国際会計基準の基礎

IAS1号「財務諸表の表示」を中心として
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はじめに

1998年12月、IAS39号「金融商品:認識と測定」が承認されたことで、国際会計基準委員会は、証券監督者国際機構(IOSCO)が求めていたコア・スタンダードを完成した。

国際会計基準委員会は、国際会計基準を完成させたことにより、欧州連合は、2005年からすべての上場会社に国際会計基準の適用を義務付け、既に米国会計基準を適用している上場会社には2年間の適用猶予期間を設け2007年から国際会計基準を適用させるとした(欧州連合規則第9条(b) 2002年6月7日のIASBニュース 参照)。

2005年12月8日EUの市場担当コミッショナーであるチャーリー・マクリービーは、EUの同等性の評価を下記の通り米国のロードマップ(少なくとも2009年までに米国基準との差異調整表の添付を解消する)に合わせる形で、当初EUが「2007年から」としていたものを2009年まで2年延期する見解を表明している。(プレスリリース ニュース 参照)(2008年12月12日、米国、日本、中国、カナダ、韓国およびインドの会計基準を欧州委員会(EC)がIFRSに相当と認めた ニュース 参照)

一方、米国証券取引委員会(SEC)は、現在約50社に満たない外国会社が国際会計基準で米国に上場しているが、欧州の上場企業が2005年から国際会計基準を適用することに注視している(SECスタッフの2003年12月の講演 参照)。米国財務会計基準審議会(FASBは、2002年10月、国際会計基準審議会(IASB)と会計基準を統一するために共同作業することで合意(ノーウオーク合意という)し、2003年12月15日、ノーウオーク合意後初めて、国際会計基準に一致させる4つの会計基準の改正案を公表した。(FASB速報 公開草案 参照)

「2001年国際会計基準書」は、千ページを超え到底すべてを紹介することはできないが、最も基本となるIAS1号の部分について、その概要を紹介する。国際会計基準の原文及び日本語翻訳したものの注文については、ホームページ「国際会計基準」に掲載しているので興味ある方は参照していただきたい。

このページは、国際会計基準の基本中の基本である、国際会計基準書第1号「財務諸表の表示(IAS1 - Presentation of Financial Statements)」に、何が規定してあるのかを紹介している。また、参考として、国際会計基準で作成した財務諸表を事例を示し、IAS1号がどのように具体的に適用しているのか解説、加えて、わが国の会計との相異点を示してみた。

このホームページ
IAS1号「財務諸表の表示」
国際会計基準適用の事例
富士通の年次報告書
相互の関係を示しましたのでご覧ください。

なお、「国際会計基準の事例」は、国際会計基準で作成した財務諸表を分量が多いため別途のホームページに掲載した。

国際会計基準の適用の仕方・考え方

形式を超えて企業の実態substance over form)を示す

国際会計基準では、投資家や債権者の視点で、投資家保護や債権者保護は、形式を超えて企業の実態(substance over form)を「適正に表示fair presentation)」し、投資家や債権者の自己責任で投資判断をできるようにすることです。したがって、企業の経済的実態(economic substance)を「適正に表示(fair presentation)」するための財務報告基準は民間の常設機関である会計基準設定主体で一つの会計基準を設定・改訂を行っています。

法形式を重要視する日本の規制と対照的です。官主導で基準を作成すると法形式(legal form)が重要視されます。証券取引法の各種規則(財務諸表規則・連結財務諸表規則など)や商法施行規則などで作成した財務諸表・計算書類は形式が重要視されます。企業が有価証券報告書を財務局へ提出するときの「財務局の審査」は正に「形式」をチェックしています。企業は、審査を通るために実態よりも形式のみを重視するようになります。世界に例を見ない「規則」や証券取引法などの「審査」が「形式」を重視することになり、実態を示し難くします。実態を示し得ず突然倒産した山一証券、長期信用銀行、日本債権銀行、10年以上長期にわたる銀行の不良債権処理、銀行の繰延税金資産の過大計上問題(りそな、足利銀行など)などは日本の制度的なものが色濃く出た結果と言えましょう。つまり、法形式は適法であっても、その実態が巨額な債務超過であると突然倒産するということがあります。

ちなみに、会計における「substance over form」の検索結果参照⇒  Google

(1)個別財務諸表か連結財務諸表か

国際会計基準を適用して財務諸表を作成する場合、次のように決める。

連結財務諸表と個別財務諸表の関係 国際会計基準を適用して財務諸表を作成する場合、まず、子会社があればIAS27号「連結財務諸表および子会社に対する投資の会計」を適用しなければならないので、連結財務諸表を作成することになる。個別財務諸表は原則不要である。 子会社がない場合は、当然、単独財務諸表となる。
持分法と個別財務諸表及び連結財務諸表の関係 子会社が無くても、20%から50%所有の関連会社がある場合は、IAS28号「関連会社の会計」を適用するため、個別財務諸表に関連会社の投資を持分法で会計処理する。ただし、IAS28号では、連結財務諸表の場合は持分法を強制しているが、個別財務諸表では原価法も認められている。

わが国の場合は、子会社が無い場合は、持分法の適用は、個別財務諸表の注記事項となってしまうが、その考え方は日本だけの特有なもの。

日本の証券取引法および商法(会社法)では、個別財務諸表および連結財務諸表の双方の開示が求められていますが、2005年10月1日、三菱とUFJは経営統合し持株会社は「三菱UFJファイナンシャル・グループ」となりましたが、持株会社の個別財務諸表にどの程度の情報価値があるというのでしょうか?
2005年9月1日に、イトーヨーカ堂、セブン-イレブン・ジャパン、デニーズジャパンの持株会社「セブン&アイ・ホールディングス」についても同様である。連結財務諸表には「セグメント情報」が開示されるのであるから、個別財務諸表の開示は不要ではないか。株価形成も上場している株式(グループ全体)に形成されるのであるから、連結財務諸表の開示でよいのではないか。


(2)時価会計か原価会計か

国際会計基準は、現在、すべてを時価会計としていることはない。少なくとも、基本的な考え方を規定しているIAS1号には時価会計という文字はない。国際会計基準委員会財団自らの年次報告書の注記にも下記のように記されており歴史的原価の慣習を適用している旨明記している。

国際会計基準委員会財団(IASCF)の2009年度年次報告書に見る歴史的原価の慣習を明示
下記の文章は、IASCFの年次報告書に記載された「重要な会計方針」に記載された「(a)表示の基礎」である。

(a) Basis of preparation 表示の基礎
The financial statements are prepared under the historical cost convention and in accordance with International Accounting Standards.
この財務諸表は歴史的原価の慣習のもとに国際会計基準に準拠して作成している

IASCFとは、財務会計基準審議会(IASB-国際会計基準設定主体)と評議会(Trustees)の二つのメインの機構をもった財団法人。


時価会計としているのは、原則、IAS39号「金融商品:認識と測定」(2001年1月1日以後開始する事業年度適用、早期適用可)に規定している売却目的(トレーディング目的)の短期有価証券及び売却可能な長期の有価証券である。売買目的の短期有価証券の時価評価による含み損益は損益計算書に計上するが、売却可能な長期の有価証券については、継続適用を条件に損益計算書または株主持分に計上する。 これも、時価(Market value)という表現を避け、正確には公正価値(Fair value)としている。例え時価がなくても公正価値は測定できるため、広い概念を使用しているのである。(ただし、JWGが「金融商品について全面時価会計」を提唱している)

現在、投資不動産について会計基準を設定中であるが、これも投資目的の不動産を対象として公正価格(fair value)で評価しようとするが、工場の土地などは投資目的ではないため対象とはなっておらず、原価法のままである。

たな卸資産はIAS2号に規定があり、原則、原価法で表示される。但し、原価が正味実現可能価額(net realisable value)を超過した場合、超過部分は評価減しなければならないことになっている。正味実現可能価額は、時価とは異なる。

有形固定資産はIAS16号に規定があり、原則、取得原価に減価償却を控除した金額で表示され時価ではない。ただし、毀損による損失が生じている場合は、IAS36号「資産の減損」により損失を即座に認識しなければならないということになる。IAS36号は資産の減損のみを計上するもので、時価による含み益の計上を言及していないので時価会計ではない。

(3)キャッシュフロー計算書が中心か

国際会計基準の基本財務諸表はIAS1号に記載しているとおり、貸借対照表、損益計算書、株主持分変動計算書及びキャッシュフロー計算書の4つに注記による開示を求めている。 キャッシュフロー計算書が特に重要であるというのではなく、4つの計算書はそれぞれの機能があり等しく重要性があるものと考えられており、キャシュフロー計算書中心主義ということはない。

(4)国際会計基準適用の基礎

国際会計基準は、連結中心主義でもなく、時価会計中心主義でもなく、キャッシュフロー計算書中心主義でもなく、それぞれ等しく重要と考えて基準化している。

つまり、企業が国際会計基準を適用するには、自社の置かれている状況により、国際会計基準1号から39号まで、解釈指針(後述する)1号から16号までに照らして適用して、企業の財務の状況を「適正に表示」をすることになる。

例えば、有形固定資産に重要な減損が生じていればIAS36「資産の減損」を厳格に適用する必要がある。重要な事業部門の廃止があれば、IAS35号を適用する必要がある。不良債権があればIAS39号「金融商品:認識と測定」を厳格に適用する必要がある。製品保証をしていれば製品保証引当金について、IAS37号「引当金、偶発債務及び偶発資産」を厳格に適用するというようにである。

企業年金についても、定額給付制度であれ定額拠出制度であれIAS19号「従業員給付」を適用し会計処理及び開示を行う。わが国の退職給付に関する会計基準は定額給付制度のみの規定であるが、IAS29号は、401kに関する定額拠出制度やストックオプションの開示も含んでいる。

逆に、通常は適用しない会計基準もある。例えば、IAS29号「超インフレ経済下の財務報告」などは、3年間でインフレ率が100%を超える場合にインフレ会計を適用することが要求されているが、通常は適用されない。昨年まで、数千倍のインフレ率であったロシアが適用していたが、ハイパーインフレーションの国に重要な連結子会社があれば別だが、日本では不要である。また、リース会計に限らないが、企業として重要性がない場合は、注記事項を除いて適用しないことができる(IAS1号)。 常に、企業の実態が適切に開示されることを目標に、国際会計基準を適用しなければならないことになっている。

(5)期間比較と企業間比較の双方を重視している

期間比較は、財務報告する企業自体の期間比較情報の提供であるが、IAS1号で、作成する財務諸表は、注記を含めて期間比較情報を提供するものでなければならないことになっている。

企業間比較を重視しているという意味は、会計処理の方法にいくつか選択肢があることで、企業間比較を阻害することになるので、選択肢を最小限にし財務諸表読者に分かり易くするという意味である。また、企業間比較の可能性は、国際間の比較も可能となることを意味している。 どの国の企業の財務諸表も理解が可能となることを意味する。この企業間比較を可能とするには会計基準を統一することで実現している。

例えば、工事契約(IAS11号)であるが、工事完成基準を排除し工事進行基準を適用することによって、工事契約は企業間比較及び国際間比較が可能になる。
また、リースでは、自社購入した生産設備で生産している場合、貸借対照表に設備資産と資金調達の借入債務が計上される。一方、同一の生産設備をリースで生産している場合は、リース資産・負債が計上されずリース料が計上されるだけということになる。同一の経済活動を営みながら、リースという金融を経由するだけで企業間比較できない状況になる。国際会計基準は、経済的実態を捉えた「リース会計(IAS17号)」を設定し、借り手の場合は、ファイナンスリースの場合、リース資産の計上とリース債務の計上を求め、貸し手には、リースによる金利収入を計上する方法を求めている。

金融商品(IAS39号)では、売却可能な有価証券の公正価値評価の部分を、損益計算書又は株主持分へいずれかの方法を選択適用できるようになっている。国際会計基準委員会は、IAS39号を暫定的規定と位置付けており、現在、2001年7月までに完成を目指して包括規定を検討中である。検討経過によれば、株主持分への計上を廃止し損益計算書に計上することで合意していると伝えられている。これは、選択肢をなくし企業間比較を可能にするためのものである。

(6)国際会計基準は非上場企業も対象となる

国際会計基準自体は上場会社、非上場会社関係なく適用対象となっている。そこで、非上場会社には強制適用しない会計基準にはその旨記載されている。例えば、IAS14号「セグメント報告」及びIAS33号「一株当たり利益」は、株式公開会社以外は任意適用としている。

(7)適正表示は時代と共に変化する

原価会計から時価会計へ、新たな会計基準の設定、過去の会計基準の修正など経済を取り巻く環境によって変化する。つまり、会計基準の目標は、「財務報告の適正な開示」を求めて設定される。したがって、取り巻く経済環境等によって、新たに設定されたり、修正したり、全く新しい考え方が出て来たりして絶えず、財務報告の適正開示のために改善される。したがって、一度設定したら絶対不変であるとは考えていないことである。

IAS1号改正基準(2007年9月6日公表、2009年1月1日以降開始する事業年度から適用)

2006年3月16日、国際会計基準審議会(IASB)は、国際会計基準1号「財務諸表の表示」に関する改正案を公表し、検討の結果、2007年9月6日,IAS1号改正「財務諸表の表示」を公表した。主な、内容は次の通りである。なお、公開草案は企業会計基準委員会翻訳を公表しているので参照してください。

包括利益計算書(statement of comprehensive income)が導入された。すべての非株主持分の(第三者間取引の)変動を包括利益計算書として一つに表示する。損益計算の次に包括利益の計算を表示することも可。したがって、包括利益は株主持分変動計算書には表示されない。

日本の損益計算は、「所得」=「業績」として狭く考えるが、国際基準は非株主持分(第三者持分)の変動が包括利益と考える。国際基準は、換言すれば、期首の純資産と期末の純資産の増減が包括利益であるとするもの。これにより、第三者持分と株主持分の区分が読者に明確になるとしている。

包括利益に対する税金と、包括利益の組替え(reclassification)修正について注記による開示が求められる。

改正基準は、財務諸表の名称は以下のとおりである。
(a) 財政状態計算書( statement of financial position ) ( 従来の「貸借対照表」(balance sheet))
(b) 包括利益計算書(statement of comprehensive income)(または、損益計算書と包括利益計算書を区分する方式を選択できる)2011年6月若干の改正 参照
(c) 持分変動計算書(statement of changes in equity)
(d) キャッシュ・フロー計算書(statement of cash flows)(従来の「キャッシュ・フロー計算書」(cash flow statement))
(e) 注記(notes)
(f) 国際会計基準の適用初年度(IFRS1号6項)や会計方針の変更で遡及修正する場合は、比較表示されている古い財政状態計算書の期首財政状態計算書( statement of financial position as at the beginning of the earliest comparative period when an entity applies an accounting policy retrospectively or makes a retrospective restatement of items in its financial statements, or when it reclassifies items in its financial statements.)

なお、包括利益には、次の項目が含まれる。
・再評価益(IAS16号「有形固定資産」およびIAS38号「無形固定資産」
・確定給付年金の年金数理差異(IAS19号「事業主の退職給付の会計」の93A項)
・海外子会社の財務諸表の換算調整から生ずる差損益(IAS21号「外国為替の変動の影響」)
・売却可能な金融商品の再評価差損益(IAS39号「金融商品:認識および測定」)
・キャッシュフロー・ヘッジにおけるヘッジ商品の損益(IAS39号「金融商品:認識および測定」)

改正IAS1号⇒Google Yahoo! msn 大手会計事務所の財務諸表の例示・・根拠パラグラフ番号付

以上がフェーズAの改正点である。
2009年1月1日以降開始する事業年度から適用、早期適用が許されている

財務分析に期首の財政状態計算書を必要という理由で、財政状態計算書だけ期首を含めると3期を求めており、その他の財務諸表を2期比較の比較表示を求めている。かなり、英国型の財務諸表の様相を呈してきている。


IAS1号の一部改正で、包括利益計算書の1表で開示を求める案公表(2010年5月27日)

2010年5月27日国際会計基準審議会(IASB)は、IAS1号の一部を改正する草案を公表した。2010年9月30日までにコメントを求めている。(概要 ASBJ翻訳版 参照)

この案では、①損益計算書とその他の包括利益(Other Comprehensive Income, OCI)について、二計算書の開示方式は解り難いとして廃止し、連続して一つの表に表示する、②その他の包括利益を後の期に損益に組替えられない項目と組替えられる項目とに区分表示し、③当期利益"profit or loss (net income)"を残した。

一つの計算書の表題の例示は、①損益及びその他の包括利益計算書(Statement of profit or loss and other comprehensive income )、または②包括利益計算書(Statement of comprehensive income )であるが、目的適合であれば他の名称も可としフレキシブルな規定となっている。

その他の包括利益(Other comprehensive income:)を、①後の期に損益に組替えられない項目(Items never reclassified subsequently to profit or loss:)、戦略的持分証券の評価損益、有形固定資産の再評価損益、定額給付年金の数理差異など、②後の期に損益に組替えられる項目(Items that may be reclassified subsequently to profit or loss:)、海外事業の為替換算調整勘定、キャッシュフロー・ヘッジ、関係会社のその他の包括利益との二つに区分して表示する。

計算書の最後の行は、包括利益の合計(TOTAL COMPREHENSIVE INCOME)として表示される。当期利益にその他の包括利益を加えた合計が包括利益となる。

計算書の数値は、所有者持分と非支配者持分(旧少数株主持分)を含んだ数値で、当期利益と包括利益について、それぞれの数値を開示する。
日本の会計基準は、親会社持分(所有者持分)のみが表示されているので、IFRS表示での包括利益計算書を見る場合には注意を要する。

2010年6月30日、日本の企業会計基準委員会(ASBJ)が「包括利益の表示に関する会計基準」では、包括利益を表示する計算書は、上記5月27日のIFRS改正草案は反映していない。2011年3月31日以後終了する連結財務諸表から適用する。

包括利益を表示する計算書
11. 包括利益を表示する計算書は、次のいずれかの形式による。連結財務諸表においては、包括利益のうち親会社株主に係る金額及び少数株主に係る金額を付記する。
(1) 当期純利益を表示する損益計算書と、第6 項に従って包括利益を表示する包括利益計算書からなる形式(2 計算書方式
(2) 当期純利益の表示と第6 項に従った包括利益の表示を1 つの計算書(「損益及び包括利益計算書」)で行う形式(1 計算書方式

包括利益の計算の表示
6. 包括利益の計算の表示は、次による。
(1) 個別財務諸表においては、当期純利益にその他の包括利益の内訳項目を加減して包括利益を表示する。
(2) 連結財務諸表においては、少数株主損益調整前当期純利益にその他の包括利益の内訳項目を加減して包括利益を表示する。

コンバージェンスはパイプ・ドリーム (pipe dream)・・時はまた失われる。


財務諸表の表示(IAS1号)

現行のIAS1号(改訂)「財務諸表の表示」は、1997年8月に公表(1998年7月1日以後開始する事業年度より適用し早期適用も推奨されている)されたものであり、それ以前に発表されていたIAS1号「会計方針の開示」、5号「財務諸表に開示すべき情報」、13号「流動資産及び流動負債の表示」に取り替わるものである。 以下の説明は現行のIAS1号(改訂)に沿ったものであり、単にIAS1号という記載は現行の基準を指す。

総論

IAS1号は、国際会計基準で財務諸表を作成する場合に、財務諸表の目的、財務諸表に対する責任、財務諸表とは何を指すか、また、適正表示とは何か、会計方針の開示とは何か、継続企業の前提、発生主義会計の適用、表示の継続性、重要性の適用、比較情報の開示、四つの基本財務諸表の最小限表示すべき内容、説明的注記事項ほか、最も基本的な部分を規定している。IAS2号以下は個別事項の会計基準を設定しているが、1号は各会計基準を適用する上で共通して適用しなければならない基礎的会計基準である。
IAS1号「財務諸表の表示」によれば、次の通りである。

財務諸表の目的(パラグラフ(項)5):

財務諸表は、ある企業の財政状態とその企業が実行した取引について財務的表現を体系的に行うものである。

一般的な財務諸表の目的は、経済的意思決定を行う広範囲の利用者にとって有用な企業の財政状態、業績及びキャッシュフローについての情報を提供することである。
また、財務諸表は委託された資源に対するマネジメントの遂行責任の結果を示すものである。

この目的を達成するために、財務諸表に企業の次の事項について記載する。
(a)資産
(b)負債
(c)資本
(d)収益及び費用(利得及び損失を含む)、及び
(e)キャッシュフロー
この情報は、財務諸表の注記と一体となって、財務諸表の利用者が企業の将来のキャッシュフロー及び、特に、現金及び現金同等物を獲得する時期と確実性とを予測するのに役立つものである。

財務諸表に対する責任(パラグラフ6)

企業の取締役会、その他の支配機関はその企業の財務諸表の作成表示に関する責任がある。

財務諸表とは(パラグラフ7)

旧IAS1号
2008年まで
改定IAS1号
2009年1月1日以降
財務諸表の完全なセットは、下記のものから構成される。
(a)貸借対照表(Balance sheet)
(b)損益計算書(Income statement)
(c)株主持分の変動計算書(Statement of changes in equity )
(d)キャッシュフロー計算書(Cash flow statement)
(e)会計方針及び説明的注記(Accounting policies and explanatory notes)
改正基準パラグラフ10では、財務諸表の名称は以下のとおりである。
(a) 財政状態計算書( statement of financial position )
(b) 包括利益計算書(statement of comprehensive income)
(または、損益計算書と包括利益計算書を区分する方式を選択できる)
(c) 持分変動計算書(statement of changes in equity)
(d) キャッシュ・フロー計算書(statement of cash flows)
(e) 注記(notes)
(f) 国際会計基準の適用初年度(IFRS1号6項)や会計方針の変更で遡及修正する場合は、比較表示されている古い財政状態計算書の期首財政状態計算書( statement of financial position as at the beginning of the earliest comparative period when an entity applies an accounting policy retrospectively or makes a retrospective restatement of items in its financial statements, or when it reclassifies items in its financial statements.)
なお、包括利益には、次の項目が含まれる。
・再評価益(IAS16号「有形固定資産」およびIAS38号「無形固定資産」
・確定給付年金の年金数理差異(IAS19号「事業主の退職給付の会計」の93A項)
・海外子会社の財務諸表の換算調整から生ずる差損益(IAS21号「外国為替の変動の影響」)
・売却可能な金融商品の再評価差損益(IAS39号「金融商品:認識および測定」)
・キャッシュフロー・ヘッジにおけるヘッジ商品の損益(IAS39号「金融商品:認識および測定」)
なお、改正IAS1号では、のれんの非支配者持分も計上することに伴い、利益をパラグラフ83で会社所有者(owner of the company)と非支配者持分(non-controlling interest)を開示することになりました。これに伴い、少数株主持分(minority interest)は非支配者持分(non-controlling interest)に変更となりました。

国際会計基準の事例
このIAS1号の基準に従って作成された財務諸表は、貸借対照表、損益計算書、株主持分計算書、キャッシュフロー計算書及び注記事項の順に構成される。

・ 四つの基本財務諸表は、1ページごとに簡潔に5ページ(貸借対照表は、資産で1ページ、負債・株主持分で1ページ)に纏められ、一覧して見られる。後述の重要性、重複及び相殺の基準を適用した結果である。

・ 日本の会計と根本的に異なるところは、会社の内容によって異なるが、約10ページに及ぶ会計方針及び説明的注記があること。また、注記については、秩序整然と1番から○○番のように、連番が付されて関連する財務諸表項目に参照しており読者に分かり易くすることである。事例の財務諸表では、(1)重要な会計方針から(18)後発事象まで、秩序整然と記述されている。
日本の会計
金融商品取引法の有価証券報告書の財務諸表作成規則となる連結財務諸表規則および財務諸表規則第1条1項には、「貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書及びキャッシュ・フロー計算書及び附属明細表(以下「財務諸表」という)」とあり、注記はない。
一方、附属明細書は国際基準にはなく、注記に内容を示すことになっている。有価証券報告書の財務諸表は、注記が見難くく国際基準に達しているとはとても言えない(EDINET参照)。


基本的な枠組み

国際会計基準で財務諸表を作成するうえで従うべき全般的に考慮しなければならない事項は、次のようになっている(パラグラフ10から41)。

(1) 適正表示(Fair presentation)
(2) 会計方針(Accounting policies)
(3) 継続企業(Going concern)
(4) 発生主義(Accrual basis of accounting)
(5) 表示の継続性(Consistency of presentation)
(6) 重要性と合算(Materiality and aggregation)
(7) 相殺(Offsetting)
(8) 比較情報(Comparative information)

(1)適正表示とは

財務諸表の適正表示とは何かについて、パラグラフ10から12に次のように述べている。

10 財務諸表は、企業の財政状態、財務業績及びキャッシュフローを適正に表示するものでなければならない。IASを適正に適用し、必要な場合には追加的開示をすれば、ほとんどすべての場合に、適正表示を達成した財務諸表が作成されることになる。(現パラグラフ15)
11 IASに準拠した財務諸表を作成する企業は、その旨を開示しなければならない。財務諸表を適用すべき各基準書及び適用すべき解釈指針委員会の解釈指針すべての規定に従ったものでない限り、財務諸表がIAS(現IFRS)に準拠していると記述してはならない。(現パラグラフ16)
An entity whose financial statements comply with IFRSs shall make an explicit and unreserved statement of such compliance in the notes. An entity shall not describe financial statements as complying with IFRSs unless they comply with all the requirements of IFRSs.
12 不適切な会計処理は、会計方針の開示又は注記もしくは説明文書のいずれによっても救済されるものではない。(現パラグラフ18)

財務諸表が適正に表示されているといえるのは、IASすべての基準と解釈指針の規定にすべて準拠して初めて適正表示といえる、としているのであって、国際会計基準に準拠しないで、注記などに開示しても救済されないとしているのである。 例えば、日本ではリース会計において、所有権の移転すると認められないファイナンス・スリースは賃貸借取引として会計処理し、注記によってリース資産相当額、リース債務相当額などを開示しているが、国際会計基準では、本来、ファイナンス・リースであれば賃借人は、リース資産及びリース債務を計上しなければならない。注記によって救済されないとしているのである。

日本の会計について
国際会計基準第1号「財務諸表の表示」の規定にしたがって、すべての国際会計基準(現在、IAS1号から39号及び解釈指針1号から16号まで)を適用している場合にのみ「国際会計基準に準拠して適用している」と記載でき、また、その旨、重要な会計方針として記述することを要求している。日本では、国際会計基準から新たに7つの会計基準(連結財務諸表、中間連結財務諸表、キャッシュフロー計算書、税効果会計、研究開発費の会計、退職給付の会計、金融商品の時価会計)を導入し、世界標準レベルに達したと自己評価しても、日本の会計基準では一部適用にあたり、国際会計基準第1号に適合していないので国際会計基準を適用したとはいえない。そもそも、日本の会計が国際的レベルに達して信頼できるかは、外国を含めた財務諸表利用者が評価すべきものであって会計基準設定者が決めることではない。設定者は、適正表示できる会計基準となるように、漫然とすることなく常時謙虚に、完成度を高くする努力が求められているはずである。


解釈指針について
国際会計基準を実務上適用する上で、解釈指針を必要とするものがあり、必要な解釈指針を解釈指針委員会(Standing Interpretations Committee,通称SICという)が国際会計基準の解釈指針(Interpretations of International Accounting Standards、通称Interpretationsという)を設定しており、前述の通り、99年1月1日現在、16号まで公表されている。この解釈指針にも準拠する必要がある。

解釈指針と日本の会計との重要な相違点
例えば,特定目的会社は日本基準では連結除外となるが、国際会計基準の解釈指針(SIC)12では連結対象となると明記している。

また、解釈指針(SIC)16「自己株式等の会計」では(国際会計基準の本文では記述していない)、自己株式は株主持分から控除し、自己株式の売却・発行・解約から損益を計上してはならないとして明記している。

日本では商法決算で自己株式(ストックオプションによる自社株購入を含む)の購入は、資産の購入として記録し、売却時に売却損益を計上することが求められる。また、期末時点で、評価損益の計上が求められる。証券取引法では、表示だけ資本の部の控除項目としている。商法と証券取引法の整合性がない。

(2)会計方針

国際会計機基準には選択適用が認められた基準がある場合、経営者は、会計方針を選択適用しなければならない。経営者が選択適用に際して考慮すべき事項は、パラグラフ20に、次のように記載している。

20. 財務諸表が、適用すべき各IAS及び解釈指針委員会が公表する解釈書のすべての規定に準拠するように、経営者は会計方針を選択適用しなければならない。具体的な規定がない場合は、経営者は財務諸表に次の条件を満たす情報が確実に提供されるように方針を設定しなければならない。

(a)財務諸表利用者の意思決定のために目的適合性のあるものであること。

(b)以下の点で信頼できるものであること。   
(i)企業の経営成績及び財政状態を忠実に表現し、  
(ⅱ)事象及び取引の経済的実態を反映し、単に法律的形式に従っただけのものではなく、  
(ⅲ)中立的、つまり偏向していないものであり、  
(ⅳ)慎重であり、かつ  
(ⅴ)すべての重要事項について完全である。

選択適用が認められているものとしては、次のものがある。
・たな卸資産の評価方法(IAS2号):
標準処理として、個別法、先入先出法(FIFO)、加重平均法 代替処理として後入先出法(LIFO)
・ 有形固定資産の減価償却方法(IAS4号):
定額法、定率法など

国際会計基準の事例
事例の財務諸表には、IAS1号の上記の規定に従って(1)重要な会計方針に(a)から(o)まで、会社が採用した会計方針を記載している。記載している会計方針はIAS1号から39号までの会計基準で開示を求めているものである。電算機買戻引当金はIAS37号「引当金、偶発債務及び偶発資産」の会計基準が開示を求めているもの。
日本の会計
証券取引法の有価証券報告書や商法の計算書類に記載される重要な会計方針は、貸倒引当金等の引当金などで、「・・は、税法の基準に従って積立てている。」などの表現があるが、国際会計基準では、税法の計上規定が会計方針として記載されることはない。
税法は会計基準ではないから、重要な会計方針に計上方針として税法を基礎とした旨記載されることはない。

また、通常、貸倒引当金(Allowance for doubtful accounts)と、既にその性格が貸借対照表の項目として表現されており、屋上屋を重ねる説明を要しないため、重要な会計方針に記載しない場合が多い。賞与引当金は、国際会計基準では、発生主義会計として合理的な見積りにより未払費用であって引当金ではない。

(3)継続企業(Going Concern)

国際会計基準は、継続企業を前提として作成されている。企業が継続企業として存続する能力がないと判定できる場合は、すべての資産は換金可能性の金額(精算金額)で表示するだけの単純な会計となるからです。
例えば、有形固定資産は継続企業の前提で、取得価額を耐用年数に減価償却費を期間配分しているので、継続企業でなければ減価償却の意味がない。

そこで、パラグラフ23(現25)では、次のように記載している。

23.
(現25)
財務諸表を作成するに際して、経営者は企業が継続企業として存続する能力があるかどうかを検討しなければならない。経営者に当該企業の精算若しくは営業停止の意図があるか、又はそうする以外に現実的な代替案がない場合以外は、財務諸表は継続企業の前提により作成しなければならない。経営者が、この検討を行う際に、当該企業の継続企業としての存続能力に対して重大な疑問を生じさせるような事象又は状態に関する重要な不確定事項を発見したときは、その不確定事項を開示しなければならない。財務諸表が継続企業の基準で作成されていない場合には、その事実を財務諸表の基準及び当該企業が継続企業とは認められない理由と共に開示しなければならない。
パラグラフ24(現26))では、検討すべき内容を下記のように示している。
24
(現26)
経営者は、継続企業の前提が適切かどうかを検討する際に、少なくとも予見できる将来(少なくとも貸借対照表日から12ヶ月は必要であるが、限定されない。)に関する入手可能なすべての情報を検討しなければならない。検討の程度はそれぞれの場合の事実関係に左右される。企業が事業利益を計上した歴史があり、財務資源を直ちに入手できる状況下にあるときは、継続企業の前提による会計が適切であるという結論は詳細な分析をしなくても得られるであろう。そうでない場合には,経営者が継続企業の前提が適切であるという満足を得るには、現在及び将来の収益性、負債返済の計画日程及び資金調達のために可能な財源をめぐる広範囲の要因を検討する必要がある。


日本の会計及び監査基準 国際会計及び監査基準
2009年4月20日金融庁は「継続企業の前提に関する注記」に係る
財務諸表等規則の改正を公表した。・・会計基準もないし、
連結財表規則もない。
改正監査基準」により監査意見を形成する。
経営者の評価、当該事象又は状況に関する経営者の対応策
について検討し、重要な不確実性の有無を確認し、重要な
不確実性なしとの結論であれば無限定適正意見を出せる。


参考:日本公認会計士協会の実務指針 参照
国際会計基準(IAS)1号の規定により継続事業の前提に関する
開示を求めており、国際監査基準ISA570号に従って監査意見を述べ
ることになる。

参考:
IAASB「ゴーイングコンサーンの監査での考慮」2009年1月 参照

米国監査基準AU341A「継続企業の継続性に関する監査人の考慮
CPAJournal「The Going-Concern Assumption Revisited: Assessing a Company’s Future Viability

日本には、継続企業の前提に関する会計基準はない。
財務諸表等規則第8条の27(継続企業の前提に関する注記
により開示を求めている。
ただし、「当該重要な不確実性が認められなくなつた場合は、
注記することを要しない
」と改正されたが、
一方、「事業リスク」には開示することが求められ
企業にとっては表示箇所が変わったに過ぎない。


これは、財務諸表等規則1条3項の規定で金融庁長官が会計基準
設定の権限があるとの規定に基づくものと考えられる。

会社法では、会社計算規則第100条により開示を求めている。

なお、東京証券取引所には上場規制において、
「継続企業の前提」で注記するときは直ちにその概要を開示する
こととする、と規定している。⇒「継続企業の前提」のサイト 参照

(4)発生主義

発生主義会計でなければ、適切な期間損益および財政状態を示すことができない。そこで、パラグラフ25.では、次のように記載している。

25. 企業は、キャッシュフロー情報を除き、発生主義会計による財務諸表を作成しなければならない。

発生主義会計では、物の取引又はサービスの提供は、それらが起こったとき(現金及び現金同等物が収受又は支払われたときではない)に認識され、会計記録に計上され、その関連する会計期間の財務諸表に報告される。

費用は、費用収益対応の原則で認識される。 例えば、商品を購入し、購入した商品が期末に在庫として残れば「たな卸資産」に計上され費用ではありません。商品が売却されたときに、商品の収益(売上)に対応する原価として、商品の購入費用が売上原価として費用計上されることになる。つまり、費用収益対応の原則である。

有形固定資産の減価償却費は、使用によって耐用年数に配分するのが、発生主義会計である。

給与は、労働の対価として労働した期間に費用として発生しているので、発生した期間に対応して未払給与を計上することになる。
同様に、借入金の利息も、期間の経過と伴に発生しており、期間に対応して計上する。利息の支払い方法が、後払いであれば、利息経費と負債としての未払利息を計上することになり、前払いの場合は、支払い額を前払利息として資産に計上して期間の経過と伴に、前払い利息から対応する期間費用を費用化する。 費用収益対応の原則を適用するからといって、資産または負債の定義に当てはまらない項目を貸借対照表に計上することは認められれない。

(5)表示の継続性

表示を継続して適用しなければ、情報としての価値は著しく損なわれる。そこで、パラグラフ27では、次のように記載している。

27. 財務諸表の項目の分類と表示は、次の場合を除いて、継続して適用しなければならない。
(a)企業の事業内容に重大な変化があった場合、又は、表示の再検討により変更した方がより適切に表示することが明らかになった場合、,又は
(b)表示の変更がIAS又は解釈指針により強制される場合。

いわゆる、期間比較を可能にする重要な原則である。

表示の継続性は、下記の(8)比較情報と密接に関連しており、上記(a)及び(b)により変更せざるを得ない場合には、比較情報の過去の表示を同一の表示に修正して、修正した理由等を開示し、比較可能性を確保し読者に分かるようにする必要がある。

(6)重要性と合算

企業活動は多岐にわたり、すべての詳細な事項までも開示を求めると、詳細過ぎて分かり難く、一方、省略しすぎ簡潔過ぎて情報としての価値を減退する恐れがある。財務情報を簡潔明瞭にするために必要な重要性と合算を、パラグラフ29で、次のように規定している。

29. 重要な項目は財務諸表上で独立して表示しなければならない。重要でない金額は,同様の性質又は同様の機能を持った金額と合算すべきであり、個別に表示する必要はない。
30. 財務諸表は、大量の取引をその性質と機能とに従って、グループ毎に合算して組み立てられたものである。合算及び分類の財務諸表作成の最終過程は、表示項目となる分類要約されたデータを財務諸表本体又は注記表示することである。ある表示項目が個別的には重要でない場合は、財務諸表本体または注記で他の項目と合算される。ただし、財務諸表本体では重要性がない項目であっても、注記で個別に開示しなければならない場合もある。

なお、重要性の原則により、情報が重要でないならば、IASに規定している特定の開示要求を満たす必要はない。

国際会計基準の事例
貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書に”その他(Other)”として、重要性のない事項をまとめて表示しているのが、この基準を具体的に適用したもの。これにより、それぞれの財務諸表をコンパクトに1ページにまとめ簡潔にし、読者に読み易くかつ理解を容易にする。但し、簡潔過ぎて分かり難く、詳細過ぎて難解であってはならないことになっている。

(7)相殺

明瞭表示を目的として、相殺してはならないものと、相殺しなければならないものを規定している。
相殺してはならない事項は、パラグラフ33.に次のように規定している。

33. IASで強制又は許容される場合を除き、資産と負債を相殺してはならない。
相殺しなければならない事項は、パラグラフ34.に次のように規定している。
34. 収益項目と費用項目は、次の場合にのみ、相殺しなければならない。
(a)IASで強制又は許容されている場合、又は
(b)同一又は類似の取引又は事象から生ずる利得、損失及び関連費用に重要性が無い場合。
例示としては、為替差益と差損の相殺、有形固定資産の売却益と売却損の相殺、有価証券売却益と売却損の相殺など。

収益に関連した具体的例としては、次のようなものがある。
(a)投資や営業用資産の売却による損益は、売却代金から帳簿価額と関連売却費用を差し引いた結果を報告する。
(b)転貸契約は、賃貸収入から賃貸費用を控除して純額で報告する(重要性ある場合は,注記でそれぞれを開示)。
(c)異常損益項目は、注記に総額を示した上で、関連税効果を控除した純額で表示する。 資産と負債、及び収益と費用に重要性がある場合は、個別に報告されることが重要となる。

国際会計基準の事例
損益計算書の営業外損益に「その他、純額(注記14)」として表示され、注記14でその内容を開示している。為替差損及び為替差益を相殺して”純額”としたり、有形固定資産の処分損として売却損益、除却損等を相殺して処分(disposal)として純額で示しているが、この基準を適用したもの。
日本の会計
日本の大蔵省企業会計審議会の「企業会計原則」には、総額主義の原則と称して「費用及び収益は、総額によって記載することを原則とし、費用の項目と収益の項目とを直接に相殺することによってその全部又は一部を損益計算書から除去してはならない」、とあり、上記のように基本的な部分で国際会計基準とは相違している。

(8)比較財務情報

前期との比較情報により、業績・財政状態・キャッシュフローの状況が、良くなっているのか、悪くなっているのか分かり、情報の価値は高まる。
そこで、パラグラフ38.では、つぎのように規定している。

38. IASによって他の方法が許容又は強制されていない限り、財務諸表中のすべての数値情報は、前期の比較情報を開示しなければならない。当期の財務情報を理解する上で目的適合性がある場合は、比較情報は、説明的情報中においても含めなければならない。

財務情報利用者にとって前期との比較情報は欠くことのできない重要な情報である。 また、財務諸表中の項目の表示が変更された場合の比較情報について、パラグラフ40.に次のように規定している。

40. 財務諸表中の項目の表示又は分類が変更された場合には、実行不可能でない限り、当期との比較可能性を確保するために、比較情報の金額を再分類しなければならず、すべての再分類についてその性質、金額、及び理由を開示しなければならない。比較情報の金額の再分類が実行不可能である場合は、企業は再分類できない理由、及びもしその金額が再分類されていたならば行われていたであろう変更の内容を開示しなければならない。

国際会計基準の事例
貸借対照表2期、損益計算書、株主持分計算書及びキャッシュフロー計算書については3期を比較表示している。注記も同様である。
国際会計基準は、比較情報としており2期以上を比較していれば良い。

米国証券取引委員会(SEC)が証券取引法適用会社に要求している、貸借対照表2期、それ以外は3期としており、事例の財務諸表もこれに倣ったものであろう。なお、SECは米国投資家向けに、直近の財務諸表を米国ドルの換算することを求めている。これも倣ったものであろう。注記2で換算の内容を開示している。
日本の会計
日本の証券取引法では、財務諸表を2期比較で表示しているが、日本の場合は過去の財務諸表はそのままで、注記で変更の理由及び金額を開示することになっている。大蔵省令によって、過去の財務諸表を再分類して読者に分かり易く表示することはできない。

また、商法計算書類にいたっては、単年度決算書類のみで比較情報は要求されていない。

国際会計基準では、比較されている過年度の財務諸表を再分類して読者に比較可能にする方法を採用している。

その他の一般的事項

パラグラフ46には、次の情報は目立つように明示しなければならない、としている。

46 (a)報告企業の名称又は識別する手段
(b)財務諸表の対象が個別企業か企業グループか
(c)貸借対照表日又は財務諸表の対象期間
(d)報告通貨
(e)財務諸表中の数値の表示単位 例示の連結財務諸表の関係上記規定に準拠して、明示されている。

貸借対照表の表示

企業の支払能力を検討する流動比率(=流動資産/流動負債)に有用として(パラグラフ56)、まず貸借対照表の表示については、流動資産・流動負債を区分することを強調している。

(a)  流動/非流動の区分

国際会計基準の事例

・国際会計基準IAS1号の財政状態計算書( statement of financial position )・・ ( 従来の「貸借対照表」(balance sheet)・・の例示は固定性配列法(日本及び米国が実務として採用している流動性配列法・・流動性の高い順に配列する方法)で配列している。英国・ヨーローッパ系は固定性配列法で表示している。国際会計基準1号パラグラフ60で、流動性を基にした表示がより目的適合となる情報を提供することになる場合、流動性基準が適合する例外的な場合となり、資産及び負債を概ね流動性の順序に従って表示しなければならない、としている。日本や米国の民間事業会社は、流動配列法に馴染んでおり該当するものと思われる。

Under U.S. GAAP, assets are presented in descending order of liquidity, liabilities in ascending order of time to maturity, and equity in descending order of priority in liquidation. Balance sheets under IFRS, however, typically follow an order of increasing liquidity (Exhibit 3).

The sorting order is independent of whether a specific order of presentation, such as a classified balance sheet (with a current/noncurrent distinction), is adopted. Similarly, the sorting order should not to be confused with the presentation in order of decreasing/increasing liquidity, which is an alternative to a classified balance sheet that IAS 1, para. 60, permits only in certain circumstances.

国際会計基準(IFRS)と米国会計基準(U.S. GAAP)の財政状態計算書の二重報告(CPAジャーナルDECEMBER 2007 )」 参照

国際会計基準(IFRS)では、資産・負債を流動・非流動に区分することを求めているが、財政状態計算書については、所定の様式(Form or Format)で作成することは求めていない。欧州では伝統的に固定配列法の表示が多く、かつIFRSのイラストにも例示しているためか固定配列法による表示が多い。一方、米国、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアが流動性配列法、また、中には、フランス、ドイツ企業やイスラエル、インド企業等のIFRS適用会社には日米のような流動性配列法で作成しているベンチャー企業がある一方、流動性配列法でも流動資産の初めに棚卸資産を表示し流動資産の最後に現金及び現金同等物とし、次に非流動資産を表示して資産合計を表示している企業もある。

IAS1号では英国方式の固定配列法、米国・日本方式の流動性配列法のいずれでも良いことになっている。その証拠にIASBの母体である国際会計基準委員会財団(IASC Foundation)の年次報告書は、流動性配列法によって表示している。
中小企業のIFRS財務諸表の例示および表示・開示チェックリスト(2009年)・・資産・負債は流動性配列法で表示している。
国際公会計基準(IPSAS)の財政状態計算書でさえ資産・負債は流動性配列法である。

その他、IFRSの財務諸表で、資産負債を流動性配列法で表示している会社の例は以下のとおりである

会社名 IFRS連結財務諸表 資産・負債の
表示方法
SEC登録の
連結財務諸表
ニューヨーク証券
取引所等の株価
日本電波工業
日本のIFRS適用第一号
日本 IFRS連結財務諸表 流動性配列法 - -
IFRS財団(IASBの母体) 国際 IFRS財務諸表 流動性配列法 - -
シーメンス
SIEMENS AKTIENGESELLSCHAFT
ドイツ 米国SEC登録の
Form20-F
流動性配列法 SEC登録の
年次報告書等
株価

ドイツ・テレコム
Deutsche Telekom AG

ドイツ 米国SEC登録の
Form20-F
流動性配列法 SEC登録の
年次報告書等
株価
SAP社 ドイツ 2009年度からIFRSのみ 流動性配列法 SEC登録の報告書等 株価
CGGベリタス
CGG Veritas
フランス 米国SEC登録の
Form20-F
流動性配列法 SEC登録の
年次報告書等
株価
インフォシス・テクノロジーズ
Infosys Technologies Limited
インド 米国SEC登録の
Form20-F
流動性配列法 SEC登録の
年次報告書等
ナスダック株価
ブルースクエアー・イスラエル
BLUE SQUARE - ISRAEL LTD
イスラエル 米国SEC登録の
Form20-F
流動性配列法 SEC登録の
年次報告書等
株価

少なくとも、IFRSは、日本の企業会計原則財務諸表規則連結財務諸表規則等のように流動配列法でかつ勘定科目の順まで規制してはいない。

 上記(1)の表示方法によった場合の流動/非流動の区分基準は以下に従うこと

流動資産とは(パラグラフ57)   
ⅰ.通常の営業循環過程で実現予定・販売/消費目的の資産   
ⅱ.売買目的/短期保有で、貸借対照表日から12ヶ月以内に実現予定の資産   
ⅲ.使用制限がない現金及び現金同等物   
上記のⅰ.ⅱ.ⅲ.以外の資産はすべて非流動資産に分類表示しなければならない。

流動負債とは(パラグラフ60)   
ⅰ.通常の営業循環過程で決済予定の負債   
ⅱ.決済期限が貸借対照表日から12ヶ月以内の負債   
上記のⅰ.ⅱ.以外の負債はすべて非流動負債に分類表示しなければならない。

企業の営業循環期間とは(パラグラフ59)   
材料の取得から、それが現金又は直ちに現金と交換可能なものとして実現するまでの期間(12ヶ月以内とは限らない)  
(12ヶ月を超える営業循環期間の流動資産の例)     
通常の営業循環過程の一環として販売・消費・実現されるたな卸資産・営業債権   
(12ヶ月を越える営業循環期間の流動負債の例)     
通常の営業循環過程において使用される運転資本の一部を構成する営業債務・従業員未払費用・その他の未払営業費用

(b) 貸借対照表の本体に記載すべき情報

日本の会計
現金及び現金同等物について
1998年12月21日、大蔵省令第173号「財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する省令」によれば、個別財務諸表及び連結財務諸表の流動資産の区分表示が下記のように定められており、現金及び現金同等物の用語を使用できない。
・ 現金及び預金
・ 受取手形
・ 売掛金
・ 有価証券
・ 商品 
以下省略

IAS1号に規定の貸借対照表の表示とは異なる。キャッシュフロー計算書では現金及び現金同等物の内容を示し貸借対照表の関連を明らかにすることが求められているが、我が国では財務諸表の様式は、会計基準ではなく大蔵省令で規定している。

(c) 貸借対照表の本体又は注記のいずれかに記載すべき情報(パラグラフ72)

上記の(b)で述べた貸借対照表の本体に記載すべき情報だけでは、利用者が理解する上で必要な情報を網羅することができない。そこで、貸借対照表の本体に記載すべき情報のより詳細な内訳ないしは補足情報を開示することが必要になる。

この開示は貸借対照表の本体に追加するか注記として記載するかのいずれの方法で行ってもよい。どちらの方法によるかは、企業の事業活動からみてより適切な方法を採用することになる。

貸借対照表の本体又は注記でどの程度詳細な内訳を示すかは、他のIASの規定、並びに金額的重要性、科目の性格と機能による。(前項(b)の最後に示したⅰからⅲの判断基準はここでも同様にあてはまる。)

要求される情報例(パラグラフ73)
親会社、兄弟会社、関連会社その他の関係会社に対する支払勘定及び受取勘定の金額 内訳表示の区分例 受取勘定  売掛金  グループ内の他の会社に対する債権  前払金  その他 たな卸資産 商品 製造用貯蔵品 原材料 仕掛品 製品  その他   

国際会計基準の事例
この基準により、たな卸資産について「注記5」でその内容を開示している。また、関連会社に対する投資については、「注記6関連会社に対する投資」として開示している。

資本に関する開示要求事項(貸借対照表本体又は注記)(パラグラフ74)

a. 資本金の種類ごとに
ⅰ.授権株式数    
ⅱ.全額払込済の発行済株式数及び未払込額のある発行済株式数    
ⅲ.1株当たりの額面金額又は無額面の旨    
ⅳ.社外流通株式数の期首と期末の調整    
ⅴ.その種類の株式に付されている権利、優先権及び制限 (配当支払及び資本の払戻しの制限を含む)    
ⅵ.自己株式及び子会社又は関連会社保有の自己株式    
ⅶ.オプション及び売渡契約のための留保株式及びそれらについての契約条件、金額等
b. 株主持分の各種剰余金ごとの内容及び目的
c. 配当が提案されているが正式には承認されていない場合には、負債に含まれて    いる(又は含まれていない)金額
d. 未認識の累積優先配当額
パートナーシップなどのような株主資本のない企業では、上記で要求されたものに相当する情報を、各種の資本持分ごとに期中の変動並びに各種の資本持分に付された権利、優先権及び制限と共に開示しなければならない。


損益計算書の表示

(a) 損益計算書の本体に記載すべき情報(パラグラフ75)

日本の会計
日本の会計と最も異なる点は、特別損益という区分が無いこと、従って、日本の経常損益とは異なる。上記⑦異常損益項目は、日本の特別損益とは異質なもの。2007年の改正で、上記⑦異常損益項目の表示は禁止された。

(b) 損益計算書の本体又は注記のいずれかに記載すべき情報(パラグラフ77)

国際会計基準の事例
一株当たり配当金額は、損益計算書に、IAS33号「一株当たり利益」の開示と併記している。

                                   

株主持分の変動計算書の表示

IAS1号は、株主持分を示す計算書を財務諸表として開示することを要求しており、その計算書には、少なくとも(1)から(3)の事項を含めなければならない(旧パラグラフ86)。
IAS1号新パラグラフ106は、株主持分変動計算書に表示しなければならない事項を列挙している。

IAS1号旧パラグラフ86 IAS1号新パラグラフ106
(1) 当期純利益 (a) 包括利益の合計額を、
会社の所有者と非支配持分へ帰属する合計金額をそれぞれの区分、
(2) 他のIASの規定により、直接に株主持分に計上された収益、利益、損失の各項目、並びに合計
(3) IAS8号「期間損益、重大な誤謬及び会計方針の変更」の標準処理によった場合の会計方針の累積的影響額及び重大な誤謬の訂正 (b) 持分を構成するそれぞれの項目について、IAS8号「会計方針、見積の変更及び誤謬」に従って認識した遡及適用の影響額又は遡及修正額、
また、株主持分を示す計算書の本体又は注記のいずれかに記載すべき事項として次のものを開示しなければならない。 (d) 持分を構成するそれぞれの項目について、期首残高と期末残高の調整として、下記から生じた変動を表示する。
(4) 株主との資本取引及び株主への分配  ()損益
(5) 留保利益(又は繰越損失)の期首残高及び期末残高並びに期中の変動 (ⅱ)包括利益のそれぞれの項目
(6) 各種類別の株式資本、株式プレミアム及び各種剰余金の期首及び期末残高とその間の変動を個別に開示した調整表 (ⅲ)株主からの拠出と株主への分配を別個に示し、かつ、損失とはならない子会社の親会社持分の変動額
IAS32号「金融資産:表示」パラグラフ33では、企業が自社の持分証券を再取得した場合は持分から控除しなければならない。自己株式の取得及び譲渡から損益を発生させてはならない。直接持分で認識しなければならない、としている。

国際会計基準の事例
事例の株主持分計算書は、上記の要件を満たしている。また、「注記11株主持分」として、普通株式の変動内容を開示している。


解説
株主持分には資本金、資本準備金、剰余金の他に、自己株式の控除、連結財務諸表における海外子会社の財務諸表の外貨換算差額、金融商品の時価会計における投資上場株の含み損益などがある。それぞれの項目の増減を開示した計算書を基本財務諸表の一つとしているのである。

日本の会計
日本では、商法及び証券取引法では、資本の部の変動計算書としては、基本財務諸表の一つとなっていない。証券取引法では、剰余金計算書のみが開示を要求されているのみである。

連結財務諸表には、海外子会社の外貨換算調整勘定が資本の部へ計上されるようになったり、金融商品のうち相互持合の株式を時価会計で行い、時価の変動を資本の部に計上されるようになる。また、商法改正により、ストックオプションができるようになり市場から自社株式を購入するが、連結財務諸表では資本の払い戻しとして処理される。資本の部の変動に関する計算書は重要になっている。

キャッシュフロー計算書の表示

キャッシュフロー計算書及びその開示事項は、別途IAS 37号「キャシュフロー計算書」で規定している(パラグラフ90)ため、重複を避け記述していない。

財務諸表の注記

注記の豊富さと、秩序整然と説明する注記は、国際会計基準の特徴である(米国会計基準も同様)。 国際会計基準では、財務諸表といった場合、秩序整然とし豊富な注記を含んで一体となったものをいう。各会計基準に開示要求事項が規定されており、その要求を満たして秩序性全と簡潔に注記を作成する。

パラグラフ92には、次のように記述している。

92. 財務諸表注記は体系的に記載しなければならない。貸借対照表、損益計算書及びキャッシュフロー計算書本体上の各項目には、注記におけるすべての関連情報との参照符号を付さねばならない。
国際会計基準の事例
事例の注記を見ると、「(1)重要な会計方針」から「(18)後発事象」まで連番が付され、貸借対照表、損益計算書の関連する項目に相互関連を明らかにして、読者が理解しやすいようにしている。

会計方針の記載

パラグラフ97には次のように記述している。

97. 財務諸表注記の会計方針の部には、次の事項を記述しなければならない。
(a)財務諸表の作成に当たって使用された測定基準、及び
(b)財務諸表を正しく理解するために必要な個別のそれぞれの会計方針
99. ある特定の会計方針を開示すべきかどうかを決定するに当たって、経営者は開示にあったって、取引や事象が業績や財政状態の報告反映されている方法を利用者が理解するのを助けられるかどうかを検討する。企業が公表を検討するであろう会計方針には次のようなものがある。但し、これらに限定されるわけではない。
(a)収益の認識
(b)連結方針(子会社及び関連会社を含む)
(c)企業結合
(d)ジョイントベンチャー
(e)有計固定資産及び無形固定資産の認識及び償却
(f)借入費用その他の支出の資産化
(g)工事契約
(h)投資不動産
(i)金融商品及び投資
(j)リース
(k)研究開発費
(l)たな卸資産
(m)税金(繰延税金を含む)
(n)引当金
(o)従業員給付コスト
(p)外貨換算及びヘッジ
(q)事業別及び地域別セグメントの定義並びにセグメント間の費用配賦基準
(r)現金及び現金同等物の定義
(s)インフレーション会計、及び
(t)国庫補助金
他の個々の国際会計基準で具体的に開示内容を要求しているので、それに従うことになる。
94. 注記は通常、次の順序で記載され、利用者が財務諸表を理解し、他の企業の財務諸表と比較するのを助けるものである。
(a)IASに準拠している旨の記述
(b)測定の基準及び適用された会計方針の記述
(c)各項目及び各財務諸表の記載順序に従って、各財務諸表の本体の表示科目について説明した情報
(d)その他の開示事項(以下の項目を含む)
 (i)偶発事象、コッミットメント、その他の財務的開示事項、及び
(ⅱ)非財務的開示事項

適用時期

現行のIAS1号(改訂)「財務諸表の表示」は、1997年8月に公表され、それ以前に公表されていたIAS1号「会計方針の開示」5号「財務諸表に開示すべき情報」、13号「流動資産及び流動負債の表示」を整理まとめたもの。改訂IAS1号は、1998年7月1日以後開始する事業年度より適用し早期適用が推奨されている。

日本の会計
IAS1号に相当する日本の会計では、大蔵省令の「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(通称「財務諸表規則)」「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(連結財務諸表規則)」「中間財務諸表等の用語、様式に関する規則(中間財務諸表規則)」に該当する。

企業会計審議会が意見書を作成し、次に日本公認会計士協会が実務指針を作成し、最後に、財務諸表規則等の大蔵省令にまとめられる。前二者は、大蔵省令作成の下請け的存在となっているともいえる、日本独特の会計制度である。相互に内容が重複していたり、内容が欠落していて不明であったり、複雑怪奇な仕組みである。

2003年10月31日、金融庁企業会計審議会が公表の「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」を最後に官による会計基準設定の使命は終わりました。今後は民間の企業会計基準委員会2001年7月民間の会計基準設定主体を創設)が会計基準の開発を行うことになっています(企業会計基準委員会「企業会計基準等」は、金融庁からの補助金がありますが、何故か会員以外には公開していませんし、出版物は「国際会計基準一式(£58.00)」より超高価です)。

なお、2000年7月に内閣府に金融庁が発足し、旧大蔵省の証券取引法等の所管を引継ぎました。上記、大蔵省とあるのは現在は金融庁です。

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記は、概要のみを記述しており実際に適用の場合は、正確を期する為、原文又は翻訳をご覧ください。
国際会計基準に関する支援(英文財務諸表の作成、連結決算支援、教育等)を行っています。
公認会計士 横山明
E-mail: yokoyama-a@hi-ho.ne.jp
TEL:047-346-5214 FAX 047-346-9636