地方公共団体の会計

新たな統一基準へ(平成26年4月30日)
地方自治体の財務諸表(4表)の作成・開示
財務情報の開示がされていれば夕張市の損失は最小限に止まった
急げ情報開示!早ければ傷は浅い
1999年の提言が10年を超えて遅々として進まぬ日本の公会計改革
相次ぐ自治体の不祥事は、「内部統制の整備・充実」で防げ!
はじめに
1999年(平成11年),経済戦略会議が答申した公会計は未だ実現せず
公会計で、年次財務報告書を適時(6か月以内)に公表しているのは東京都のみ
出納整理期間がなければ東京都もニューヨーク州のように4ヶ月目の7月に公表できる
審議会・研究会で公会計は10年以上議論ばかり、まず適時な開示をすることだ
総務省は地方自治体の会計方式を一本化する。2014年度にも新方式
日々の記帳に複式簿記を適用は3自治体(東京都、大阪府、町田市)のみ
総務省は、平成27年から29年の3年間で複式簿記の導入方針を公表(2014年5月23日)
・【参考】公会計基準・モデル比較表
自治体の対応・・習志野市(2014年5月26日)・・(会計管理者の独り語)が実直でよい。
総務省が会計基準を一本化することで、政策に利用され公会計の進化は必ず止まる
 ・
統一会計基準に名称がない。・・名無しの権兵衛設定主体も”研究会”で臨時的だし。独法と同じ
 ・一度設定すると官では硬直的になり先送りし続け改善しない。情報開示の高度化がされない。
 ・初めての公会計基準である「独立行政法人会計基準」(総務省設定)は抜本的な進化はしていない。
 ・民間の会計基準は、官ではできないとして金融庁・企業会計審議会から独立した企業会計基準委員会(ASBJ)に移した。
 ・縦割り行政で、公営企業会計、国の会計などと合同で統一・整合した公会計の開発をしない。

 ・会計の役割を官によって骨抜きにされることを危惧する。国民にとって適時に分かり易い情報公開が期待されている。
 ・日本公認会計士協会が「公会計基準設定主体の調査研究」を報告(2013年5月)

 ・公会計基準及び監査基準の設定が官の利権を狙っている。監査共同機構はその典型例監視すべきだ
法律ごとに創る公会計基準・・縦割り行政で重複した公会計基準が多い
仰天の「退職手当債」の発行を許された地方自治体(総務省自治財政局)
・10年間の退職金の原資を将来の増税を担保とする債券発行で賄うのは狂気
・2011年3月、橋下大阪府知事「平成23年度予算案、退職手当債は発行無し」
新潟県が発行の「臨時財政対策債(通称・赤字地方債)」て何? 隠れ国債だ!
第三セクター等改革推進債の創設だぞ! 概要 もう破れかぶれだ!良い現象?
地方自治体の地方債現在高の見方→総務省・白書地方財政の概況6.将来の財政負担 ア地方債現在高(資料編:第100表
地方自治体の不正経理
千葉県の5年間で約30億円の不正経理
・・・千葉市議会議長恐喝未遂事件
 透明性、内部統制や競争入札が確立していれば未然に防止できたはず
2009年10月「28府県市すべてで不正経理発覚、計二十数億円 検査院
2010年10月「47都道府県と相模原市を除く18政令市すべてで不正経理、計50億円
新破綻法制 「地方自治体財政健全化法」 が2007年6月15日成立
・・2008年度から連結ベースでチェック
・・各比率の根拠となる財務諸表の開示なく信頼性は疑問
・・総務省の地方公会計の整備状況・・遅々として進まず
 現在、@総務省方式、A基準モデル・B総務省方式改定モデルQ&A)およびC東京都等の独自方式の四つがある
 したがって、精度、比較可能性はばらばらで信頼性・情報の有用性・タイムリーな開示は劣る。
 総務省の会計基準はかなりひどいものがある。国民を意識しているとは思えない。







総務省自治財政が「新地方公会計制度研究会報告書」を公表(2006年5月18日
東京都は複式簿記、総務省の上記報告書は複式簿記は段階的導入で玉虫色
複式簿記・発生主義会計の導入に係る要望事項」予算措置要望by八都県市首脳会議
倉敷市・浜松市をモデルに検証(欧米では検証して基準を公表するが日本は逆)
地方公共団体のバランスシート等の作成状況(総務省2006年8月28日公表)
作成・公表に民間と比べかなりスピード感に欠ける
報告書には財務諸表が誰のために作成・報告するのか「目的」に明記されていない
 総務省「新地方公会計制度実務研究会」の審議状況
総務省は「新地方公会計制度実務研究会」報告書の公表2007年10月17日
 例えば平成20年秋を目処に平成19年度決算の連結財務書類4表を公表期待
国・地方公共団体・独立行政法人の会計基準の相違点」by三菱UFJ(2008年3月)
新地方公会計モデルにおける連結財務書類作成実務手引(2009年6月追加)
アンケート調査−抜本的な見直しが求められる」by生産性本部(2009年12月)
地方行財政検討会議地方自治法抜本改正に向けての基本的な考え方」(2010年6月)
・・・総務省自治体の基準統一??????(2010年9月30日〜)
  今後の新地方公会計の推進に関する研究会
  2012年1月の議論  7月5日の議論 8月1日の議論・・やる気が感じられない
   ・総務省は地方自治体の会計方式を一本化する。2014年度にも新方式
   ・ 中間とりまとめ(案)」・・進展なし。東京都方式を評価している点で評価できる。
今後の地方公会計の複式僕導入の整備促進2014年5月23日)自治財政局
  @統一的基準の公表2014年4月30日)、A平成27年度から概3年間で導入
日本公認会計士協会提言2008年10月15日
・後出し「じゃんけん」のように提言が遅すぎる感は否めないが、提言は進歩
公会計基準設定スキームの構築に向けて」by日本公認会計士協会(2013年5月)
都道府県、人口3万人以上の都市とともに、3年を目途に、4表の整備
ないしは4表作成に必要な情報の提示・開示を2008年度までに求める
(総務省)
夕張市(人口13千人)を考えると「人口3万人以上」とするのに何の意味があろうか
財務諸表の体系4表):・・欠陥が露呈している東京都が地道に複式簿記導入指導
 貸借対照表・・減価償却の開始は取得年度の翌年度から・・奇妙な基準
         ・・インフラ資産の減価償却は直接資本減耗・・奇妙な基準
 行政コスト計算書・・税収の表示は国際基準と異なる
 純資産変動計算書・・税収の表示は国際基準と異なる
 資金収支計算書
連結の範囲・・公営企業・第三セクターを含む
総務省方式・・簿記・会計を無視した方式
帳簿記録の不備で財務報告の内部統制で重大な欠陥あり監査不適格
タイムリーな情報開示が不可能となる(作成が遅いという欠陥がある)
総務省・・地方財政の状況よくわからない情報夕張市の破産状況は分からない
総務省は、夕張市のようなケースを想定しておらず、都道府県を対象にした財政状況調査では
一時借入金の残高を調べていない。⇒つまり情報開示としての会計制度がなかったということ。

地方公共団体の平成17年度版バランスシート等の作成状況について・・超遅い
人口13千人の夕張市財政破綻の記事・・負債総額632億円規模
「自治体の財政はいまだに単式簿記による現金主義のため、現金で入ってくるものは
借金だろうが何だろうがすべて歳入となる。借金によって意味を変えられた実質収支
で財政破たんの有無を測るという手法は正確ではない」
東京新聞2006年6月20日
自治体の子会社(公社・第三セクター)の借金が16兆円(2005年末現在) 
  ・いわゆる地方自治体の「隠れ借金」
総務省のWebで「平成19年度決算にかかる財務書類」の公表
平成20年度基準モデルでの作成はごく少数の予定
富士通・・財務諸表作成システム公表(2009年8月)
TKC・・新地方公会計制度対応の「財務書類作成システム」公表(2010年7月)
ジャパンシステム・・「行政クラウド・モール」への参加を決定(2010年11月)
新基準のモデル都市、倉敷市浜松市のデータベース
・市それぞれに試行錯誤で分かり難いが、一歩前進か
民間企業は複式簿記により記録するのに
・・なぜ公会計は複式簿記の記録をしない場合があるの?
岐阜県各務原市、基準モデル対応の公会計システム導入(2008年4月)
東京都のケース
東京都財務局の財務情報・・提言:『自治体会計の新しい経営報告書<論点整理>』
 ・東京都が全国初の平成18年度財務諸表の公表(2007年9月14日) 
 ・全国初の公表に際しての石原都知事のコメント 
 ・都知事としての一番いい仕事は、会計制度の改革だと思っています (2007年4月)
 ・東京都が、2011年地方自治体では日本初の年次報告書を公表 
  (
年次報告書は役所にはない文書で、読者に判り易くしている画期的方法
東京都の計画・財政・税・・
なぜか東京都はホームページが公式ページと財務局の二つある
・・石原・橋下連合軍が「総務省包囲網」(2009年6月1日)
・・大阪府の新公会計制度/東京都の協力を得て平成24年度から
・・孤軍奮闘の橋下大阪府知事
・・大阪府が平成24年度から新公会計制度導入
・・【日本】石原慎太郎 公会計制度の虚構をあばけ
・・東京都と大阪府が「公会計改革白書」を公表(2010年11月11日
・・公会計は道半ば・・作成者が自ら会計基準を作って監査は行えない。・・東京都
・・新潟県新公会計制度に対応、平成20年度分より作成(2011年8月19日
・・大阪市橋下徹新市長が東京都方式を導入表明2011年12月15日
・・愛知県平成25年度から独自方式の公会計制度を導入(2012年11月)
全国知事会・・公会計制度のあり方について平成20年11月
・・上田埼玉県知事の公会計に関する答弁(平成24年6月)
        上田知事の答弁
総務省の「今後の公会計基準のあり方について検討を行う研究会」で検討を進めている
(平成22年9月から2年以上かけて延々議論しても結論出ずの研究会である)
・・石原新太郎都知事・・・国は地方の成功をマネしない

国際公会計学会・第15 回全国大会・報告要旨集2012 年8 月4 日5 日
 92ページ〜「公会計:総務省方式でよいのか」は、全く同感である。
米国ニューヨーク州の例・・比較財務諸表に監査報告書添付
・・・3月決算で7月25日(4か月以内)に監査報告書が作成されている
米国の州、市、郡、、町、村、公立学校等の監査済み年次報告書がネット上から閲覧できる

ニューヨーク州財政及び91年度予算の概要」by CLAIR REPORT 023号/FEB. 8, 1991

米国の地方団体・州・連邦における行政評価」byCLAIR REPORT 11月 201(may. 29, 2000

米国債の概要とその活用例」by CLAIR REPORT 287,Aug 31,2006
     ↓公共事業の新たな在り方・・資本市場を通じた透明性の高い方法
 国土交通省が研究しているレベニューボンドのもと  キーワード:レベニューボンド
     ↓ キーワード:レベニュー
 青森県が国内初の日本版レベニュー債を検討2010年6月9日  

セントラルフォールズ市、破産法第9条の更生手続き申請(2011年8月)
デトロイト市、連邦破産法第9条の適用を申請、米自治体で最大(2013年7月19日)
ドイツの地方自治体の予算会計制度改革(2013年1月)
ドイツ及びフランスにおける財務書類(2013年2月)
地方自治体の外部監査・・改正自治法により平成10年10月1日施行されました。
自治体の不祥事は、「内部統制の整備・充実」で防げ!
地方自治体が支払う高金利の受益者は国という大庫直樹氏」by磯山友幸氏(2013年)













地方公営企業等金融機構の概要地方公共団体金融機構へ変身(09年6月)
・・公営企業とは上下水道、交通、病院など住民の生活に密着した事業  地方公営企業決算
・・仏エオリアやスエズ社のように水事業に民間活用へ始動
・・やっと地方公営企業の会計基準検討開始(09年6月)
・・総務省地方公営企業会計制度等研究会  報告書2009年12月24日・・平成26年度より適用
・・地方公営企業会計制度の見直しに関する説明会・・今後のスケジュール(案)2011年10月13日
・・会計制度の関するQ&A 2012年4月12日、2月14日、2011年11月30日
・・みなし償却制度の廃止に伴う移行処理について(方針変更)2011年12月20日
・・
地方公営企業会計制度の見直しに関する説明会2012年1月26日  見直しについて
・・地方公営企業会計基準の見直しに係る財務諸表の試算のためのファイル2012年3月6日
・・資本制度見直しに関する様式(剰余金計算書、剰余金処分計算書)2012年4月16日
・・地方公営企業法の適用に関する研究会 2013年7月2日報告書(案)概要 報告書
全公営企業に民間会計(2018年に下水道など)・・実態を開示して統廃合や値上げを迫る。
 約8800あるすべての公営企業への適用を目指す

 総務省自治財政局公営企業課・・民間手法の取組事例集(2012年10月)
国家の会計基準・・日米の会計基準
国・地方公共団体の財務書類作成基準と独法会計基準の相違点報告書H20.3
国際公会計基準(IPSAS)
政府機関の監査を行っている会計検査院の国際組織INTOSAI
・政府検査基準の作成(国際監査基準・ISAとのコンバージェンス)
・内部統制の有効性に関する報告書ガイダンスの作成
連絡先・・支援します。
●「会計・税金・財務情報(ディスクロージャー)」へ
会計基準・財務情報開示の総合情報サイト

はじめに

1999年(平成11年)2月26日,経済戦略会議(樋口広太郎議長)は、最終報告を小渕首相に最終答申書を提出した。答申の中に、「健全で創造的な社会」の構築とセーフティネットの整備、と題して「1.「小さな政府」へのイニシアティブの中の(3)公会計制度の改善として次ぎのように書かれている。10年以上経っても公会計はおろか監査は実現していない迷走して作文ばかり。いち早く公会計を導入した東京都の石原都知事が国政に鞍替えしても跡を継いだ猪瀬知事が政治献金問題で失脚して舛添知事が当選すると急遽総務省は統一基準を言い出した。やっと、始動し始めた。

 
中央政府は財務省、地方自治体は総務省(旧自治省)が縦割り行政で動いて、タイミングや財務諸表体系が整合していない。中央政府及び地方公共団体の公会計基準を一つ作ればよいことなのに、寄ってたかって法律ごとに縦割り行政で会計基準を重複して作成している。独立行政法人会計基準総務省財務省)、地方独立行政法人会計基準総務省自治行政局行政課)、国立大学会計基準(文部科学省)などが典型的である。

経済戦略会議の答申の一部抜粋

2i.1.3   公会計制度の改善

公的部門の効率化・スリム化を進めていく上での大前提として、また、政策の事後評価を行う観点から決算はこれまで以上に重視されるべきであり、中央政府(特殊法人等を含む)及び地方公共団体(外郭団体を含む)のいずれにおいても以下のような方向を基本に会計制度等の抜本的改革を進め、会計財務情報基盤を整備する必要がある。

○ 国民に対して政府及び地方公共団体の財政・資産状況をわかりやすく開示する観点から、企業会計原則の基本的要素を踏まえつつ財務諸表の導入を行うべきである。

○ 具体的には、複式簿記による貸借対照表を作成し、経常的収支と資本的収支を区分する。

○ 公的部門全体としての財務状況を明らかにするため、一般会計、特別会計、特殊法人等を含む外郭団体の会計の連結決算を作成する。

○ 現金主義から発生主義に移行する。

○ 以上の改善を進めるなかで、地方自治体については、全国統一の基準に基づいて財務諸表を作成・公表することにより、各自治体間の比較・評価を可能とすべきである。

○ 決算に関しては、外部監査の導入・拡充を行うとともに徹底した情報開示を行う必要がある。

日本で,初めて公の文書で公会計の必要性を訴えている。

その後、国は「国民に対する説明責任があるとして」、2000年10月10日、大蔵省が「国の貸借対照表(試案)」「国の貸借対照表作成の基本的考え方」を公表し、2001年9月14日、財務省(旧大蔵省)が「国の貸借対照表(試案)平成11年度・2000年3月末」を初めて公表した。以後、毎年「国の貸借対照表(試案)関連」として公表されるようになった。

また、国の会計基準についても検討されており、平成16年(2004年)6月17日財政制度等審議会は、「省庁別財務書類の作成について」を公表した。財務諸表の体系は、貸借対照表、業務費用計算書、資産・負債差額増減計算書、区分別収支計算書で統一されることとなった。平成15年度からの適用としている。(「財 政 制 度 等 審 議 会 財政制度分科会 法制・公会計部会 記者会見 」参照) この基準により、財務省は「平成14年省庁別財務書類」および、「平成15年度の国の財務書類」を作成し公表している。国が先行した形であるが、複式簿記による会計記録は会計法などの法律を改正しない限りできない。複式簿記については地方公共団体が先行しよう。

なお、総務省では、平成18年(2006年)6月2日成立の「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律第62条2項に基づき、各地方公共団体に新地方公会計モデル(基準モデル及び総務省方式改訂モデル)を用いた連結財務書類の作成を要請しております、とのことですが、第62条2項には、「  政府は、地方公共団体に対し、前項各号の施策の推進を要請するとともに、企業会計の慣行を参考とした貸借対照表その他の財務書類の整備に関し必要な情報の提供、助言その他の協力を行うものとする」とだけあるだけで報告の適時性についての規定はない。

ちなみに国の場合は、「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律 第60条2項に「  政府は、企業会計の慣行を参考とした貸借対照表その他の財務書類の整備を促進するため、当該書類を作成する基準について必要な見直しを行い、その他必要な取組を行うものとする」として報告書の適時性の規定はないため、1年を超えて翌年の6月に公表している。国民は、1年以上前の古新聞を見せられているようなもの。

日々の記帳に複式簿記を適用は3自治体(東京都、大阪府、町田市)のみ

平成25年8月、総務省・今後の新地方公会計の推進に関する研究会は、中間的なとりまとめ骨子として、「公会計においては、検証可能性を高め、より正確な財務書類の作成を可能とするため、複式簿記の導入が必要不可欠である」とした。「いつまでにどの程度のものを導入するかは、実務的な検討が必要」と煮え切らない対応であるが、複式簿記の導入を認めたのは初めてである。

地方公共団体の平成23年度決算に係る財務書類の作成状況等調査日:平成25年3月31日)」によれば、日々複式簿記で記帳している都道府県は東京都と大阪府、市町村は町田市の合計3自治体のみという寂しい結果である。なお、基準モデルの一括仕訳の方法は、企業会計にはない仕訳を行って作成されている。監査に耐えうるのは、日々の複式簿記による記帳しかない。将来、日々の複式簿記で記録する場合は、基準モデルの一括仕訳は役に立たないことを知っておくべきだ。時を無駄にしないためには、東京都方式の複式簿記による伝票ごとの取引発生ごとに記録する方法にするべきだ。

民間企業であれば、どんなに小さい企業でも青色申告するためには複式簿記で記帳して決算をしているのだ。自治体にできないわけがない。米国では町(Town)の包括年次財務報告書村(Village)の包括年次報告書に至るまで複式簿記の決算で監査を受けて公表している。日本はやる気がないだけである。

5.作成団体における財務書類の作成方法
平成23年度決算に係る財務書類の作成団体(1,711団体)のうち、財務書類の作成方法について、「決算統計データ等を活用して作成している」が1,453団体(84.9%)、「伝票単位ごと等に期末一括で仕訳を行っている」が255団体(14.9%)、「伝票単位ごとにその発生の都度に仕訳を行っている」が3団体(0.2%)となっている。

合計 都道府県 市町村
伝票単位ごとにその発生の都度に仕訳を行っている 3 (東京都、大阪府)2 (町田市)1
伝票単位ごと等に期末一括で仕訳を行っている(基準モデル方式) 255 5 250
決算統計データ等を活用して作成している合計(改定モデル方式) 1,453 40 1,413
合計 1,711 47 1,664

※「仕訳」とは、ここでは取引を原因と結果という二つの側面から仕訳帳等に記録する複式簿記による仕訳を指している。

東京都では、平成23年12月26日、「新公会計制度普及促進連絡会議」を創設して、東京都方式を普及させている。総務省がすべきことを東京都がしているようなものである。賛同している愛知県大村知事)が平成25年度に複式簿記・発生主義会計の導入を決めており、橋下市長の大阪市は平成28年度の初年度財務諸表作成・公表を目指している

東京都の新たな公会計制度」(平成25年4月)・・全体の流れが分かる。
公会計改革白書」(平成22年11月)・・「我が国の自治体の公会計」・・東京都の会計の歩みが具体的にわかる。
「東京都会計基準」について(平成25年4月)・・改正を通じて完成度を高めている

平成26年(2014年)5月23日、総務省自治財政局財務調査課は、突如として(2月舛添要一氏東京都知事となる)、「今後の地方公会計の整備促進」と題して、、「今後の新地方公会計の推進に関する研究会」を開催して議論を進めてきましたが、平成26年4月30日に報告書(70ページ)を取りまとめております。この中で、固定資産台帳の整備と複式簿記の導入を前提とした財務書類の作成に関する統一的な基準を示したところです。今後、平成27年1月頃までに具体的なマニュアルを作成した上で、原則として平成27年度(2015年度)から平成29年度までの3年間で全ての地方公共団体において統一的な基準による財務書類等を作成するよう要請する予定であります。やっと、具体性をもって複式簿記による財務諸表の作成に腰を上げようとしています。それにしても行動が遅い。監査制度の導入はまだまだ先だ。

平成26年4月30日に公表の報告書(70ページ)を読むと、出納整理期間について260項に「追加情報」として、『B出納整理期間について、出納整理期間が設けられている旨(根拠条文を含む)及び出納整理期間における現金の受払等を終了した後の計数をもって会計年度末の計数としている旨、を記載する』としています。この出納整理期間の注記は、期末時点の財政状況を歪めていること言っており、注記したからと言って財政状態の歪みは適正表示とはならないことから、監査人の視点からは財政状況は適正表示しているとは言えないことになります。期間の収益・費用が発生主義会計で複式簿記を使って財務諸表が作成されるなら、出納整理期間の注記は必要ないはずである。それでも、注記するのであれば意味不明で読者をミスリード(誤解)させることになる。

7ページの、「35. 比較可能性の原則とは、財務情報が会計期間または他の会計主体との間で比較し得るものかを意味し、このような比較が可能かという点等が考慮されるべきである」としていながら財務諸表は比較して表示することを求めていない。37ページの様式第1号の貸借対照表から第2号の行政コスト計算書、第3号純資産変動計算書、第4号の資金収支計算書まで単年度表示をして比較財務諸表となっておらず矛盾したものとなっている。注記も、原則通りに比較情報を提供すべきであろう。
また、税収は収益(42項参照)として行政コスト計算書に行政コストと対比して表示すべき(152項参照)であるが、財源となっており純資産変動計算書に表示され、基準の文章と整合していない。少なくとも国際公会計基準(IPSAS)と整合したものが望まれる。東京都やニューヨーク州の財務諸表は行政コストと税収は対比表示されている。
貸借対照表の表示が、わざわざ流動性配列法から固定配列法に変更されている。東京都やニューヨーク州の財務諸表は流動性配列法で表示されている。日本になじみのある流動性配列法の方が日本国民にとって分かり易いはず。国際基準といたるところ整合していない。

総務大臣 新藤 義孝より、都道府県・市町村への要請
今後の地方公会計の整備促進について  ⇒平成26年4月30日統一的な基準の公表 ⇒基準の周知徹底  ⇒平成27年1月頃「地方公共団体に基準による財務諸表等の作成要請」
今後の新地方公会計の推進に関する研究会報告書概要等 今後の地方公会計の整備促進について(平成26年5月22日)
地方公会計システムの構築について(イメージ)

参考】公会計基準・モデル比較表 下記をクリックすると表示されます。
(1)税収の取り扱いは、上記のとおり、東京都と国際公会計基準が行政コスト計算書に表示ですが、日本の国と地方自治体は国際会計基準に一致していません
東京都と国際公会計基準は、税収と行政コストを対比して表示する分かり易い常識的な普通の表示の仕方をしています。
日本のように表示している国を知りません。日本と同じ表示をしている国がありましたらお知らせください。
(参考:桜内文城氏個人の考えが影響しています。税収以内で行政コストを賄うと考えるのが分かり易いと思うのですが・・)

(2)資産負債の配列法は、固定配列法に変更yされている。東京都、国際基準は流動性配列法又は流動性配列法を認めている。
  変更した理由が述べられていない。闇雲に役人が変更したように見える。役人が縦割り行政ごとに会計基準を設定してるようなもの。

(3)純資産の表示が奇妙
様式第1号の貸借対照表の純資産の部は、”固定資産等形成分”と”余剰分(不足分)”を表示し、
様式3号の「純資産変動計算書」には、”固定資産等形成分”と”余剰分(不足分)”を重複して表示するが期首残高と期末残高は、
恣意的な数値になり意味をなさず読者をミスリードさせよう。誰もその数値の適正意見を述べられないだろう。
様式第2号及び第3号(結合)の行政コスト及び純資産変動計算書は、2期比較表示が求められており奇妙な表示となろう。
まことに不思議な財務諸表を作ろうというのだ。監査のことを考えているとは到底思えない。


新藤総務大臣閣議後記者会見で、大臣は、「統一の公会計基準を整備する。それを共通で、皆さんが使えるようにしておいていただくように準備したうえで、我々はクラウドを導入いたしまして地方税財政の全体を共通管理しようと。その中で、それぞれがですね、やっていただく。これは、むしろ規模の小さな市町村、町や村の方々にはものすごく便利で、かつ、合理的なものになると思います。例えば、自治体でシステムを入れたとしても、そのバージョンアップですとか改変はですね、クラウドの中でやれば一括でできてしまうわけでありますし、同じシステムを使っていれば、少し疑義が生じたときも近隣のですね、詳しく承知している方がいらっしゃるところに、すぐに聞くことができると。それから、国とすれば、この、全地方公共団体が、公共施設、また社会資本をどのように維持・管理しているかが、理論的には1秒で全国が把握できる。こういうことになるわけでありまして、是非こういう行政の電子化の一環としてですね、これは強力に進めていきたいと思います」と言っています。

LGWAN(J−LIS地方公共団体情報システム機構)経由で「ICTを活用した標準的なソフトウェアを開発し、平成27年度のできる限り早い時期に地方公共団体に無償で提供したいと考えております」としており、ICTの活用では、クラウド型の会計ソフトを想定しているようです。

 ○今後の新地方公会計の推進に関する実務研究会・・第1回会合(平成26年5月28日開催)(検討内容)〜

総務省自治財政局財務調査課 公会計担当    
    (電話)03-5253-5647     
      (FAX)03-5253-5650     
      (E-mail)chihou-koukaikei@soumu.go.jp



法律ごとに創る公会計基準・・縦割り行政で重複した公会計基準となっている
・・公務員が重複して仕事していることを意味している。コスト削減すべき!

国や地方自治体、公営企業、地方独立行政法人など国または地方自治体で設立した事業体について、日本では、根拠法令ごとに会計基準を作成しており、重複する内容となっている。民間の会計基準が企業会計基準委員会が一つ設定しているのと同様に、公会計基準は一つでよい。なぜなら、資産、負債、純資産、税金、交付金、補助金、経費は、国、地方自治体、公営企業、地方独立行政法人等同じに定義・会計基準とされるからである。加えて、既に民間で設定されている会計基準、例えば、固定資産の計上・減価償却、資産の減損会計、金融商品の会計、退職給付会計などは公会計基準でも同じ取扱いとなるケースが多い。国際公会計基準(IPSAS)を導入するなり、国際公会計基準を参考に一つの公会計基準を作成するなりして重複した会計基準の作成を止めるべきだ。(参考:総務省委託研究「国・地方公共団体の財務書類作成基準と独立行政法人会計基準の相違点等の調査研究」by三菱UFJリサーチ平成20年3月)

国の財務諸表 地方自治体の財務諸表 公営企業 地方独立行政法人 (国の)独立行政法人
所管 財務省 総務相自治財政局 
財務調査課公会計担当
総務省自治財政局
公営企業課
総務省自治行政局
行政課・行政経営支援室

総務省・地方自治制度
総務省行政管理局
独立行政法人総括担当

財務省・財政制度等審議会
根拠法令 財政法」で予算及び決算を規定し、
会計法」及び政令により歳入及び歳出等の手続きを規定して、
予算決算及び会計令」でより詳細に規定されているが
情報開示としての会計基準はない。
地方自治法
ただし情報公開としての会計基準は確立していない。
地方公営企業法
ただし情報公開としての会計基準は確立していない。
地方独立行政法人法 独立行政法人通則法
審議会等 財務省・財政制度等審議会
財政制度分科会
法制・公会計部会
今後の新地方公会計の推進に関する研究会 会計基準の見直しスケデュール 独立行政法人会計基準研究会
会計基準 省庁別財務書類の作成について
新たな特別会計財務書類について
地方公会計の整備状況
会計制度の見直し状況 地方独立行政法人
の会計基準
独立行政法人
の会計基準
財務書類 連結省庁別財務書類 地方自治体の財務書類 公営企業の決算 財務諸表

国立大学は文部科学省主管で、大学法人法を根拠法令とし、独立行政法人の会計基準にほぼ準拠した「国立大学法人法」関係6法により「国立大学法人会計基準」及び「国立大学法人会計基準注解」報告書が作成され個別の国立大学法人等の財務諸表については、各法人のホーム・ページに掲載され公表されている。

 一方、地方自治体の県立大学等の公立大学の場合は、総務省自治行政局の「地方独立行政法人の会計基準」が適用される。(公立大学法人財務会計の概要  地方独立行政法人会計基準等研究会開催要領by総務省自治財政局財務調査課)

ちなみに、私立学校及び私立学校振興助成法による学校法人の作成する財務諸表の作成基準は「学校法人会計基準」による。 文部科学省は、学校法人をとりまく経営環境が大きく変化する中、公教育を担う学校法人の経営状況に関して、社会に対する説明責任が一層求められております。また、近年、世界的な会計の動向から、諸会計基準において様々な見直しが行われているところであります。  学校法人会計基準の在り方に関する検討会は、このような状況に鑑み、私立学校の特性を踏まえ私立学校の振興に資するよう、一般に分かりやすく、かつ経営者の適切な経営判断に資する計算書類とすることを目的に、学校法人会計基準の在り方について有識者による検討を行うことを目的としています、として再検討に入った。(主な論点と各会計基準の現状 財務3表の素案 学校法人会計基準の改正

公会計基準は国際公会計基準のとおり一つであろう。所轄官庁(法律)ごとに会計基準を設定していては、効率性・迅速性はない。同じ規定の会計基準が法律ごとに作成され内容は重複が多く、会計基準の改正があるごとに、改正作業の重複したコストは増える。財政難の現在、公務員に効率性・迅速性を求められ、いつまでも縦割り行政による公務員の重複作業は国民が許さなくなるであろう。省庁間で相互に調整して、例えば、財務省、総務省、会計検査院がメンバーとなり独立性・専門性の高い公会計設定主体を創設し、信頼性のある一つの完成度の高い公会計基準を作るべきだ。


国(財務省)、総務省地方財政より一知事による公会計改革が早いことを立証

1999年(平成11年)4月石原慎太郎氏は東京都知事選に出馬し当選。以後、4年おきの知事選に当選し2011年4月の選挙で当選で4期目である。石原氏の公会計は本物である。国(財務省・財政制度等審議会)、地方公共団体(総務省地方財政)の公会計を所轄する官庁より早く公会計制度を立ち上げ、平成18年度より毎年、年次財務報告書を6か月以内に適時に開示して、東京都としての説明責任を果たしているといえる。一方、国および他の地方公共団体は、まともに複式簿記を導入しているところは少なく、かつ、開示していても十分な説明が付されておらず、かつ、適時に公表されることはなく遅々として進んでいない。

2003年5月20日、東京都は、「東京都の会計制度改革の基本的考え方と今後の方向」をまとめ公会計の確立へ向けて意欲を見せている。それによると「東京都は平成10 年度決算から「機能するバランスシート」という名称で官庁会計決算を組み替える方式で財務諸表を作成し公表してきた。しかしながら、この手法では財務諸表を迅速に作成できないという問題があった。また、事業ごとに財務諸表を作成することが難しいことから、個々の事業を分析する手段としても一定の限界があった。そこでこうした問題点を克服するため、平成14 年5 月に、日々の会計処理の段階から複式簿記・発生主義会計を全庁的に導入することを表明し、平成18 年4 月に、新たな公会計制度を導入した」としている。

東京都は国内の自治体で初めて、民間企業と同様に複式簿記・発生主義の基準を取り入れた財務会計システム2006年(平成18年)2月24日に稼働させた。(東京都都知事室 参照)

2007年9月14日東京都は全国で初めて複式簿記による記録を行いそれを基礎に平成18年度「東京都年次財務報告書」<本編>を作成して公表した。これは、石原都知事のコメントに「都の会計制度改革は、知事就任以来の多くの改革の中で最も本質的なものであり、ストックやコストの情報の明確化、事業分析の強化によって、更なる行財政改革に途を拓くものである。  今後、東京から日本を変えるため、“東京発の新たな公会計”を積極的に全国に発信していきたい」として行政改革の大きな一歩を記したものである。

石原知事は、国が公会計制度を整備する前に改革・実行している。希有な存在である。国政に永く携わって国の制度化を熟知している人ならではの実行力である。国と比較すると以下のおとおりである。

1873年(明治6年)に、 福沢諭吉が「帳合之法」を出版し、日本ではじめて西洋の簿記を紹介した頃は、欧米の会計の黎明期といっていい。当時簿記に着眼した福沢諭吉の先見の明に驚かされる。石原知事は、公会計に複式簿記を導入した先見の明のある人と言える。

東京都と国 作成基準 公表される財務報告書 コメント
東京都・・・知事室
東京都財務局
東京都会計管理局
東京都会計基準 東京都財務局
平成23年度「東京都年次財務報告書
平成22年度「東京都年次財務報告書」
平成18年度より

東京都会計管理局
東京都決算参考書財務諸表(都議会承認後開示)
3月決算で9月には開示している。
平成18年度から実行している。
総務省・・地方自治体の財務諸表

自治財政局財務調査課

地方財政の分析
地方公会計の整備
「新地方公会計制度実務研究会」報告書
(平成19年10月)


今後の新地方公会計の推進に関する研究会
で只今検討中・・勉強会??
平成22年度決算に係る財務書類
平成21年度決算に係る財務書類
平成20年度決算に係る財務書類
平成19年度決算に係る財務書類
平成19年度より(開示は17ヶ月後)
◆ 基準モデルで公表している団体
◇ 総務省方式改訂モデルで公表している団体
● 独自のモデルで公表している団体
□ 総務省方式で公表している団体
で各地方公共団体はばらばらの開示である。
東京都の除いて、1年を超えて公表

出納の閉鎖地方自治法
財務省・・国の財務諸表

財政制度等審議会財政制度分科会

国の貸借対照表作成の基本的考え方
(平成12年10月)

法制・公会計部会で検討中・・勉強会??

国の財務書類
平成15年度より(開示は1年を超える)
1年を超えて15ヶ月後に公表

出納整理期限予算決算及び会計令

東京都は、会計基準や米国ニューヨーク州の包括年次財務報告書等の研究を進め、いち早く複式簿記・発生主義会計、年次財務報告の確立を行い決算から6か月以内(国際基準に準拠)に公表している。公表するに伴い財政の健全化に努めているといえる。国(財務省および総務省)は、公会計の所轄官庁であるが1999年2月26日,経済戦略会議(樋口広太郎議長)の最終報告(上記参照)から10年を超えているが、@複式簿記による記帳、A発生主義会計(出納整理期間を反映しない)、B6か月以内の公表、C説明責任を果たすために理解し易い説明を加えた様式等に関して遅々として進まない。まして、監査制度は遠く及ばない。公会計は、東京都を除いて、失われた10年から失われた20年になろうとしている。

なお、出納整理期間の問題は、独立行政法人(独法)ができてからは、独法では発生主義会計が行われており出納整理期間の問題は生じていない。国及び地方公共団体も発生主義会計により出納整理期間の問題は解消する。東京都を見習って会計制度改革を行っている大阪府がこの問題を解消すると伝え聞いている。大阪府の対応が楽しみである。

出納整理期間の問題は、新潟県のように決算期を5月31日(1年を超えた会計期間)と誤解することにもなる。(注記 参照)

大阪府は、「出納整理期間」について、「仮に出納整理期間がなければ、両年度の取引が混在する期間がなくなり、客観的な検証が可能。また、基金や公有財産の残高との整合が容易民間並みの迅速な決算報告が可能」としている。大阪府は正しい。(今後の新地方公会計の推進に関する研究会(第4回)2011年1月14日大阪府の新公会計制度(案)」19ページ参照)

計画(Plan)⇒実行(Do)⇒評価・分析(Check)⇒改善(Action)のPDCAサイクルを機能させるためには、計画(Plan)を実行(Do)した結果を決算として纏め、これを分析(Check)し財政改善(Action)に向けなくては決算の意味を半減させる。財務諸表の利用者である国民も行政に対して効率よい予算の執行を求めているのだ。民間では、3ヶ月後の株主総会までに分析が完了し株主に対して説明できるようにしておく。1年も経過して公表しても効果は半減してしまうことになる。 ちなみに、米国連邦政府は9月決算で12月中旬(3カ月以内)に監査済み年次財務報告書を公表し、ニューヨーク州は3月決算で7月中旬(4か月以内)には包括年次財務報告書を公表している。(政府財務報告の適時性の重要性」・・In recent years, federal government departments have been required to complete and make available their financial reports 45 days after the close of the fiscal year, and the governmentwide consolidated financial report of the United States is due in 75 days. As required by state law, the state of New York and the city of New York routinely issue audited financial statements within four months of their year-ends.)

新破綻法制 「地方自治体財政健全化法」 が2007年6月15日

夕張市の 「財政破綻」 の社会的影響はことのほか大きく、2007年6月15日、地方自治体の財政破綻を早い段階で食い止める、新破綻法制 「地方公共団体の財政の健全化に関する法律(地方自治体財政健全化法)」 が6月15日と予想外に早く成立した。(概要 法律案 関係資料 参照)

2007年3月末の全市町村数が1,804ですから、164の市町村で連結決算が赤字だったようですので、全市町村の9.1%が連結赤字ということになります。

財政健全化法では、地方公共団体 (県、市町村、特別区) は、
@実質赤字比率
A連結実質赤字比率 (全会計の実質赤字等の標準財政規模に対する比率)、
B実質公債費比率
C将来負担比率 (公営企業、出資法人等を含めた普通会計の実質的負債の標準財政規模に対する比率)、
の4つの指標を監査委員の監査に付した上で、議会に報告し、公表するよう義務づける。

健全化判断比率等の対象
住民・議会向け 総務省向け






一般会計 普通会計

@










A















B
















C











特別会計

うち
公営企業会計
普通会計
公営事業会計
一部事務組合・広域連合
地方公社・第三セクター


@〜Cのいずれかひとつでも、早期健全化基準以上となった場合には、「財政健全化計画」 を定めなければならなくなり (財政健全化団体)、財政再生基準を超えた場合には、「財政再生計画」 を定め、総務大臣との協議を行う (財政再生団体)。(地方財政健全化法について 参照)

「財政再生団体」 になると、財政再生計画の中で総務大臣の同意を得ていなければ、地方債の起債ができなくなる (災害復旧事業等は除く) ほか、「財政再生団体」 に対して国が必要な勧告を行うことができることから、現行の破綻法制でいうところの、「財政再建団体」 の名前が変わったものといえる。

 現行制度下では実質赤字比率が20%を超えると「財政再建団体」 に指定されます。(夕張市が37.8%)
実質赤字比率20%超の市町村は、夕張市以外に長野県喬木村(21.5%)、和歌山県太地町(35.7%)、香川県綾川町(21.1%)、福岡県苅田町(26.0%)、の4町村ですが、これらの町村は連結ベースでは赤字ではありません。連結ベースで20%超は、14市町あり、多くは北海道と大阪府下に集中しています。
2008年度決算から新法が適用となりますが、その基準値は省令で公表される予定です。(日本国財政破綻Safety Net より)

外部監査
○地方公共団体の長は、健全化判断比率のうちのいずれかが早期健全化基準以上となった場合等には、個別外部監査契約に基づく監査を求めなければならないこととする。

●連結の対象範囲がまちまである。連結実質赤字比率の「連結」は、普通会計に公営企業等までを含めたものであるが、地方公共団体とは別法人等である一部事務組合、地方三公社、地方独立行政法人、三セクは含まない指標である。連結将来負担比率の「連結」は、普通会計に公営企業等を含み、更に、当該地方公共団体とは別法人等である一部事務組合、地方三公社、地方独立行政法人、三セクまでを含むものの、それら普通会計以外のもつ負債の全てを指すのではなく、普通会計が将来的に負担することになる負債に限定して算定される指標である。(監査法人トーマツ 参照)

●自治体が第三セクターの処理を迫られる背景には、6月に成立した地方財政健全化法がある。2008年度決算から、自治体の財政を特別会計や第三セクターを含めてチェック。連結ベースの財政指標が一定よりも悪い場合は、健全化計画を策定しなければならない。政府は、2008年度に第三セクターの再生を手がける地域力再生機構を設立する方針。(日経2007年9月3日より)

いずれにしても、不完全な指標に思える。それというのも、計算根拠となる数値の財務諸表が開示されないことにある。

2007年8月、参議院の現状認識⇒「地方公共団体における公会計制度改革の動向」by決算委員会調査室石原繭実氏著
総務省の現状認識⇒「平成19年度地方財政白書

地方公共団体の会計:

一方、地方公共団体の会計については、2000年3月29日の日本経済新聞によれば、自治省(2001年総務省へ統合)地方自治体向けに貸借対照表を作成する際の指針をまとめた、と報じた。当面は参考資料とし、将来は自治体に作成を義務つける方針。地方の債務残高が過去最悪の約163兆円(1998年度決算)に達するなど財政状況の悪化が一段と進むなか、地方財政の情報開示を促すのが狙い、としている。

2000年5月18日、東京都財務局は、「機能するバランスシート」の中間報告(PDFファイルで135ページ)を公表した。これによると、財務諸表を、貸借対照表、キャッシュフロー計算書、行政コスト計算書をいうとして、東京都の財務諸表を公表している。いくつかの貴重な指摘を行っており情報開示の重要性を立証している。

既に公表している、熊本県、藤沢市、三重県、臼杵市、神奈川県、宮城県などの公表した財務諸表の分析も行われ、貴重な資料となっている。いずれも先駆的な知事または市長により財務諸表が公表され高く評価されるものである。しかしながら、課題を残しており、確立した会計基準とはなっていない。

2003年5月20日、東京都は、「東京都の会計制度改革の基本的考え方と今後の方向」をまとめ公会計の確立へ向けて意欲を見せている。
それによると「東京都では、官庁会計による決算方式を補完・改善するため、「機能するバランスシート」を作成し、事業の見直しに積極的に活用してきました。  しかし、普通会計決算の組み替えによる方法には一定の限界があることから、会計処理の段階から複式簿記・発生主義を導入することとし、検討を進めてきました。  このたび、こうした複式簿記・発生主義導入について、「東京都の会計制度改革の基本的考え方の今後の方向」(PDF)として取りまとめましたので、お知らせします。」としている。

東京都は国内の自治体で初めて、民間企業と同様に複式簿記・発生主義の基準を取り入れた財務会計システム2006年(平成18年)2月24日に稼働させた。(東京都都知事室 参照)

 今回、それに先立ち、この新たな会計制度の内容を明らかにした『東京都の新たな公会計制度』を取りまとめ、その中で、会計制度のルールである「東京都会計基準(2005年8月26日)」を策定しました。 この「東京都会計基準」は、民間企業における会計基準とは異なり、行政の特質を反映した複式簿記・発生主義会計の基準であり、行政が策定するものとしては日本で初めてのものです。(都知事としての一番いい仕事は、会計制度の改革だと思っています--東京都知事・石原慎太郎氏(2007年4月10日日経BP)参照

2006年5月18日総務省は、地方公共団体の会計を整備するためと称して「新地方公会計制度研究会報告書」を公表した。東京都に引きずられた形となった。内容は、国の省庁別財務書類の考え方に整合させており、検討する余地は残しつつも今までのものよりは完成度が高くなりつつある。

79項 地方公共団体の財務書類の体系は、貸借対照表、行政コスト計算書、純資産変動計算書、資金収支計算書及びこれらの財務書類に関連する事項についての附属明細表とする。
80項 財務書類の作成単位は、普通地方公共団体、すなわち都道府県及び市町村とする。

−取り組みが進んでいる団体にはさらなる改善を求めつつ、都道府県、人口3万人以上の都市とともに、3年を目途に、4表の整備ないしは4表作成に必要な情報の提示・開示を求める

まだ取り組みが進んでいない団体にはまず総務省方式での財務諸表作成に踏み出すことを求めつつ、町村、人口3万人未満の都市とともに3年程を準備期間として、4表の整備ないしは4表作成に必要な情報の提示・開示を求める


収益
53. 収益とは、@一会計期間中における活動の成果として、A資産の流入もしくは増加、または負債の減少の形による経済的便益またはサービス提供能力の増加であって、B会計主体の所有者以外との取引その他の事象から生ずる純資産の増加原因をいう。
54. ここでは、税収を主権者としての住民からの拠出と捉えていることから、上記Bの要件に該当せず、収益としては計上されない(むしろ純資産変動計算書上の損益外純資産増加原因として計上される)としている(第67 段落参照)。
55. また、国庫支出金等の受入のうち、資本移転収入(経常費用に対応する経常移転収入に該当しない場合)も、収益としては計上されない(むしろ純資産変動計算書上の損益外純資産増加原因として計上される)点に留意すべきである(第67段落参照)。


総務省の報告書では、税収も国庫支出金等も財源(純資産の増加減少として計上する)であって収益ではないとしている。
東京都が、「行政コスト計算書」の通常収支の部に税収及び国庫支出金等の受入れを計上するのと異なっている。

後から作成した総務省の方が、完成度は高いといえる。多くの議論を重ねることがいかに重要かわかる。ただし、単年度表示で比較財務諸表になっていない点や、双方ともに譲渡不能な(資金化不能で借入金返済の原資にならない)インフラ資産を資産計上しているのは議論の余地が残る。

複式簿記については、東京都は「東京都会計基準」で導入したが、総務省の報告書では次のように段階的に導入としており具体性がなく、複式簿記の導入に関しては誰の目にも東京都が優れているといえる

段階的な複式簿記の考え方の導入
332.複式簿記の考え方の導入は、帳簿の複式記入等の企業会計の仕組みの理解促進や企業会計手法を活用した財務書類のより早期の作成・開示には、有効な手段の一つであると考える。しかし、その導入にあたっては、会計基準等の詳細な整備や複式簿記システム導入等のシステム対応が必要となる。

実際は、会計基準の整備、複式簿記システム導入など具体的に実行のための作業が見られない。民間の事業会社(97%が中小企業)では、複式簿記で決算書を作成し2ヶ月以内に確定申告書・納税を行っている。国民から税金を徴収している地方公共団体には国民からの受託責任(stewardship)があり説明責任(accountability)があるはず。簿記・会計による国民への情報開示は選択の余地無く、実行するのみと考えるが如何か。

2007年10月17日総務省は「新地方公会計制度実務研究会報告書」を公表した。基本的考え方は、5月に公表したものと変わらず、より詳細な規定となった。財務書類の整備スケジュールは下記の通り相変わらず曖昧である。

財務書類の整備スケジュールについて
 (1) 平成18年8月の地方行革新指針で要請された連結財務書類4表の公表は、同指針の通知から約3年後の平成21年秋(町村等一部団体については5年後の平成23年秋)を目処としている

 (2) 「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」に基づく健全化判断比率が、平成19年度決算に基づき平成20年秋に公表されることもあり、例えば平成20年秋を目処に平成19年度決算の連結財務書類4表を(あるいは連結貸借対照表のみでも)開示するなど、早期に財務書類を整備の上、公表することが期待される

基本的考え方

総務省の基本的考え方は、次の通りである。

・ 財務書類の体系化に当たっては、国と地方の財政上の結びつき等を考慮するとともに、地方固有の取扱いを踏まえつつ、原則として、国(財務省)の作成基準に準拠する。
−発生主義を活用した基準設定とともに、複式簿記の考え方の導入を図る。
−地方公共団体単体と関連団体等も含む連結ベースでの基準モデルの設定
−貸借対照表、行政コスト計算書、資金収支計算書、純資産変動計算書の4表の整備を標準形とする。
−現行総務省方式の改訂にも配慮した基準モデルの設定

・ 新たな公会計制度の整備を促進していくには、地方公共団体の取り組み状況を勘案し、整備内容、整備時期に柔軟性を持たせることが必要である。

取り組みが進んでいる団体にはさらなる改善を求めつつ、都道府県、人口3万人以上の都市とともに、3年を目途に、4表の整備ないしは4表作成に必要な情報の提示・開示を求める。
まだ取り組みが進んでいない団体にはまず総務省方式での財務諸表作成に踏み出すことを求めつつ、町村、人口3万人未満の都市とともに3年程を準備期間として、4表の整備ないしは4表作成に必要な情報の提示・開示を求める。

財務諸表の体系

79項 地方公共団体の財務書類の体系は、貸借対照表、行政コスト計算書、純資産変動計算書、資金収支計算書及びこれらの財務書類に関連する事項についての附属明細表とする。

80項 財務書類の作成単位は、普通地方公共団体、すなわち都道府県及び市町村とする。

貸借対照表

【様式第1号】下記の様式は、2007年に公表の貸借対照表の様式で、流動配列法である。
2014年4月公表の様式(37ページ参照)は、固定配列法に変更している。新たな様式は税等未収金は区分経理していない。
なお、東京都の貸借対照表は、流動性配列法である。分かりやすい。
因みに、米国ニューヨーク州の監査済み財務諸表では、貸借対照表は流動性配列法である。
国際公会計基準IPSAS)では、分かり易くするため注記事項や前年度との比較財務諸表を求められているが、総務省の基準では求められていない。

貸借対照表(BS)
【資産の部】
1.金融資産 xxx F=D+E
   資金 xxx E  CFと一致する
   金融資産(資金を除く) xxx D=A+B+C
     債権 xxx A
       税等未収金 xxx
       未収金 xxx
       貸付金 xxx
       その他の債権 xxx
       (控除)貸倒引当金 (xxx)
     有価証券 xxx B
     投資等 xxx C
       出資金 xxx
       その他の投資 xxx
2.非金融資産 xxx M=J+K+L
   事業用資産 xxx J=G+H+I
     有形固定資産 xxx G
       土地 xxx
       立木竹 xxx
       建物 xxx
       工作物 xxx
       機械器具 xxx
       物品 xxx
       船舶 xxx
       航空機 xxx
       その他有形固定資産 xxx
       建設仮勘定 xxx
     無形固定資産 xxx H
       地上権 xxx
       特許権 xxx
       ソフトウェア xxx
       電話加入権 xxx
       その他無形固定資産 xxx
     棚卸資産 xxx I
  インフラ資産 xxx K
       公共用財産用地 xxx
       公共用財産施設 xxx
       その他公共用財産 xxx
       公共用財産建設仮勘定 xxx
  繰延資産 xxx L
----
資産合計 xxx N=F+M
====

下記の様式は、2007年に公表の貸借対照表の様式で、流動配列法である。
2014年4月公表の様式(37ページ参照)は、固定配列法に変更している。純資産の部は、固定資産等計成分と余剰分(不足分)のみの表示に変更している

【負債の部】
1.流動負債 xxx O
   未払金及び未払費用 xxx
   前受金及び前受収益 xxx
   引当金 xxx
    賞与引当金 xxx
   預り金(保管金等) xxx
   地方債(短期) xxx
   短期借入金 xxx
2.非流動負債 xxx P
   地方債(長期) xxx
   長期借入金 xxx
   引当金 xxx
    退職給付引当金 xxx
    その他の引当金 xxx
-----
負債合計 xxx Q=O+P
=====
【純資産の部】
財源 xxx R ←NWと一致する
資産形成充当財源 xxx S
    固定資産 xxx
    長期金融資産 xxx
    評価・換算差額等 xxx
その他の純資産 xxx T
  開始時未分析残高 xxx
-----
純資産合計 xxx U=R+S+T
=====
負債・純資産合計 xxx V=Q+U
=====

131.インフラ資産の貸借対照表価額の測定については、原則として過去の用地費や事業費等を累計(累積)することにより取得原価を推計することとする。まず、非償却資産である公共用財産用地については、用地費等を累計(累積)した価額を計上する。次に、償却資産である公共用財産施設については、過去の事業費等を累計(累積)することにより資産価額を推計し、さらに定額法により直接資本減耗相当額を算出し、当該資産価額から、当該直接資本減耗相当額を控除した後の価額を計上する。

119.事業用資産としての有形固定資産は、その種類ごとに表示科目を設けて計上する。具体的には、土地、立木竹、建物、工作物、機械器具、物品、船舶、航空機、その他有形固定資産、建設仮勘定等の表示科目を用いる。また、減価償却の方法について注記する。ただし、売却を前提として保有している公有財産については、有形固定資産ではなく、棚卸資産として計上する。

120.公有財産として管理されている土地・建物等については、原則として公有財産台帳の計数を基礎として定期的に再評価をした上で貸借対照表価額を測定する。まず、非償却資産については、公有財産台帳価格で計上する。次に、償却資産については、価格改定年度以外の年度においては減価償却費・直接資本減耗が台帳価格に反映されないことから、価格改定に適用される減価償却費・直接資本減耗の方法(定額法または定率法)により減価償却費・直接資本減耗相当額を算出し、公有財産台帳価格から当該減価償却費・直接資本減耗相当額を控除した後の価額
を計上する。なお、公有財産台帳の計数を基礎とすることが困難な場合は、インフラ資産の測定(第131 段落)と同様に、過去の用地費や事業費等を累計することにより取得原価を推計することとする。

121.有形固定資産にかかる公有財産台帳の価格改定に伴う再評価差額については、純資産変動計算書の評価・換算差額等の変動として計上する。公有財産の処分時においては、台帳価格(償却資産の場合は減価償却費・直接資本減耗相当額を控除した後の価額)に基づいて処分損益を算定する。

129.減価償却について、事業用資産の場合、減価償却費としてPL上に計上する。他方、インフラ資産の直接資本減耗については、原則として独立行政法人会計基準「第86特定の償却資産の減価に係る会計処理」に準拠し、独立行政法人が保有する償却資産のうち、その減価に対応すべき収益の獲得が予定されないものとして特定された資産については、当該資産の減価償却相当額は、損益計算上の費用には計上せず、資本剰余金を減額する場合と同様の会計処理を採用するため、NWM(純資産変動計算書)上で直接資本減耗として処理することに留意されたい

インフラ資産の減価償却費は費用計上せず直接資本減耗として処理 (上記129項参照)
上記129項に、インフラ資産の減価償却は、事業用資産と同様に使用していても費用計上せず純資産変動計算書上で直接資本減耗として処理するとある。
独立行政法人会計基準の第86特定の償却資産の減価に係る会計処理に準拠するとあるが、独立行政法人の特定資産は事業用資産であり、インフラ資産ではないことと、
直接資本減耗という会計処理は単なる簿記技術的(bookkeeping)なことで会計の本質とは関係ない不合理な会計処理はすべきではない。
現代会計(accounting)が、適切な情報開示であり、財務諸表読者に対する適切な説明であるとするなら、現代会計の要請を満たしていないことになる
国際公会計基準IPSAS17号有形固定資産」と同様に通常の減価償却費を計上すべきである

145.退職給付引当金は、退職手当のうち既に労働提供が行われている部分について、期末要支給額方式で算定したものを計上する。また、退職給付引当金の計上基準及び算定方法について注記する。

143.減価償却計算の方法は、以下によるものとする。
(1) 減価償却は、開始時簿価及びそれ以降の簿価ともに、定額法(平成19年度税制改正における平成19年度4月1日以後取得償却資産の償却限度額計算方法に従う)により算定する。
(2) 減価償却の開始は取得年度の翌年度からとする。

減価償却は、驚愕の規定となっている(上記143項(2)参照)
通常、減価償却は事業の用に供された時から開始する。これにより、月次決算がより正確になる。
驚いたことに、公会計は、取得の翌年度から減価償却を開始するとある。これは、会計実務を知らない官僚の発想である。
固定資産台帳を作る会計システム屋さんも困惑の規定である。

行政コスト計算書

【様式第2号】下記の様式は、2007年に公表の行政コスト計算書の様式である。
2014年公表の行政コスト計算書の様式(38ページ参照)は、経常費用と経常収益を表示し純経常行政コストを表示し、次に、臨時損失及び臨時利益を加えて、純行政コストを表示する。
税収等は行政コスト計算書に表示されず、財源として純資産変動計算書に表示する。同じ委員が作成しているので大きな変更はないと考えてよい。
なお、東京都の行政コスト計算書では、行政収入として地方税が表示されている。税収と行政コストを対比して表示している。東京都の方が常識的で分かりやすい。
因みに、米国ニューヨーク州の監査済み財務諸表は、税収は収益として行政活動計算書(Statement of Activities)に行政コストと対比して一般収入(General revenues)として表示する。

行政コスト計算書(PL)
【経常費用】
1.経常業務費用 xxx D=A+B+C
  @人件費 xxx A
    職員給料 xxx
    退職給付費用 xxx
    その他の人件費 xxx
  A物件費 xxx B
    物品購入費 xxx
    維持補修費 xxx
    減価償却費 xxx
    その他の物件費 xxx
  B経費 xxx C
    公債費(利払分) xxx
    借入金支払利息 xxx
    貸倒引当金繰入 xxx
    その他の経費 xxx
2.経常移転支出 xxx E
   @扶助費等支出 xxx
   A補助金等支出 xxx
   Bその他の経常移転支出 xxx
----
経常費用合計(総行政コスト) xxx F=D+E
====
【経常収益】
1.経常業務収益 xxx I=G+H
  @業務収益 xxx G 新潟県は税収をここに計上
    自己収入 xxx
    その他の業務収益 xxx
  A業務外収益 xxx H
    受取利息等 xxx
    その他の業務外収益 xxx
2.経常移転収入 xxx J
  経常移転収入 xxx
----
経常収益合計 xxx K=I+J
====
純経常費用(純行政コスト) xxx L=K-F  ⇒NWへ
====

53. 収益とは、@一会計期間中における活動の成果として、A資産の流入もしくは増加、または負債の減少の形による経済的便益またはサービス提供能力の増加であって、B会計主体の所有者以外との取引その他の事象から生ずる純資産の増加原因をいう。

54. ここでは、税収を主権者としての住民からの拠出と捉えていることから、上記Bの要件に該当せず、収益としては計上されない(むしろ純資産変動計算書上の損益外純資産増加原因として計上される)としている(第67 段落参照)。
55. また、国庫支出金等の受入のうち、資本移転収入(経常費用に対応する経常移転収入に該当しない場合)も、収益としては計上されない(むしろ純資産変動計算書上の損益外純資産増加原因として計上される)点に留意すべきである(第67段落参照)。

日本は、税の取り扱いは国際基準と異なる
上記総務省の基準モデルでは、税収は純資産変動計算書に計上されるが、国際公会計基準(IPSAS 23: 非交換取引からの収入(税金および移転収入)”Revenue from Non-Exchange Transactions (Taxes and Transfers)”)では税収は「財務成績計算書(Statement of Financial Performance)」に税収として税目ごとの収入額(Revenue)が表示される。米国ニューヨーク州の監査済み財務諸表は、税収は収益として業務活動計算書(Statement of Activities)に行政コストと対比して一般収入(General revenues)として表示する。
米国連邦政府は、国際基準同様に「業務及びネットポジション変動計算書(Statement of Operations and Changes in Net Position)」に税収(税目ごとの収入額も表示)として行政府の業務費と対比させて表示される。米国の、行政府の業務費と対比させて表示する方法は見る者にとって判り易い。

国際会計士連盟(IFAC)が開発した国際公会計基準(IPSASs)を適用している国または準拠している国を調査した結果を公表しているが、日本は含まれていない。ちなみに、発生主義会計を行っており、広い範囲でIPSASsに一致している国は、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国および米国としている。

行政コストの主要な財源となる税収が対比して表示されない基準モデルの計算書は、住民にとって判り難い。毎年の行政コストが主権者としての住民からの拠出(出資)で賄われるとするのは日本特有だし無理がある。税収は一般に収入(Revenue)と解されており国際基準に合せるべきだ

純資産変動計算書

【様式第3号】下記の様式は、2007年に公表の純資産計算書の様式である。
2014年公表の純資産変動計算書の様式(39ページ参照)
は、税収等を財源としているのは変更していないが、純行政コストの次に税収等及び国県等補助金の財源を表示して本年度差額を表示する。その下に、固定資産等の変動を表示している。加えて、行政コスト及び純資産変動計算書として様式2号と様式3号を結合(40ページ参照)することも認めている。
3 財源
198.財源は、税収等」及び「国県等補助金」に分類して表示する。
199.税収等は、地方税、地方交付税及び地方譲与税等をいう。
200.国県等補助金は、国庫支出金及び都道府県支出金等をいう。

なお、東京都の行政コスト計算書では、行政収入として地方税が表示されている。税収と行政コストを対比して表示している。東京都の方が常識的で分かりやすい。
因みに、米国ニューヨーク州の監査済み財務諸表は、税収は収益として業務活動計算書(Statement of Activities)に行政コストと対比して一般収入(General revenues)として表示する。

純資産変動計算書(NWM)
財源 財源
合計
資産形成充当財源 その他の純資産 純資産
合計
財源
余剰
未実現
財源
消費
固定
資産
長期
金融
資産
評価
換算
差額
合計 開始時
未分析
残高
その他 合計
前期末残高 xxx (xxx) xxx xxx xxx xxx xxx xxx xxx
当期変動額
T.財源変動の部 xxx (xxx) xxx xxx
 1.財源の使途 (xxx) (xxx) (xxx) (xxx)
  @純経常費用への財源措置 (xxx) (xxx) (xxx) (xxx)
  A固定資産形成への財源措置 (xxx) (xxx) (xxx) (xxx)
  B長期金融資産への財源措置 (xxx) (xxx) (xxx) (xxx)
  Cその他の財源の使途 (xxx) (xxx) (xxx) (xxx)
 2.財源の調達 xxx xxx xxx
  @税収 xxx xxx xxx
  A資本移転収入 xxx xxx xxx
  Bその他の財源の調達 xxx xxx xxx
    固定資産売却収入(元本分) xxx xxx xxx
    長期金融資産償還収入(元本分) xxx xxx xxx
    その他 xxx xxx xxx
U.資産形成充当財源変動の部 xxx xxx xxx xxx xxx
 1.固定資産の変動 xxx xxx xxx
  @固定資産の減少 (xxx) (xxx) (xxx)
   減価償却費・直接資本減耗相当額 (xxx) (xxx) (xxx)
    除売却相当額 (xxx) (xxx) (xxx)
  A固定資産の増加 xxx xxx xxx
    固定資産形成 xxx xxx xxx
    無償所管換等 xxx xxx xxx
 2.長期金融資産の変動 xxx xxx xxx
  @長期金融資産の減少 (xxx) (xxx) (xxx)
  A長期金融資産の増加 xxx xxx xxx
 3.評価・換算差額等の変動 xxx xxx xxx
  @評価・換算差額等の減少 (xxx) (xxx) (xxx)
    再評価損 (xxx) (xxx) (xxx)
    その他 (xxx) (xxx) (xxx)
  A評価・換算差額等の増加 xxx xxx xxx
    再評価益 xxx xxx xxx
    その他 xxx xxx xxx
V.その他の純資産変動の部 xxx xxx xxx
 1.その他の純資産の減少 (xxx) (xxx) (xxx)
  2.その他の純資産の増加 xxx xxx xxx
---- ---- ---- ---- ---- ---- ---- ---- ---- ---- ----
当期変動額合計 xxx (xxx) xxx xxx xxx xxx xxx xxx
---- ---- ---- ---- ---- ---- ---- ---- ---- ---- ----
当期末残高 xxx (xxx) xxx xxx xxx xxx xxx xxx xxx
==== ==== ==== ==== ==== ==== ==== ==== ==== ==== ====
残高は、BSと一致

63. 「財源の使途」とは、当該会計期間中における財源の減少であって、損益勘定に計上されない取引のうち、原則として当期に費消可能な資源の流出をいう。具体的には、純経常費用(行政コスト計算書の収支尻)への財源措置、固定資産形成、長期金融資産(貸付金・出資金等)への資本的支出に関連する財源の流出等を指す。

67. 「財源の調達」とは、当該会計期間中における財源の増加であって、損益勘定に計上されない取引のうち、原則として資金収入を伴う当期に費消可能な資源の流入をいう。具体的には、主権者としての住民からの拠出である税収の他、国庫支出金等の受入のうち、資本移転収入(経常費用に対応する経常移転収入に該当しない場合)が含まれる。また、固定資産の売却収入(元本分)や長期金融資産(貸付金・出資金等)の償還収入(元本分)も、当期に費消可能な資金収入を伴うことから、これに該当する。

日本は、税の取り扱いは国際基準と異なる。
上記総務省の基準モデルでは、税収は純資産変動計算書に計上されるが、国際公会計基準(IPSAS 23: 非交換取引からの収入(税金および移転収入)”Revenue from Non-Exchange Transactions (Taxes and Transfers)”)では税収は「財務成績計算書(Statement of Financial Performance)」に税収として税目ごとの収入額(Revenue)が表示される。米国においても、国際基準同様に「業務及びネットポジション変動計算書(Statement of Operations and Changes in Net Position)」に税収(税目ごとの収入額も表示)として行政府の業務費と対比させて表示される。米国の、行政府の業務費と対比させて表示する方法は見る者にとって判り易い。

国際会計士連盟(IFAC)が開発した国際公会計基準(IPSASs)を適用している国または準拠している国を調査した結果を公表しているが、日本は含まれていない。ちなみに、発生主義会計を行っており、広い範囲でIPSASsに一致している国は、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国および米国としている。

上記の総務省の基準モデルの純資産変動計算書は、国際基準に比べ、非常に判り難い。

資金収支計算書

【様式第4号】下記の様式は、2007年に公表の資金収支計算書の様式である。
2014年公表の資金収支計算書の様式(41ページ参照)は、業務収支活動、投資活動収支、財務活動収支に区分して表示しており、キャッシュフロー計算書を意識している。

資金収支計算書(CF)【3区分形式】
【経常的収支区分】
T.経常的支出 xxx E=C+D
 1.経常活動による支出 xxx C=A+B
   @業務費用支出 xxx A
    人件費支出 xxx
    物件費支出 xxx
    経費支出 xxx
   A業務外費用支出(財務的支出を除く) xxx B
 2.経常移転支出 xxx D
   他会計への繰出支出 xxx
   扶助費・補助金等経常移転支出 xxx
   その他経常移転支出 xxx
U.経常的収入 xxx K=H+I+J
 1.税金収入 xxx I
 2.経常活動による収入 xxx H=F+G
   @業務収益収入 xxx F
   A業務外収益収入 xxx G
     受取利息等 xxx
     その他業務外収入 xxx
 3.経常移転収入  xxx J
----
経常的収支 xxx L=K-E
====
【資本的収支区分】
T資本的支出 xxx O=M+N
 1.資本形成活動による支出 xxx M
   事業用資産形成支出 xxx
   インフラ資産形成支出 xxx
   長期金融資産形成支出 xxx
 2.資本移転支出 xxx N
   他会計への繰出支出 xxx
   その他資本移転支出 xxx
U資本的収入 xxx R=P+Q
 1.資本形成活動による収入 xxx P
   事業用資産売却収入 xxx
   インフラ資産売却収入 xxx
   長期金融資産元本償還収入 xxx
 2.資本移転収入 xxx Q
   他会計からの繰入収入 xxx
   補助金等資本移転収入 xxx
   その他資本移転収入 xxx
----
資本的収支 xxx S=R-O
====
基礎的財政収支 xxx T=L+S
====
【財務的収支区分】
T財務的支出 xxx W=U+V
 @支払利息支出 xxx U
   公債費(利払分)支出 xxx
   借入金支払利息支出 xxx
 A元本償還支出 xxx V
   公債費(元本分)支出 xxx
   借入金元本償還支出 xxx
U財務的収入 xxx X
   公債発行収入 xxx
   借入金収入 xxx
----
財務的収支 xxx Y=X-W
====
当期資金収支額 xxx Z=T+Y
====
期首資金残高 xxx AA
====
期末資金残高 xxx AB=Z+AA ⇒BSと一致
====

連結の範囲

2.連結対象法人
19. 一部事務組合広域連合地方独立行政法人、地方三公社、第三セクター等の連結対象法人においては、連結財務書類4表の基礎となる各法人の財務書類等の連結資料を適時かつ正確に作成することが求められ、特に、連結修正のために必要となるデータの提供について積極的な協力が求められる。また、構成団体間の按分を要する一部事務組合・広域連合等においては、会計ごとに各構成団体の持分割合となる負担割合を決定し構成団体に通知するものとする。

1.連結財務書類の作成方法について
17. 連結対象となる普通会計・公営企業会計等の地方公共団体内の会計、一部事務組合・広域連合、地方三公社、地方独立行政法人及び第三セクター等においては、それぞれ固有の会計基準が定められているが、可能な限り統一的な取扱いとすることを原則とする。

18. 一方、それぞれの会計・法人においては法定の確定決算が存在することから、個々の会計・法人の決算を連結財務書類における統一的な取扱いに修正するのではなく、連結修正仕訳として一括して修正し、その修正仕訳の主な会計・法人別内訳を注記するものとする。

新地方公会計制度実務研究会報告書(平成1910月)より

いわゆる地方三公社(個別の法律に基づき設立される土地開発公社、地方住宅供給公社および地方道路公社をいう)は、私法形式で設立される第三セクター等の自治体出資法人よりも、はるかに直営部門に近い部門・組織である。また、その数も、全国で1,683(そのうち1,520は土地開発公社)ほどと、私法形式の自治体出資法人(出資率25%以上)7,030団体と比べれば少ないものの、自治体数に照らし少ないとはいえない。総務省「第三セクター等の状況に関する調査結果」(2003年3月27日)

総務省の指針において、第三セクターとは、地方公共団体が出資又は出えん(以下「出資」という。)を行っている民法法人及び商法法人をいう。(総務省の「第三セクターに関する指針」)
総務省:第三セクター等の状況に関する調査結果の概要(平成16年3月25日)


東京都の場合は、東京都監理団体と言う名称を使っており、地方三公社や第三セクターという用語を使用していない。東京都監理団体の情報
東京都の場合、ごみ事業は、都内の区役所・市役所・町村役場が行っており(東京二十三区清掃一部事務組合について)、都の財政に含まれない模様。東京都が出資している(財)東京都環境整備公社が全体財務諸表に含まれている。


千葉県の場合は、公社等外郭団体という名称を使用しており、各自治体によって区々になっているし、情報開示も区々である。


総務省方式

つまり、第三章の総務省方式は、森田委員の提案部分として独立したため、下記の通り、複式簿記・会計基準が整備されていないことを前提としており、簿記・会計は無視され発展形ではない。簡便法が一度定着すると発展(改善)することはないのが日本の官制基準の経験則である。加えて、会計の改正・変更は、会計方針の変更と言う厄介な手続を伴い発展することが困難となってしまうからである。情報の受け手である国民に異なる二つの情報が開示されることはミスリードさせる恐れがあり、会計に中途半端はなく原則的な方法しかないのである。

段階的な複式簿記の考え方の導入
332.複式簿記の考え方の導入は、帳簿の複式記入等の企業会計の仕組みの理解促進や企業会計手法を活用した財務書類のより早期の作成・開示には、有効な手段の一つであると考える。しかし、その導入にあたっては、会計基準等の詳細な整備や複式簿記システム導入等のシステム対応が必要となる。

334.総務省方式は、決算統計や補足資料を基に貸借対照表や行政コスト計算書の各項目を埋めていく方式であるため、複式簿記の考え方を意識せずに作成することができるものとなっている。しかし、個々の歳入歳出内容が、フローとストックの両面から財政状態にどのような影響を与えるのかを把握するとともに、作成された財務書類で表される内容を理解するためには、複式簿記の考え方を理解しておくことが非常に有効である。

総務省方式改定モデル

335.そこで、総務省方式改訂モデルに基づく実務指針の作成にあたっては、可能な限り複式簿記の仕訳の例を明示することが望まれる。たとえば、次のような仕訳が想定される。
336.<例>公共資産(道路)100 を整備した。財源は、国庫支出金30、地方債30、一般財源40 であった。
<仕訳>
(借方)歳計現金 30 (貸方)公共資産形成等国庫支出金 30
(借方)歳計現金 30 (貸方)地方債 30
(借方)公共資産(生活インフラ) 100 (貸方)歳計現金 100
財務会計システム(歳入歳出)データを利用した一斉仕訳データの生成
337.歳入歳出の款項目節の財務会計システムのデータは、一括変換プログラムを用いることにより、相当程度の確度で適切な仕訳データを生成することができる。
338.歳入歳出の款項目節の財務会計システムに複式簿記変換プログラムを組み込むことにより、財務会計システムに歳入歳出データを入力すると同時もしくは一定期間まとめて、相当程度の確度で適切な仕訳データを生成することができる。この方法により、財務会計システム入力時に仕訳を認識することが出来るとともに、月次や半期など、年度途中においても適時に財務書類を作成することが可能となる。

民間企業が複式簿記で帳簿を作成し決算書を作成して確定申告・納税しなければならないが、国民から税収を得て運営している公共団体が複式簿記で帳簿も記録せず総務省方式で簡便法で財務諸表を作成することが許されること事態が不思議である。財務報告に係る内部統制上からも簿記(bookkeeping)は不可欠な要素である。国民からの税の受託責任(stewardship)による説明責任(accountability)はそんなに軽いものなのであろうか。

公会計は、事前に承認された予算を基礎として業務経費等の支払いが主体で、収益・費用の認識など内容が多岐にわたる民間の企業会計のような複雑なことはない。金融商品の会計、外貨建換算基準、退職給付引当金、リース会計、減損会計など既に民間企業の会計基準があるものは利用できる。公会計基準が明確にされるならば企業会計より容易な簿記会計となる。

欧州では80%の国が発生主義会計を行っているとのことである。加えて、最近では国際公会計基準で会計記録と報告を行っている国が増えている。国際公会計基準(IPSASs)を適用又は準拠している国日本は含まれていない

米国ニューヨーク州の場合、2006年3月決算で7月の監査報告書を添付しており、4ヶ月以内で決算報告されていることが分かる。日本の行政府が米国並みの情報開示が行われるのはいつのことやら・・・ 日本は、市民に対する情報開示というサービスの面で米国に劣っていると言えよう。

英国の場合、総務省の役人がJETのロンドン事務所(Japan Local Government Centre ?)に2007年7月赴任し、自らのブログに「CIPFA@英国公会計専門機関訪問」と題して公共財務会計(public finance and accountancy)について記述している。名前は記述内容から想像できますが、何を専門としているのか分からない不思議なブログです。

方式 正確性 正確性の検証可能性・監査可能性
総務省方式 X 決算統計や補足資料を基に貸借対照表や行政コスト計算書の各項目を埋めていく方式であるため、複式簿記の考え方を意識せずに作成することができるものとなっており作成者さえその正確性が判らないもので会計監査人が適正意見を述べられる代物ではない。
基準モデル 複式簿記を基礎にしており監査可能な状況がある。複式簿記による記録は、借方・貸方の記録の説明及び記録の証拠への追跡可能性(トレーサビリティ【traceability】)に欠かせないものである。
総務省方式改定モデル かなり複雑な仕訳を通じて作成するため、その正確性、迅速性、適時な開示に疑問があり、同様に監査人が監査するうえで複雑であることから効率的な監査が阻害される恐れがある。簡潔明瞭が基本である。
独自方式・東京都の場合 複式簿記を基礎にしており監査可能な状況がある。

総務省の「新地方公会計モデルの導入状況等について」及び「地方公会計の整備」によると、「平成19年度決算に係る財務書類の各地方公共団体」はばらばら、平成21年3月31日時点で平成20年度決算に係る財務書類の作成見込みは次のようになっている。やる気を全く感じられない。基準モデルで作成するところの低さに驚かされる。一方、複式簿記で独自に作成する東京都が目立つ。次いで、大阪府の橋下知事が大阪府の支援を得て複式簿記で公会計を行うと表明している。橋下知事の意見は傾聴に値する。

平成20年度決算に係る財務書類の作成見込み
都道府県 市区町村
基準モデル 1 2% 116 6%
総務省方式改定モデル 43 91% 1,399 78%
総務省方式 0 136 8%
その他のモデル 3 6% 9
財務諸表を作成する予定なし 0 140 8%
合計 47 100% 1,800 100%

地方公共団体の平成20年度版財務書類の作成状況等(平成22年6月25日)・・・地方公共団体の平成20年度版財務書類の作成状況等

民間企業は複式簿記で帳簿を記録する

民間では、会社を設立すると事業活動を複式簿記により帳簿に記録し、決算期には帳簿に基づき財務諸表を作成し、これに基づき課税所得を計算して税務署に確定申告をして納税額があれば納税する。会社の規模に関係なく一人会社であろうと数十万人の会社であろうと帳簿を付けることが当たり前となっている。

民間で複式簿記の帳簿を付けるのは、税務申告で「青色申告制度」というものがあり、一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をする人については、所得金額の計算などについて有利な取扱いが受けられる青色申告の制度があります。

青色申告の記帳は、年末に貸借対照表と損益計算書を作成することができるような正規の簿記によることが原則ですが、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳のような帳簿を備え付けて簡易な記帳をするだけでもよいことになっています。これらの帳簿及び書類などは、原則として7年間保存することとされていますが、書類によっては5年間でよいものもあります。

民間の会社では、設立当初、一人又は数人の規模から事業を開始するが、青色申告をすることにより、損失が生じても将来の利益と詳細できる「青色申告制度による欠損金の繰延べ」を適用することができるので複式簿記による記帳は欠かせないようになっている。

この制度は、手書き時代の昭和28年(1953年)に、国税庁は、青色申告制度の全面的普及と指導育成を税務運営の基本に掲げ各種施策を展開したもので、青色申告制度は、納税者の選択により、適正な申告を目的として正確な記帳を実践する制度で、今日では法人の大部分と個人の過半数が実践しており、同制度は概ね定着したものと見られる。

総務省方式改訂モデル(以下「総務省方式改訂モデル」)は、各団体のこれまでの取組や作成事務の負荷を考慮し、固定資産台帳や個々の複式記帳によらず、既存の決算統計情報を活用して作成することを認めている。

まだ取り組みが進んでいない団体にはまず総務省方式での財務諸表作成に踏み出すことを求めつつ、町村、人口3万人未満の都市とともに3年程を準備期間として、4表の整備ないしは4表作成に必要な情報の提示・開示を求める。

公会計が複式簿記の帳簿を持たず、市民に対する説明責任を果たそうとしない背景には、所轄官庁である総務省及び地方自治体自身の、複式簿記に対する知識不足、会計に対する専門家の不存在が色濃く反映しているように思われる。民間企業同様、まずは、業務活動を複式簿記で記録・分類・集計し、決算で財務諸表にまとめて、市民へ情報公開し説明責任を果たすべきだ。情報開示の不完全さは、国際公会計基準の導入や、市民の意見を取り入れながら公会計基準の充実を図るのが筋であろう。

1999年2月26日,経済戦略会議(樋口広太郎議長)は、最終報告を小渕首相に最終答申書を提出した。答申の中に、「健全で創造的な社会」の構築とセーフティネットの整備、と題して「1.「小さな政府」へのイニシアティブの中の(3)公会計制度の改善として「具体的には、複式簿記による貸借対照表を作成し」と書かれている。10年経っても公会計および監査は実現していない作文ばかり遅すぎる。東京都の石原都知事が、会計制度改革を行い2006年に複式簿記で記帳しなかったらもっと遅れていたろう。

なお、蛇足ですが、総務省方式改訂モデルは、法人税法上は帳簿記録要件を満たしていないことになりますので「青色申告の取消」となりますし、資産の実在性、所有権、債務の存在、金額の正確性、記録の正確性等を立証できない(検証不可能な)ので監査意見は述べられません(監査できない状況にある)


自治体の子会社(公社・第三セクター)の借金が16兆円(2005年末現在)

2007年2月7日、日本経済新聞社によると、地方自治体が50%以上出資して運営する地方公社や第三セクターの債務が、2005年末現在で合計15兆9千億円に上ることが明らかとなった、としている。これは、地方税収の4割に当たる。出資対象を50%未満まで広げると17兆円強に膨らむ。総務省はこうした「隠れ借金」が自治体の財政破綻を招きかねないと判断し、2005年度決算から公社・第三セクターを含む債務を一括開示するよう各自治体に指示した、としている。

自治体の外郭団体が抱える債務は総務省のデータを基に日本経済新聞が集計した。約16兆円のうち11兆8000億円が金融機関などからの借入金と社債で、残りは自治体からの融資。(日経 参照)


総務省・報道資料:第三セクター等の状況に関する調査結果の概要(平成181227日)
北海道のニュース:経営悪化、道内第3セクターの44社が債務超過に(2007年02月06日)

東京都のケース

2003年5月20日、東京都は、「東京都の会計制度改革の基本的考え方と今後の方向」をまとめ公会計の確立へ向けて意欲を見せている。それによると「東京都は平成10 年度決算から「機能するバランスシート」という名称で官庁会計決算を組み替える方式で財務諸表を作成し公表してきた。しかしながら、この手法では財務諸表を迅速に作成できないという問題があった。また、事業ごとに財務諸表を作成することが難しいことから、個々の事業を分析する手段としても一定の限界があった。そこでこうした問題点を克服するため、平成14 年5 月に、日々の会計処理の段階から複式簿記・発生主義会計を全庁的に導入することを表明し、平成18 年4 月に、新たな公会計制度を導入した」としている。

(ちなみに、石原慎太郎氏は1999年(平成11年)4月11日に都知事初当選しており、平成10年度(平成11年3月期)の「機能するバランスシート」は就任直後から着手したものといえる。力の入れようが尋常ではない。)

機能するバランスシート」にも限界があることが明らかになってきた。第1に単式簿記・現金主義会計による普通会計決算を作成した後にそのデータを手作業で組替えて財務諸表を作成するため、速やかに財務諸表を作成することができないこと、第2に道路・橋梁等のインフラ資産は公有財産台帳で管理する必要がなかったため、それらの固定資産の残高が把握できていなかったこと、第3に事業別財務諸表の作成に手間がかかったことえである。そこで、東京都は、すべての会計において日々の会計処理の段階から複式簿記。発生主義会計を導入し、財務諸表を作成することとした。平成18年度からの導入に向けて取組が開始した。(東京都における複式簿記・発生主義会計導入の経緯」より)

東京都は国内の自治体で初めて、民間企業と同様に複式簿記・発生主義の基準を取り入れた財務会計システム2006年(平成18年)2月24日に稼働させた。(東京都都知事室 参照)

 今回、それに先立ち、この新たな会計制度の内容を明らかにした『東京都の新たな公会計制度』を取りまとめ、その中で、会計制度のルールである「東京都会計基準(一般会計及び特別会計のみ)(2005年8月26日,改訂版)」を策定しました。 この「東京都会計基準」は、民間企業における会計基準とは異なり、行政の特質を反映した複式簿記・発生主義会計の基準であり、行政が策定するものとしては日本で初めてのものです。(都知事としての一番いい仕事は、会計制度の改革だと思っています」(全文--東京都知事・石原慎太郎氏(2007年4月10日日経BP)参照

2007年9月14日東京都は全国で初めて複式簿記による記録を行いそれを基礎に東京都初の平成18年度の財務諸表を作成して公表した。これは、石原都知事のコメントに「都の会計制度改革は、知事就任以来の多くの改革の中で最も本質的なものであり、ストックやコストの情報の明確化、事業分析の強化によって、更なる行財政改革に途を拓くものである。  今後、東京から日本を変えるため、“東京発の新たな公会計”を積極的に全国に発信していきたい」として行政改革の大きな一歩を記したものである。

財務諸表を見てみよう。(財務局概論 参照)
平成18年度「東京都年次財務報告書」<本編>・・都知事の会計に対する熱い思いが”はじめに”記載されており、一読をお勧めします。
初年度のためか、前年度との比較財務諸表となっていない、数値と業務についての文書による説明により都民に判り易い説明が欲しい(いわゆる”MD&A”)、監査報告がないなど米国の年次報告書に比べるとまだ物足りない。今後の進展を見守りたい。

総資産は30兆円の主要な部分は、道路などの「インフラ資産」が13兆円計上、総負債は、都債を含んで9兆円、正味財産(純資産)は差引21兆円となっている。インフラ資産が次世代に引継ぐ譲渡不能・換金不能な資産と考えると通常の資産とは異なる。(米国の州でもGASB34で2005年6月以降資産計上、ただし、連邦政府のFASAB6号では譲渡不能として事業費処理しスチワードシップ報告書で報告・・FASBとGASB、国際基準との比較 参照)

1兆8千億円が長期貸付金として計上されており、1300億円が未回収として「債権管理を強化」するとしているが、実質、連結対象では?(第三セクターへの貸付

退職給与引当金1.4兆円は「義務的経費である」として、「退職金の予定額を念頭に置いた財政運営が必要」と、まずは職員の退職金の確保に注意を喚起して「お手盛り的(作成者の意識丸出し)」いるのが印象的。どんな企業でもこうしたコメントはないことを考えると奇異である。

東京都全体財務諸表には、東京都監理団体に株式会社組織の第三セクターや公営企業、財団法人などの公益法人が含まれ、加えて地方独立行政法人を含めている旨注記されている。総務省では、連結財務諸表という名称であるが、東京都は全体財務諸表と呼称している。ちなみに、株式持分関係のない場合は、米国では”連結財務諸表(consolidated statement)”ではなく、”結合財務諸表(combined statement)”となる。

最初の一歩としては「やれば出来る」ことを立証した。石原知事の実行力に敬服。国の動きは非常に鈍いが、総務省も動かざるを得なくなっており、少しずつではあるが動き出していると言える。

なお、東京都の総務省の方式等についての意見は、「総務省方式改訂モデルは、官庁会計決算を手作業で再計算して組みかえるものであり、日々仕訳方式による本格的な複式簿記の導入とはいいがたいものであります。そのため、財務諸表の正確性が不十分で、事業別の財務諸表の作成も困難であります。
 一方、もう一つの基準モデルは、国際公会計基準とも大きく異なる非常に独特な考え方に基づいており、難解で実務的にも対応が困難なものとなっております。
 加えて、二つの公会計モデルとも地方自治体の意見を反映したものではありません。そのため、両者とも今後、全国標準たる会計基準にはなり得ないものと考えております」とのことである。(「都議会での答弁」「地方公会計制度改革の推進に関する意見書」参照)


東京都は、5年目の2011年9月16日公表の「東京都年次報告書」(財務局作成)によって、読者に判り易い情報開示を行った。画期的なことである。これが日本のベスト・プラクティスとして広く日本の情報開示の模範となってほしいものだ。4年目まで公表されていた財務諸表(東京都会計管理局作成は、5年目から開示されていない)は、日本の通常の開示の仕方と言ってよかったが読者に読ませるには酷いものであった。5年目にして情報開示は完成したと言っていい。石原知事の功績は大きい。残されたものは、公会計基準・公監査基準の完成と監査である。これは一自治体の問題ではなく国として対応すべき問題である。

東京都の新たな公会計制度  東京都年次財務報告書(平成22年度より)
作成
回数
東京都財務諸表 公開日 参考
5年目 2010年度・財務諸表
平成22年度「東京都年次財務報告書
by財務局主計部財政課
(67ページ、普通会計と東京都全体財務諸表を含む)

本報告書は、民間企業でいえば、会社の経営状況を株主や
投資家に報告する「アニュアル・レポート」に相当するものであり、
これまでの官庁会計と合わせて、より多面的に都の財政状況を
示すものとなります。


東京都の年次報告書は米国ニューヨーク州の包括年次財務報告書に類似している。同じ3月決算で監査報告書は7月25日で4カ月以内公表、東京都より2カ月早い。日本の出納整理期間の2か月が決算を遅らせている。
2011年9月16日
東京都財務局
東京都会計管理局
2010年度・財務諸表
平成22年度「東京都年次財務報告書
について:
日本で初めて年次報告書として判り易く説明している。
東京都にベスト・プラクティスが生まれた。
・2期比較にして一覧性をもたせ改善されている。
・貨幣の表示単位も百万円単位で表示し改善されている。
・予算・決算の開示を行い判り易くしている。
・注記もコンパクトに纏められている。

4年目 2009年度・財務諸表
平成21年度(平成22年3月31日決算日)

by東京都会計管理局
166ページ(重複した財務諸表を表示しており中身は薄い)
平成22年各会計定例監査(平成21年度執行分)報告書

平成21年度「東京都年次財務報告書」
by財務局主計部財政課


東京都の財政状況と都債・2010年10月
2010年9月
東京都会計管理局

東京都財務局
2009年度・財務諸表・・12月の議会を通過後公開
平成21年度(平成22年3月31日決算日)
について:
3年の過剰比較開示によって2頁となり一覧性を失っている。
・比較財務諸表となっていないものがある。
・貨幣の表示単位を統一して見易くする工夫必要。
・C/F計算書の期末現預金が”形式収支”という奇怪な名称
・注記による説明が少ない。内容が気まぐれ。
・注記と財務諸表の数値の関連性が示されていない。
・財務諸表が重複したものを開示している。
・特別会計は無味乾燥な財務諸表を単に表示し
判り難い、注記による説明のほうが判り易い。
・監査報告書なし。
・多くの改善の余地がある。

連結財務諸表となっていない。
東京都の財政状況と都債・2010年10月の財務数値と一致しない。
3年目 2008年度・財務諸表
平成20年度(平成21年3月31日決算日)

by東京都会計管理局

平成20年度「東京都年次財務報告書」
by財務局主計部財政課

平成21年各会計定例監査(平成20年度執行分)報告書

2009年9月11日
公表までに6か月掛っているが
3カ月以内が理想であろう
。(注1)
2008年度・財務諸表・・12月の議会通過後公開
平成20年度(平成21年3月31日決算日)
について:
・3年の過剰比較開示によって2頁となり一覧性を失っている。
・比較財務諸表となっていないものがある。
・貨幣の表示単位を統一して見易くする工夫必要。
・C/F計算書の期末現預金が”形式収支”という奇怪な名称
・注記による説明が少ない。内容が気まぐれ。
・注記と財務諸表の数値の関連性が示されていない。
・財務諸表が重複したものを開示している。
・特別会計は無味乾燥な財務諸表を単に表示し
判り難い、注記による説明のほうが判り易い。
・監査報告書なし。
・多くの改善の余地がある。

連結財務諸表となっていない。
2年目 2007年度・財務諸表
平成19年度(平成20年3月31日決算日)

by東京都会計管理局

平成19年度「東京都年次財務報告書」
by財務局主計部財政課
初年度 2006年度・財務諸表
平成18年度(平成19年3月31日決算日)

by東京都会計管理局

平成18年度「東京都年次財務報告書」
by財務局主計部財政課


提言:『自治体会計の新しい経営報告書<論点整理>』

2007年9月14日 平成18年度「東京都年次財務報告書」には、
石原慎太郎都知事の公会計制度に対する熱い思いが語られております。

公会計のお手本となるべきものです。
ベストプラクティスとなることを祈念します。


左記の「提言」が実現しています。
国が決めた総務省モデル、基準モデルが大山鳴動して一つもまともな財務諸表が公表できない状況にあって、知事の指導力がかくも見事に実現できるものかと感心する。

石原都知事 8月に(複式簿記・発生主義会計に基づいた)決算が出れば、次年度の予算編成に生かせます。もともと決算は、可能な限り早く出すべきなんです。1年後に決算が出てきても、もう次年度の予算編成は終わっている。前年度のお金の使い方を検証せずに予算を決めるから、無駄な使い方しかできない、という悪循環だった。新会計システムを使えば、これを断ち切ることができる。

「平成14 年5 月に、日々の会計処理の段階から複式簿記・発生主義会計を全庁的に導入することを表明し、平成18 年4 月に、新たな公会計制度を導入した」として複式簿記・発生主義を導入するのに4カ年(14年度から17年度まで)の準備期間を要している。(「新たな公会計制度の導入」より)

(注1):情報開示を”納税者に対する説明責任”と考えるなら、上場会社の株主に対してと同じように約”3カ月以内”となろう。

ただ、下記のニューヨーク州は3月決算で7月には監査報告書を添付して公開していることを考えると、情報の内容や質が適切か検討する余地があり、まだまだ道は遠い。

大阪府の取組み

大阪府は2009年(平成21年)5月29日、財政情報のさらなる公開を推進するため、新公会計制度を導入し、これに基づく財務書類を作成・公表し、2012年度(平成24年度)の新公会計制度の本格導入を目指すため、6月1日付けで「新公会計制度プロジェクトチーム」を発足し、鋭意、導入準備を進めます。また、早期の導入を図るため、東京都方式を基本に対応することとし、東京都と大阪府が職員を相互に派遣します。なお、6月1日13時より、橋下知事臨席のもと、プロジェクトチームの発足式を行います、とのことで複式簿記による財務諸表の作成を発表した。(橋下知事会見 平成21年12月中間報告概要版 石原・橋下連合軍が「総務省包囲網」参照) 

大阪府の場合は、東京都の支援を受けているため2009年度から2011年度までの3年間の準備期間(最初に導入した東京都は4年を要した)で複式簿記・発生主義会計の導入することを表明したことになる。

がんばれ橋下大阪府知事!石原東京都知事が複式簿記を公会計に導入したのを受けて、大阪府も東京都に次いで複式簿記で記録し発生主義会計を導入する意義は大きい。規模の大きい自治体が導入できることを立証することになる。次は、国や全国の自治体だ。やる気になればできないことはないのだ。財政が見えることだけで効率的な財政が期待できる。平成13年度から複式簿記で財務諸表を公表している独立行政法人で立証済みだ。

鳩山内閣は内閣府で、「地域主権」を進めており「地域主権戦略会議」を立ち上げた。2010年3月3日に、第二回地域主権戦略会議が開催され配布資料が配られたようだが、橋下大阪府知事の提出資料地域主権時代の“新しい国のかたち”」が一番わかり易く情熱を感じさせる。「公会計制度や監査制度」などにも言及し、公会計制度では複式簿記の導入まで言及しているのは橋下氏のみである。注目の人になりそうである。

2010年8月16日大阪府の新公会計制度についての基本的な考え方を「大阪府の新公会計制度(案)」としてとりまとめ公表した。大阪府では、府民への更なる財務情報の開示を推進するとともに、職員の意識改革、PDCAサイクルの構築による「変革と挑戦」を支えるマネジメント改革を進めるため、既存の地方自治体の会計制度である単式簿記・現金主義会計の仕組みに、複式簿記・発生主義という企業会計の考え方を採り入れた新公会計制度を平成24年度から導入します。

大阪府は、「出納整理期間」について、「仮に出納整理期間がなければ、両年度の取引が混在する期間がなくなり、客観的な検証が可能。また、基金や公有財産の残高との整合が容易民間並みの迅速な決算報告が可能」としている。大阪府は正しい。(今後の新地方公会計の推進に関する研究会(第4回)2011年1月14日大阪府の新公会計制度(案)」19ページ参照)

2011年12月19日大阪府会計局  会計局  新公会計制度グループ は、「第1回新公会計制度普及促進連絡会議」を開催し始動し始めた。

大阪府の財務諸表作成に係る会計基準について
大阪府財務諸表作成基準
新公会計制度による大阪府の財務諸表について

<財務諸表>平成24年3月期初年度

区     分

財務4表・
附属明細表(※1)

注   記(※2)

各 会 計 合 算 [Excel/372KB] [Word/82KB]
会    計    別

こちらから
ご覧ください

部局別(一般会計)
事    業    別

※1 財務4表とは、貸借対照表、行政コスト計算書、キャッシュ・フロー計算書及び純資産変動計算書
  をいい、附属明細表とは、財務諸表の内容を補足するために作成するものです。
※2 注記とは、財務諸表作成のために採用している会計方針や、翌年度以降の財政状況等に影響を
  及ぼす後発事象、将来に一定の条件を満たせば発生する債務などを明示するものです。
※3 上記の他、本財務諸表における表記方法については、こちらをご覧ください。

開始貸借対照表について
平成23年4月1日現在

大阪府では、複式簿記・発生主義の考え方を採り入れた新公会計制度を導入し、平成23年度から運用を開始しました
 その運用開始した平成23年度決算に基づく財務諸表を下表のとおり、各会計合算、会計別、部局別(一般会計)及び事業別に作成しました。
<財務諸表>平成24年3月31日に終了する年度・・初年度で単年度表示、二期比較表示はされていない(国際基準は適用初年度でも2期比較表示が求められている)。注記は簡素過ぎるくらい。

区     分

財務4表・
附属明細表(※1)

注   記(※2)

各 会 計 合 算 [Excel/372KB] [Word/82KB]
会    計    別

こちらから
ご覧ください

部局別(一般会計)
事    業    別

※1 財務4表とは、貸借対照表、行政コスト計算書、キャッシュ・フロー計算書及び純資産変動計算書をいい、附属明細表とは、財務諸表の内容を補足するために作成するものです。
※2 注記とは、財務諸表作成のために採用している会計方針や、翌年度以降の財政状況等に影響を及ぼす後発事象、将来に一定の条件を満たせば発生する債務などを明示するものです。
※3 上記の他、本財務諸表における表記方法については、こちらをご覧ください。

上記財務諸表の他、別途作成・公表している平成23年度全会計財務諸表及び連結財務諸表は、次のリンク先からご覧ください。
  リンク先「平成23年度全会計財務諸表及び連結財務諸表について(報道発表資料より)

大阪府 会計指導課 事業一覧・・全体像を見るのに役立つ不思議な課である。

地方自治体との協働による新公会計制度の確立について・・・「大阪府では、新公会計制度の検討結果を広く情報発信し、他の地方自治体と協働しながら、地域主権を支えるあるべき新公会計制度の構築に努めています。これまでの取組みについて掲載しています」としていますが、東京都が石原都知事の指導力で速やかに確立したのと対照的に、”他の地方自治体と協働しながら”として、かつ発案者の橋下氏は大阪市長へ転出し、かつ、維新の会の代表として国政に顔が向いていることから、真面なものができるのか心もとない状況となっている。会計の確立は強いリーダーシップがなければ纏まらないものであることは、10年以上もかけて未だ完成していないことから明らか。

平成24年度 「新公会計制度事務支援事業(職員研修及び制度運用支援)」に係る企画提案公募の選定結果は"有限責任あずさ監査法人"とのことである。 大阪府新公会計制度 工程表(案)

大阪市、橋下徹新市長が会計制度に「東京都方式」を導入表明(2011年12月15日)

 橋下徹次期市長の就任を控え、大阪市が自治体会計の方式を、全国の多くの自治体が採用する「総務省方式」から、東京都が独自開発した「東京都方式」に転換する方針を固めたことが2011年12月15日、分かった。橋下氏は大阪府知事時代に東京都方式の採用を決めており、会計制度も“府市統合”させる考え。市は総務省方式の導入に向け、すでに約3千万円を投じているが市幹部は「新市長が掲げる大阪都構想を進めやすくなるメリットもある」としている。(産経新聞)

 橋下氏は府知事時代に「事業ごとの収支が分からなければ経営判断もできない」と主張。より民間企業の会計方式に近く、事業部門ごとの収支がはっきり分かりやすい、として東京都方式の採用を決定。11月の市長選のマニフェストでも、資産評価の方法などがより企業会計に近い東京都方式を大阪府と同様、大阪市でも導入することを提唱していた。

 選挙後、橋下氏と市財政局の間で公会計制度について協議。総務省方式の公会計制度導入を取りやめることを決めたという。ニュース

2011年12月24日橋下市長は、大阪市戦略会議 来年度予算「聖域なき見直し」前提として新公会計制度の導入が予定されている。(会計室)



新潟県が新公会計制度に対応、平成20年度分より作成 (2011年8月19日)

2011年8月19日新潟県が、「県はこれまで、県の財政状況に関する県民の皆様への説明責任を果たすことを目的として、複式簿記・発生主義の考え方に基づく新たな公会計制度について検討を進めてきたところです。 今般、平成23年度決算からの本格導入に先行して、平成20年度決算にかかる財務諸表を作成しましたので、公表します。今後、平成21年度・22年度決算にかかる財務諸表についても、順次公表していきます」として、「国際公会計基準(IPSAS)を基本として作成」した"新潟県の新地方公会計制度による財務諸表について"平成20年度の財務4表・付属明細書(8ページ)会計方針及び注記(12ページ)を公表した。なお、総務省の「平成20年度決算に係る財務書類の各地方公共団体のホームページ」サイトでは、新潟県は「□ 総務省方式で公表している団体」とされている。

作成回数 新潟県財務諸表 公表日 参考
初年度 平成20年度新公会計制度財務諸表
自平成20年4月1日至平成21年5月31日
財務4表・付属明細書(8ページ)
会計方針及び注記(12ページ)
2011年8月19日
平成23年
(2年5か月後に公表)
適時性に欠ける
・総務省方式による財務諸表である。
・表示単位が円まで表示しているため見難い。
国際基準のように読み易い単位にする工夫が必要。
・単年度表示で比較財務諸表にはなっていない。
会計期間が1年を超えて5月31日現在の財務諸表となっている(注1)
 「出納整理期間」参照
・注記の記載に努力が伺えるが読者に理解可能な内容とする余地がある。
加えて、読者に理解し易いように注記を充実させる必要がある。
三年目 平成21年度(平成22年3月末)財務諸表
財務諸表・付属明細書
会計方針及び注記
2013年3月29日
平成25年
(2年後に公表)
適時性に欠ける
国際公会計基準第1号には、次のように規定している。
69. 利用者が、財務諸表を報告日後の合理的期間内に入手できない場合には、財務諸表の利用価値は減少する。主体は、その財務諸表を報告日より6 ヵ月以内には公表する必要がある。主体の事業活動の複雑さなどの経常的要因は、適時に報告しないことの正当な理由とはならない。多くの国・地域では、法律や規則によってより具体的な期限が定められている。
(注1):総務省新地方公会計制度研究会報告書の249項(35頁)には次のような規定がありこれを適用した模様。読者をミスリードする規定となっている。
追加情報の注記
249.財務書類の内容を理解するために必要と認められる次に掲げる事項を記載する。
@ 出納整理期間について、出納整理期間が設けられている旨及び出納整理期間における現金の受払等を終了した後の計数をもって会計年度末の計数としている旨


なお、東京都の会計基準の「5 追加情報」にも同じ規定があるが新潟県のように5月31日にはしていない。
発生主義会計を導入していながら出納整理期間の4月5月の現金の受払等を終了した後の計数をもって会計年度末の計数としているというのはおかしい

公務員に言わせると、国は1947年4月成立「予算決算及び会計令」の第三節 出納整理期限の規定に従い5月31日まで、地方公共団体は1947年4月成立「地方自治法」の出納の閉鎖の法律の規定に従って5月31日までを決算の記録に反映しており、これが「官庁会計」であるとしているが、そもそも、手書き・そろばんの時代に決算に時間を要した頃の仕組みで、コンピュータを利用したIT時代を迎え日々決算が当たり前の民間の感覚とはかなりずれて久しい。官庁会計は民間とは別世界で事務の生産性を高めたり・効率性を高めるなどに無関心で進化しないようだ。


「国の一方的な決定により、発行を余儀なくされている臨時財政対策債については、後年度において元利償還金の100%が交付税措置されるものであることから、他の公債とは別立てで表記しています」という付記があり面白い。臨時財政対策債という聞きなれない債権は、国が資金不足で交付税が渡せない分、自治体が自ら発行した債券により資金調達したもの。いわば隠れ国債である。「臨時財政対策債制度の抜本的な改革」(提案の担当/横浜市 行政運営調整局財政部財源課長 五十嵐 誠一氏 045-671-2185)は興味深い。2011年3月11日の東日本大震災前の話である。東日本大震災後、長野県からは「持続可能な地方財政制度の確立について」が提言されている。(「地方交付税の減額と臨時財政対策債への振替措置の検討」by梅原英治氏大阪経大論集2002年11月 「平成22年度臨時財政対策債発行可能額について」by総務省 「平成23 年度地方財政対策」by参議院総務委員会調査室 佐藤研資氏 、2011年1月「地方債計画と地方財政」by満田誉総務省自治財政局地方債課長現福井県副知事、「平成21 年度地方財政対策のポイント・・地方公共団体金融機構(仮称)の創設」 参照)

2012年4月5日の日本経済新聞朝刊によれば、「赤字地方債急増、国の財政圧迫 12年度末で40兆円突破へ」となるそうだ。(赤字地方債とは臨時財政対策債のこと・・「地方公共団体における地方債について」参照)

総務省が公表した新地方公会計制度の財務諸表に、税収を行政コスト計算書に表示したことで(総務省モデルは税収を純資産変動計算書に計上)、国際公会計基準(IPSASを基本として作成した」と言っているが、IPSASでは付属明細書はないし、IPSASの注記はもっと充実しており大きな違いがある。

複式簿記・発生主義で財務諸表を作成したことしたは評価されてよい。国際公会計基準(IPSAS)にはない付属明細書はご愛嬌か? 国際基準と言うよりも日本基準の企業会計原則で作成したように見える。会計方針に国際公会計基準(IPSAS)を基本として作成した旨の記載がないのもご愛嬌か?検討する余地が多々ありそうだ。

愛知県が平成25年度から独自方式の公会計制度を導入(2012年11月)

2012年11月、愛知県では、県民や投資家等の皆様に対し、有用な財務情報をわかりやすく開示し、アカウンタビリティ(説明責任)の充実を図るとともに、マネジメントにおいて財務情報の活用を図り、より効率的・効果的な行財政運営を行っていくことを目的として、平成25年度から複式簿記・発生主義による新たな公会計制度を導入し、行政評価や予算編成といったマネジメントプロセスの一体改革に取り組みます、として「愛知県の新たな公会計制度(案)」を公表した。平成24年度までは総務省方式改定モデルで作成する

その内容を見ると、総務省の新公会計モデル(基準モデル・総務省方式改訂モデル)や東京都・大阪府の独自方式など、複数の会計制度が存在するが、財務諸表の分かりやすさ、信頼性及び検証可能性、マネジメントへの活用性の観点から、民間の企業会計に近い東京都や大阪府の会計制度を参考として独自の会計制度を策定する、としている。愛知県知事は、元自民党衆議院議員大村秀章氏で、2011年2月に愛知県知事となった記事によると、大村知事が新たな公会計制度を推進することを決定した。

2011年(平成23年)12月26日、新公会計制度を本格導入した東京都、大阪府、新潟県及び東京都町田市(総務省方式改訂モデルを適用)と、本格導入を表明した愛知県の参加により、「新公会計制度普及促進連絡会議」が発足しました、としてスタートし始めた。

米国ニューヨーク州の例

米国の地方自治体の財務諸表は、公会計基準である地方政府の会計基準審議会(Governmental Accounting Standards Board, 通称GASB)が公表する会計基準(Statement)に従って作成する。監査は、会計検査院院長(Comptroller General of GAO)が公表した政府の監査基準(Government Auditing Standards)に民間の会計事務所が準拠して監査が行われる。(日本には、公会計基準の設定主体および公会計に関する監査基準の設定主体は米国のように確立していない。)

下記に参考としして示したニューヨーク州の年次財務諸表は、比較財務諸表に説明的注記が付され会計士の監査報告書が添付されている。

参考ニューヨーク州の包括年次財務報告書(監査済財務諸表含む)約200ページ・・ちなみにKPMGが監査人となっている
    ニューヨーク州財務長官(Comptroller)の財政報告書
    ニューヨーク州財務長官(Comptroller)の責任

テキサス州包括年次財務報告書278ページ(監査報告書が添付されている)
各州(State)の包括年次財務報告書
市(City)の包括年次財務報告書 
 ニューヨーク市包括年次財務報告書(CAFR)・・デロイトが監査
 ニューヨーク市住宅局包括年次財務報告書(CAFR)・・E&Yが監査
郡(County)の包括年次財務報告書
町(Town)の包括年次財務報告書
タウンシップ(Township)の包括年次報告書
村(Village)の包括年次報告書
公立学校(Public school)の包括年次報告書

参考:「米国の公会計制度の仕組みと我が国へのインプリケーション」by古市峰子日本銀行金融研究所・・会計・監査制度の仕組みが具体的で詳しい
総務省地方行財政検討会議 第二分科会(第5回)平成22年8月31日地方公共団体の公監査の体系」by青山学院大学大学院 鈴木 豊教授
地方自治体における年次財務報告の研究・・アメリカおよび日本のアニュアル・リポートの事例考察」by酒井大策氏関西大学
1975年のニューヨーク市の財政破たんは記憶に残る衝撃的な出来事であった(「ニューヨークの経験に学べ」)。当時のニューヨーク市長はリベラルな人で東京都知事もリベラルな美濃部都知事でリベラル派は財政支出が多くなることを実感した。東京都は後に鈴木知事が財政再建に取り組んだことは記憶に新しい。ニューヨーク市は、1976年に会計事務所の財務諸表監査が始まったことを記憶している。(「米国における地方公共団体の財政再建制度」by(財)自治体国際化協会in2008, 「Speech by SEC Commissioner:Regulation of the Municipal Securities Market」 「地方債」 参照)
なお、英国については、公会計は完成度、監査、情報公開の面で発展途上で日本の参考とはならない。(「英国財務省「全政府勘定・非監査」、「English Local Government Sub Consolidation」参照)


米ロードアイランド州セントラルフォールズ市が破産申請、全米最小の州で最小の都市

[セントラルフォールズ(米ロードアイランド州) 1日 ロイター] 全米最小の州における最小の都市として知られるロードアイランド州セントラルフォールズ市が1日、米連邦破産法9条に基づく更生手続きの適用を申請した セントラルフォールズ市は、米国の景気後退(リセッション)を受けて財政状況が悪化し、財政破たんの危機にひんしていた都市の1つ。同市は年間予算1700万ドルの4倍程度に上る8000万ドルの年金債務を抱えていた。

 州当局者は警察や消防、公務員退職者の労働団体に対し、年金受給の減額受け入れを説得したが合意を得ることができず、1日に破産法の適用を申請した。市の破産管財人に指名されたロバート・フランダース判事が声明を発表した。同判事は労働組合との既存の団体交渉協定を否認するよう裁判所に求めたことを明らかにした。

 同市は破産法の適用申請を行ったことで米地方債市場から締め出されるリスクがあり、今回の申請には大きな代償が伴う可能性もある。 ジョージメイソン大学マーカタスセンターのシニア・リサーチ・フェロー、アイリーン・ノークロス氏は「財政難に苦しむ地方自治体への警鐘だ。ほかの州はロードアイランド(での破産申請)を他山の石として防止策を考えるべきだ」と述べた。

 自治体の破産問題に詳しいチャップマン・アンド・カトラー法律事務所のジェームズ・スピオット氏によると、米国では1937年以降、624の自治体が連邦破産法9条に基づく破産申請を行っている。昨年は5自治体だった。(ロイター REUTERS  ブルーム・バーグ 参照)

セントラルフォールズ市の監査済み財務諸表

参考:
米国における地方公共団体の財政再建制度」by(財)自治体国際化協会in2008
Speech by SEC Commissioner:Regulation of the Municipal Securities Market」 「日本の場合の地方債
「ニューヨークの経験に学べ

自治体の不祥事は「内部統制の整備・充実」で防げ

総務省は2006年11月7日、官製談合事件や公務員による飲酒運転事故など地方自治体を舞台にした不祥事が相次いだことを受け、各都道府県知事や政令指定都市の市長に、綱紀粛正に向けた取り組みを促す事務次官名の通達を出した。同省が自治体の不祥事に関して通達を出すのは異例。

 通達文書は(1)岐阜県で発覚した裏金問題(2)福島和歌山官製談合事件(3)奈良市で職員が不適正な休暇を取得していた問題(4)相次ぐ公務員による飲酒運転事故――を念頭に「一連の不祥事は地方自治体全体の信頼にかかわる重大な問題」と指摘。それぞれの問題について各自治体が「綱紀粛正の取り組みが適切か厳しく見直し、信頼回復に努める」ことを求めた。(日経 参照) 12月8日には、宮崎県でも知事が談合容疑で逮捕された。

これらの不祥事の多くは、民間企業にも求められている「内部統制の整備・充実」でかなりの部分防止できる。そのことから、欧米では政府部門においても内部統制の整備・充実が行われている。(「米国連邦政府の内部統制の監査報告書」「英国中央政府の内部統制」参照) 

我が国でも、一片の総務省の通達で終わらせずに「内部統制の整備・充実」を行い、実効性を高めるべきであろう。10年前の1996年福岡県の約60億円の裏金問題から、繰り返されている。少なくとも減少させる具体的対策は、どこからも聞こえてこない。

全国で明らかになった裏金と処分状況
毎日新聞 2006年9月29日]
  裏金額 返還額 処分者数 全職員に占める割合
北海道 76億円 26億円 6,239人 26.9%
福岡県 58億円 63億円 2,624人 22.8%
福島県 29億円 25億円 824人 9.0%
岐阜県 17億円 19億円 4,421人 57.3%
三重県 11億円 11億円 629人 8.6%
宮城県 7億円 6億円 1,053人 13.9%
※岐阜県など調べ。金額は億円未満切り捨て


総務省「新地方公会計制度実務研究会」の審議状況


総務省「新地方公会計制度実務研究会」報告書が2007年6月以降に延期

総務省方式改訂モデルは、現在の自治体の標準的な決算方式である単式簿記決算の数字を組み替えて財務諸表を作る方式。これまでの総務省方式を踏襲しており、基準モデル方式より簡単に作成できる。ただし、伝票を起こした時点で複式簿記の作成に必要な情報入力を行わないため、どんな支出の結果どの資産が増えたかということを完全に把握することはできない。また資産評価は、1つ1つの資産でなく、生活インフラ、消防など科目単位で行う。

基準モデルは、1件の支出や収入があるごとに、複式簿記作成に必要な情報も入力する。予算から決算まで連動しており、1枚の伝票までさかのぼって検証できる。また資産評価は、資産1つ1つに対して実施する。損失が生じた場合にその原因を伝票のレベルまで追求できるなど、会計制度的により優れた方式であることは間違いないが、起票する際に入力する項目が増えるなど自治体側の負担も大きくなる。

現実的に考えると、ハードルの低い総務省方式改訂モデルを選び4表を作成する自治体が多いと予想されるが、「最終的には各自治体の判断になるが、都道府県や政令指定都市には基準モデルを選んで欲しいという希望はある」(財務調査課)としている。

第1部 「新地方公会計制度実務研究会報告書」をまとめるにあたって(案) 参照
報告書の検討案に対する地方公共団体の意見 参照

総務省研究会・地方財政「新地方公会計制度実務研究会」参照・・・日本には中立・公正な会計基準設定主体がない。常設機関でないため、所管の役人(専門家でなく実務経験なし)が作成しており、キャリアは2〜3年で担当が交代し、一度決めたら何年も改正しない。独立行政法人の会計基準が典型的。なぜ国家予算を配分した運営費交付金が、受領した独立行政法人の収益取引や運営費交付金負債になるのか説明なし。読者のミスリードを招く会計基準でも見直しなし。支出する国(省庁)は「財源」扱い。なんとかならないものか。常設機関で専門家が会計基準の見直しをしている米国と大差がある。

知識・経験ともに優れた見識ある人材による独立・中立の常設機関で、地方自治体ばかりでなく国を含めた公会計基準を設定すべきときに来ている。国際比較もできるよう国際公会計基準との整合性を考えて設定して欲しいものである。

地方公営企業等金融機構の概要

現在、公営企業金融公庫は、地方公共団体が行う、上下水道、交通、病院など住民の生活に密着した事業を対象として、平均25年という超長期で、極めて低利の、良質で安定的な貸付けを行っております。また、貸付の原資となる資金の調達は、政府保証債を中心とする債券を発行して、市場から直接、自力で調達しております。

財務諸表および行政コスト計算書を見ると、貸借対照表に「公営企業健全化基金」が約0.9兆円計上されている。これは、公営競技(競馬・競輪・オートレース・モーターボート)施行団体は、その収益のうち、最大で売上の1.2%を納付金として公庫に納付する。目的は、公営企業に係る地方債等の利子の軽減のために利用(地方財政法第32条の2)

2007年(平成19年)5月23日、「地方公営企業等金融機構法」が成立しました。 これにより、平成2010月1日に、公営企業金融公庫は、地方公共団体が共同出資して設立する地方公営企業等金融機構に移行することとなります。政府系9機関の一つ 参照) 

2009年6月1日に、従来行ってきた地方公営企業に対する貸付に加えて地方公共団体の一般会計に対する貸付も行うこととして「地方公共団体金融機構」として新たなスタートを切りました、とのこと。「公営企業金融公庫の廃止」by国会図書館 参照。2004年(平成16年)に民間から総裁に就任した渡邊雄司氏は、旧日本興行銀行に入行し、過去にみずほフィナンシャルグループの副社長を務めている。渡邊総裁は、官僚出身ではないが、公営公庫が発行する債券の受託業務や引受業務を請け負う有力金融機関の出身者である。新組織を象徴している総裁人事と見てよい。

2007年6月27日、総務省に「地方公営企業等金融機構の財務会計に関する研究会」が立ち上がり、財務会計について検討を開始している。(総務省:地方財政研究会 参照) 単年度財務諸表は廃止し、国際基準同様に、前年度と比較した「比較財務諸表」を採用すべきであろう。

総務省自治財政局地方公営企業制度の企画立案

総務省:平成17年度地方公営企業決算の概況・・・公営企業とは/地方公営企業とは/地方公営企業法とは
総務省:公営企業会計制度に関する実務研究会・・・退職給付引当金の未計上も問題

なお、病院事業については地方公営企業法の財務規定等一部が当然に適用されるが、条例で定めるところにより、地方公営企業法のすべての規定を適用することができる。なお、主として一般行政上の目的から経営しているもの(大学付属病院、独立の伝染病病院など)は含まれない。

2004年8月19日に厚生労働省医政局長
から各都道府県知事および各衛生主管部(局)宛てに通知された内容の資料および添付資料に病院会計準則(改正版)が含まれている。


水道事業、下水事業などは100%公営事業と思っていたが、フランス、英国、豪州など外国では民間が事業運営を行って、途上国の水事業に進出していることに驚きである。海外進出には、競争入札が待ちうけており、入札条件に実績が条件となり日本勢は入札ができないでいるとのことである。フランスのスエズ(Suez)社やベオリア(Veolia)社や及び豪州のテムズウォーター(Thames Water Macquarie Bank)社が世界の市場の80%を受注している寡占状態でとのこと。

2009年1月16日、日立製作所など14社が、「有限責任事業組合 海外水循環システム協議会」の設立を発表しました。参加企業はこの協議会を情報交換の場として、事業に応じて特別目的会社(SPC)を設置、連携して市場を開拓する計画です。将来的には、北アフリカや中東、東南アジアでの水ビジネスへの参入を目指しています。

「水問題」が深刻化する中で、浄水の供給、排水処理、管理、運営等「水ビジネス」の市場規模は2025年に100 兆円規模といわれています。その一方で、わが国は優れた水処理技術を持ちながら管理運営面での実績が少なく、欧州をはじめとする海外企業に先行されているのが実情です。
こうした背景の下、昨年3 月に「産業競争力懇談会*1(COCN:Council on Competitiveness-Nippon)」が取りまとめた「水処理と水資源の有効活用技術プロジェクト」報告の中で、技術の強みを活かした新たな水ビジネス産業を育成し、輸出産業とするため、政府および関係諸機関の全面的なバックアップ体制の構築が必要であるとの提言がなされました。

水処理と水資源の有効活用技術【急拡大する世界水ビジネス市場へのアプローチ】」by産業競争力懇談会(COCN),2008年3月18日
世界の水ビジネスの動向と日本の戦略」by吉村和就グローバルウォータ・ジャパン代表
「オールジャパン」発足で水資源関連銘柄に注目、2009年1月16日

公営企業の会計基準見直し 民間並みへ、年内に報告書

総務省は2009年6月8日、地方公営企業会計制度等研究会(座長・鈴木豊青山学院大大学院教授)の初会合を開き、地方自治体が運営する病院や水道、鉄道などの地方公営企業について、民間並みに負債を厳しく計上する会計基準の見直しに着手した。年内にも報告書をまとめる。見直しでは、設備投資に充てた地方債や自治体の一般会計からの長期借入金を「借入資本金」として公営企業の資本に算入する現行基準を改め、民間と同様に負債に計上する方針。 さらに公営企業職員の退職金引き当ての義務付けや、設備の減価償却制度の見直しなども、研究会で検討する。200968共同通信社

”民間並みに”としているが公会計の基礎に、企業会計原則はあるが企業会計基準委員会の会計基準はない。当然のこととして国際基準からは乖離している。自治財務局長あたりの官僚は、企業会計原則に一致させておけば官僚としてのお勤めが満たされていると思っているようだ。読者である国民は満たされないサービスを受ける羽目になる。

地方公営企業会計制度等研究会(第2回)平成21年7月16日(木)
会計制度見直しに係る論点整理(案)
公営企業会計検討にあたっての基本的視点
地方公営企業の資本構成
建設補助金等により償却資産を取得した場合の会計処理
平成21年度の地方公営企業繰出金について
我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)

総務省の有識者研究会2009年12月24日、地方自治体が特別会計を設けて運営する鉄道や病院などの地方公営企業について、負債計上や資産評価などの会計基準を民間並みに厳格化すべきだとする報告書(概要版 参考資料)をまとめた。総務省は地方公営企業法施行令などの関連法令を2010年度に改正し、2〜3年の準備期間を経て実施する方針だ。

 財務内容を正確に情報開示し、住民が経営状況を監視しやすくするのが狙い。(ニュース
としているが、適正表示されるのかかなり怪しい。以下のような規定となっている。会計の専門家が承認しているとは言い難い内容である。

●償却資産の取得に伴い交付される補助金、一般会計負担金等については、「長期前受金(仮称)」として負債(繰延収益)に計上した上で、減価償却見合い分を、順次収益化。⇒この補助金の会計処理は独立行政法人の運営費交付金と同じような会計処理を安易に求めているが、公会計では、補助金を受取る側も公でその資金の性格は財源であり収入・収益ではない。財源処理すればよく、複雑な会計処理は不要であろう。
●建設改良費等に充てた企業債に係る元利償還金に対する繰入金は、資金を受け入れる時点は異なるものの、その趣旨は固定資産取得に係る補助金等に準じたものと考えられるため、「長期前受金(仮称)」として整理し、減価償却に伴って収益化することが適当と考えられる。⇒意味不明。読者に解り易いはずがない。
●退職給与引当金の計上不足額については、適用時点での一括計上を原則。ただし、その経営状況に応じ、当該地方公営企業職員の退職までの平均残余勤務年数の範囲内(ただし、最長15年以内とする。)での対応を可とする。なお、その内容は、「注記」。⇒国際会計基準1号パラグラフ18では、不適切な会計処理は「注記」により救済(rectify)できないとしている。これは国際会計基準の一般常識となっている。
●地方公営企業会計における引当金についても、賞与引当金や修繕引当金などのように、引当金の要件を満たすものについては、引当金を計上するものとする。⇒国際基準IAS37号の引当金には、修繕費引当金は該当しない。
●地方公営企業のたな卸資産の評価に時価評価を導入すれば、たな卸資産の実態を適切に表示することができるようになり、財政状態をより適切に表示できる
⇒国際基準は、棚卸資産はIAS2号で取得原価主義である。
これが会計基準とは信じられない。

6月のニュースと同じことが12月末のニュースで取り上げられているが、議論が遅れていることに記者は何の言及もない。

2010年1月25日総務省自治財務局地域企業企画室から「公立病院経営改善事例集」を公表しているが、内容は、損益計算書の数値のみで貸借対照表は示されておらず退職給与引当金の計上の有無が分からなく収益性の分析にすべての運営経費が含まれているか不明に分析になっている。適切な会計基準に準拠して経費がすべて計上されているのか不明で、分析自体に信頼性は薄い。

2012年1月24日、政府は、水道や病院、鉄道、ガスなどの事業を展開する地方自治体の公営企業に、民間企業と同様の会計基準を2014年度(平成26年度)から導入するための政令改正を閣議決定した。 地方公営企業の会計基準の大幅な見直しは1966年以来、46年ぶりだ。(公営企業に厳格会計・・ニュース 総務省「1月26日、見直しの説明会」「会計制度の見直し」参照)

総務省 地方公営企業等の会計制度の見直し・・担当課:総務省自治財政局公営企業課  担当者:渡邉・佐々野 TEL:03-5253-5634(内線23417) Mail: koueikigyou@soumu.go.jp 

青森県が日本版レベニュー債の発行を検討

東京2010年6月9日 ロイター] 青森県は、日本版レベニュー債の発行を検討している。青森県道路公社が管理するみちのく有料道路の通行料収入を、新たに発行するレベニュー債の元利払いに充てる仕組み。青森県の関係者が明らかにした。(青森県有料道路経営改革推進会議・・提言)

 みちのく有料道路は2010年11月に30年間の料金徴収期間が終了する。しかし、通行量が当初計画を下回ったことで、金融機関などへの債務は約130億円に達しており、青森県では料金徴収期間を19年間延長すると同時にレベニュー債の発行によって債務の借り換えを行うなど借入金の圧縮に役立てたいとしている。

 レベニュー債の発行計画は青森県有料道路経営改革推進会議が青森県に対して行った提言に沿って進められている。青森県が主体となって特別目的会社(SPC)を設立し、そのSPCが発行体となり、投資家に向けてレベニュー債を発行する。

 民間資金の仕組みを共同開発するにあたって、青森県はゴールドマン・サックス証券を選定し、具体的な仕組み作りの検討に入った。発行額は確定していないが、青森県では約130億円の債務圧縮につなげたいとしている。期間は10年以上の固定金利型の長期債を想定。早ければ11月ごろまでに計画が具体化する可能性がある。

 米国では特定事業からの収入を返済原資として発行されるレベニュー債は一般的だが、日本では馴染みが薄く、発行されれば国内初となる。

参考資料:米国債の概要とその活用例」by CLAIR REPORT 287,Aug 31,2006
2010年12月15日大和総研金融・公共コンサルティング部 鈴木文彦氏著「レベニュー債はなぜ実現しないのか、どうしてPFIはうまく機能しないのか

政府・民主党はインフラ整備の資金を民間から調達する新型地方債(レベニュー債)

2012年5月21日、日本経済新聞は、「政府・民主党はインフラ整備の資金を民間から調達する新型地方債(レベニュー債)を地方自治体の公営企業に解禁する方針だ。新型地方債で調達した民間資金で水道や交通、病院といった公共インフラの整備・改修を可能にする。2013年度の実施を目指す。自治体の財政負担を軽減できるほか、投資家の監視を受けるため無駄な事業の抑制にもつながりそうだ。

レベニュー債の公営企業への解禁は、政府が今夏にまとめる「日本再生戦略」に金融分野の柱の一つとして盛り込む。金融庁や総務省は具体的な制度作りに近く着手し、来年の通常国会にも必要な法制度の改正案を提出する方針だ」と報道した。(一般財団法人 地方自治体 公民連携 研究財団


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