公会計基準
政府部門の会計基準

米国連邦政府の会計基準を中心として
財政改革に不可欠の財政の透明性について
国家・独立行政法人及び自治体の財務情報の開示は、アカンタビリティの実現
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民間部門の会計は下記参照
日本の会計 国際会計基準 国際会計基準と日本の会計の相違点

経済戦略会議の最終報告(1999年2月26日)

1999年2月26日,経済戦略会議(樋口広太郎議長)は、最終報告を小渕首相に最終答申書を提出した。答申の中に、「健全で創造的な社会」の構築とセーフティネットの整備、と題して「1.「小さな政府」へのイニシアティブの中の(3)公会計制度の改善として次ぎのように書かれている。10年経っても遅々として進まない公会計制度である。

経済戦略会議の答申の一部抜粋

2i.1.3   公会計制度の改善

公的部門の効率化・スリム化を進めていく上での大前提として、また、政策の事後評価を行う観点から決算はこれまで以上に重視されるべきであり、中央政府(特殊法人等を含む)及び地方公共団体(外郭団体を含む)のいずれにおいても以下のような方向を基本に会計制度等の抜本的改革を進め、会計財務情報基盤を整備する必要がある。

○ 国民に対して政府及び地方公共団体の財政・資産状況をわかりやすく開示する観点から、企業会計原則の基本的要素を踏まえつつ財務諸表の導入を行うべきである。

○ 具体的には、複式簿記による貸借対照表を作成し、経常的収支と資本的収支を区分する。

○ 公的部門全体としての財務状況を明らかにするため、一般会計、特別会計、特殊法人等を含む外郭団体の会計の連結決算を作成する。

○ 現金主義から発生主義に移行する。

○ 以上の改善を進めるなかで、地方自治体については、全国統一の基準に基づいて財務諸表を作成・公表することにより、各自治体間の比較・評価を可能とすべきである。

○ 決算に関しては、外部監査の導入・拡充を行うとともに徹底した情報開示を行う必要がある。

日本で,初めて公の文書で公会計の必要性を訴えている。この文書が、単に、リポートで終わるのか、現実に改善に向かうかは政治が実行に移すかどうかであるが、実施されていくかどうかは国民の意識が最も重要な要素である。車の通らないところに道を作り、飛行機の飛ばない畑の中に飛行場を作り、金融制度の崩壊を防ぐといって闇の中に公的資金の注入をしてみたり、いつのまにか大きな政府と借金大国になっていた。情報公開が国民の目を開かせる。注視していきたいものである。

独立行政法人の会計基準設定

2000年2月、総務庁(2001年総務省へ統合)は、総務庁に設置された独立行政法人会計基準研究会がまとめた「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」を公表した。日本初の公会計と評価されるが、部分的な会計基準の設定は、独立行政法人への組織改革に伴う、縦割り行政の対処療法と思われても仕方ないものである。独立行政法人は国家行政の一部であり、本来、国家の会計基準に吸収されるべきもので、一報告単位(外部報告あり)であり、連結すれば国家全体の財務報告である。

日本は、国及び地方の長期債務残高は608兆円(平成11年度2次補正後、地方179兆円を含む)、対GDP比122.5%と膨大な借金国に陥っている。巨額な財政赤字を抱える日本政府全体の財務報告は、国民に対して、財政改革を勧める議会及び政府の政策実行責任者に対して開示することで、事実認識を明確にし、経済的で、能率的で、有効な行政サービスを実現するために最低限必要とされよう。行・財政改革の正しい方向性を見出すために透明度の高い基礎情報が必要となろう。

米国も、1980年代、レーガン及びブッシュ元大統領政権下に巨額な財政赤字に悩まされたが、1990年代には、国家の会計基準を設定し国家財政の透明度を高めることによって、クリントン政権下では黒字財政へ転換させた。

米国連邦政府の会計基準は、独立行政法人を含む、連邦行政府の会計のすべてを網羅し、整合性を持って秩序整然と継続して設定及び見直しをしている。(「公表の連邦政府の会計基準書等」参照) 

米国では、地方自治体の会計基準の歴史が長く、1990年代に入って初めて国家の会計基準を設定しているが、本文にもあるように、国家の会計基準は整備されており、同じ行政サービスを行っている自治体の会計基準にも影響を与えている。

日本では、大蔵省が、2000年3月現在で国家の貸借対照表を作成すると伝わっているが、会計基準なしに作成してもその内容の信頼性は無い。何故ならば、何を固定資産とし何を行政サービスの費用とするかを明確に定義付けをしなければ、一行政府の視点の恣意的・政策的なものが反映する可能性があり制度的に信頼性を得ることは困難である(大蔵省の国家「予算・決算」参照)。独立・中立的な機関が国家の総合的会計基準を設定し、国民判断できるだけの分かり易く信頼し得る財務報告(透明度の高い情報公)を基礎に、官僚ではなく国民の代表である議員による政策決定される仕組みが21世紀には必要となろう。そうした意味で、米国の例は参考となろう。


自治省「自治体の貸借対照表作成の全国共通の指針作成」(2000年3月)

2000年3月29日、日本経済新聞によれば、自治省(2001年総務省へ統合)地方自治体向けに貸借対照表を作成する際の指針をまとめた、と報じた。当面は参考資料とし、将来は自治体に作成を義務つける方針。地方の債務残高が過去最悪の約163兆円(1998年度決算)に達するなど財政状況の悪化が一段と進むなか、地方財政の情報開示を促すのが狙い、としている。

不思議な点は、対象が資産や負債、特に債務残高を誇張する貸借対照表(ストック部分)だけなのか、行政サービスの内容開示(フローの部分で、企業にあっては損益計算書に該当)に触れていない。また、日本の場合は、中央、地方というように、国民側(情報利用者)から見れば、地方と中央と統一した会計基準を基礎に、地方、中央政府の連結決算を知りたいところである。特に、最近は地方分権と称して、地方自治体への行政の重要性が高まっているからである。日本の場合は、3割自治といわれるように、中央政府、地方自治体の統一した会計基準が作成しやすい土壌にあるが、縦割り行政の単位で情報開示する部分的な対処療法に止まらせている。政治が公会計基準設定機関を設立しない限りこの問題は放置されたままとなろう。


東京都「機能するバランスシートの中間報告」(2000年5月18日、2003年5月20日)
2000年5月18日、東京都財務局は、「機能するバランスシート」の中間報告(PDFファイルで135ページ)を公表した。これによると、財務諸表を、貸借対照表、キャッシュフロー計算書、行政コスト計算書をいうとして、東京都の財務諸表を公表している。いくつかの貴重な指摘を行っており情報開示の重要性を立証している。

既に公表している、熊本県、藤沢市、三重県、臼杵市、神奈川県、宮城県などの公表した財務諸表の分析も行われ、貴重な資料となっている。いずれも先駆的な知事または市長により財務諸表が公表され高く評価されるものである。しかしながら、課題を残しており、確立した会計基準とはなっていない。更なる研究が望まれる。

特に、行政の貸借対照表では、有形固定資産の貸借対照表能力が問題となる。特に、道路、橋梁、河川、海岸、港湾、漁港ほか市民の生活に欠かせない公共財ないしインフラを有形固定資産として計上し、減価償却をすべきものかどうかである。東京都の場合、これら公共財を行政資産として貸借対照表に計上して債務超過ではないとしている。また、職員等の退職給付については、企業会計審議会の「退職給付債務の会計」を適用すべきであるが、地方自治体のバランスシート作成の初期的段階においては、便宜的な計上基準を採用することも認められる、として、「全職員が自己都合で退職する場合、必要となる退職金の全額を概算で計上した」とある。

過渡的なものとして評価できるが、会計基準の確立については触れていない。

2003年5月20日、東京都は、「東京都の会計制度改革の基本的考え方と今後の方向」をまとめ公会計の確立へ向けて意欲を見せている。
それによると「東京都では、官庁会計による決算方式を補完・改善するため、「機能するバランスシート」を作成し、事業の見直しに積極的に活用してきました。  しかし、普通会計決算の組み替えによる方法には一定の限界があることから、会計処理の段階から複式簿記・発生主義を導入することとし、検討を進めてきました。  このたび、こうした複式簿記・発生主義導入について、「東京都の会計制度改革の基本的考え方の今後の方向」(PDF)として取りまとめましたので、お知らせします。」としている。

2005年8月、東京都は、平成18年4月から、複式簿記・発生主義会計を全ての会計に導入しました
 今回、それに先立ち、この新たな会計制度の内容を明らかにした『東京都の新たな公会計制度』を取りまとめ、その中で、会計制度のルールである「東京都会計基準」を策定しました。 この「東京都会計基準」は、民間企業における会計基準とは異なり、行政の特質を反映した複式簿記・発生主義会計の基準であり、行政が策定するものとしては日本で初めてのものです。

東京都の財務諸表の体系は、貸借対照表、行政コスト計算書、キャッシュ・フロー計算書及びこれらに関連する事項についての附属明細書とする。

東京都会計基準の特色(8頁):
○行政コスト計算書では、民間の損益計算書における「収益」という概念は用いず、収入については、行政サービスの提供に要した費用(コスト)に対する財源として整理した。
○キャッシュ・フロー計算書では、現金収支をその原因に則して直接に記録する「直接法」を採用した。
○行政コスト計算書及びキャッシュ・フロー計算書の勘定科目について、給与関係費や物件費など、都の予算で用いている性質別の科目分類を採用した。
○貸借対照表では、道路や橋梁などの社会資本を、特に「インフラ資産」として区分計上するとともに、「行政財産」や「普通財産」といった地方自治法における財産の分類も採用した


(貸借対照表)
 ・ 「インフラ資産」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・道路や橋梁などを計上
 ・ 「行政財産」、「普通財産」・・・・・・・・・・・・地方自治法における財産の分類を採用
(行政コスト計算書)
 ・ 「地方税」、「国庫支出金」、「扶助費」・・・都で用いている予算科目等の分類を採用
 ・ 「災害復旧費」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・災害復旧に関わる経費を計上  

東京都は国内の自治体で初めて、民間企業と同様に複式簿記・発生主義の基準を取り入れた財務会計システム2006年(平成18年)2月24日に稼働させる。(東京都都知事室 東京都会計基準(2005年8月26日) 「都知事としての一番いい仕事は、会計制度の改革だと思っています--東京都知事・石原慎太郎氏(2007年4月10日日経BP) 参照)

2007年9月14日東京都は全国で初めて複式簿記による記録を行いそれを基礎に東京都初の平成18年度の財務諸表を作成して公表した。これは、石原都知事のコメントに「都の会計制度改革は、知事就任以来の多くの改革の中で最も本質的なものであり、ストックやコストの情報の明確化、事業分析の強化によって、更なる行財政改革に途を拓くものである。  今後、東京から日本を変えるため、“東京発の新たな公会計”を積極的に全国に発信していきたい」として行政改革の大きな一歩を記したものである。


なお、国の場合は、複式簿記の帳簿から省庁別財務書類を作成するには、財政法予算決算及び会計令などの法律改正が必要とされていることから、法律を改正しない限り複式簿記の帳簿は作成されないと考えられている。 

参考ニューヨーク州の年次財務報告書(監査済財務諸表含む)
    ニューヨーク州財務長官(Comptroller)の財政報告書
    ニューヨーク州財務長官(Comptroller)の責任

2006年5月18日総務省は、地方公共団体の会計を整備するためと称して「新地方公会計制度研究会報告書」を公表した。東京都に引きずられた形となった。

79項 地方公共団体の財務書類の体系は、貸借対照表、行政コスト計算書、純資産変動計算書、資金収支計算書及びこれらの財務書類に関連する事項についての附属明細表とする。
80項 財務書類の作成単位は、普通地方公共団体、すなわち都道府県及び市町村とする。

−取り組みが進んでいる団体にはさらなる改善を求めつつ、都道府県、人口3万人以上の都市とともに、3年を目途に、4表の整備ないしは4表作成に必要な情報の提示・開示を求める
まだ取り組みが進んでいない団体にはまず総務省方式での財務諸表作成に踏み出すことを求めつつ、町村、人口3万人未満の都市とともに3年程を準備期間として、4表の整備ないしは4表作成に必要な情報の提示・開示を求める


収益
53. 収益とは、@一会計期間中における活動の成果として、A資産の流入もしくは増加、または負債の減少の形による経済的便益またはサービス提供能力の増加であって、B会計主体の所有者以外との取引その他の事象から生ずる純資産の増加原因をいう。
54. ここでは、税収を主権者としての住民からの拠出と捉えていることから、上記Bの要件に該当せず、収益としては計上されない(むしろ純資産変動計算書上の損益外純資産増加原因として計上される)としている(第67 段落参照)。
55. また、国庫支出金等の受入のうち、資本移転収入(経常費用に対応する経常移転収入に該当しない場合)も、収益としては計上されない(むしろ純資産変動計算書上の損益外純資産増加原因として計上される)点に留意すべきである(第67段落参照)。


総務省の報告書では、税収も国庫支出金等も財源(純資産の増加減少として計上する)であって収益ではないとしている。
東京都が、行政コスト計算書の通常収支の部に税収及び国庫支出金等の受入れを計上するのと異なっている。

後から作成した方が、完成度は高いといえる。多くの議論を重ねることがいかに重要かわかる。ただし、単年度表示で比較財務諸表になっていない点や、双方ともに譲渡不能な(資金化不能で借入金返済の原資にならない)インフラ資産を資産計上しているのは議論の余地が残る。


特殊法人(特別会計)に連結財務諸表を義務付け(2001年春を目指して)
政府・自民党は会計制度と法制の両面から非効率な特殊法人の改革に乗り出す。2001年春をメドに現在38ある特別会計のすべてに「連結財務諸表」の作成を義務づけ特別会計から特殊法人への資金の流れを透明化する。2001年4月から財政投融資改革が始まり、特殊法人が資金調達をするため財投機関債を発行できるようにするためのもの。財政投融資の仕組みは「特殊法人」参照。
自民党は日本公認会計士協会に連結財務諸表のガイドライン作成を要請。2001年春からの各特別会計の適用を目指す、としている(日経00年5月25日)。

財政制度審議会(蔵相の諮問機関)は民間企業に比べ不透明だという批判の強い特殊法人の会計制度の見直し案を固めた。特殊法人に退職給与引当金の計上や子会社との連結会計制度の導入を義務づけ、民間企業に近い情報開示を求める。隠れた国民負担を明らかにするための行政コスト計算書(民間の損益計算書に該当するもの・・下記「米国連邦政府の会計基準」参照)も新たに導入し、政府出資の受入や国有地の無償使用などで生じる国民負担を明示させる。
財政制度審議会は2001年度中にも見直し案を決定し特殊法人改革に繋げる(日本経済新聞社2001年1月6日報道)。

詳細は、財務省の「財政制度等審議会」のホームページで公開されています。

2001年2月
財務省は、財政制度等審議会特殊法人の会計制度の見直しに入った(財務省は、2001年4月に、「情報アクセスガイド」として主要な特殊法人の財務諸表を公開している)。財務省はすでに見直しの方針を固めており、@行政コスト計算書の作成を義務づける、A子会社との連結決算を導入する、B時価評価を採用する、としている。総務庁の独立行政法人の会計基準と類似しており重複する部分が相当あろう。行政部門の会計基準を独立機関が設定すれば良いこと。会計基準を各省庁が作成するのは縦割り行政の弊害で、壮大な無駄と会計基準相互間の整合性を維持するのは至難の技である。

このホームページに紹介した米国連邦政府の会計基準では、エージェンシーを含んでいる。日本も対処療法的・部分的なものではなく、地方を含む政府全体の行政部門の会計基準を設定し統一した基準で財務諸表を作成し透明度を高め、適切な政策実施と、国民に対する説明責任を示すべきであろう。

現在の日本は、地方自治体(総務省)、独立行政法人(総務省)、特殊法人(財務省)、国の貸借対照表(財務省)と縦割り行政の中で、ばらばらに、会計基準の設定者と財務諸表の作成者が同一省庁(経理担当者に会計基準を設定させているようなもの)であって基準の信頼性に疑問が生じてしまうことと、相互に整合性が確保できない、重複した内容の基準を設定して無駄があるなど、どうみても納得のいかないものとなっている。
財務諸表作成者の関連機関から独立・中立した機関が信頼できる「統一した行政部門の会計基準」を設定することが望まれる


独立行政法人会計基準」の改訂について(平成14年7月10日財務省)
「独立行政法人会計基準」の改訂について   平成14年7月10日財務省
○  特殊法人等の会計は、財政制度審議会・公企業会計小委員会が取りまとめた「特殊法人等会計処理基準」(昭和62年10月2日)に拠っている。 他方、既存の独立行政法人の会計は、総務大臣が開催する独立行政法人会計基準研究会が作成した独立行政法人会計基準に拠っている。
○  特殊法人等整理合理化計画(平成13年12月19日 閣議決定)では、特殊法人・認可法人に係る組織見直しの方針の1つとして独立行政法人化が挙げられており、これにより、特殊法人等としてこれまで相当の財政資金を受け入れ、独立行政法人化後も多様な財政資金の受入れが想定される法人が独立行政法人化することになる。
○  このため、従来の特殊法人等会計処理基準との整合性、財政資金受入れと会計処理のあり方等の論点を総合的に検討し、現行の独立行政法人会計基準について改訂する必要がある
○  以上を踏まえ、財政制度等審議会・公企業会計小委員会及び独立行政法人会計基準研究会の共同ワーキング・チームを近日中に立ち上げることとする。
○  共同ワーキング・チームにおいては、本年末を目途に結論を出し、財政制度等審議会・公企業会計小委員会、独立行政法人会計基準研究会にそれぞれ報告する予定。     連絡・問い合わせ先 主計局法規課 


財務省 財政制度等審議会
財政制度等審議会 共同ワーキングチーム 議事録
「特別会計における新たな財務書類の作成に係る中間取りまとめ(試作基準)」
2002年10月30日、財務省 財政制度等審議会は、「特別会計における新たな財務書類の作成に係る中間取りまとめ(試作基準)」を公表し、11月15日までにコメントを求めている

行政部門の会計単位(Accounting entity)の概要は以下の通りである。基本財務諸表は、@行政の業務実施の計算書、つまりフローを示す計算書と、A財政状態を示すストックとしての計算書、及び、Bキャッシュフロー計算書、C説明的注記事項を作成するのが国際的な傾向にある。行政部門の会計基準(適正な財務情報の開示基準)は、一つの独立・中立した常設機関で設定する方向にある。しかしながら、日本は、下記の通り、旧態依然として縦割り行政の中でばらばらであったり重複した会計基準を設定しようとしている。これは資源の無駄と時間の浪費に他ならない。
1.一般会計(国の貸借対照表・・財務省)
2.特別会計(特別会計における新たな財務書類の作成に係る中間取りまとめ(試作基準・・財務省)
3.地方自治体(各都道府県の貸借対照表)
4.独立行政法人(独立行政法人の会計基準・・総務省⇒特殊法人改革に伴い財務省との共同作業中)
5.公社、公団、特殊法人、認可法人(「特殊法人等に係る行政コスト計算書作成指針」・・財務省)
6.行政事務等に関する一部の公益法人(公益法人の会計基準・・総務省)
やっと議論し始めた「公会計の基本」について財政制度等審議会公会計基本小委員会平成15年1月30日
平成15年1月30日(木)、財務省「財政制度等審議会 財政制度分科会 法制・公会計部会 公会計基本小委員会(第1回)」は、初めて公会計の包括的・基本的な議論をし始めた。(第1回)議事要旨 参照 
議論を見ると、財務省主導で臨時的な審議会方式で設定し、欧米のように、腰を据えて会計基準設定のための中立の第三者機関で、かつ、常設機関を設置する意向はないようである。
第一回会議の提出資料等は次の通り。
1. 議  題
(1)公会計基本小委員会の進め方等について
(2)国の財政制度等の概要について
(3)公会計をめぐる主要な論点について
2. 配付資料
資料1公会計基本小委員会における「公会計に関する基本的考え方」の検討について [38KB]
資料2国の財政制度等の概要 [168KB]
資料3国の公会計制度と主な指摘事項 [29KB]
資料4公会計をめぐる主要な論点 [17KB]
公会計基本小委員会 名簿

2003年5月23日財政制度等審議会 財政制度分科会 法制・公会計部会 公会計基本小委員会(第8回) では、海外の公会計基準の調査報告として、国際会計基準の動向、米国、カナダ、英国、ドイツ、フランスの5ヶ国の調査報告がされている。ペースは非常に遅い。
2003年5月30日財政制度等審議会 財政制度分科会 法制・公会計部会 公会計基本小委員会(第9回)では、英国の公会計に影響を与えているニュージーランド、オーストラリアの公会計の調査報告と事務局が海外調査報告のまとめをしている。

財務省・財務総合政策研究所が、平成14年(2002年)9月5日に公表した「我が国の予算・財政システムの透明性〜諸外国との比較の観点から〜」については、公会計を考える上では欠かせない分析です。内容は「我が国の予算・財政システムの透明性 −諸外国との比較の観点から−」にまとめられている。その中に「W.予算・財政システムの透明性の国際比較」 は会計単位を何処まで入れるかを見るのに分かりやすい。

新たな特別会計財務書類について」(財政制度審議会平成15年6月30日)
平成15年6月30日(月)、財務省、財政制度等審議会は、 財政制度分科会 三部会合同会議を開催して、国の「特別会計の財務書類作成基準」を公表した。 この会計基準では、国際基準で当たり前の比較財務諸表の作成を日本で初めて求めており、民間の企業会計原則に先行している。特別会計の財務諸表についても、英米の公会計と一致はしていないが近いものになってきている。

1.議  題
(1)公会計基本小委員会及び公企業会計小委員会からの報告・とりまとめ
(2)「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」について
(3)予算執行調査について
(4)第2回地方公聴会の報告
2.配付資料
資料1−1公会計に関する基本的考え方 83KB
資料1−2公会計の充実について 13KB
資料2−1新たな特別会計財務書類について 469KB
資料2−2新たな特別会計財務書類の作成基準の概要 11KB
資料3−1「独立行政法人に対する会計監査人の監査に係る報告書」の改訂について
資料3−2独立行政法人の監査基準の概要
資料4−1「平成16年度予算編成の基本的考え方」と「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」 302KB
資料4−2「国と地方」の改革関係 30KB
資料5−1予算執行調査(51)事業一覧等について 11KB
資料5−2予算執行調査資料 1.1MB
資料6−1財政制度等審議会財政制度分科会地方公聴会(議事要旨) 18KB[第2回仙台市]
資料6−2財政制度等審議会財政制度分科会地方公聴会(アンケート結果)[第2回仙台市] 61KB
(注)   独立行政法人の監査基準の改訂については、総務省の独立行政法人会計基準研究会と共同で検討を行っているため、総務省の独立行政法人会計基準研究会での報告・了承後に公表することとなります。

新たな特別会計財務書類作成基準」の抜粋
各特別会計の新たな特別会計財務書類の開示状況 (平成15年8月1日現在)

2.新たな特別会計財務書類の体系等
○ 体系
ストックについて貸借対照表、フローについて業務費用・財源計算書及び区分 別収支計算書の3種類の財務書類とし、これらの附属明細書を作成。 連結対象法人を有する特別会計においては、連結財務書類を作成。

貸借対照表の区分 「資産の部」、「負債の部」及び「資産・負債差額の部」に区分
資産・負債差額
資産と負債の差額については、企業会計における資本の部と同様の性格付け を与えることは適切ではないことから、「資産・負債差額の部」として整理。 その内訳として、資金(積立金)、資産評価差額等を表示。

4.業務費用・財源計算書
○ 作成目的
特別会計は営利を目的とせず、また、企業会計でいう費用・収益の対応関係が なく、損益計算書を作成することが適切でないため、当該年度に発生した業務 費用の総額とその財源を明らかにすることを目的として作成。

〇 業務費用
特別会計の業務実施に伴い発生した費用を発生主義で計上。

〇 財源
特別会計が業務実施のために当該年度に受け入れた財源を、「対価見合収入 等」、「目的税収入等」及び「他会計からの受入」に区分して表示。

変更点
平成15年11月28日財政制度等審議会 財政制度分科会 法制・公会計部会 公会計基本小委員会及び公企業会計小委員会合同会議 の提出資料「省庁別財務書類作成における主要な論点等について」によれば、業務費用・財源計算書は、業務費用計算書資産・負債差額増減計算書にする、とあります。理由は、次のように記しています。結果として財務諸表の体系は米国同様となります。

省庁別財務書類の体系
  「新たな特別会計財務書類の作成基準」においては、貸借対照表、業務費用・ 財源計算書及び区分別収支計算書が作成されている。 この業務費用・財源計算書においては、発生ベースの業務費用と現金ベースの 財源から計算される差額に積極的な意味がなく、財源部分において区分別収支計 算書と同様の情報が開示される。また、一般会計においては、各省庁の財源の大 半が財務省からの調整財源であり、段階的な財源の表示が困難であることから、 業務費用・財源計算書を作成することは適当でないと考えた。 このため、省庁別財務書類においては、コスト計算書と財源等に関する計算書 を分割することが適切であると考え、貸借対照表、業務費用計算書資産・負債 差額増減計算書及び区分別収支計算書の4財務書類を作成することとした。』

「省庁別財務書類」の作成
平成15年9月5日、財政制度等審議会 財政制度分科会 法制・公会計部会 公会計基本小委員会及び公企業会計小委員会合同会議 の提出資料(資料1公会計基本小委員会及び公企業会計小委員会の今後の進め方等について 資料2省庁別財務書類について)よれば、省庁別の連結財務諸表を作成する。特殊法人等の主務官庁においては、「省庁別財務書類試作基準」に基づき、特殊法人等と連結した「連結省庁別財務書類」を作成する、とある。
一般会計
省庁別財務書類 -



-

-
特別会計
連結省庁別財務書類
特殊法人等の行政コスト計算財務書類
独立行政法人の財務諸表
「(注)一般会計および特別会計を合算したものが省庁別財務書類であり、これに一般会計単体の財務書類及び連結財務書類が添付(該当ある省庁)されることになると考えている。」とある。

既に作成されている「独立行政法人の会計基準」とは、財務諸表の体系等に関し整合性が無く将来整合性を求める声が出よう。そのときは、独立行政法通則法の計算書類の体系も整合性が求められよう。

財政制度等審議会 財政制度分科会 法制・公会計部会 公会計基本小委員会及び公企業会計小委員会合同会議 は、平成15年(2003年)12月12日、次の二つの資料を公表。
資料1 省庁別財務書類の試作基準について(概要) 13KB
資料2 省庁別財務書類の試作基準について 312KB
それによれば、
「財務書類の体系・様式
一般会計においては、特別会計と異なり、業務とは対価関係が明確でない租税収入 等を財源として業務実施が行われていることから、一般会計のフローの計算書の体系 及び様式について検討を行った。省庁別財務書類の体系としては、特別会計の3財務 書類(貸借対照表、業務費用・財源計算書及び区分別収支計算書)の体系とは異なり、 貸借対照表、業務費用計算書、資産・負債差額増減計算書及び区分別収支計算書の4 財務書類とすることとし、また、様式についても一般会計の特性を踏まえたものとし た。」として特別会計とは異なる財務諸表の体系としている。

特別会計を一般会計と一致できるし、独立行政法人、特殊法人の同様である。創るたびに異なっている公会計。ばらばらの公会計を、公会計として一つに統合すべきである。

平成16年6月17日財政制度等審議会は、「省庁別財務書類の作成について」を公表した。財務諸表の体系は、貸借対照表、業務費用計算書、資産・負債差額増減計算書、区分別収支計算書で統一されることとなった。平成15年度からの適用としている。(「財 政 制 度 等 審 議 会 財政制度分科会 法制・公会計部会 記者会見 」参照)
比較財務諸表を明確に求めており、民間の商法および証券取引法会計より進んでいるところもある。
 
表紙 報告文 前文 目次
省庁別財務書類の作成基準 貸借対照表、業務費用計算書、資産・負債差額増減計算書、区分別収支計算書
一般会計財務書類の作成基準 貸借対照表、業務費用計算書、資産・負債差額増減計算書、区分別収支計算書
特別会計財務書類の作成基準 貸借対照表、業務費用計算書、資産・負債差額増減計算書、区分別収支計算書
補論
名簿 審議経過
全文PDF 参照

2004年10月5日、財務省は「平成14年省庁別財務書類(平成15年3月終了する年度)」を公表した。

本報告を受けて、以下のとおり平成14年度の財務書類を作成しましたので、公表いたします。

なお、交付税及び譲与税配付金特別会計は、総務省のホームページに、電源開発促進対策特別会計及び石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計は、経済産業省のホームページに掲載されております。

2005年9月26日、財務省は、「平成15年度の国の財務書類」を公表した。

国の財務書類(全体版) [PDF] 681KB
  T 国の財務書類(一般会計・特別会計) [PDF] 373KB
  U 一般会計財務書類 [PDF] 226KB
  V 連結財務書類 [PDF] 114KB

2006年8月25日、財務省は、「平成16年度の国の財務諸表」を公表した。多少進歩している。
連結貸借対照表の総資産838兆円に対し289兆円(34%)の貸付金の内容が開示されていませんので不明。連結を単に合算・連結修正するだけと捉えており、連結後の勘定の内容を単体決算と同じように開示しようとしてはいない。連結決算を勘違いしているようです。連結前の数値275兆円では40ページに「貸付金の主な明細」に地方公共団体に71兆円、住宅金融公庫51兆円、日本郵政公社38兆円等が示されているが、主な相手先が連結対象でありながら消去漏れ?なのか不明。
夕張市の借金を考えると、地方公共団体の財務諸表と連結して地方を含めた国・地方の連結財務諸表が望まれる。

国の貸借対照表作成(その実態は財産目録)

2000年10月10日、大蔵省は「国の貸借対照表(試案)」「国の貸借対照表作成の基本的考え方」を公表した。
2001年9月14日、財務省は「国の貸借対照表(試案)平成11年度・2000年3月末」を公表した。2003年9月26日、財政制度等審議会提出資料として「国の貸借対照表(試案)平成13年度版」(2002年3月末)」を提出した。国の貸借対照表(平成14年度版) 微調整はあるものの主要な見直しはない。ちなみに、国際基準によれば、報告期限は6ヶ月以内でなければ財務情報の有用性は著しく減退するとしており、早期の公表が望まれる。2005年9月26日、財務省は、「平成15年度の国の財務書類」、2006年8月「平成16年度の国の財務書類」を公表した。(財務省「予算・決算」参照・・いつまでたっても監査報告書がなく、公表日も明らかでない)

(1)大蔵省の政策意図が強く表れている。米国、ニュージーランド、オーストラリアが計上していない公的年金についての負債を試算し貸借対照表合計30ページのうち13ページを公的年金について記載している。

(2)公共用財産(公園を除く)の土地・施設は、取得価額不明のものが多く事業費を累計したり時価で測定している。米国は、インフラ資産や次世代へ引き継ぐ国家遺産は譲渡できないもの(資金化できないもの)は行政コストとして貸借対照表に計上していない。

(3)有価証券は時価評価であるが、取得価額(資金の流出)と時価のそれぞれを開示するか含み損益を開示していないので不明。

(4)地方自治体及び特殊法人に対する貸付金及び投資が帳簿価額で計上されており、自治体及び特殊法人を連結してみないと総資産及び総負債の正しい数値は捉えられない。

(5)財政当局者に財務諸表の作成方法等を担当させるのは無理がある。適正な財務諸表をつくるには、米国のように財務省とは独立した機関が「連邦政府の会計基準」を設定しないかぎり適正な財務諸表は望めない。(未だ公会計の「統一基準」はない・・「財政制度審議会」参照・・ほとんどやる気を感じない)

なお、上記の「国の貸借対照表(試案)」が公表されて1ヶ月後、2000年11月9日、衆議院決算行政監視委員会が開かれ、その中で国の貸借対照表についての質疑応答が行われています。衆議院TV(http://www.shugiintv.go.jp/top.html)から「ビデオライブラリ」をクリックして決算行政監視委員会での宮沢大蔵大臣及び大蔵省と自民党・公明党・民主党議員の質疑応答がビデオで見ることができます。ビデオは、冒頭から37分中本太衛自民党議員、50分から谷口隆義公明党議員、1時間8分から18分石井紘基民主党議員の質疑です。なお、会議録は後日衆議院のホームページ上に掲載されるそうです。

国、地方自治体、特殊法人がばらばらな設定主体で会計基準を作成?
2000年10月13日、財政制度審議(大蔵大臣の諮問機関)は、国の特殊法人などに民間企業の会計原則に沿った財務諸表の導入を検討することを決定し、公企業会計部会を設置する。2001年の秋をメドに報告書を作成する(日本経済新聞10月14日)。

2000年3月、自治省は、自治体向けにバランスシートの作成指針を公表した。3299の自治体を対象としている。すでに作成済みは73、作成中は913、検討中は1730となっており、作成に前向きな自治体は82.3%に達した(日本経済新聞10月13日)。

国、特殊法人、地方自治体それぞればらばらに貸借対照表の作成基準を作成している。特徴は、縦割り行政で作成当局自身が作成基準を作ろうというもの。なぜ、独立した機関が統一した行政部門の会計基準を作成できないのであろうか。それぞれが作成していっては、重複する時間とコストの無駄ではないか。また、将来改善するためにj改正する場合、相互に整合性をとるのに機動的ではないし構造的に調整が難しくなる。なにより、作成当局が基準を作成すること自体、政策等の意思が反映し信頼できるものはできない。

下記の通り、平成13(2001)年度末で国地方の長期債務は、675兆円(予算ベースでは666兆円であった。14年度末では693兆円と実にGDPの約140%になるとしている。加えて、2001年4月から、公庫、公団、特殊法人等が独自に資金調達するために財投機関債を発行することが原則となったが、発行できない場合は、財政投融資資金特別会計から財投債(国債)を発行して、特殊法人等へ貸付けるとしており、これによる国債が平成13年度末で44兆円、14年度末で78兆円の残高となるとしている。

○国及び地方の長期債務残高(平成17年3月) ⇒何故か短期は含みません。
(単位:兆円)
3 年度末
(1991 年度末)
<実績>
8 年度末
(1996年度末)
<実績>
11年度末
(1999年度末)
<実績>
14年度末
(2002年度末)
<実績>
17年度末
(2005年度末)
<予算>
209 程度 325 程度 449 程度 536程度 602程度
普通国債残高 172 程度 245 程度 332 程度 421程度 538程度
地方 70 程度 139 程度 174 程度 193程度 205程度
国と地方の重複分 ▲1 程度 ▲14 程度 ▲22 程度 ▲31 程度 ▲34程度
国・地方合計 278 程度 449 程度 600 程度 698程度 774程度
対GDP 比 58.6 % 87.2 % 116.9 % 140.3% 151.2%

出所:財務省(旧大蔵省)の「予算・決算」のサイトより

国と地方の借金である「長期債務残高」は、平成14年度末には約698兆円にも。「国及び地方の長期債務残高」参照  国の短期債務は100兆円(一般会計は約80兆円)を超える。短期債務を加えるともっとひどくなる。
短期債務を含む国の「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(2011年(平成23年)3月末現在地方を含んでいない)」を見ると、いつの間にか国だけで924兆円の借金となっている。地方を含めると1千兆円を超えているものと予測させる。GDPが約5百兆円ですからGDPの約2倍である。
財政関係諸資料平成17年3月」「財政事情の国際比較」参照
日本のGDP統計資料」(内閣府 経済社会総合研究所公表)参照
参考:「米国連邦政府の借入債務」参照⇒米国は、長期に限定せず短期借入を含めて開示している。

国・地方の借金、政府短期証券含めれば1000兆円超に(2005年度末)
財務省は2005年3月22日の参院財政金融委員会で、2005年度末の国と地方の借金総額が1093兆円になるとの見通しを明らかにした。同省は期間1年を超す長期の債務残高は計774兆円になると説明していたが、政府短期証券(FB)など短期の債務や原則として返済に税金を充てない財政投融資債は含んでいなかった。

 上田勇財務副大臣が民主党の富岡由紀夫氏の質問に答えた。国の借金の総額は888兆円、地方は205兆円。国と地方で重複している借金34兆円を除いても1000兆円を超えており、国内総生産(GDP)の二倍の規模になる。 日本経済新聞2005年3月22日(23:00)
国の借金残高の対GDP比国際比較・・・日本は最悪の170%(2005年末)
下記図表は、我が国の財政事情について平成17年度予算政府案に関連するデータについての資料集)より
元資料は、「OECDのEconomic Outlook 76 Dec 2004」159ページ参照/合計237ページ
OECDの政府債務対GDPの国際比較・・日本だけ2010年の統計数値が空欄となっている。

ここに紹介する米国連邦政府の会計基準は、予算・決算とは独立した機関が「連邦政府の会計基準」を設定しておりこれに基づいて決算をし、会計検査院等が監査を行う仕組みとなっている。まず、会計基準の設定と、会計基準に準拠して作成された財務報告が必要なのではないだろうか。

物価連動国債・・財務省設計・・国策的会計基準設定か?

財務省は、「物価連動国債」の商品設計を行い、企業会計基準委員会に会計処理基準の設定を依頼した。国債売出し消化のための国策的会計基準を設定か?

現在の物価連動債の会計処理は、デリバティブ取引が組み込まれた利付国債(複合金融商品)に該当することから、組み込みデリバティブ部分または当該金融商品全体を時価評価した上で、評価差額を当期の損益に計上する必要がある。こうした会計処理が投資家の物価連動国債投資を慎重にしているとの指摘があり、財務省の要請を受けて、同専門委員会で見直しの議論が重ねられている。

2006年1月12日の専門委員会で示された適用指針の公開草案(案)では、これまでの議論を踏まえ、物価連動国債について、組み込みデリバティブの経済的性格およびリスクは現物の金融資産・負債と緊密な関係にあると判断し、過去の消費者物価指数の動向などから、「一般に組み込みデリバティブのリスクが当初元本に及ぶ可能性は低い」と位置づけている。

これに伴い、物価連動国債の区分処理または全体を時価評価し、評価差額を当期の損益に計上する必要はなくなるが、適用指針の公開草案(案)では「(物価連動国債を)一体として処理する場合において、その他有価証券としたときには、他の債券と同様に、まず償却原価法を適用し、その上で償却原価と時価との差額を評価差額として処理する」としている。なお、満期保有目的債券への計上はできない。

また、同指針の適用時期については「2006年4月1日以降開始する事業年度」としながらも、「2006年3月31日以前に終了する事業年度から適用することができる」とし、早期適用が可能となる方向だ。(朝日新聞2006年1月13日

2006年3月30日企業会計基準委員会は、「企業会計基準適用指針第12号その他の複合金融商品(払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品)に関する会計処理」を公表した。
内容は、財務省の意向に沿ったもので、時価の変動による評価差額は当期の損益に反映させないことし(3項、[設例2] 物価連動国債における償却原価法の適用」参照)、米国同様、資本の部(純資産の部)の「その他有価証券評価差額金」に計上することとした。

財務省は、欧米諸国が物価連動国債を発行している、としている。
日本では、2004年2月26日(10年もの1千億円)を初めとして、2004.5.27(3千億円)2004.11.30(5千億円)2005.5.31(5千億円)2005.8.30(5千億円)2005.11.29(5千億円)を発行しているとしている(国債の発行予定額等 参照)。
日本銀行のリポート」 「財務省・・最近の国債市場の状況等について意見交換」参照
仕組債→野村證券の説明・・みずほインベスター証券の説明・・株用語集の説明・・その他の複合商品の会計基準・・PWCの金融商品会計基準

参考;
カナダではReal Return Bonds (RRBs)・・デフレでは元本保証されない。 「税務上の取り扱い
アメリカではUS Treasury Inflation-Protected Securities (TIPS) ・・元本保証。「税法規定
 「物価連動国債ファンドの年次報告書the Annual Report for the American AAdvantage Treasury Inflation Protected Securities Fund for the period from June 30, 2004 (inception of the Fund) through December 31, 2004”.」・・米国会計基準による適正意見(監査報告書)が添付され、物価変動国債の米国会計基準による会計処理、税法の取り扱いを開示している。物価連動国債の取得価額と公正価値の評価差額は未実現損益として資本の部(純資産 Net assets)に区分経理している。単純で常識的な会計処理である。
ニューヨーク証券取引所に上場したWestern Asset/Claymore米国物価連動国債のファンド・・SEC登録の年次報告書
イギリスではUK Index-Linked Gilts
物価連動債を発行した国および年度・・日本は2004年に発行し最新の発行国

日本の物価連動国債ファンド
DKA 物価連動国債ファンド上記米国のような年次報告書の開示はない
(「DKA物価連動国債ファンド目論見書2005年12月」・・証券取引法13条に基づく)

ライブドア
でマネーライフ社買収で問題になった「投資事業組合」は多くのファンドに利用されているが、投資事業組合は民法の規定で設立できる「任意組合」で情報開示が議論された記憶はない。当然、日本には、上記米国のようなファンド自体の充実した情報開示はない

いわゆるファンドについて(ファンド投資に関する注意)・・by金融庁の解説
投資事業組合の歴史と発展の方策
by経済産業省
が金融庁の金融審議会に提出した資料(2003年11月)。
投資事業有限責任組合契約に関する法律(ファンド法)についてby経済産業政策局産業組織課(2004年12月)
投資事業有限責任組合契約に関する法律(2005年6月1日)・・公募を除いて、情報開示は求められていない(第8条)。

平成16年12月1日付で改正証券取引法(本年6月2日成立)が施行され、ファンドへの横断的な投資家保護ルールが導入された。ファンド(有限責任組合のほか、海外のリミティッド・パートナーシップ、投資事業を営む民法組合や匿名組合※を含む。)の持分を、証取法上の有価証券とみなして、投資家保護ルールを適用することとなる。
したがって、ファンドへの出資を公募する場合適格機関投資家以外の一般投資家を50名以上募集する場合など)には、有価証券届出書を提出するとともに、有価証券報告書によってファンドの財務内容などの重要情報を継続的に開示することになります

例:三井・住友・ニュー・チャイナ・ファンドでは、有価証券届出書には監査報告書を添付している旨記載あり。米国のように何故添付しておかないのであろう?。「目論見書」参照・・・純資産変動計算書が添付されていないことや、財務情報の注記が貧弱で判りにくい。

資産債務改革においても公会計の活用が必要

2006年12月25日経済財政諮問会議資産債務改革の実行等に関する専門調査会は、9月22日にまとめた「資産債務等専門調査会報告(中間整理)」において公会計について次のことを検討するとしている。

現在、一定の公会計基準は出そろい、財務書類の整備についても従来と比べれば格段に進展した。国及び地方がこれらの面でさらに必要な努力を行うべきことは言うまでもないが、現在残された最大の課題は、作成された財務書類を如何に活用するかという点にあると言えよう。裏腹の問題として、何のために作成するのかという点について政策責任者や作成当事者の意識が希薄であるならば、財政状況に関する説明責任の履行や財政活動の効率化を目的として多大な行政コストを投下して作成された財務書類が「作りっぱなし」のものとなってしまいかねない。

課題として下記の事項を報告している。
・さらに、公会計改革の進展の結果として、国と地方の公会計基準の統一化がなされることが望ましい
・財務書類の信頼性を担保する観点から、公会計における財務書類の監査(検査)の在り方についても検討し、2年を目途に結論を得ることとすべきである。
財務書類の「評価」と予算編成等への活用
公会計の財務書類作成プロセスのシステム化の2年内の検討(予算を含む)

進み方はのろいが、かなり突っ込んだ内容となりつつある。

ばらばらの日本の公会計(・・国家の連結財務諸表を視野に入れるべき)

2000年10月、国の貸借対照表が公表され多くの批判を浴びた。貸借対照表には公社、公団、特殊法人等への出資金、貸付金、地方公共団体への貸付金がそのまま計上されており、特殊法人独立行政法人、地方自治体を連結してみないと行政部門の実態は把握できないというものである。臨時に作成するのではなく、毎年定期的に公開すべきとしている。

国が公表すべき財務諸表は、ストックの部分の貸借対照表だけではなく、フローの部分(民間企業の損益計算書で、公会計では行政サービス実施コスト計算書という)も開示すべきとの指摘もある。当然連結ベースのものである。

最終的には、国家の財務諸表の輪郭を明示することで、特殊法人、独立行政法人、地方自治体の財務諸表の体系が統一されることになる。

ところが現状は、国家の会計基準が存在しないところで、上記のように縦割り行政の中で主務官庁が、地方自治体、独立行政法人、特殊法人等の経理処理基準が相互に整合性無く作成されている状況にある。

出展「公会計基準等の整備状況 中央省庁の基準 独立行政法人の基準 特殊法人
認可法人
公益法人の基準 地方公共団体の基準
主務官庁 財務省主計局 総務省行政管理局 財務省主計局 内閣官房副長官補室
総務省大臣官房管理室
総務省自治財政局


例えば、比較的最近作成され2001年4月から適用の「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」では、帳簿は複式簿記で記録し貸借対照表と損益計算書を作成するが、加えて「行政サービス実施コスト計算書」の作成を要求している。

「行政サービス実施コスト計算書」には減価償却のうちで費用に計上されない損益外減価償却、独立行政法人が負担しない部分の将来の退職手当の増加見込み額、無償使用の資産についての使用料相当額、あるいは施設費等を源泉とする資本的支出に関わる機械原価等、こういったものを包含した独立行政法人の業務運営コストというものを算定・開示したわけです(財政制度審議会・会田一雄委員発言)。つまり、「行政サービス実施コスト計算書」には、帳簿に記録されない数値を開示するというものである。

通常の公会計では、フローの部分を民間企業の損益計算書に代えて「行政サービス実施コスト計算書」とし、費用等の計上は複式簿記により相手勘定は必ず資産の減少か負債も増加として完結させるのが常識である。独立行政法人の作成する損益計算書と「行政サービス実施コスト計算書」はフローに関して二つの異なる情報開示は奇妙である。また、「運営経費として国から交付される資金から非償却資産を取得した場合は収益ではなく資本としてとらえています(財政制度審議会・会田一雄委員発言)」としている。そうであるとすると、資金の出し手である国側も出資金(投資)として会計処理しなければ将来国家全体の連結財務諸表を作成するうえで投資と資本の消去ができなくなる。

早急に、行政府の会計の目的を明らかにし国家の財務諸表の体系を明らかにして整合性ある財務情報の開示をしなければ、信頼できる分かりやすい有効な情報開示は期待できないであろう。複雑な行政府の財務情報の作成・開示の基準を設定するためには、米国のように専門家を中心とした独立した常設の行政府の会計基準設定主体を設置する必要があろう

平成15年(2003年)財務省財政制度等審議会は「公会計に関する基本的考え方」公表したが一向に進む気配がない。ほとんどやる気が感じられない。

公会計改革はなぜ必要か―財政制度審議会「公会計に関する基本的考え方」を読んで―」by元会計検査院委員長金子晃氏(慶応大学教授)
筆者は、昨年7 月30 日まで会計検査院検査官および院長として5 年間にわたり公会計の検査の指揮に当たってきた。審議経過に目を通し筆者が一番興味を持ったのは第13 回委員会議事要旨の5議事経過(3)「公会計に関する基本的考え方」の取りまとめを終えての感想として、以下の通り、フリーディスカッションが行われた」の部分である。各委員(名前は出されていない)の考え方や感想が生々しく述べられている。また議論の展開および事務局による取りまとめの方向性がなんとなく見えてくる。筆者は今回の報告書に感じた違和感を納得すると同時に、公会計の本当の改革が近い将来に実現する可能性が低いことに失望感を感じざるを得ない。・・筆者の見解は正しい。2012年になっても実現せず姿かたちがない。会計検査院の委員長も以後総務省と財務省の官僚出身者で2年の短期で交代している。

2006年6月13日、財政制度等審議会、財政制度分科会 法制・公会計部会の記者会見には、東京都が複式簿記の記録に22億円計上し、国としてはどのくらいの予算を計上するか興味のあるところの様子を語っている。また、売却予定のない公共資産を計上してあることなど問題点を指摘している。

2006年6月14日、財政制度等審議会は、「公会計整備の一層の推進に向けて〜中間取りまとめ〜」を公表した。平成15年度の国の財務書類について「資料17・・国と地方公共団体の財務書類の比較」、「資料21・・公的年金の負債計上を取りやめた」ことについて説明があり、歩みは遅いものの、かつ、財務省財政制度等審議会のホームページは分かり難いものの少しは進歩しているようである。

2006年7月3日、総務省は、「地方分権21世紀ビジョン懇談会報告書(抄)」に「A地方公会計改革(地方の資産・債務管理改革)国の財務書類作成基準に準拠した財務情報を、今後3年程度で、全自治体が公開すべきである。これにより、各自治体の年々の予算・決算(フロー)と資産・債務(ストック)の現状が透明かつ比較可能となる。」として、地方公共団体に国の財務書類に準拠した財務情報を作成させる方針を示した。⇒「地方公共団体の会計」へ収斂中

国際会計士連盟(IFAC)が政府部門の会計基準を公表

2000年5月、国際会計士連盟(International Federation of Accountants, IFAC・・151カ国の会計士団体で構成)は、政府部門委員会(Public Sector CommitteePSC)において、国、自治体、政府の特殊法人に関する国際会計基準(International Public Sector Accounting Standards, IPSASs1号から8号と二つのガイドラインを公表)を公表した。以後、継続してIPSASを開発し続けている。

2001年11月のIFACの総会で、国際監査・保証基準や政府部門の会計基準を設定する組織として「国際監査及び保証基準審議会(Inetrnational Auditing and Assurance Standards Board, IAASB)」を立ち上げることを決議し、そこで設定した基準等は、2003年1月1日より無料公表されています。(Bookstore 参照)

2003年(平成15年)5月23日(金)、日本の公会計基準を検討している財務省の財政制度等審議会 財政制度分科会 法制・公会計部会 公会計基本小委員会(第8回) 議事要旨」 によれば、「日本は、PSCに委員として出た実績がない。近い将来参加することを希望するが、今のところ関与していない。」とし、日本の会計士を委員に送りこむ予定にしているそうだ。

2006年3月、国際会計士連盟(IFAC)が開発した国際公会計基準(IPSASs)を適用している国または準拠している国を調査した結果を公表しているが、日本は含まれていない。ちなみに、発生主義会計を行っており、広い範囲でIPSASsに一致している国は、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国および米国としている。

公表された政府部門の会計基準(IPSASs)、ガイドライン及び研究内容は、次の通りである。この会計基準の体系は、表題から見られるように、国際会計基準(IFRS/IAS)を元にしており、それぞれの会計基準は”国際会計基準”に対応する。国際会計基準は、適正開示(fair presentation)を目的として内容的にも政府部門特有のもの以外は国際公会計基準もIFRSにコンバージェンスと一致させている。(IAS Plus 参照)

2009年10月30日、日本公認会計士協会は、「国際公会計基準(IPSAS)の翻訳完了について」を公表し、一部であるが日本語でも読めるようにWeb上でダウンロードできるようにした。これで判るように、IFRSを基礎に設定されており近似している。日本の「企業会計原則」とは異質なもの。

会計基準番号 会計基準の表題 基礎になった
国際会計基準
IPSAS1号 財務諸表の表示

パラグラフ21には、財務諸表の構成(基本財務諸表)は、下記のもので構成する、としている。
21. A complete set of financial statements comprises:
(a) A statement of financial position (財政状態の計算書、いわゆる貸借対照表);
(b) A statement of financial performance (財務業績計算書);
(c) A statement of changes in net assets/equity (純資産/持分変動の計算書);
(d) A cash flow statement (キャッシュ・フロー計算書);
(e) When the entity makes publicly available its approved budget, a comparison of budget and actual amounts either as a separate additional financial statement or as a budget column in the financial statements; and (主体が承認された予算を公表している場合、別個の独立した財務諸表によるか、または、財務諸表の中に予算の欄を設けることによる予算と実績との比較)
(f) Notes,comprising a summary of significant accounting policies and other explanatery notes (重要な会計方針の要約及びその他の説明を行う注記で構成される注記).
IAS1号
IPSAS2号 キャッシュ・フロー計算書 IAS7号
IPSAS3号 会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬 IAS8号
IPSAS4号 外国為替レート変動の影響 IAS21号
IPSAS5号 借入コスト IAS23号
IPSAS6号 連結財務諸表と支配している機関の会計 IAS27号
IPSAS7号 関係会社への投資の会計 IAS28号
IPSAS8号 ジョイントベンチャーに対する持分の財務報告 IAS31号
IPSAS9号 交換取引からの収入 IAS18号
IPSAS10号 ハイパーインフレーションの経済における財務報告 IAS29号
IPSAS11号 工事契約 IAS11号
IPSAS12号 たな卸資産 IAS2号
IPSAS13号 リース IAS17号
IPSAS14号 後発事象 IAS10号
IPSAS15号 金融商品:開示及び表示・・IPSAS28号及び30号によって廃止 廃止
IPSAS16号 投資不動産 IAS40号
IPSAS17号 有形固定資産 IAS16号
IPSAS18号 セグメント報告 IAS14号
IPSAS19号 引当金、偶発債務及び偶発資産 IAS37号
IPSAS20号 関連当事者の開示 IAS24号
IPSAS21号 キャッシュを生成しない資産の減損 IAS36号
IPSAS22号 一般会計の財務情報の開示 N/A
IPSAS23号 交換取引でない収入(税金および交付金) N/A
IPSAS24号 財務諸表に予算情報の開示 N/A
IPSAS25号 従業員給付 IAS19号
IPSAS26号 キャッシュを生成する資産の減損 IAS36号
IPSAS27号 農業 IAS41号
IPSAS28号 金融商品:表示 IAS32号
IPSAS29号 金融商品:認識と測定 IAS39号
IPSAS30号 金融商品:開示 IFRS7号
IPSAS31号 無形固定資産 IAS38号
IPSAS32号 サービス委譲契約:委譲者 IFRIC12号
ガイドラインNo ガイドラインの内容
No.2 政府事業体の財務報告の監査における国際監査基準の適用
研究No 研究内容
研究11号 政府の財務報告(米国、カナダ、フランス、ニュジーランド等の政府の財務諸表研究等)

参考:「国際公会計基準と米国の公会計基準の現状に関する調査」by特別研究官 川村 義則(早稲田大学商学学術院教授)、会計検査院調査課 副長 青木 孝浩平成22 年3 月


英語以外の言語へ翻訳

2002年8月22日、政府部門の国際会計基準(IPSAS)を開発している国際会計士連盟(IFAC)の政府部門委員会(PSC)は、国際会計審議会(IASB)の協力を得て、政府部門の国際会計基準(IPSAS)をフランス語、スペイン語など英語以外の国々の言葉に翻訳することで合意した。2003年第一四半期には、各国語の翻訳版を入手できるようにしたいとしている。(IASBのニュース 参照)

日本銀行金融研究所/ 金融研究/ 2003.3として、古市峰子女史が「国際会計士連盟による国際公会計基準(IPSAS)の策定プロジェクトについて」を著しています。

IFAC2008年年次報告書は国際公会計基準(IPSAS)で作成

国際会計士連盟IFAC2008年年次報告書の財務諸表は、政府部門の会計基準(IPSAS)に準拠して作成し、IPSASに定めのない部分については国際会計基準(IFRS/IAS)に準拠して作成した、としている。

興味深い点は、@国際公会計基準(IPSAS)に準拠して作成した財務諸表は世界で初めてではないか、A2001年は国際会計基準(IFRS/IAS)で作成していたが2002年から政府部門の会計基準(IPSAS)に変更した点である。

なお、IFACはスイス市民法(Swiss Civil Code)60条から79条によってジュネーブで登記し、運営は米国ニューヨクに拠点を置いているとしている。

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欧州会計士連盟(FEE)が欧州各国政府の80%の国が発生主義会計を採用と調査結果を公表

2007年1月31日、欧州会計士連盟(FEE)公会計部門は、「政府部門の発生主義会計(ACCRUAL ACCOUNTING IN THE PUBLIC SECTOR)」と題した調査結果を公表した。それによると、
■回答を寄せた国の約80%の国が発生主義会計(accrual accounting )を採用している。
■急速に発生主義会計を導入している一方で、発生主義会計の過渡期にあり、小規模のグループで、なお、現金主義のままとなっている。
■普通は、地方レベルでは急速に発生主義会計に移行しつつあるが、最も遅れているのは国レベルである。
日本と同様に、欧州でも国レベルでは遅れているようだ。(FEEニュース 参照)
日本は、地方レベルでも遅れている。(地方公共団体の会計 参照)

英国中央政府が国際会計基準を導入

会計検査院事務総長官房調査課長東信男氏が、「イギリス中央政府における国際会計基準(IAS/IFRS)の導入−公会計の目的に対応させながら−」と題して英国中央政府の国際会計基準の導入状況を報告している。それによると、「中央政府の財務諸表は,2009-10 年度より国際会計士連盟(International Federation of Accountants)のIASB が設定する国際会計基準(IAS/IFRS)に準拠して作成することとなった」としている。


米国連邦政府の会計基準


はじめに


1994年、米国「ナショナル・パフォーマンス・リビュー(National Performance Review,NPR)」(下記注1参照)プロジェクトの統括責任者であるアル・ゴア副大統領は、連邦政府の財政について一般に情報公開し、連邦政府の全ての階層の財産管理の責務(stewardship(下記注2参照)および説明責任(accountablity) を改善する目的で、連邦政府の財政に関する情報およびアイデアを財務の専門家、教育者、納税者と共に考えようと、ホームページ「FinanceNet」( http://www.financenet.gov/financenet/ )を開設し、インターラクテイブに意見も述べられるようにして公開している。ブッシュ政権となってから、2001年12月1日からFASABのホームページはhttp://www.fasab.gov/にサイトが変更となっています。

なお、各州の会計については公会計基準審議会(Governmental Accounting Standards Board,通称GASB)が担当し、非営利団体を含む企業会計である非公会計は財務会計基準審議会(Financial Accounting Standards Board,通称FASB)が担当している。

注1:<米国の行財政改革について>

行政改革を目的として、ナショナル・パフォーマンス・リビュー(National Performance review, NPR)プロジェクトは、1993年3月3日、ビル・クリントン大統領によって創設され、アル・ゴア副大統領を統括責任者に任命したものです。

1998年名称を変更しナショナル・パートナーシップ・フォ・リインベンティング・ガバメント(National Partnership for Reinventing Government)となりました。

詳細については、NPRのホームページ(現在は、クリントン/ゴア政権時代のものとして政府の資料となっている)に記述されています。 ホームページは、リインヴェンテイング・ガバメント(Reinventing Government )を表題にして、副題を「行政の仕事をより良くしコストの少ない政府の創造(Creating a Government that Works Better and Costs Less)」としています。これにより、財政赤字に悩まされつづけた米国は、財政赤字を解消しました。1999年度末には、国・地方合わせて600兆円(ちなみに国民総生産約500兆円を超える)と見通される借金大国日本にも、参考になると思います。

行政改革の経緯、行政改革の成果、イニシアティブ、顧客サービス(customer service) など詳細に説明されています。

リインヴェンティング・ガバメント(Reinventing Government)とは、インヴェンティング(Inventing)が@発明するA作り上げるという意味で、リ(Re)が「再」を意味しますので、「再構築」「再発明」という意味になります。つまり、政府の役割、組織、業務のすべてについて「再構築」「再発明」しようというものです。いわゆる抜本的な行政改革です。

面白いのは、上記行政改革にコンピュータ・サイエンスの専門家として参加したカルフォルニア大学バークレイ校のランデイ・H・カッツ教授が、1993年の自らの経験をホームページ”カッツ教授ワシントンへ行く(Professor Katz Went to Washington) ”( http://www.cs.berkeley.edu/~randy/ToWashington/Index.html )を公開しており電子化に依る行政の効率化に寄与したことが詳細に書かれています。「21世紀のための電子政府(Electronic Government for the 21st Cetury)」を提唱し行政の効率化に寄与したようです。

日本政府は、2003年までに国とすべての地方自治体をオンラインで結び、国ー地方間の公文書のやり取りや通達を完全電子化する。首相の下に「電子政府実現本部」を常設し電子政府を推進するための法案を提出することも検討する、と報じています(日経00年4月23日)。米国に遅れること10年。インターネット時代で各国の情報が迅速に入手できる時代に、なぜこれほど電子政府への推進が遅れるのであろうか?
(注2)Stewardship と Accountability の相違について
StewardshipとAccountabilityの相違は、Accountabilityが説明責任と翻訳されているように、日本では単に説明すれば責任を果たしたことになるのに対して、Stewardshipは、執事(Steward)がご主人の財産を効率的・有効に運用する義務を果たすことを意味しており、説明責任より重い責任を意味します。預った財産を効果的・効率的に運用する義務をスチュワードシップ(受託管理責任)としているようです。(米国ではアカウンタビリティの意味は「(行為や発言について、自分がしたことの)責任をとる」という重い意味で使われるようです)

説明責任(accountability)は、情報開示により説明責任を果たすことができます。例えば、国家、地方自治体の財務諸表を公開するなどです。

スチュワードシップ(stewardship)は、ご主人である国民・市民に対して、行政が効率的・効果的に税金を使用する義務を果たしたことを示す責任です。米国NPRはこのスチュワードシップを目に見える形にしようと試行錯誤しながら国家財政の赤字を減少させています。日本の国民年金の不祥事や厚生年金の記録不備は、社会保険庁の受託責任(Stewardship)の欠如である

連邦政府の会計基準第8号「補助的な財産管理の責務の報告(Supplementary Stewardship Reporting)」によって情報開示される。ちなみに、米国では、連邦政府の年次報告書の中に「受託管理責任情報Stewardship Information)」という情報が公開されている。

1994年、一歩進んで、行政サービスの内容の評価・測定にまで踏み込んでいます。つまり、行政サービスが「経済的(Economy)であるかどうか」「能率的・効率的(Efficiency)であるかどうか」「有効(Effectiveness)であるかどうか」を判断できる情報を開示することを求めるようになってきています。財政報告の作成基準であります会計基準は、国家については、「国家の会計基準・概念書」、地方自治体については「地方自治体の会計基準概念書第2号”サービス努力と実施に関する報告(Service Efforts and Accomplishments Reporting、SEA Reporting)"」があります。(「行政サービスの評価・測定」参照)


連邦政府の財政に関する情報を公開することで、連邦政府の財産管理の責務(stewardship) および説明責任(accountability)を改善するというものです。


連邦政府高官、エージェンシー、部門、地方自治体、専門家、納税者、国内ばかりでなく全世界に向けてのネットワークであるとしている。なお、1996年6月28 日付けゴア副大統領の予算局への手紙が公開されており、英国政府の参加を感謝している旨の記述が見られます。


そこで、連邦政府の財政に関する情報の作成と情報公開の基礎となる「会計基準」が設定され、財政報告の利用者である納税者、議会、予算局、会計検査院、連邦政府の関係者および誰でも理解できるよう、同様に「FinanceNet」に公開しています。

ここに概要を示したのは、「FinanceNet」に載せている「連邦政府の会計基準助言委員会(Federal Accouning Standards Advisory Board)」を要約したものです。
正確を期する為、詳細はホームページ http://www.financenet.gov/financenet/fed/fasab/fasab.htm (2001年12月1日をもって停止し、以後はFASABのホームページhttp://www.fasab.gov/へ変更となります)をご参照ください。


国家財政を明瞭に分かりやすく公開することで、良識ある国民は、財政赤字を自らの問題として真剣に考えるようになります。1980年代から1990年代の始めまで、日本は、米国に対して、ドル安の原因は米国の双子の赤字、つまり財政赤字と貿易赤字にあり、内政に問題があると批判していました。
米国は、財政赤字については、連邦政府の会計基準を設定して内容を明らかにしました。 政治は国家財政の危機を国民に訴え、その結果、クリントン大統領の1997 年の予算案が実行されれば2002年までに財政赤字はなくなるとしていましたが、好景気を背景に予想を超えて2002年を待たずに財政赤字はなくなる模様です。今や、景気が順調なこともあって、誰も米国の財政赤字を非難するものはいません。貿易赤字は、日本からの輸出が増大して、日本の内需拡大の圧力が再燃されようとしていますが・・・・

ちなみに、「連邦政府の財務報告の目的、概念書第1号(Objectives of Federal Financial Reporting Statement of Federal Financial Accounting Concepts Number 1)」のパラグラフ51には、「権力の分離(Separation of Powers) 」という項があり、「国家権力は潜在的な乱用の恐れがある為、連邦政府の組織を創設する場合は権力を分散する。法で定められた政府の部局、執行部は他の者に強制的にチェックがかかるようにする。逆説的であるが、権力の分散は、責任を不明確にし、説明責任を減退させる。権力の集中は潜在的な乱用の恐れもあるが、政府の方針を施行する上で権力の分散を考えると、仕事をどの部局にどう割振るかの困難がある。」というものです。権力の分離の必要性には疑問はないが、権力を分散すると執行に時間がかかり(非効率)、責任を不明確にし説明責任を減退させるという、考えさせる文章がいたるところにあります。


私見ですが、情報を広く公開し透明度を高くして切磋琢磨している米国の仕組みには好感が持てます。是非とも直接アクセスして体験して欲しいものです。

なお、2002年3月、日本銀行金融研究所が「米国の公会計制度とわが国へのインプリケーションについて」(古市峰子著)が纏められ、米国会計制度(民間と行政府を含む)を分析し公会計の位置付けを解説、かつ日本の公会計制度への参考に供しています。

連邦政府の会計基準の設定の仕組み


1990年10月、連邦政府の会計基準助言審議会(Federal Accounting Standards Advisory Board, FASAB)は、財務長官(Secretary of the Treasury(行政府の組織))、行政管理予算局長(Director of the Office of Management and Budget(大統領府の組織)、OMB)および会計検査院(Government Accountability Office, GAO 旧General Accounting Office(議会の組織),GAO)のトップであるコンプトローラ(Comptroller generalつまり、会計検査院院長を意味する)がスポンサーとなって、米国連邦政府の会計原則を助言するために設立されました。

1990年10月1日付で、連邦政府の会計基準助言審議会及び会計基準を設定するにあたって、財務長官、行政管理予算局長、会計検査院委員長の三者により「連邦政府会計基準助言委員会に関しする相互理解のためのメモランダム」が作成され、三者の合意形成がされている。

つまり、次のような内容が具体的に記され三者がサインしている。
(1)設置するにあたって、
A 構成員は9名(会計検査院(GAO)・行政管理予算局(OMB)・財務省から各1名、議会の予算事務所(CBO)・防衛と国際関係及び市民から各1名、財務界・会計と監査及び学会から3名)のメンバーで構成され、
B メンバーの選任方法及びメンバーの条件、
C メンバーの任期、
D メンバーの責任、
E 会議の開催方法及び議題の設定、

(2)支援スタッフ及びその他のグループとして、
A 審議会の支援スタッフ、
B 作業部会の設置、

(3)会計基準の設定プロセスとして、
(@)会計問題の特定化、と議題の決定
(A)初歩的な審議
(B)初期資料の作成(イッシュー・ペーパー・ディスカッション・ドキュメント)
(C)ドキュメントの一般に公表、公聴会の開催、コメント収集・反映させる
(D)更なる検討、公開草案の作成・公表(コメント期限は最低60日以上)、コメント収集・反映
(E)審議会での合意後(少なくとも過半数の賛成)、予算・管理局長(大統領府)、会計検査委員長(議会)、財務省長官(政府)へ承認を得るために提出。

提出後、90日以内に反対するものあるときは、審議をやり直すために、審議会へ返却される。提出後、90日以内の反対するものが無い場合は、会計基準として効力を有する。

上記メモランダムに基づき、1999年9月30日付けで、「連邦政府会計基準助言審議会手続きルール」が制定され、より詳細な規定となっている。

会計基準の設定手続き自体にも透明性を重視しており、関係者の理解を得やすいようになっている。上記、メモランダム及び手続きルールもインターネットで公開され、誰でもが見ることができるし、意見を申し述べることもできる。

公表の連邦政府の会計基準書等


現在までのところ次のような会計基準が出ています。
基準書は39号まで出ています。詳細は、http://www.fasab.gov/standards.htmlをご覧ください。
Document by Chapter
FASAB Handbook of Federal Accounting Standards and Other Pronouncements, as Amended as of June 30, 2012

基準書等
番号
会計基準書の表題 公表日
適用開始時期
概念書第1号
SFFAC
連邦政府の財務報告の目的 1993年9月 基準書に具体化される。
概念書第2号 報告単位および表示 1995年6月 基準書に具体化される。
概念書第3号 管理者の討議及び分析
management's discussion and analysis
1999年4月 基準書に具体化される。
概念書第4号 連邦政府の連結財務報告の予定する読者及び特徴 2003年1月 基準書に具体化される。
概念書第5号 発生主義財務諸表に関する要素の定義と基本的認識基準 2007年12月 基準書に具体化される。
基準書第1号
SFFAS
特定資産および負債の会計 1993年3月 1994年9月30日終了年度
より適用開始
基準書第2号 直接貸付金と貸付保証の会計 1993年7月 1994年9月30日終了年度
より適用開始
基準書第3号 棚卸資産と関連資産の会計 1993年10月 1994年9月30日終了年度
より適用開始
基準書第4号 管理原価会計の概念と基準 1995年7月 1996年9月30日以後開始
する年度より適用開始
基準書第5号 連邦政府の負債の会計 1995年9月 1996年9月30日以後開始
する年度より適用開始
基準書第6号 有形固定資産の会計 1996年6月 1997年9月30日以後開始
する年度より適用開始
基準書第7号 収入とその他財務収益の会計
および予算と財務会計の調整に関する考え方
1996年4月 1997年9月30日以後開始
する年度より適用開始
基準書第8号 補助的な受託責任の報告
Supplementary Stewardship Reporting
1996年5月 1997年9月30日以後開始
する年度より適用開始
基準書第9号 基準書4号の連邦政府の管理原価計算の適用期日の延期 1997年10月 1998年適用
基準書第10号 内部使用のソフトウエアの会計 1998年10月 2001年適用
基準書第11号 有形固定資産の定義の改訂:6号と8号の改定 1998年12月 1999年適用
基準書第12号 訴訟による偶発債務の認識5号「連邦政府の負債の会計」の改定 1999年2月 1998年適用
基準書第13号 65.2項の適用延期:重要な収益関連取引の開示 1999年2月 1999年適用
基準書第14号 繰延修繕維持に関する報告の改訂:
6号「有形固定資産の会計」及び8号「補助的な受託責任の報告」の改正
1999年4月 1999年適用
基準書第15号 管理者の討議及び分析
management's discussion and analysis
1999年7月 1999年適用
基準書第16号 有形固定資産の改定−マルチ・ユースの遺産の測定と報告:
6号「有形固定資産の会計」及び8号「補助的な受託責任の報告」の改正
1999年7月 2000年適用
基準書第17号 社会保険の会計 1999年8月 2000年適用
基準書第18号 直接貸付金と貸付保証の会計の改訂(2号の改訂) 2000年5月 2000年9月30日以後適用
基準書第19号 直接貸付金と貸付保証の会計の技術的改訂(2号の改訂) 2001年3月 2002年9月30日以後適用
基準書第20号 内国歳入庁による特定の徴税取引関連開示の廃止:
7号「収益その他の財源の会計処理」の改正
2001年9月 2000年9月30日以後適用
基準書第21号 誤謬の訂正と会計原則の変更に関する報告:
7号「収益その他の財源の会計処理」の改正
2001年10月 2001年9月30日以後適用
基準書第22号 業務のネットコストと債務の調整に関する特定の規定の変更 2001年10月 2000年9月30日以後適用
基準書第23号 国家防衛有形固定資産カテゴリー廃止 2003年5月 2002年9月30日以後適用
導入23号導入ガイダンス23.1 即時適用
基準書第24号 米国政府の連結財務報告の一部の基準 2003年1月 2001年9月30日以後適用
基準書第25号 受託責任の開示箇所の組替及び役務評価の廃止 2003年7月 2002年9月30日以後適用
基準書第26号 社会保険の報告書の重要な仮定の開示:25号の改定 2004年11月 2004年9月30日以後適用
基準書第27号 特定用途のファンドの識別および報告 2004年12月 2005年9月30日以後適用
基準書第28号 社会保険の意見書の重要な仮定の表示の施行延期
:25号と26号の改定
2005年1月 即時適用
基準書第29号 遺産とスチワードシップ土地 2005年7月 2005年9月30日以後適用
基準書第30号 内部原価の適用:4号の管理原価会計基準と概念の改定 2005年9月 2008年9月30日以後適用
基準書第31号 信託に関する会計 2006年10月 2008年9月30日以後適用
基準書第32号 連邦政府要請の連結財務報告
:会計概念書4号「連邦政府の連結財務報告の予定する読者
及び特徴」の導入
2006年9月 2005年9月30日以後適用
基準書第33号 年金、退職給付及びその他の退職後給付:
仮定、適用割引レート及び評価日の変更による損益の報告
2008年10月 2009年9月30日以後適用
基準書第34号 米国財務会計基準審議会の公表する基準の適用を含む
一般に認めれれる会計基準の適用順序
2009年8月 即時適用
基準書第35号 有形固定資産の歴史的原価の見積もり−基準書6号及び23号の改定 2009年10月 即時適用
基準書第36号 連邦政府の包括的長期会計予測に関する報告 2009年9月 2010年9月30日以後適用
段階的適用であるが
早期適用が推奨される
基準書第37号 社会保険:経営者の検討と分析及び基礎的財務諸表の追加情報 2010年4月 2010年9月30日以降開始
する事業年度
基準書第38号 連邦の石油及びガス資源の会計 2010年4月 2011年9月30日以降開始
する事業年度
早期適用可
基準書第39号 後発事象:米国公認会計士の監査基準書に含まれる会計
及び財務報告基準の成文化
2010年8月 即時適用

基準書等の覧表 
概念書 基準書

財務報告の目的 概念書第1号の概要


概念書第1号「財務報告の目的」は8章266パラグラフ、3つの添付(アペンデイックス)から構成されています。概要は次の通りです。

内容または表題
要約
1章 連邦政府会計基準助言委員会の役割
2章 連邦政府会計と財務報告の環境
3章 説明責任(Accountability)、利用者の情報ニーズ、連邦政府の財務報告の創設
4章 連邦政府の財務報告の目的
5章 助言されている基準の中のコスト・ベネフィットの均衡(balancing)
6章 財務報告に含む情報の質的性格
7章 連邦政府の会計基準が連邦政府の財務報告に影響する
8章 連邦政府の財務報告が行政活動の報告に影響する
添付A 結論を導き出す基礎
添付B 連邦政府財務報告における、ユーザーの情報ニーズ
添付C 経常的に繰り返される特定の財務報告

米国連邦政府の会計基準・・概念書1号の抜粋

会計基準の概念書作成の必要性:
Par3.概念書の目的は、会計基準を設定する場合、
(1) 連邦政府の財務情報に関する内外のユーザーに対する説明責任を遂行する
(2) 連邦政府の財務情報に関する内外のユーザーに対して有用な情報を提供する
(3) 連邦政府の管理を改善するために、財務情報の内部ユーザーの助けになる など、
連邦政府が報告する財務情報をより良いものにするためのものである。

連邦政府の財務情報の利用者
Par.11-17連邦政府の財務報告の目的は、報告書の利用者のニーズを基礎にしている。財務情報のユーザーには、市民、議会、政府高官、及び政策実行責任者を含んでいる。

会計基準の範囲
Par23 連邦政府の会計基準(FASAB)は、財務会計基準(FASB)及び地方自治体の会計基準(GASB)とは異なり、連邦政府の会計基準を設定する。FASBは民間企業の会計基準を設定し、GASBは地方政府の会計基準を設定している。

連邦政府の会計基準の特徴
Par25 連邦政府の会計基準は、外部向け情報開示と、内部向け情報開示の両側面を重視している。なぜならば、民間企業に比較して官僚機構は大きく複雑な機構を持っていること、また、高級官僚は短期の任期で変わるためである。 (民間企業の会計基準は、外部報告に関して規定する。民間企業であれば、内部情報が入手しやすく独自に内部報告システムを構築できる。)

会計基準設定の手続き
Par26 FASABは、連邦政府のエージェンシー、政策に関する財務報告を改善するために会計基準を、予算局(OMB)、財務省(大統領の代理)及び会計検査院(GAO、議会の代理)の助言の元に設定される。

4章 財務報告の目的
Par105 連邦政府は、統治することの同意から生じた権力を有する。そのため、その活動とその活動に関する結果を報告する責任を負う。これらの報告書は、連邦政府の内容を正確に反映したものでなければならないし、国民(the people)、選ばれた代表者、及び連邦政府の高官に対して有用な情報を提供するものでなければならない。一般公開、ニュースメディア及び選ばれた代表者に公開する財務情報は、政府の説明責任の要素部分である(an essential part of accountability in government )。政策担当責任者、政府高官、議会のメンバーに対する財務報告は政府の政策を、経済的(economically)に、能率的(efficiently)に、効果的(effectively)に、計画したり実施したりするための要素である。

財務報告に含まれる内容:
Par110 連邦政府の財務情報の現在及び潜在的なユーザーは、次のような疑問に対して、政府が如何にうまく回答しているかを評価するのに助けとなる情報を望んでおり、連邦財務情報には次の情報が求められる。

・ 予算の厳格性(Budget integrity)
政府活動の資金調達及び使途の法的裏づけは何か?法的な裏づけによって資金調達及び資金が使われているか?予算の源泉及び使途はどのようにしてしているのか、また、その法的裏づけは?予算の源泉の位置付けは?政策実施のコスト情報と関連する予算はどうするか、予算の位置付け情報が、他の資産・負債の会計情報と関連付けられているか?

・ 行政の実行(Operating performance)
種々の政策コストはいくらで、その資金の裏付けはどのような方法によるものか?また、どのような効果があったのか?どんな資産がどこにあるのか?また、それらの資産は有効に管理されているのか?政策実施過程で生じた債務は何か?また、その債務の返済はどうするのか?特定の政策に対するコスト、活動、内容、変更、連邦政府の政策に関連する努力、実施状況、などの情報開示、政府資産・負債の管理に関する有効性、効率性の開示。

・ スチュワードシップ(Stewardship)
政府の財政状態は改善されたのか、又は、悪化したのか?将来のために何が準備されているのか?公のサービスが将来にわたって安定して提供できるのか、その責務を果たせるのかの開示。行政は現在及び将来における国民福祉を提供しうるかの開示。

・ システム及び統制(System and Control)
政府は、資産保全のためコスト効果の良いシステムと統制が存在しているか?可能性のある諸問題に対して発見できるシステム又は統制があるか?問題を発見したときには訂正しているか?取引は予算及び財務に関する法律、連邦政府の会計基準、その他法令に準拠して行われているか。資産は不正、無駄、悪用などを思い止まらせるように適切に保全されているか。業務実施の評価情報は、適切に立証できるようになっているか。


連邦政府の財務会計 概念書第2号の概要

概念書第2号は、83のパラグラフと6つの添付(アペンデイックス)から構成されています。

内容
報告主体を定義する理由
連邦政府の構造
財務報告における報告主体を特定する一般的な目的
報告主体に含まれる範囲
提案する報告書の様式と内容
添付1-A 貸借対照表(Balance Sheet)
添付1-B 純行政コスト計算書(Statement of Net Costs)
添付1-C ネット・ポジション変動計算書(Statement of Change in Net Position)
添付1-D 保管管理活動の計算書(Statement of Custodial Activities)
添付1-E 予算計算書(Statement of Budgetary Resources)
添付1-F 政策実施評価計算書(Statement of Program Performance Measures)

米国連邦政府の会計基準・・概念書2号の抜粋

財務情報の報告単位
Par.5 連邦政府の組織内にあるすべての支局を含む。すなわち、部(department)、独立行政法人(independent agencies)を含んでいる。

4つの財務報告目的
Par.6 連邦政府の財務報告の目的は、次の四つである。

予算の厳格性(Budget integrity)
連邦の財務報告は、税収やその他の手段を通じて資金を調達したり、特定の会計年度についての政府予算を設定する歳出予算法及びその他法令にしたがって支出するなど、政府の公に説明する責任を達成することに関し助けになるものでなければならない。

行政の実行(Operating performance)
連邦の財務報告は、行政サービスの努力、行政コスト、報告単位の業績をユーザーが評価できるような報告となるようでなければならない。

スチュワードシップ(Stewardship)
連邦の財務報告は、政府の行政やその期間の投資が国に与える影響を、また、その結果として、政府の財政状態が如何に変化し、また、将来変化するかについて、ユーザーが評価できるような報告となるようでなければならない。

システム及び統制(System and Control)
連邦の財務報告は、財務管理及び内部統制ないし管理統制に関し、取引の実行、資産の保全、業績評価のサポートが適切に行われているかどうか、ユーザーが評価できるような報告となるようでなければならない。

財務情報
ストック計算書
Par.57ストック計算書は、貸借対照表(Balance sheet)である。貸借対照表には、特定時点の資産・負債および組織のネット・ポジション(net position)を示す。

フロー計算書
Par.58 その他の計算書は、特定期間の収入、入金、支出、費用、利益、損失、及び/又は報告実態(entity)の純資源(net resources)を示す。このタイプの計算書は、しばしばフロー計算書といわれる。利益追求型の民間企業では、損益計算書及びキャッシュフロー計算書に相当する。これは、報告期間の企業活動の業績や、前期末のネット・ポジションから当期末のネット・ポジションの変動を示す。このタイプの計算書は、利益追求型の企業にとっては、その目的が利益を創出することと投資利回りを追求するためであるので特に有用である。

純行政コスト計算書(statement of net costs)
Par.59 連邦政府及び連邦政府の報告単位はサービスを提供し、あるものはサービスの対価として収入を受け取る、しかし、基本は、税金やその他の収入で資金調達をしている。 フロー計算書として、もっとも有用な情報は、サービス・コストの合計と純額を示すことである。報告単位が提供したサービスの程度を納税者によってファイナンスされる。このタイプの計算書は、純行政コスト計算書(statement of net costs)であり、財務報告目的の一つである "行政の実行(operating performance)"のうち行政コストの部分を示すものである。

ネット・ポジション計算書(statement of net position)
Par.60 サービス提供の対価としての収入のみが連邦政府の報告単位の収入ではない。ほかの資金調達手段として、議会から受取る予算や、罰金、寄付金、及び他のエージェンシーからの収入がある。そのため、他の有用なフロー計算書として、ネット・ポジション計算書(statement of net position)があり、財務報告目的の一つである "行政の実行(operating performance)"のうち資金調達の部分を示すものである。

保管管理活動計算書(statement of custodial activities)
Par.61 税金、ロイヤリティ、罰金などの徴収は、内国歳入庁(Internal Revenue Service, IRS)、税関(Customs Service)、鉱物管理局(Minerals Management Service)など数少ない報告単位である。これらの報告単位は、税金その他を回収して財務省及びその他の機関に振替をする保管・管理機能である。この報告単位の保管管理機能の結果は、誰から税金・その他の金を回収し、誰に配分したか理解できる情報をフロー計算書で報告する。この報告書を、保管管理活動計算書(statement of custodial activities)と呼ぶ。

予算資源計算書(statement of budgetary resources)
Par.63 連邦の財務報告目的の"予算の厳格性(Budgetary integrity)"では、次の事項の保証を読者に提供することが必要である。
・ 消費した金額が、議会で決定した予算を超えていないこと
・ 支出が予算決定の目的に適合していること
・ 勘定科目に関して、法令に適合して処理されていること
・ 金額が正確に区分整理され報告されていること これらの情報は他の報告書に含まれ、この情報の信頼性を付与するためには監査が必要となる。また、この情報の信頼性の保証は、報告単位の財務諸表に予算資源計算書(statement of budgetary resources)を含むことによって実現できる。

政策遂行評価計算書(statement of program performance measures)
Par.65 連邦の財務報告目的の第二番目に、「連邦の財務報告は、連邦の政策(Federal programs)に関連する努力(effort)と遂行(accomplishments)について、ユーザーが評価することができる情報を提供しなければならない。これにより、政策遂行評価計算書(statement of program performance measures)が必要となる。

その他の情報
Par.68 財務情報は、財務諸表の密接不可分の部分として注記によって伝えることである。典型的な注記は、更なる有用な情報を提供したり、誤解を避けるために追加情報を開示することである。

Par.69 報告単位(reporting entity)についての一般的な情報を簡潔に述べる必要がある。例えば,その氏名、到達目標、目的、政策及びその受益者、資金の主要な源泉、その報告単位が組織された方法、人的資源、報告単位が報告期間に行った実施状況のハイライト、政策実施計算書から重要な部分を抜粋した評価、問題に遭遇又は目標を見失った場合その理由、財務数値のハイライト及び趨勢、問題点と対策、報告主体の将来の目標、報告主体の財務状況を完全・適正に理解するために、最高責任者または最高財務担当役員が必要と考えられるその他の情報などである。このタイプの情報は、報告主体の概要と経営者の論考及び分析(management's discussion and analysis――民間上場会社が、SEC提出の年次報告書に記載することが求められている内容・用語でそれを援用しているもの)として知られいるものを典型的に表示するものである。 

Par.70 財務報告の第三の目的は、"政府の行政やその期間の投資が国に与える影響を、また、その結果として、政府の財政状態が変化し、将来変化するか、ユーザーが評価することが出来る報告となるように支援するものでなければならない。"である。いわゆるスチワードシップ。この目的は、教育、研修、調査及び開発、また、将来の国富に影響する特定の有形固定資産、及び意思決定や実施前から将来の予算資源を要求するものに関する情報の報告を求めている。

Par.71 こうした情報は、場合によっては、金額よりも、面積などの単位で記録される。

組織単位の財務報告
Par.74 財務報告の4つの目的に適合した最も効果的な財務報告は、報告単位が下記の財務報告をすることである。
・ 管理者の論考及び分析(management's discussion and analysis)
・ 貸借対照表(balance sheet) ・ 純行政コスト計算書(statement of net costs)
・ ネット・ポジション変動計算書(statement of net position)
・ 保管管理活動計算書(statement of custodial activities)、必要な場合のみ
・ 予算資源計算書(statement of budgetary resources)
・ 政策遂行評価計算書(statement of program performance measures)(注13)
・ 注記事項 (accompanying footnote)
適切と考えられる場合は、補足情報
(注13:基本財務諸表ではないが、重要な財務情報である。)

政府全体の財務報告 (Par.83 いわゆる連結財務諸表)
Par.79 政府全体の財務報告は下記のようになる。
・ 管理者の論考及び分析(management's discussion and analysis)
・ 貸借対照表(balance sheet)
・ 純行政コスト計算書(statement of operation or net costs)
・ 政策遂行評価計算書(statement of program performance measures)
・ 注記事項 (accompanying footnote)
適切と考えられる場合は、補足情報

EXAMPLE FINANCIAL STATEMENT FORMATS  財務諸表の例示
BALANCE SHEET
as of September 30, 19X4
貸借対照表
19X4年9月30日現在
ASSETS
Suborganization A Suborganization B Suborganization C
資産
補助部門A 補助部門B 補助部門C
Total
FY 19X4
合計
会計年度19X4年
Total
FY 19X3
合計
会計年度19X3年
Entity assets:
Fund balance with Treasury

Cash (and other monetary assets)
Investments:
Intragovernmental
With the public
Receivables:
Intragovernmental
With the public

Inventories and related properties
Physical assets
Total entity assets

Non-entity assets:
Fund balance with Treasury
Cash
Receivables:
Intragovernmental
With the public
Total non-entity assets

Total assets
会計単位の資産:
財務省の基金残高(連結では消去される)

現金(及びその他の金銭資産)
投資:
 政府内部
 公衆
未収金:
 政府内部
 公衆

たな卸資産及び関連資産
実物資産
 会計単位の資産合計

非会計単位の資産:
財務省の基金残高(連結では消去される)
現金
未収金:
 政府内部
 公衆
非会計単位の資産合計
 
資産合計
LIABILITIES AND NET POSITION 負債及びネットポジション
Suborganization A Suborganization B Suborganization C 補助部門A 補助部門B 補助部門C
Total FY 19X4 合計 会計年度19X4年
Total FY 19X3 合計 会計年度19X3年
LIABILITIES:
Liabilities covered by budgetary resources:
Intragovernmental liabilities:
Payables
Governmental liabilities:
Payables
Total liabilities covered by budgetary resources

Liabilities not covered by budgetary resources:
Intragovernmental liabilities:
Payables
Governmental liabilities:
Payables
Amounts held for others
Total liabilities not covered
by budgetary resources

Total liabilities

NET POSITION
Unexpended appropriations
Cumulative results of operations
Total net position

Total liabilities and net position
負債:
予算で裏付けされた負債:
政府内部負債:
未払金
政府負債:
未払金
予算で裏付けされた負債合計

予算の裏付けのない負債:
政府内部負債:
未払金
政府負債:
未払金
預り金

予算の裏付けのない負債合計

負債合計

ネットポジション
未支出の処分済留保額
累積行政結果
ネットポジション合計

負債及びネットポジション合計
Note: The above balance sheet format is for an organization composed of three significant suborganizations.
注:上記の貸借対照表の様式は、3つの重要な補助部門からなる組織のためのものである。
EXAMPLE FINANCIAL STATEMENT FORMATS 財務諸表の例示
STATEMENT OF NET COSTS
For the year ended September 30, 19X4
純行政コスト計算書
19x4年9月30日終了する年度
Sub-organization A Sub-organization B Sub-organization C
Total FY 19X4
Total FY 19X3
補助部門A 補助部門B 補助部門C
会計年度19X4年合計
会計年度19X3年合計
COSTS:
Program A:
Intragovernmental
With the public
Total
Less earned revenues
Net program costs

Program B:
With the public
Less earned revenues
Net program costs

Program C:
Intragovernmental
With the public
Net program costs

Program D:
Costs with the public

Cost not allocated to programs
Less other earned revenues

NET COST OF OPERATIONS
行政コスト:
政策A:
 政府内部
 公衆
   合計
 収入控除
 純政策コスト

政策B:
 公衆
 収入控除
 純政策コスト

政策C:
 政府内部
 公衆
 純政策コスト

政策D:
 公衆に対するコスト

政策に配布しないコスト
その他の収入控除

純政策実行コスト
EXAMPLE FINANCIAL STATEMENT FORMATS 財務諸表の例示
STATEMENT OF CHANGES IN NET POSITION
For the year ended September 30, 19X4
ネット・ポジション変動計算書
19x4年9月30日終了の年度
Suborganization A Suborganization B Suborganization C 補助部門A 補助部門B 補助部門C
NET COST OF OPERATIONS

FINANCING SOURCES:
Appropriations used
Taxes (non-exchange revenue)
Donations (non-exchange revenue)
Imputed financing
Transfers-in 
Transfers-out

NET RESULTS OF OPERATIONS
PRIOR PERIOD ADJUSTMENTS

NET CHANGE IN CUMULATIVE
RESULTS OF OPERATIONS

INCREASE (DECREASE) IN
UNEXPENDED APPROPRIATIONS

CHANGE IN NET POSITION
NET POSITION-BEGINNING OF PERIOD
NET POSITION-END OF PERIOD
純行政コスト

資金の源泉:
予算の使用
税金(非交換収入)
寄付金(非交換収入)
財務負担
振替えー入
振替えー出

差引き行政結果
過年度修正

累積行政結果の純変動


未支出の予算の増加(減少)


ネットポジションの変動額
期首ネットポジション残高
期末ネットポジション残高
Note: The above balance sheet format is for an organization composed of three significant suborganizations.
注:上記の貸借対照表の様式は、3つの重要な補助部門からなる組織のためのものである。
EXAMPLE FINANCIAL STATEMENT FORMATS 財務諸表の例示
STATEMENT OF CUSTODIAL ACTIVITIES
For the year ended September 30, 19X4
保管管理活動計算書
19X4年9月30日に終了の年度
FY 19X4 FY 19X3 会計年度19X4年 会計年度19X3年
Collections:
Income taxes
Estate and gift taxes
Excise taxes
Employment taxes
Penalties and interest
  Total collections
Refunds and other payments
  Net collections
Accrual adjustment
  Total revenues collected

Disposition of revenues collected:
Transferred to others:
Department of the Treasury
Department of Labor
Environmental Protection Agency
Total transfers
 Retained by the entity
Increase (decrease) in amounts
to be transferred
  Total disposition of revenues collected

Net custodial collections    $000 $000
回収:
所得税
不動産及び贈与税
物品税
雇用税
罰金及び利子税
 回収合計
還付及びその他の支払
 純回収額
発生主義修正
 回収収入合計

回収収入の処分:
他部門への振替え:
財務省
労働省
環境保護エージェンシー
 振替え合計
当該会計単位によって留保
振替え金額の増加(減少)

回収収入の処分合計

差引き保管回収額        $000 $000
この計算書は、内国歳入庁(Internal Revenue Service, IRS)、税関(Customs Service)、鉱物管理局(Minerals Management Service)など、回収を専業とする組織に限られる。
EXAMPLE FINANCIAL STATEMENT FORMATS 財務諸表の例示
STATEMENT OF BUDGETARY RESOURCES
For the year ended September 30, 19X4
予算計算書
19X4年9月30日終了年度
Sub-organization A Sub-organization B Sub-organization C 補助部門A 補助部門B 補助部門C
Total FY 19X4
Total FY 19X3
会計年度19X4年合計
会計年度19X3年合計
Budgetary resources made available:
   Budget authority
 
 Unobligated balances-beginning of period
   Reimbursements and other income
   Adjustments
 Total, budgetary resources made available

Status of budgetary resources:
   Obligations incurred (gross)

  Unobligated balances-end of period
  Unobligated balances-not available

  Total, status of budgetary resources

Outlays:
   Obligations incurred, net
   Obligated balance transferred
   Obligated balance-beginning of period
    Less: obligated balance-end of period
   Total, outlays
使用可能な予算:
 議会で承認を得た予算

 拘束されない残高ー期首
  補填及びその他の収益
  修正
 使用可能な予算合計

予算の状態:
 義務が生じたもの(総額)

 拘束されない残高ー期末
 拘束されない残高ー該当無し

 予算状態の合計

支出:
 義務が生じたもの、純額
 義務が生じ振替えた額
 義務が生じた残高ー期首
 差引き:義務が生じた残高ー期末
 支出合計
EXAMPLE FINANCIAL STATEMENTS FORMATS 財務諸表の例示
STATEMENT OF PROGRAM PERFORMANCE MEASURES[NOTE 22]
For the year ended September 30, 19X4
政策実施評価計算書(注記2)
19X4年9月30日終了の年度
FY 19X4 FY 19X3 FY 19X2 会計年度19X4年 会計年度19X3年 会計年度19X2年
Sub-organization A
Program
Performance Measure
xxx
xxx
xxx

 Performance Measure
xxx
xxx
xxx

Program
Performance Measure
xx%
xx%
xx%

Performance Measure
xxx
xxx
xxx

Program
Performance Measure
xxx
xxx
xxx

Performance Measure
xx%
xx%
xx%

Sub-organization B
Program
Performance Measure
xxx
xxx
xxx

 Performance Measure
xx%
xx%
xx%

 Performance Measure
xxx
xxx
xxx

Program
Performance Measure
xx%
xx%
xx%

Performance Measure
xxx
xxx
xxx

Program
 Performance Measure
xxx
xxx
xxx

Performance Measure
xx%
xx%
xx%

Sub-organization C
Program
 Performance Measure
xxx
xxx
xxx

 Performance Measure
xx%
xx%
xx%
補助部門A
政策
 政策評価
xxx
xxx
xxx

NOTE: Sub-organizations A, B, and C are equivalent to responsibility segments for which cost and financial data are collected. (See FASAB Exposure Draft "Managerial Cost Accounting for Federal Government", pages 26-30.)

[NOTE 22: Although this example contains only numerical measures, the performance for some programs might be reported with other than numerical measures.]LIST OF ACRONYMS

FASAB Federal Accounting Standards Advisory Board 連邦会計基準助言審議会
OMB Office of Management and Budget 予算管理局
SGL Standard General Ledger  標準総勘定元帳
SFFAC Statement of Federal Financial Accounting Concepts. 連邦財務会計概念書

連邦財務会計基準書第6号「有形固定資産の会計」抜粋

政府会計で難解なものの一つに、有形固定資産の定義がある。つまり、貸借対照表に計上すべき有形固定資産と、購入時または生産時に行政コスト・費用として処理すべき有形固定資産がある。連邦財務会計基準書第6号「有形固定資産の会計」の一部を抜粋してみると次のようになっている。

米国連邦政府は、千差万別の目的で1兆ドルを超える有形固定資産に対する投資があるとしている。

有形固定資産の定義:
Par.b 有形固定資産(Property, plant, and equipment 略称PP&E)とは、(1) 2年以上の予定使用期間があり、(2)通常の事業で販売目的を意図していない、(3)使用することを意図しているか使用可能なものを言う、としている。

有形固定資産の分類
Par.c 審議会は、それぞれのカテゴリーに異なった会計基準を適用する必要があるため、有形固定資産を下記の四つのカテゴリーに分類する
一般有形固定資産(general PP&E)とは、政府の一般的なサービス等提供のために使用される有形固定資産である。
政府の使命・任務に関する有形固定資産(Federal mission PP&E)とは、審議会が例示する特定の性格を持った有形固定資産である。
国家遺産(heritage assets)とは、重要な教育、文化及び自然等を維持するための資産である。
スチュワードシップ土地(stewardship land)とは、一般有形固定資産に含まれている土地以外の土地である。

貸借対照表に計上される有形固定資産
Par.d 一般有形固定資産のみが、基本財務諸表である貸借対照表の有形固定資産として計上され(減価償却累計額を控除する)、土地を除いて、耐用年数期間の減価償却費はネットコスト計算書に費用計上される。

Par.e 政府の使命・任務に関する有形固定資産、国家遺産、スチュワードシップ土地は、「補完的なスチュワードシップ報告書(会計基準書第8号)」に準拠して報告され、発生時のコストとして計上される。 貸借対照表に計上されない。

一般有形固定資産
Par.f 一般有形固定資産とは、
−連邦政府によって使用しているが、他の目的にも使用できるもの(例えば、他の連邦政府の施策、州または地方政府ないし非政府組織などによって使用できるもの)
−ビジネス活動で使用されるもの
−コストが他の実態(entity)と比較できる活動で使用されているもの(例えば、連邦病院は他の病院と比較できる)

スチュワードシップ有形固定資産
スチュワードシップ有形固定資産とは、政府の使命・任務に関する有形固定資産(Federal mission PP&E)、国家遺産(heritage asstes)、スチュワードシップ土地(stewardship land)を言い、「スチワードシップ報告書」で報告するもの。

政府の使命・任務に関する有形固定資産(Federal mission PP&E)
Par.l 政府の使命・任務に関する有形固定資産とは、審議会が特定する特別なタイプの有形固定資産(例えば,武器システム及び宇宙探査機器)または、審議会が例示する性格の資産である。
審議会が指定する連邦政府の任務としての武器システムや宇宙探査機器は、減価償却会計を適用するに適しているとは考えられないためである。

Par.o 政府の使命・任務に関する有形固定資産の性格は、
−非政府の代替的使用が出来ない
−緊急時、戦争、又は災害時のために使用するため保管している
−特定の施策のために製作され代替的施策に適用できないものである。

Par.p 耐用年数に関連しての性格は、
−耐用年数が見積もれない
−使用中に破壊などのリスクが非常に高い ものである。
Par.q 政府の使命・任務に関する有形固定資産は発生したときのコストとして表示しなければならない。

国家遺産(heritage asstes)
Par.r 国家遺産は、文化、教育、芸術、建築など歴史的または自然に関するものを含む。国家遺産の取得、建設、修繕に関する支出は発生した期間のコストとして報告しなければならない。

複合使用の国家遺産
Par.s 例えば、ペンタゴン(国防総省の建物)は国家遺産であると同時に事務所として使用している一般有形固定資産である。
Par.t 一般事務で使用している国家遺産の改装費、修繕費は、一般有形固定資産に含めなければならない。ただし、一般事務に関係ない改装費、修繕費は国家遺産のコストにしなければならない。

スチュワードシップ土地(Stewardship land)
Par.v 連邦政府は、膨大な土地を所有し種々の目的に使用している。土地を一般有形固定資産として取得したものであれば一般有形固定資産の区分である。その他の土地(例えば、公衆の土地や国立公園又は森林の土地)は、一般有形固定資産から除外して、スチュワードシップ土地である。
Par.w スチュワードシップ土地の取得は、発生したときのコストとして報告しなければならない。

記述者コメント
連邦政府の政府の会計基準によれば、貸借対照表に計上できる有形固定資産は、一般事業会社が使用しているような譲渡可能な有形固定資産を「一般有形固定資産」として資産性を認め、その他の有形固定資産を「スチュワードシップ有形固定資産」として貸借対照表に計上するのではなく、発生時にコストとしなければならないとしている。

国立公園の土地などは、スチュワードシップ土地(stewardship landとして次世代に引き継ぐべきもので、売却を予定してない。同様に、モニュメントや歴史的建物などは国家遺産(heritage assets)として次世代に残すべきもので、売却を予定していない。こうしたスチュワードシップ有形固定資産は、資産計上せず、取得時に行政コストとして計上し「補完的なスチュワードシップ報告書」で報告するとしている。

日本の会計検査院の論文の中の「米国連邦政府財務報告の体系に関する一考察−「スチュワードシップ情報」の位置づけを中心に−」by 瓦田太賀四(神戸商科大学商経学部教授)都築洋一郎(神戸商科大学大学院) 参照


下記に掲示した「1999年9月30日現在の連邦政府の貸借対照表」に計上されている有形固定資産は、上記会計基準により一般有形固定資産のみであるため、債務超過額が巨額になる。なお、大統領府が予算で説明しているところによると、国の債務は戦争及び景気後退時に生ずるとしている。つまり、戦費を賄う借金増と、不況時に税収が落ち込み財政支出を借金で賄うためである。したがって、債務超過が問題なのではなく、日本の長期債務は608兆円(短期含まず国地方合計・・11年2次補正後)と巨額で、GDP比で122%に上っていることです。因みに、米国連邦政府の借金は、99年9月30日現在、3兆6316億ドル(長期短期区分無く合計)でGDP比は39.9%と減少しつつあります。米国は、財政黒字を減税ではなく借金の返済に当てるとしています。

2004年3月会計検査研究 29「米国連邦政府財務報告の体系に関する一考察−「スチュワードシップ情報」の位置づけを中心に−」by瓦田太賀四(神戸商科大学商経学部教授)都築洋一郎(神戸商科大学大学院)参照

国民に対する財務報告(年次報告書)

上記米国連邦政府の会計基準に準拠して作成された財務報告(年次報告書)は、財務担当の財務省のホームページに「米国連邦政府の財務報告(Financial Report of the United States Government)として国家の連結財務諸表が掲載さています。下記に、連邦政府の連結財務諸表(注記を省略しています)を参考に掲載しました。

なお、予算を設定する大統領府(Whitehouse)では、予算について国民に向け丁寧に解説し、かつ、活豊富な資料を提供しています。ちなみに、財政黒字となって3年目の「2001年度(00年10月から01年9月)米国政府の予算(Budget of the United States Government fiscal year 2001)」をご覧ください。当然のことですが、財務省が決算した数値と一致しています。

46 FI NAN CIAL STATE MENTS 財務諸表
United States Government 米国連邦政府
Statement of Operations and Changes in Net Position 業務及びネットポジション変動計算書
for the Year Ended September 30, 1999 1999年9月30日終了の年度
(In billions of dollars) (単位:10億ドル)
Revenue: 収入:
Individual income tax and tax withholdings ............... 1,456.0 個人所得税及び預り源泉税
Corporation income taxes............................................ 182.2 法人税
Unemployment taxes ............................................... 25.6 失業税
Excise taxes ..................................................... 70.5 物品税
Estate and gift taxes ............................................... 27.7 不動産及び贈与税
Customs duties ................................................... 18.4 関税
Other taxes and receipts ............................................ 42.0 その他の税及び収入
Miscellaneous earned revenues ....................................... 10.5 雑収
..................
Total revenue................................................... 1,832.9 総収入
..................
Net Cost of Government Operations: 政府業務の純コスト
National defense .................................................. 413.2 国家防衛
Human resources ................................................. 905.3 人的資源
Physical resources ................................................. 95.1 物的資源
Interest ......................................................... 230.1 利息
Other functions ................................................... 112.3 その他の活動
..................
Total net cost of Government operations............... 1,756.0 政府業務の純コスト合計
..................
Excess of revenue over net cost ...................................... 76.9 純コストを超過する収入の額
Unreconciled transactions affecting the change
in net position (Note 16)...........................................
24.4 ネットポジションの変動に影響する
未調整取引額(注記16)
..................
Increase in net position ............................................. 101.3 ネットポジション増加額
Net position, beginning of period ...................................... (6,134.4) ネットポジション期首残高
Prior Period Adjustments (Note 17) .................................. 6.9 過年度修正額(注記17)
..................
Net position, end of period ........................................... (6,026.2) ネットポジション期末残高
========
The accompanying notes are an in tegral part of these financial statements.
添付の注記は、この財務諸表に密接不可分のものです。


47 FI NANCIAL STATE MENTS 財務諸表
United States Government 米国連邦政府
Statement of Net Cost ネットコスト計算書
for the Year Ended September 30, 1999 1999年9月30日に終了する年度
(In billions of dollars)(単位:10億ドル) 総コスト
Gross

Cost
収入
Earned
Revenue
ネットコスト
Net Cost
-------- -------- --------
National defense................................. 451.2 38.0 413.2 国家防衛
-------- -------- --------
Human Resources: 人的資源:
Education, training , employment
and social services .............................
57.9 1.4 56.5 教育、研修、雇用
及び公共サービス
Health........................................ 140.6 0.7 139.9 健康
Medicare ...................................... 207.0 21.7 185.3 メディケア
Income security ................................. 188.0 6.2 181.8 所得保証
Social Security.................................. 387.7 - 387.7 社会保証
Veterans benefits
 and services (Note 11) ..............
(43.2) 2.7 (45.9) 退役軍人給付
 及びサービス(注記11)
-------- -------- --------
Total human resources ......................... 938.0 32.7 905.3 人的資源合計
-------- -------- --------
Physical Resources: 物的資源
Energy ....................................... 12.9 12.4 0.5 エネルギー
Natural resources and environment .................. 27.1 2.9 24.2 自然資源及び環境
Commerce and housing credit ...................... 89.2 73.9 15.3 商業及び住宅保証
Transportation .................................. 44.1 1.1 43.0 交通
Community and regional development ................ 14.9 2.8 12.1 コミュニティ及び地域開発
-------- -------- --------
Total physical resources ......................... 188.2 93.1 95.1 物的資源合計
-------- -------- --------
Interest ........................................ 230.1 - 230.1 利息
-------- -------- --------
Other Functions: その他の活動:
International affairs .............................. 29.6 9.6 20.0 国際業務
General science, space and technology ............... 17.5 0.1 17.4 一般科学、宇宙及び技術
Agriculture ..................................... 27.2 2.4 24.8 農業
Administration of justice ........................... 31.2 1.6 29.6 司法管理
General government ............................. 25.1 4.6 20.5 一般行政
-------- -------- --------
Total other functions ............................ 130.6 18.3 112.3 その他の活動合計
-------- -------- --------
Total ...................................... 1,938.1 182.1 1,756.0 合計
======== ======== ========
The accompanying notes are an in tegral part of these financial statements.
添付の注記は、この財務諸表に密接不可分のものです。


49 FINANCIAL STATEMENTS 財務諸表
United States Government 米国連邦政府
Balance Sheet 貸借対照表
as of September 30, 1999 1999年9月30日現在
(In billions of dollars) (単位:10億ドル)
Assets: 資産:
Cash and other monetary assets (Note 2)................................ 115.2 現金及びその他の金銭資産(注記2)
Accounts receivable (Note 3) ......................................... 35.0 未収金(注記3)
Loans receivable (Note 4) ........................................... 183.7 貸付金(注記4)
Taxes receivable (Note 5) ........................................... 22.7 未収税金(注記5)
Inventories and related property (Note 6) ............................... 173.3 たな卸資産及び関連資産(注記6)
Property, plant and equipment (Note 7) ................................. 298.8 有形固定資産(注記7)
Other assets (Note 8) .............................................. 54.3 その他の資産(注記8)
--------
Total assets .................................................... 883.0 資産合計
========
Liabilities : 負債:
Accounts payable (Note 9)........................................... 85.8 未払金(注記9)
Federal debt securities held by the public (Note 10) ........................ 3,631 .6 公衆が保有している連邦債(注記10)
Federal employee and veteran benefits payable (Note 11) ................... 2,600 .7 連邦従業員及び退役軍人
の給付未払金(注記11)
Environmental and disposal liabilities (Note 12)............................ 313.2 環境及び処理未払債務(注記12)
Benefits due and payable (Note 13) ................................... 73.8 給付債務(注記13)
Loan guarantee liabilities (Note 4) ..................................... 35.1 借入保証債務(注記4)
Other liabilities (Note 14) ............................................ 169.0 その他の負債
--------
Total liabilities................................................... 6,909 .2 負債合計
Commitments and Contingencies (Note 18) 確定契約及び偶発事象(注記18)
Net Position ...................................................... (6,026 .2) ネットポジション
--------
Total liabilities and net position ...................................... 883.0 負債及びネットポジション合計
========
The accompanying notes are an in tegral part of these financial statements.
添付の注記は、この財務諸表に密接不可分のものです。

上記財務諸表の注記は、簡潔明瞭に開示していますが、ここでは省略します。

なお、上記の米国連邦政府の貸借対照表は債務超過(資産よりも負債が多い状態)ですが、主な要因は、有形固定資産の会計処理にあります。上記、会計基準書第6号「有形固定資産の会計」を参照してください。

米国連邦政府の借入債務

2001年度連邦予算によると、米国連邦政府の借入債務は下記のようになっている(出展:2001年連邦予算269、270ページ)。

予算書によると、第2次世界大戦後の1946年に米国連邦政府の借入債務はGDP比109%とピークに達し以後GDP比は減少している。増税なしに、規制撤廃、行政改革や財政改革により、景気は回復し財政収支の改善により、下記の通り1998年から債務額を減少させている。

公衆が保有している連邦債
連邦政府の借入債務額(単位:10億ドル)
Debt held by the public
会計年度
Fiscal year
インフレ調整前の額
Current dollars
1996年貨幣価値を
1とした場合のインフレ
調整後の額
FY 1996 dollars/1/
借入債務額の
対国内総生産比(%)
GDP
1950
1955
1960
1965
1970
1975
219.0
226.6
236.8
260.8
283.2
394.7
1,260.9
1,143.9
1,062.5
1,093.4
987.1
1,012.6
80.1%
57.3%
45.6%
37.9%
27.9%
25.3%
1980
1985
1990
711.9
1,507.4
2,411.8
1,264.1
2,041.9
2,793.4
26.1%
36.4%
42.0%
1995
1996
1997
1998
1999 estimate(見積)
3,604.8
3,734.5
3,772.8
3,721.6
3,632.9
3,674.2
3,734.5
3,709.8
3,612.5
3,481.5
49.2%
48.5%
46.1%
43.1%
39.9%
2000 estimate(見積)
2001 estimate
2002 estimate
2003 estimate
2004 estimate
2005 estimate
3,475.9
3,305.0
3,133.7
2,963.2
2,780.7
2,577.5
3,282.5
3,059.6
2,843.6
2,635.8
2,424.9
2,203.6
36.3%
32.9%
29.8%
27.0%
24.2%
21.3%


資金の流れ逆転(日米関係)
米国の経常赤字を穴埋めする海外資金の受け皿は、97年まで一貫して米国国債であった。海外からの国債買いは年間ほぼ2000億ドルに及び、年1千億ドルから2千億ドル弱の経常赤字を上回った。しかし、98年からの受け皿は株式と社債。99年は直接投資を含めて、株式と社債に経常赤字の2倍近い約6千億ドルが流入、国債への流入はほぼゼロとなった。

この変化は「米国経済が民間主導になった証拠」と、共和党のブッシュ大統領候補陣営の政策顧問もいう。国内総生産(GDP)に占める官公需の比率は国防を含めても20%を割り、米国経済での重みは急低下。途端に外資集めの受け皿からは米国債が消えた。買われているのは「国家」ではなく「企業」である。
だからこそ民主党は米国債ゼロ計画、共和党は大幅減税と手法は異なるものの、ともに民主導経済の徹底をめざす。

米国債が受け皿であった90年代始めまで、日本はその20%から30%を保有する米国の大口債権者であった。株と社債が受け皿の今、その役割は欧州勢が担う。しかも米国が日本資金に一方的に依存していた10年前と違い、いまは米欧の企業が株式を持ち合う民間依存の構図だ。主役が企業に移り、日本は命綱ではなくなった。

逆に、いまの日本経済を支えているのは米企業を中心とした外資だ。日本の上場株式の18%は米国などの外資が保有、最近は日本国債の最大の買い手も米国投資家などだ。資金フローで見る限り、日米の依存関係は逆転した。「こうした変化に日本は鈍感過ぎる」と榊原英資前財務官もいう。(出所:日本経済新聞 編集委員小孫茂「米国と日本ー気になるズレ」より 00年8月29日)

SEC自身も初度監査で内部統制に重要な欠陥と報告(2004年9月30日現在

2005年5月26日
、議会に所属する米国会計検査院(GAO)が米国証券取引委員会(SEC)の2004年度の財務諸表を初めて監査した。財務諸表自体は適正意見が表明されたが、財務報告に関する内部統制については、不当利得の没収や罰金に関する記録や報告、財務諸表の作成および関連するディスクロージャー、およびインフォーメーション・セキュリティに関する内部統制に重大な欠陥があるため、財務報告に関する内部統制は有効に維持していない旨の不適正意見が報告がされた。(監査報告書 SECの2004年監査済財務諸表 SmartPros ニュース CNET Japan 参照)

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受託責任情報(Stewardship information)が年次報告書に含まれる

日本では、国民年金の納付状況や不正問題で国民の不信を増幅している。日本の社会保険庁には、受託責任Stewardship)の認識が希薄ではないであろうか。

ちなみに、米国では、連邦政府の年次報告書の中に「受託管理責任情報Stewardship Information)」という情報が公開されている。

初めに、受託責任Stewardship Responsibilities)として「社会保険プログラムは、政府の責任として特定の状況の下で市民に収入の保証と保健を提供するために開発された。納税者が長期の計画においてこれらのプログラムに頼るので、受託管理情報は現在の法律によって持続可能かどうか示さなければならない。これらのプログラムを実行する必要な資源は、税と掛け金を通して賄われている。・・」として、社会保険料の納付状況と給付状況および納付額を超える給付額の現在価値を開示している。日本でも、年次報告書にまとめて国民に開示するならば少なくとも現在の様々な不祥事は防げたのではないだろうか。

The social insurance programs were developed to provide income security and health care coverage to citizens
under specific circumstances as a responsibility of the Government. Because taxpayers rely on these programs in their long-term planning, stewardship information should indicate whether they are sustainable under current law, as well as what their effect will be on the Government’s financial condition. The resources needed to run these programs are raised through taxes and fees. Eligibility for benefits rests in part on earnings and time worked by the individuals. Social Security benefits are generally redistributed intentionally toward lower-wage workers (i.e., benefits are progressive). In addition, each social insurance program has a uniform set of entitling events and schedules that apply to all participants.

「米国連邦政府財務報告の体系に関する一考察
「スチュワードシップ情報」の位置づけを中心に−」by瓦田太賀四教授、都築洋一郎氏

米国の年金制度
・社会保障制度(Old-Age, Survivors, Disabled, Health Insurance = OASDHI)とよばれ、1935年の社会保障法に基づいて創設された。財源は、毎月給与から源泉徴収される社会保障税で、税率は12.4%、労使半々で負担するので本人負担分は6.2%となる。負担には上限がある(2002年度で84、900ドル)。平均給付水準は、月額17万円前後。

・公的年金の規模を抑制し、他方で企業年金や個人年金等個人の自助努力の支援に国民の税金を使うという政策が、2大政党の下で、国民の選択としてとられている。

・財政方式として賦課方式がとられ、現在のところ収入のほうが給付よりも上回っているが、7600万人に上るベビーブーマーの給付が始まる2008年ごろから財源が悪化し、議会予算局(CBO)の予測によれば、2019年には、給付額が社会保障税収額を上回って年金財政は赤字に転落、現行のままだと、2042年から2052年ごろにかけて財源が破綻(はたん)してしまうという。

・このような財政悪化に対してブッシュ大統領は、社会保険税率の引き上げは行わず、高所得者を中心とする給付抑制政策を表明している。また、社会保険税の上限を緩和するという、高所得者層に対する実質的な負担の増加策も、今後の議会との交渉に備えて温存されているといわれている。いずれにしても、将来の財政破綻を避けるためには、給付の削減か負担の増加か、この組み合わせしかない。

米国の税制・年金改革から考える」by森信茂樹氏

格付け・・日本国債格下げ

格付け会社、ムーディーズ・インベスター・サービスは、2000年9月8日、円建ての日本国債の格付けをAa1から一段階下げてAa2とした。信用力の低下を示している。負債の返済能力が最も高い場合の格付けAaa(トリプル・エー)、以下、Aa1(ダブル・エー・ワン)、Aa2、Aa3と下がる。
2001年12月4日には、日本国債をAa2からAa3の弱含みへ格下げをした。EU統合で改革が進みつつあるイタリア以下となり、先進国中最悪となった。
2002年5月31日、2段階(2ノッチ)引き下げA2としたと発表した。政府債務の規模がGDP比で140%近いことや、対歳入比などに重点を置いた評価とういことだ。政府債務を減少させるか、GDPを増加させる政策が望まれているのだ。その、双方に明確なメッセージや、中長期的な兆しが見えないところが問題であろう。なお、ムーディーズは同日、日本の格付けの背景を説明したスペシャル・コメントを公表しているので興味のある方は参照してみてください。

米国は債務超過であるに関わらず最上級のAaaである。格付けは貸借対照表(情報開示)のみで行われているのではなく、財政の運営内容の総合的評価によるもの。
米ムーディーズ、日本国債格下げを警告・・2010年 2月 26日

主要国の自国通貨建て国債の格付け
(ムーディーズの格付けによる)
2000年9月8日 2001年12月4日 2002年5月31日
Aaa 米国、英国、フランス、ドイツ 米国、英国、フランス、ドイツ、シンガポール 米国、英国、フランス、ドイツ、カナダ
Aa1 カナダ カナダ、ベルギー ベルギー
Aa2 日本、ポルトガル、スペイン スペイン、ポルトガル イタリア、ポルトガル
Aa3安定的 イタリア イタリア、香港、台湾、スロベニア 香港、台湾、
Aa3弱含み 日本
A1 チェコ、チリ、ハンガリー、ボツワナ チェコ、チリ、ハンガリー、ボツワナ
A2 ギリシャ 日本、ギリシャ、イスラエル、ポーランド、南アフリカ

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おわりに

わが国の、国及び地方の長期債務残高は平成11年度末で608兆円(国の451兆円を含む・地方合算:短期の債務含まず)となり、GDPの実に122.59%と途方も無い借金漬け国家となってしまいました。米国の上記貸借対照表に表示されているように、米国連邦政府の借金は1999年9月31日現在で3兆6316億ドル(約370兆円:長期及び短期の債務も含む)でGDPの39.9%です。米国では、毎年借金を減らし2005年には2兆5775億ドルとしGDPの21.3%に減らす予算を組んでいます。

日本の莫大な借金はやがて税金として国民負担となります。

米国でも1980年代の財政赤字の負担が借金となって膨らみ、それを改善するため「公会計基準・・連邦政府の会計基準」を設定国家の財務諸表を公表し国家財政の透明性を高め、財政改革及び行政改革を断行して1998年から財政収支は黒字に転換しています。

米国では、1月末の年頭教書により国家予算を公表し、事後、議会で承認を得て行政が実行します。国家の帳簿記録管理は財務省が行い、監査は、議会に属する会計検査院が行います。したがって、国家の財務諸表は財務省が公表し、監査結果は会計検査院が議会に対して行い公表しています。予算は政策の立案を行う大統領府に属する予算管理局が管理し、予算の国民への説明は大統領府が行っています。

日本では、財務省(旧大蔵省)が予算・決算の双方を行っており強大な権限が集中しています。財務省主計局が「国の予算、決算及び会計に関する制度の企画・立案、作成等(財務省のホームページより)」を行います。つまり、予算・決算、企画・立案・作成など、米国の大統領府にある行政管理予算局(OMB)の役割も含んでいます。また、監査を行う会計検査院は行政府に属し総理大臣に報告するようになっています。 日本の場合、政策立案に不可欠な予算、予算を執行する行政、予算執行の検査をする会計検査院のすべての機能が行政府に属しています。いわゆる官主主義の姿である。議会及び内閣府は、この仕組みからは見えてこない。

2001年の省庁再編に伴って、予算に関しては米国の大統領経済諮問委員会(CEA)に倣って、内閣府に設ける「経済財政諮問会議」で首相と経済官僚、民間人の代表者が経済・財政運営の基本方針を決めることになっているが、大蔵省は「予算編成の権限を拡散したくない」との思いから、民間人を排除し、出席者を政府・与党の幹部に絞った「財政首脳会議」を提案している(日本経済新聞00年9月3日)。
「経済財政諮問会議」の企画立案から会議運営まで一切の実務を取り仕切るのは局長クラスの3人の「政策統括官」である。このうち事務方のトップ「筆頭統括官」のポスト獲得をめぐり、大蔵省と企画庁がにらみ合いを続けている(「政治主導の虚像」・・日本経済新聞00年9月5日)。

予算権限を、大統領府の行政管理予算局(OMB)にあるように、日本も内閣府に行政管理をカバーした行政管理予算局を設ける必要があろう。

戦後の経済復興期に先進国に追いつくため機能した仕組みは、21世紀にはそぐわないものとなっている。議会の役割、内閣府の役割が明確となった仕組みが求められよう。なぜなら、財政再建には、(1)国民の理解を得る、(2)財政再建の政策立案(予算)・実行、(3)政策の検証、(4)改善が必要であるが、効果的に機能するためには、それぞれの段階で透明性を確保する必要が生ずるからです。情報開示により、より多くの専門家、シンクタンク等の多面的な研究を促し、効果的な改善を促すことが可能となる。現に、米国のNPRは、行・財政改革の情報開示を行い、政府の説明責任およびスチワードシップの改善に関して世界に向けて英知を求めている(英国政府が米国にアドバイスし、ゴア副大統領が英国に対して出された礼状が公開されている)。

日本の制度は官主主義で、情報公開の不備や、権限集中などで制度上の欠陥を孕んでいる。民間企業では、コーポレートガバナンス(企業統治)が求められつつありますが、官による権限集中とその結果生まれた巨額な借金は、官に対して議会及び総理府による実質的なガバナンス(統治)が必要なことを示しているのではないでしょうか。

巨額に膨らんだ借金の負担を国民の協力なくして解決方法はなく、国民の理解を得るためには情報公開なくしてありえない。従来のように(消費税導入時)、納税義務のみを強調しただけでは国民は納得しないであろう。また、情報開示なくして的確な財政改革・行政改革の的確な道筋は見えてこないであろう。今や、国家も民間企業並の情報開示が求まれる時代になっている。

参考資料:「マクロ財政運営と公会計情報-公会計の役割と限界-」by田中秀明2005年4月・財務省財務総合政策研究所研究部
上記論文の1ページの1はじめに「OECD 諸国の中で、現在のわが国ほど、財政の持続可能性が懸念されている国はないだろう。OECD(2002)及びIMF(2003a)のベース・シナリオによると、わが国の一般政府の総債務(gross debt)は、2010 年代初頭には約210%(対GDP 比)に達する見込みである1。日本政府の中期財政見通しである「改革と展望」ベースでは、総債務は約160%(同)の見通しであり(OECD(2002))、OECD 等の推計と比べて実に50%の差がある。」・・とある。2012年の現在OECDの見通しは当たっている。

公会計・予算制度の改革過程:対立点と改革の方向性」by土居丈朗氏2003年9月財務省財務総合政策研究所主任研究官
2003年6月を目途に「公会計に関する基本的考え方」について取りまとめることとなっている。

政府復興会議・第1次提言を受けて 〜今後の政治・行政・民間の果たすべき役割を問う〜」byあすか会議2011レポート
原田:阪神淡路大震災のときは16兆円かけました。神戸の人口は約150万人ですが、すべての神戸市民が被災したわけではありません。本当にひどい損害を受けた被災者の方は40万人ぐらいでした。40万人に16兆円ということは、1人当たり4000万円をかけたことになります。1人4000万円をかけて、例えば一番ひどい被害に遭った長田区はどうなったか。長田区の商業スペースは震災後、4倍ほどの広さに拡大しています。その結果、その多くがシャッター通りになってしまいました。誰も入っていない。そういう地区がたくさんあります。私も4〜5年前に行って長田区のあちこちがシャッター通りになっていることを確認しました。最近行った方は「もうゴーストタウンだ」と言っていました。復興していないのです。ゴーストタウンを我々の税金で作ったのです。政府は全く同じことを、今度は東北でやるでしょう。私はそう思っています。自民党であろうが民主党であろうが同じです。これを止めなければいけない。

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