行しつつあるが、最も遅れているのは国レベルである。
日本と同様に、欧州でも国レベルでは遅れているようだ。(FEEニュース 参照)
日本は、地方レベルでも遅れている。(地方公共団体の会計 参照)

英国中央政府が国際会計基準を導入

会計検査院事務総長官房調査課長東信男氏が、「イギリス中央政府における国際会計基準(IAS/IFRS)の導入−公会計の目的に対応させながら−」と題して英国中央政府の国際会計基準の導入状況を報告している。それによると、「中央政府の財務諸表は,2009-10 年度よりIASB が設定する国際会計基準(IAS/IFRS)に準拠して作成することとなった。IAS/IFRS は比較のため最低でも前年度の財務諸表の作成を求めているため3),各府省は2008-09 年度において,従来通りのUK GAAP に準拠した財務諸表とともに新たにIAS/IFRS に準拠した財務諸表も作成する予定になっている」としている。( Government Financial Reporting Manual  公財務報告における新資格制度 参照)

The first ten years of the Board has seen many changes, one of the most significant being the recent welcome announcement that Government financial statements will be prepared using the European Commission adopted International Financial Reporting Standards (IFRS). The move to IFRS from the 2008-09 financial year shows the Government’s commitment to maintain high standards in public accountability and will place it at the leading edge of financial reporting internationally.(Press notice 「FINANCIAL REPORTING ADVISORY BOARD」25 June 2007  [HM Treasury]参照)

英国中央政府は、1999-2000年度から企業会計と同じように一般に認められた会計基準に準拠して発生主義会計を開始し、2004-05年度に中央政府の連結財務諸表を公表、2006-07年度に地方を含めた連結財務諸表を作成することを計画している。(英国会計検査院による「NATIONAL AUDIT OFFICE UNITED KINGDOM」参照)

Whole of Government Accounts (WGA) are full accruals based accounts covering the whole public sector and audited by the National Audit Office. WGA is a consolidation of the accounts of about 1500 bodies from central government, devolved admnistrations, the health service, local government and public corporations.([Whole of Government Accounts])
イギリスの場合、米国の透明性に比べ悪く、財務情報へのアクセスが米国に比べ閲覧が困難である。しかしながら、政府全体の財務諸表(WGA)に関し、地方政府も中央政府も区分せずにいるのは、縦割り行政で区分している日本よりは合理的(日本は地方自治体は約1800とされている)。[Whole of Government Accounts]参照

英国財務報告会議(Financial Reporting Council, FRC)に属する監査実務審議会Auditing Practices Board, APB)が、公報「英国の政府部門のモデル監査報告書(2008年3月以降終了する事業年度から適用)を、2006年1月に実務通達10号「英国における政府部門の財務諸表監査」に準拠したものとして発行した。これによると、監査報告には内部統制についても意見を表明することになっている。(「独立行政法人監査基準の課題」102ページ、「独立行政法人監査基準の課題(2)-グローバル・スタンダードを目指してー」by東信男会計検査院事務総長官房調査課長2008年9月、14-15ページ参照)

Whole of Government Accounts, 2010 to 2011(監査済みIFRS適用の総政府勘定)Published 31 October 2012・・期末から1年7か月後の公表である。遅すぎる。

参考:FINANCIAL REPORTING MANUAL 2009-10・・地方政府の財務報告マニュアル2009年ー10月
    CIPFA・・地方政府は2010年4月1日からIFRSに従って財務諸表を作成しなければならない(3月決算となっている)。
    「イギリス中央政府における国際会計基準(IAS/IFRS)の導入」by東信男会計検査院
     ・・中央政府の財務諸表は,2009-10 年度より国際会計士連盟(International Federation of Accountants)のIASB が設定する国際会計基準(IAS/IFRS)に準拠して作成することとなった。

日本の対応

2003年6月30日、財務省・財政制度等審議会が「公会計に関する基本的考え方」を纏め「政府においては、本報告の趣旨に沿い、公会計の充実に向けた積極的な取組みを進めるよう強く希望する 」としているが、「公会計の充実に関しては、未だ、道半ばである。引き続き、公会計基本小委員会において、必要な審議を継続していくこととしたい」としているだけで積極的に開示を進めるという内容ではない。

上記から約5年が経過して2008年4月27日財務省財政制度等審議会・財政制度分科会・法制公会計部会、公会計基本小委員会及び公企業会計小委員会・合同会議が開催されており、その議論を見ると諸外国の様子見を決め込み積極的に会計基準を設定し開示するというものではない。したがって、現在も進展が見られない。事務局側に、やる気が全く感じられない。

・・埋蔵金の議論

埋蔵金」とは、国の特別会計における「資産と負債の差額」のことです。長い間、この数値が表に出ることはありませんでした。それを高橋氏が算出可能にし、さらに高橋氏の政敵?である与謝野馨氏が「埋蔵金」とネーミングした以降に一気に国民に知れ渡りました。(「特別会計における埋蔵金」参照)

民主党が政権を担ってから、「事業仕分け」と称して埋蔵金探しが今でも続いている。 2009年の暮れに行われた事業仕分けが公開の場で行われたとが好感をもって国民から多くの支持を受けたことによる。

一方、2010年2月16日に開催の財務省財政制度等審議会、財務省提出の資料「平成20 年度「一般会計財務書類」及び「特別会計財務書類」について」を見ると、平成20年度末の資産・負債差額として、一般会計及び特別会計の資産・負債差額の単純合計は、△317.4兆円となり、前年度(△282.9兆円)と比較し、約34.5兆円の悪化、として、特別会計と一般会計の合計はマイナスで埋蔵金などはありえないと主張している。

加えて、一般会計の資産・負債差額が△ 356.6兆円とマイナス表示し、説明に「資産は主に、公共用財産(142兆円)、出資金(33兆円)、国債整理基金(23兆円)等。負債は主に、公債(550兆円)等」とかなり投げやりで「財務書類における資産への計上額には道路や河川といった売却して現金化することが基本的に予定されていないものが相当程度含まれている点に留意する必要がある」とある。つまり、公共用財産の142兆円を現金化できないため米国方式でゼロとすると△ 356.6兆円+△142兆円=△498.6兆円となるよ、と財務省の役人は言っているのである。端的に言って、一般会計がこのようにマイナスが大きく特別会計から使える金は一銭もない、と言いたいのである。民主党の議員は判っているのだろうか?こんな情報開示で満足できるのか。まずは国民にも解りやすい財務情報を開示させるべきであろう。解り難くしているから「埋蔵金」などという幻想を抱かせるのだ。原因を作っているのは、解りやすい情報開示をしてこなかった財務省の責任であろう。不幸なのは将来つけを払わせられる国民である。

党派を超えて、納税者に対する国や地方自治体の財務情報の開示は、財政再建の基礎情報であり、議論の基礎情報として正確な公会計の情報開示を求める必要がある。

2010年7月20日財務省財政制度等審議会、財務省提出の資料「政策別コスト情報の把握と開示について」を見ると、予算書・決算書の見直しにより、平成20年度から予算書・決算書の項・事項が政策評価における政策評価の単位と原則として対応することとなった。しかしながら、予算書・決算書での項・事項ごとの事業費は、その政策や事業の執行に係る経費まで含めた事業全体に係る経費を表したものではない。これを執行するための人件費等については共通経費として計上されている。当部会においては、本年2月以降、5回にわたり政策別のコスト情報の把握等について検討を重ねてきた。今回の検討に当たっては、政策評価の前提となる個別の政策・事業についてのコスト情報とは何か、それをどのように把握するか等について議論し、コスト情報の枠組み・構成、共通経費の配分方法等について「政策別コスト情報の把握と開示について」として取りまとめたところである。

・・石原都知事が国に複式簿記の導入について申し入れ

2010年8月20日、産経ニュースより抜粋  【石原知事会見詳報

来週の8月23日の午後に、国と東京都の実務者協議会がまた開かれますが、今回の新しい議題として、前からも申し上げていますが、公会計の複式簿記の導入について、猪瀬副知事から内閣官房や財務省、総務省に強く申し入れをいたします。世界で家計簿にも劣る単式簿記という馬鹿な会計制度を採用しているのは日本と北朝鮮だけ。アフリカの国は知りませんが」

 「東京都はお金をかけて専門家を動員し新しい公会計の制度を作り始めた。これは企業とはまた違って、例えば、地下鉄のようなものは国の常識だと何十年間で償却することになるけども、戦前に作った渋谷から上野までの地下鉄はいまだに補修されて立派に残っている。道路も同じなんですが、特に地下鉄はシェルターとしても使えるし、その資産の価値が完全に償却されたということでない」

 「こういう自治体の公会計のアセットの評価というのでしょうか、会計上のエバレーション(査定)はなかなか難しい問題ですが、やっぱりクリアして、新しい会計制度を作って。これにいち早く呼応してくれたのが、大阪の橋下(徹)知事でして、大阪はこちらが無料で提供した会計制度でやっています。本来、複式簿記の会計制度を採用していれば、先進国がどこでも持っているバランスシートがちゃんとあるが、日本にはない」

 「だから財務諸表が出てこないから、民主党の代になって事業仕分けをせざるを得ない。あんなものは自民党時代に財務省がしっかりして、複式簿記の会計制度を持っていれば、事業仕分けなんかしないで、とっくに無駄が洗い出されてくる

 「これはまだ菅(直人)君が副総理の時にも言ったんですが、原口(一博)君や前原(誠司)君にも言ったら、『おっしゃるとおりです』と言うけれど、どこまでやりますかね、今度の政府や民主党政権は。ただ財務省は『そろそろ時期だ』と世界水準並みの会計制度、公会計制度採用する意向があるようだけども、なぜか知らんけど総務省があんまり踏み込まない。そこら辺の政府内の不統一を政権の責任でしっかりしてもらいたい」

 「いずれにしろ、国が縦割りのままでは、会計制度を踏まえてもこの国の将来はおぼつかないので、しっかり国際標準に準拠した会計基準を今度の政権の目玉商品として、実現してもらいたいと改めて強く今回の協議会で申し上げるつもりであります」

公会計の複式簿記導入を申し入れ 都と国の実務者協議(2010年8月23日)

国と東京都が財政問題など関連するさまざまな課題を話し合う実務者協議会がきょう、霞が関で開かれました。
 この協議会は3年前に始まり、今回が5回目です。東京都からは猪瀬副知事をはじめ4人の副知事全員が出席し、共通の課題や国への要望を議題としました。中でも強く国に要望したのは東京都がすでに導入し、会計の透明性が分かりやすい複式簿記方式を国も導入することです。猪瀬副知事は「きょう、あらためて申し上げたのは国際会計基準に基づいた公会計方式をきちっと国もつくるようにということ」と述べました。
 このほかには羽田空港の拡張や外郭環状道路の建設促進、保育制度の拡充、テロ対策などが話し合われました。猪瀬副知事は「1つ1つの議題について実質的な議論ができた」と実のある会議だったと振り返りました。

国の会計に関する資料

国際公会計基準と米国の公会計基準の現状に関する調査
 by川村義則早稲田大学商学学術院教授及び会計検査院青木孝浩氏、2010年3月
国際会計士連盟による国際公会計基準(IPSAS)の策定プロジェクトについて
 by古市峰子氏日本銀行金融研究所2003年3月
米国の公会計制度の仕組みとわが国へのインプリケーションについて
by古市峰子氏日本銀行金融研究所/ 金融研究/ 2002年3月
国の公会計制度改革の課題と展望」by東信男会計検査院事務総長官房上席審議室調査官、2000年9月
公会計概念のフレームワーク」by日本公認会計士協会2003年3月
公会計における財務報告の目的についての論点整理」by日本公認会計士協会2003年3月
国・地方公共団体の財務書類作成基準と独法会計基準の相違点by 三菱UFJリサーチ&コンサルティング兜告書H20.3

インフラ資産に関する資料
国際会計士連盟による国際公会計基準(IPSAS)の策定プロジェクトについて
 by古市峰子日本銀行金融研究所2003年3月
インフラ資産の会計処理に関する論点整理」by日本公認会計士協会2007年3月

公的年金に関する資料
政策効果測定と公会計の問題(公的年金政策の実例)」by宗岡徹関西大学会計専門職大学院教授
・・国民に約束した公的年金の支払額の現在価値が1050兆円であるのに積立金が144兆円で年金資産の残高を預り金として計上する方法が採用されたことを明らかにしている。
公的年金に係る財務報告について」by清水涼子関西大学大学院会計研究科教授
公的部門の年金:3兆ドル」2010年10月22日The Economist
Are State Public Pensions Sustainable?」byJoshua D. Rauh, December 31, 2009


各国の公会計基準のサイト:

米国連邦政府会計基準諮問審議会(Federal Accounting Standards Advisory Board, FASAB
http://www.fasab.gov/index.html連邦政府の会計基準を設定
地方政府会計基準審議会(Gavernmental Accounting Standards Board, GASB
http://www.gasb.org/:州、郡、市、町等の会計基準を設定

カナダ政府部門の会計基準(Public Sector Accounting Board, PSAB
http://www.psab-ccsp.ca/

国際公会計協会(Institute for International Public Sector Accounting Standards, IPSAS
http://www.ipsas.org/en/ipsas_standards.htm :公務員教育用

英国で公会計士資格の創設
Certificate in International Public Sector Financial Reporting programme (Cert IPSFR)

会計検査院の立場からの論文by東信男会計検査院事務総長官房調査課長2007年9月
INTOSAI における政府会計検査基準の体系化・−国際的なコンバージェンスの流れの中で

公会計に関する海外調査報告」by 財政制度等審議会 財政制度分科会法制・公会計部会 公会計基本小委員会平成15年5月23日

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